神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
上 下
29 / 73

お祖母様に会いました

しおりを挟む
突然ですが、私は今かーさまと町へ買い物へ来ています。

早いもので、この国へ来てから半年が過ぎ、私は言葉の壁を見事に乗り越えました。
とーさまとかーさま、リスターも日本語を勉強して、今では日常会話くらいなら難なく理解し話せるまでになっています。

そしてかーさまは最近よく、頑張ったご褒美として私を町へ連れ出してくれます。今日のように。


え?
何故敬語なのかって?

それは今、私が何重にも猫をかぶってカフェでお茶をしているからなのです。

「ここのパンケーキ、人気なだけあって美味しいわねぇ。アヤナちゃんもひと口どう?ほら、あ~んして。あ~ん。」

パク。
もぐもぐもぐ。

「こっちのケーキも美味しいわよ。アヤナちゃん、こっちのも食べてみて。はい、あーん。」

パク。
もぐもぐもぐ。

「「美味しい?」」

コクコク。

「はい。とってもおいしいです。」

私はニッコリ笑って頷きました。

「「可愛い~!!」」

「お二人とも、アヤナを餌付けしないで下さい。」

私の目の前で悶えている2人に、かーさまは微笑みながらも冷たい視線を投げかけます。

「ちょっとくらいいいじゃない。フローラってばケチなんだから。それよりアヤナちゃん、私の事はマリーおばあさまって呼んでね。」

「じゃあ、私の事はサニアおばあさまって呼んでね。」

「マリーおばあさま。サニアおばあさま。」

「「可愛い~!!」」

私が満面の笑みで呼ぶと、2人はまた悶えながら喜んでくれました。

今、私の前に座っている2人は……マリーおばあさまがかーさまの、サニアおばあさまがとーさまのお母さんだそうです。

つまり私の祖母になった人達なのです。

何故、半年も経ってから初対面しているのかって?

それは、今までおばあさま達が王都にいなかったからなのです。
2人はとても仲が良く、おじいさま達も巻き込んで4人で各地を旅行していたそうです。

今日、突然会いたいって言われた時はどうしようかと思ったけど、2人ともとっても優しくて安心しました。

あ、私がかぶっていた猫が今3匹ほど走って逃げていきました。

よかったよかった。

猫が脱走してリラックスモードになった私が目の前に置かれていたケーキをパクパク食べていると、マリーおばあさまが私の頬についたクリームをハンカチで拭ってくれた。

「ありがとうございます。」

ペコリと頭を下げてお礼を言うと、マリーおばあさまは目を細めて頭を優しく撫でてくれた。

「こんなに可愛い孫ができて嬉しいわ。これからよろしくね。」

「はい!よろしくおねがいします!」

私は嬉しくって、元気に答える。

かーさまも嬉しそうに笑っていて、私も益々嬉しくなった。

お店を出ると、おばあさま達は私と手を繋ぎたいと言い、両側から私の手を取って歩き出す。

店の立ち並ぶ通りを、おばあさま達が私と手を繋いで散策しながら、お店の人達に私の自慢をして歩く。

きっと今の私の顔はとってもブサイクだろうな。
おばあさま達が自慢してくれるのが嬉しくて幸せで、泣きそうになっているのを必死で我慢しているから。

店の人達はそんな私を微笑ましそうに見て頭を撫でてくれた。

かーさまもおばあさま達も、身分は高いはずなのに、全然偉ぶったりしていない。
だから町の人達も気さくに話しかけてきてくれる。

みんなに好かれてるんだなぁ。



途中で一軒のお店に入ると、おばあさま達から綺麗な髪留めをプレゼントされた。
キラキラと光り輝く宝石が幾つも散りばめられたピンクのお花の形の髪留めを、2人がキラキラとした目をしながら私の髪につけてくれる。

「「可愛い!!」」

うん、とっても可愛い。髪留めはね。

可愛いけど、これ、絶対高いやつだよね。

私はどうしたら良いか分からなくて、助けを求めてかーさまを見た。

「可愛いわ。良かったわね、アヤナ。」

私を見てご満悦そうに微笑むかーさま。


「……ありがとうございます。」 

ーー私は素直に受け取らせていただきました。



町をひとしきり散策して、家に到着する頃にはもう日が暮れかけていた。
おばあさま達はおじいさま達がリスターの家で待っているからと、私とかーさまを馬車から降ろすと、早々に去って行った。

去り際、おばあさま達は私をギュッと抱き締めると、目に涙を溜めて私を見つめた。

「フローラを母親にしてくれてありがとう。私の孫になってくれてありがとう。」

「あの子達を親に選んでくれてありがとう。これからは、私達もアヤナの家族ですからね。」



2人が乗る馬車を、私は涙で視界が霞み見送れなかった。
かーさまが私を抱き上げ、泣き止むまで背中をトントンしてくれる。

背中の手の温もりがまた心に染みて、暫く涙は止まらなかった。



綺麗でカッコよくて優しい、とっても素敵なとーさまとかーさま。

そんな2人の母親であるおばあさま達も、やっぱり優しくて素敵な人達でした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。 そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。 イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。 これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。 ※1章完結※ 追記 2020.09.30 2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

処理中です...