神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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作戦を練りました

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泣き過ぎてグシャグシャな私の顔を、龍斗さんはハンカチで拭ってくれる。

『ほら。鼻水、チーンってしろ。』

鼻にハンカチをあてられて、私は大人しくそれに従った。

『……ここにお父さんがいる。』

『俺の娘はいつまで経ってもガキだからな~。世話が焼けるぜ。』

ジト目で見る私に、龍斗がニッと笑って鼻をハンカチでゴシゴシ拭ってくれた。

『手のかかる子供は俺がずっとついててやらないとな~?あ、因みに彩菜の嫁入り道具には俺も入ってるから。こんな嫁入り道具、リスターしか許してくれないと思うぜ。』

『えー……。嫁入り道具って……。しかもうちは婿入りしてもらう側なんですけど?』

『リスターの嫁になるんだから嫁入り道具でいいじゃねえか。もうリスターの許可も取ってるしな。』

…………許可、取ってるんだ……。

アハハ~と乾いた笑いを浮かべていたら、龍斗さんにデコピンをされた。

『痛い!』

『要するに、彩菜の婿はリスターじゃないと務まらないって事だよ。』

『うん……うん、そうだよね!顔が怖くて、口が悪くて、態度もデカイけど、私の事を1番に考えてくれる龍斗さんを受け入れてくれるのは、リスターしかいないよね!』

『お前、それは俺をディスってるのか、褒めてるのか、どっちなんだ?』

龍斗さんがもう一度デコピンの態勢を取りながら私を問い詰める。

私はオデコを慌てて両手で隠した。

『も、勿論、褒めてるんだよ!!』

龍斗さんはデコピンする為に伸ばした手を私の頭に置くと、いつものようにガシガシと撫でる。

『そうだろ。彩菜の事を1番に考えている有能な俺様が、絶対にリスターのところに帰してやるからな。』

『……うん。』

『フレイの結婚式には出席させてやれないけど、帰ったら2人でまたお祝いしてやろうぜ。』

『うん。』

『かなり大掛かりな事になりそうだから、しっかりと2人で作戦を練らないとな。』

『うん!』

私は泣き笑いしつつ、元気に返事をした。
龍斗さんも、満足そうに笑っている。


『取り敢えず、あの宰相には今まで以上に気をつけて行動しないとな。俺達がフレイの結婚やテックとの婚約の話しを知ってると分かれば、また何をしてくるか……。』

『うん、そうだね。私もルイスさんは、ちょっと腹黒な感じがして苦手なんだよね……。気をつけるよ。』

『アイツはちょっとどころか、ガッツリ腹黒だぜ?何考えてるのか全く読めないし。あんな腹黒い奴はそうそういないだろ。彩菜に黙ってテックと勝手に婚約させようとしてるくらいだしな。』

『そうだね……。』

私と龍斗さんはついつい難しい顔をして考え込んでしまった。

眉間に皺を寄せていると、龍斗さんがニッと笑って、私の眉間目掛けて手を伸ばして小突いてきた。

『まあ、俺も相当悪知恵は働くから。パルラの結婚式にも出て、テックと婚約しずにリスターのところへ戻る方法を何としてでも考え出してやるよ。』


……龍斗さん、悪知恵が働くって自分で言っちゃったよ。自覚があったんだね。


『2人で一緒にアイツをぎゃふんと言わせてやろうぜ。』

『うん、言わせてやろう!ぎゃふん、ぎゃふんとね!』

私は力一杯拳を突き上げて意気込んだ。


そうだよね。泣いてばかりでは……ウジウジ考えてるだけでは、何も解決しないよね。
頑張って、先に進む為に行動しないと!

私は1人じゃないんだから!!



ーーその日から、私と龍斗さんの、頭をフル回転させて作戦を練る日々が始まったのだった。

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