61 / 73
贈り物をするんです
しおりを挟む
色々なお店を見て回って、私はパルラへの贈り物をオルゴール付きの宝石箱に決めた。
蓋の部分にステンドグラスのように色付きのガラスで細工が施されていて、とても綺麗だ。
パルラと初めて出会った教会を思い起こさせるそれを見て、これだ!って思ったんだよね。
私がリスター達の所へ帰ってからも、これを見て思い出してくれるといいな。
そんな願いをこめて。
買い物を終えてお城に戻ると、テックが私を見つけて早足で近づいて来た。
おおっ!今日も勢いが凄いな!
思わず後退る私を隠すように、龍斗さんが一歩前に出てテックとの間に入ってくれる。
テックは一瞬眉を顰めるも、すぐに笑顔を私に向けた。
「アヤナ、どこに行っていたんだ?探したよ。」
「パルラの結婚祝いを買いに、町まで行ってたんだよ。言ってなかったっけ?」
「聞いてない!なかなか手に入らない茶葉を貰ったんだ。アヤナと一緒に飲みたかったから、探してた。用意させるから行こう。」
テックは私の手を取って歩き出そうとする。
パルラの結婚が決まってから、テックの行動はちょっと強引になってるから、時々怖くなることがあるだよね。
今も握られた手は力が強くて痛いし、強引に引っ張られて歩いているからちょっと怖い。
そんな私の気持ちを察してか、龍斗さんがテックの腕をガシッと掴み歩みを止める。
「テック。少し力加減をしてやってくれ。彩菜が痛がってる。これでも一応か弱い女の子なんでね。」
テックがハッとして手の力を緩めた隙に、私は繋いでいた手を解いて引っ込めた。
テックが悲しそうに眉尻を下げるけど、再び手を繋ぎたくはない。
私は宝石箱の入った紙袋を目の前に翳してそれをアピールする。
「今からパルラに会いにいくから、また今度じゃ駄目かな?すぐにパルラに渡したいんだ!」
必死にお願いする私を見て、テックが小さく息を吐く。
「分かったよ。明日は公務が無いから、ずっと俺の側にいてよね。」
去って行くテックの後ろ姿を見ながら、龍斗さんが腕を組んで眉を顰めていた。
『彩菜、これからは今まで以上に気をつけろよ。既成事実なんて作られたら、2度と帰れなくなるからな。俺から絶対離れるんじゃねえぞ。』
『わ、分かった。』
既成事実って何!?
私は背中がゾクゾクして思わずブルッと身震いし、何度も力強く頷いた。
「これを、私に?」
パルラの部屋を訪れて宝石箱をプレゼントすると、目を潤ませて喜んでくれた。
「パルラと出会った教会のステンドグラスみたいでしょ?私が帰った後も、これを見て思い出してくれると嬉しいな。」
「ありがとう……。」
パルラは宝石箱を見つめ、お礼の言葉を口にする。
そして、宝石箱を抱えたまま俯き、暫く黙り込んでしまった。
「パルラ?」
私が顔を覗き込むと、パルラは意を決したように顔を上げ、私の手を掴んだ。
「アヤナ、私の結婚式の前に何とか手を尽くして帰った方がいいわ。でないと、戻れなくなってしまう!」
パルラの頬を涙が伝う。
ハラハラと涙を流すパルラにビックリして、私はオロオロとするばかりだった。
何、何!?どういうこと!?
なんでそんなに泣いてるの?
なんで私が戻れなくなるの?
プチパニックな私の頭に龍斗さんがチョップを落とし、パルラの頭を優しく撫でる。
「2人とも、落ち着け。」
痛いな!何するんだよ!っていうか、パルラと私の扱いが違い過ぎない!?
ちょっと落ち着いたけども!!
私が痛む頭を撫でながらジトッとした目で睨んでも、龍斗さんは全く気にしていないようで。
横目に私を見て、すぐにパルラへ目を移した。
「パルラ。お前、何か知っているんだな?」
龍斗さんの問い掛けにパルラは一瞬ビクッと反応するも、更にポタポタと涙を零し、コクンと小さく頷いた。
蓋の部分にステンドグラスのように色付きのガラスで細工が施されていて、とても綺麗だ。
パルラと初めて出会った教会を思い起こさせるそれを見て、これだ!って思ったんだよね。
私がリスター達の所へ帰ってからも、これを見て思い出してくれるといいな。
そんな願いをこめて。
買い物を終えてお城に戻ると、テックが私を見つけて早足で近づいて来た。
おおっ!今日も勢いが凄いな!
思わず後退る私を隠すように、龍斗さんが一歩前に出てテックとの間に入ってくれる。
テックは一瞬眉を顰めるも、すぐに笑顔を私に向けた。
「アヤナ、どこに行っていたんだ?探したよ。」
「パルラの結婚祝いを買いに、町まで行ってたんだよ。言ってなかったっけ?」
「聞いてない!なかなか手に入らない茶葉を貰ったんだ。アヤナと一緒に飲みたかったから、探してた。用意させるから行こう。」
テックは私の手を取って歩き出そうとする。
パルラの結婚が決まってから、テックの行動はちょっと強引になってるから、時々怖くなることがあるだよね。
今も握られた手は力が強くて痛いし、強引に引っ張られて歩いているからちょっと怖い。
そんな私の気持ちを察してか、龍斗さんがテックの腕をガシッと掴み歩みを止める。
「テック。少し力加減をしてやってくれ。彩菜が痛がってる。これでも一応か弱い女の子なんでね。」
テックがハッとして手の力を緩めた隙に、私は繋いでいた手を解いて引っ込めた。
テックが悲しそうに眉尻を下げるけど、再び手を繋ぎたくはない。
私は宝石箱の入った紙袋を目の前に翳してそれをアピールする。
「今からパルラに会いにいくから、また今度じゃ駄目かな?すぐにパルラに渡したいんだ!」
必死にお願いする私を見て、テックが小さく息を吐く。
「分かったよ。明日は公務が無いから、ずっと俺の側にいてよね。」
去って行くテックの後ろ姿を見ながら、龍斗さんが腕を組んで眉を顰めていた。
『彩菜、これからは今まで以上に気をつけろよ。既成事実なんて作られたら、2度と帰れなくなるからな。俺から絶対離れるんじゃねえぞ。』
『わ、分かった。』
既成事実って何!?
私は背中がゾクゾクして思わずブルッと身震いし、何度も力強く頷いた。
「これを、私に?」
パルラの部屋を訪れて宝石箱をプレゼントすると、目を潤ませて喜んでくれた。
「パルラと出会った教会のステンドグラスみたいでしょ?私が帰った後も、これを見て思い出してくれると嬉しいな。」
「ありがとう……。」
パルラは宝石箱を見つめ、お礼の言葉を口にする。
そして、宝石箱を抱えたまま俯き、暫く黙り込んでしまった。
「パルラ?」
私が顔を覗き込むと、パルラは意を決したように顔を上げ、私の手を掴んだ。
「アヤナ、私の結婚式の前に何とか手を尽くして帰った方がいいわ。でないと、戻れなくなってしまう!」
パルラの頬を涙が伝う。
ハラハラと涙を流すパルラにビックリして、私はオロオロとするばかりだった。
何、何!?どういうこと!?
なんでそんなに泣いてるの?
なんで私が戻れなくなるの?
プチパニックな私の頭に龍斗さんがチョップを落とし、パルラの頭を優しく撫でる。
「2人とも、落ち着け。」
痛いな!何するんだよ!っていうか、パルラと私の扱いが違い過ぎない!?
ちょっと落ち着いたけども!!
私が痛む頭を撫でながらジトッとした目で睨んでも、龍斗さんは全く気にしていないようで。
横目に私を見て、すぐにパルラへ目を移した。
「パルラ。お前、何か知っているんだな?」
龍斗さんの問い掛けにパルラは一瞬ビクッと反応するも、更にポタポタと涙を零し、コクンと小さく頷いた。
36
お気に入りに追加
779
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました
ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。
そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。
イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。
これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。
※1章完結※
追記 2020.09.30
2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる