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みんなで楽しむんです
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あっという間に月日は流れ、パルラの結婚式まであと1か月。
私はテックとルイスさんと、ある程度距離を取りつつ、それでも仲良くやってきたつもりだ。
パルラの結婚が近くなって、私はなるべくパルラと一緒に行動している。
「もうすぐお城から出て行くパルラと、少しでも一緒にいたい。」
テックとルイスさんにお願いして、パルラがお城にいる時には側にいさせてもらった。
テックとルイスさんは、パルラがいなくなるのが寂しいのだろうと、私のお願いをすんなり許可してくれた。
それからは、私はパルラにベッタリとくっついて歩いている。
パルラには最初に話をつけておいた。
結婚するまで、私がパルラに煩いくらい纏わり付くから我慢してねって。
「煩いなんて思わないわ。むしろアヤナなら大歓迎よ。これもきっと、何か考えがあっての行動なのでしょう?私のことは、利用できるだけ利用してちょうだいね。」
パルラは嬉しそうに、けれどちょっぴり申し訳なさそうに眉尻を下げて微笑んだ。
「ごめんね?でも、パルラの側にいたいっていうのも本当だからっ!」
私はギュッとパルラの腕にしがみつく。
「ふふっ。分かってるわ。アヤナ、大好きよ。」
パルラがムギュッて抱き締めてくれたから、私も嬉しくなって暫くギュッと抱きついていた。
「「ピクニック?」」
パルラの結婚式まであと2週間。
2人揃って首を傾げるテックとパルラを見ながら、私は流石は双子だなぁと感心していた。
「そう。私のいた国では、天気の良い日にお弁当を持ってお出掛けしたりするんだよ。」
「オベントウ?」
「そう。お昼ご飯を外で食べやすいように作って箱に詰めるの。外で食べれば美味しさ倍増なんだよね~。」
この国に、お弁当という物はない。
みんなお昼や夜ご飯は家で食べるか、お店で食べるので、食べ物を持ち歩く考えがないのだ。
ヨダレを垂らしそうになっている私に、パルラはクスクスと笑う。
「楽しそうね。どこに行くの?」
「あそこの山に行きたい!侍女の人達がね、山の上に綺麗なお花畑があるって教えてくれたの!みんなで一緒に行きたいなぁ。」
私は窓から見える小高い山を指差して言った。
興奮気味な私を、テックとパルラは目を細めて見つめ、笑っている。
「そんな可愛いお願いをされたら行かないとね。すぐにオベントウ?とやらを作らせるよ。」
テックが侍女に指示を出して、お弁当を作ってもらうように厨房へお願いする。
その間に動きやすい服装に着替えて準備していると、あっという間にお弁当が完成して届けられていた。
お城のコックさん達は、流石に皆さん仕事が早い。ありがとうございます。
馬車で山の麓まで行き、みんなで歩いて山を上方まで散策する。
私を真ん中にして、パルラ、テックと3人で手を繋いで登った。
途中に生えている木や草花、鳥の姿や鳴き声を楽しみながら、ズンズン進んで行くと目の前が開け、辺り一面にお花畑があらわれた。
色とりどりの花々はとっても見事に咲いていて、まるで夢の中にいるかのように素晴らしい光景だった。
私達は夢中になって遊んだ。
花冠やネックレスを作ったり、追いかけっこをしたり、疲れたら大の字に寝転がってひと休みしたり。
教会にいた頃を思い出し、ただひたすらに遊んだ。
「花畑の向こうは、結構な崖になってるから、近づくんじゃねえぞー。」
龍斗さんの声に反応して、3人で恐る恐る崖に近づき下を覗き込む。
木々が茂り崖の下はよく見えないけれど、かなりの高さで足が竦んだ。
3人で顔を見合わせ、ブルッと震う。
「こらー!お前ら、俺の言うことが聞けねえのか?危ないだろう。」
怒っている龍斗さんから逃げように3人で走り回り、笑い合った。
途中、お昼を食べながらお弁当の美味しさに感動しているテックとパルラに、私はまた笑った。
私は今日、全力で遊び、そして、本気で楽しんだ。
今日という日が、テックやパルラにとって最高の1日となり、最高の思い出となるように。
印象深く残るように……。
私はテックとルイスさんと、ある程度距離を取りつつ、それでも仲良くやってきたつもりだ。
パルラの結婚が近くなって、私はなるべくパルラと一緒に行動している。
「もうすぐお城から出て行くパルラと、少しでも一緒にいたい。」
テックとルイスさんにお願いして、パルラがお城にいる時には側にいさせてもらった。
テックとルイスさんは、パルラがいなくなるのが寂しいのだろうと、私のお願いをすんなり許可してくれた。
それからは、私はパルラにベッタリとくっついて歩いている。
パルラには最初に話をつけておいた。
結婚するまで、私がパルラに煩いくらい纏わり付くから我慢してねって。
「煩いなんて思わないわ。むしろアヤナなら大歓迎よ。これもきっと、何か考えがあっての行動なのでしょう?私のことは、利用できるだけ利用してちょうだいね。」
パルラは嬉しそうに、けれどちょっぴり申し訳なさそうに眉尻を下げて微笑んだ。
「ごめんね?でも、パルラの側にいたいっていうのも本当だからっ!」
私はギュッとパルラの腕にしがみつく。
「ふふっ。分かってるわ。アヤナ、大好きよ。」
パルラがムギュッて抱き締めてくれたから、私も嬉しくなって暫くギュッと抱きついていた。
「「ピクニック?」」
パルラの結婚式まであと2週間。
2人揃って首を傾げるテックとパルラを見ながら、私は流石は双子だなぁと感心していた。
「そう。私のいた国では、天気の良い日にお弁当を持ってお出掛けしたりするんだよ。」
「オベントウ?」
「そう。お昼ご飯を外で食べやすいように作って箱に詰めるの。外で食べれば美味しさ倍増なんだよね~。」
この国に、お弁当という物はない。
みんなお昼や夜ご飯は家で食べるか、お店で食べるので、食べ物を持ち歩く考えがないのだ。
ヨダレを垂らしそうになっている私に、パルラはクスクスと笑う。
「楽しそうね。どこに行くの?」
「あそこの山に行きたい!侍女の人達がね、山の上に綺麗なお花畑があるって教えてくれたの!みんなで一緒に行きたいなぁ。」
私は窓から見える小高い山を指差して言った。
興奮気味な私を、テックとパルラは目を細めて見つめ、笑っている。
「そんな可愛いお願いをされたら行かないとね。すぐにオベントウ?とやらを作らせるよ。」
テックが侍女に指示を出して、お弁当を作ってもらうように厨房へお願いする。
その間に動きやすい服装に着替えて準備していると、あっという間にお弁当が完成して届けられていた。
お城のコックさん達は、流石に皆さん仕事が早い。ありがとうございます。
馬車で山の麓まで行き、みんなで歩いて山を上方まで散策する。
私を真ん中にして、パルラ、テックと3人で手を繋いで登った。
途中に生えている木や草花、鳥の姿や鳴き声を楽しみながら、ズンズン進んで行くと目の前が開け、辺り一面にお花畑があらわれた。
色とりどりの花々はとっても見事に咲いていて、まるで夢の中にいるかのように素晴らしい光景だった。
私達は夢中になって遊んだ。
花冠やネックレスを作ったり、追いかけっこをしたり、疲れたら大の字に寝転がってひと休みしたり。
教会にいた頃を思い出し、ただひたすらに遊んだ。
「花畑の向こうは、結構な崖になってるから、近づくんじゃねえぞー。」
龍斗さんの声に反応して、3人で恐る恐る崖に近づき下を覗き込む。
木々が茂り崖の下はよく見えないけれど、かなりの高さで足が竦んだ。
3人で顔を見合わせ、ブルッと震う。
「こらー!お前ら、俺の言うことが聞けねえのか?危ないだろう。」
怒っている龍斗さんから逃げように3人で走り回り、笑い合った。
途中、お昼を食べながらお弁当の美味しさに感動しているテックとパルラに、私はまた笑った。
私は今日、全力で遊び、そして、本気で楽しんだ。
今日という日が、テックやパルラにとって最高の1日となり、最高の思い出となるように。
印象深く残るように……。
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