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お祝いするんです
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「おばさーん、これいくら?」
私は言いながら、たっぷりとタレのついた肉の串焼きを指差した。
「はいはーい。っと、アヤナ様じゃないですか。今日は王子様と姫様は一緒じゃないんですかい?」
「うん。今日は龍斗さんと買い物に来てるの。」
「あー、そうか。姫様の結婚が決まったばかりだから、皆さん忙しいんですねぇ。」
肉屋のおばさんはテキパキと紙の包みに肉の串焼きを入れていく。
「はい、お代はいりませんよ。姫様の結婚祝いってことで持ってってくださいな。」
「えー?ダメだよ、おばさん。しっかり稼がないと!それに、私が結婚するわけじゃないのに結婚祝いって可笑しいじゃん!」
「そうそう。お金は俺がちゃんと持ってるから払わせてよ。」
私とおばさんが話しているところへ、龍斗さんがヒョイっと顔を出して割って入る。
龍斗さんはおばさんが返事をする前にお金を台の上に置き、お肉を受け取った。
おばさんがヤレヤレといったように肩を竦める。
「王子様とアヤナ様が結婚される時には是非ご馳走させて下さいね。」
「あはは。おばさん、私とテックは婚約者じゃないからね。結婚なんてしないよ!」
「おやおやそうなんですか?じゃあ婚約祝いが先ですねぇ。」
私がいくら否定しても、おばさんはテックと私が結婚するのを当然だと思っているらしく、真剣に聞いてくれない。
私は否定するのを諦めて、龍斗さんとベンチのある広場へと向かった。
お肉を齧りながら難しい顔をしていると、龍斗さんが苦笑しながら私の頭をポンポンと叩く。
「おばさん達が勘違いするのは分からなくもねえだろ。」
「う~ん……。」
そうなんだよねえ……。
コトネオールに来て2年。
私と龍斗さんはテックとパルラがこの国に慣れるように尽力してきた。
最初の頃、公務や人前に出るような時には離れていたのだけれど、そういう時にこそ辛いからと、いつの間にか一緒にいさせられている。
そのおかげで、この国の人達にはすっかりテックのお相手として誤認されてしまっているのだ。
私は王族の2人とは違って、割と行動の自由がきくので( ルイスさんは厳しいけどね )、龍斗さんとよく町に出掛けるんだけど……だいたいさっきのような反応をされる。
パルラの結婚が決まってからは余計にだ。
その都度否定しているのだけれど、焼け石に水状態だった。
「テックの態度がちょっとなぁ……。あれは誤解されても仕方ない。」
龍斗さんも困り顔でお肉に齧り付く。
そう、1番の原因はテックの態度だと思うんだよね。
一緒に行動している時に、やたらと私を隣に置きたがる。手を繋いできたり、腰に腕を回してきたり、肩を抱いてきたり……その度に龍斗さんが引き離してくれるんだけど。
最近は益々私にべったりな感じがする。
パルラが結婚しちゃうから寂しいのかな?なんて思ったりもして、強く拒否も出来ないから困っている。
そして困った私が龍斗さんにべったりになって……なんだか変な状況に陥っていた。
ハァ~。
どうしたもんかと、深く溜め息を吐く。
お肉を食べる手が止まってしまった私の頬を、龍斗さんが思い切りつねってグイグイと引っ張ってきた。
「いひゃい!りゅーひょひゃん、いひゃい!!」
つねられてるから、上手く話せないじゃん!
「せっかく今はパルラの結婚祝いを買いに来たんだから、溜め息吐くの禁止な。楽しく買い物しようぜ。」
龍斗さんがニッと笑って、私の頬をつねっている手を離した。
そうだった!
私はつねられて赤くなった頬を擦りながら、急いでお肉を自分のお腹に収めていく。
「ご馳走さまでした!!」
私は元気よくベンチから立ち上がり、龍斗さんの腕を掴んで歩き出した。
今日は何も考えず、パルラの気に入ってくれる物を選ばなくては!!
私は言いながら、たっぷりとタレのついた肉の串焼きを指差した。
「はいはーい。っと、アヤナ様じゃないですか。今日は王子様と姫様は一緒じゃないんですかい?」
「うん。今日は龍斗さんと買い物に来てるの。」
「あー、そうか。姫様の結婚が決まったばかりだから、皆さん忙しいんですねぇ。」
肉屋のおばさんはテキパキと紙の包みに肉の串焼きを入れていく。
「はい、お代はいりませんよ。姫様の結婚祝いってことで持ってってくださいな。」
「えー?ダメだよ、おばさん。しっかり稼がないと!それに、私が結婚するわけじゃないのに結婚祝いって可笑しいじゃん!」
「そうそう。お金は俺がちゃんと持ってるから払わせてよ。」
私とおばさんが話しているところへ、龍斗さんがヒョイっと顔を出して割って入る。
龍斗さんはおばさんが返事をする前にお金を台の上に置き、お肉を受け取った。
おばさんがヤレヤレといったように肩を竦める。
「王子様とアヤナ様が結婚される時には是非ご馳走させて下さいね。」
「あはは。おばさん、私とテックは婚約者じゃないからね。結婚なんてしないよ!」
「おやおやそうなんですか?じゃあ婚約祝いが先ですねぇ。」
私がいくら否定しても、おばさんはテックと私が結婚するのを当然だと思っているらしく、真剣に聞いてくれない。
私は否定するのを諦めて、龍斗さんとベンチのある広場へと向かった。
お肉を齧りながら難しい顔をしていると、龍斗さんが苦笑しながら私の頭をポンポンと叩く。
「おばさん達が勘違いするのは分からなくもねえだろ。」
「う~ん……。」
そうなんだよねえ……。
コトネオールに来て2年。
私と龍斗さんはテックとパルラがこの国に慣れるように尽力してきた。
最初の頃、公務や人前に出るような時には離れていたのだけれど、そういう時にこそ辛いからと、いつの間にか一緒にいさせられている。
そのおかげで、この国の人達にはすっかりテックのお相手として誤認されてしまっているのだ。
私は王族の2人とは違って、割と行動の自由がきくので( ルイスさんは厳しいけどね )、龍斗さんとよく町に出掛けるんだけど……だいたいさっきのような反応をされる。
パルラの結婚が決まってからは余計にだ。
その都度否定しているのだけれど、焼け石に水状態だった。
「テックの態度がちょっとなぁ……。あれは誤解されても仕方ない。」
龍斗さんも困り顔でお肉に齧り付く。
そう、1番の原因はテックの態度だと思うんだよね。
一緒に行動している時に、やたらと私を隣に置きたがる。手を繋いできたり、腰に腕を回してきたり、肩を抱いてきたり……その度に龍斗さんが引き離してくれるんだけど。
最近は益々私にべったりな感じがする。
パルラが結婚しちゃうから寂しいのかな?なんて思ったりもして、強く拒否も出来ないから困っている。
そして困った私が龍斗さんにべったりになって……なんだか変な状況に陥っていた。
ハァ~。
どうしたもんかと、深く溜め息を吐く。
お肉を食べる手が止まってしまった私の頬を、龍斗さんが思い切りつねってグイグイと引っ張ってきた。
「いひゃい!りゅーひょひゃん、いひゃい!!」
つねられてるから、上手く話せないじゃん!
「せっかく今はパルラの結婚祝いを買いに来たんだから、溜め息吐くの禁止な。楽しく買い物しようぜ。」
龍斗さんがニッと笑って、私の頬をつねっている手を離した。
そうだった!
私はつねられて赤くなった頬を擦りながら、急いでお肉を自分のお腹に収めていく。
「ご馳走さまでした!!」
私は元気よくベンチから立ち上がり、龍斗さんの腕を掴んで歩き出した。
今日は何も考えず、パルラの気に入ってくれる物を選ばなくては!!
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