神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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盗賊さんに気に入られました

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コンコン

「かーさま。」

扉を開けて顔を覗かせると、ベッドから体を起こし、かーさまがこちらを見て涙を流した。

「アヤナ!!」

両手を広げて私を呼ぶかーさまに、私も泣きながら駆け寄り抱き付いた。

「しんぱいかけてごめんなさい!わたし、どこもいたくない。とってもげんきだよ!」

「良かった!良かった!」

私は手を伸ばして、かーさまの目から流れ続ける涙を拭う。

「かーさま、だいじょうぶ?どこかいたい?」

かーさまの涙を拭いながらかーさまの頬を手でスリスリしていると、かーさまが私の手を取り嬉しそうに微笑んだ。

「かーさまも大丈夫よ。アヤナが元気に笑っていてくれたら、かーさまもそれだけで元気になれるから。」

「かーさま、だいすき!!」

「ふふっ。かーさまもアヤナが大好きよ。」

2人で笑いながら抱き合っていると、ベッドの脇にいたとーさまが私とかーさまを纏めて抱き込んできた。

「とーさまも仲間に入れておくれ。2人とも愛しているよ。」

もちろん、とーさまも仲間に入れてあげるよ!

「とーさまも、だいすき!」

私はとーさまにも手を伸ばして、2人にギュ~って抱き付いた。

「アヤナ、良かったね。」

抱き合う3人を、リスターがニコニコしながら見守ってくれていた。


「さあ、そろそろかーさまを休ませてあげよう。アヤナも、大丈夫ならこっちで3人一緒に寝ようか。」

もう夜も遅いからねと、とーさまは私に寝るよう促すと、私を抱き上げようとする。
私はそのとーさまの手をギュッと掴んで見上げた。

「とーさま、とうぞくさんにあわせてください。まだ、このいえにいるんでしょ?」

「……何故?」

私がお願いすると、とーさまは今までの甘い雰囲気が一変して厳しい口調と顔つきになった。

うっ……!ま、負けない!とーさまが怖くなってるけど、私は負けないぞ!!

リスターもとーさまも、龍斗さんのことを話すと途端に怖くなっちゃうんだから!本当はとっても良い人なんだよ………多分ね!

「わたしが、やねからおちても、だいじょうぶだっていってた。なんでそんなことをしっていたのか、きいてみたいの。とーさまがあいにいくとき、いっしょにつれていってください。」

「叔父上、僕もアヤナと一緒に行って会いたいです。お願いします。」

リスターと一緒にとーさまをジッと見つめて返事を待つ。

とーさまは私とリスターを交互を見ると、小さく息を吐いて肩を竦めた。

「明日、朝食を食べたら会わせてあげるよ。ただし、私とダナン、カールも一緒だ。いいね?」

私はコクコクと勢いよく頷く。

「ありがとう、とーさま!リスターもありがとう!またあした、よろしくおねがいします!」

リスターに手を振ると、嬉々としてベッドに潜り込んでかーさまの隣に陣取った。








「おはようございます!」

「「「「「おはよう。」」」」」

元気に朝の挨拶をする私の前には、5人いる。

とーさま、リスター、ダナンさん、カールさん、そして、かーさま。

「……本当にフローラも行くのかい?」

「あら、勿論よ。私だけまだ会っていないのだから、是非会いたいわ。」

ニッコリ笑うかーさまに、とーさまはそれ以上何も言わず……言えず?龍斗さんのいる所へ向かった。





「ここだよ。」

開けられた部屋の真ん中に、手を後ろに縛られて椅子に座る龍斗さんの姿があった。

『よう、彩菜。やっぱり無事だったんだな。』

『龍斗さん!!大丈夫?』

ニッと笑う龍斗さんに駆け寄ろうとして、とーさまに阻止される。

「アヤナ、これ以上近づいてはだめだよ。」

『ははっ。まず最初に俺の心配かよ。俺に屋根から落とされた奴が言うセリフじゃねえなぁ。』

龍斗さんが私を見て、何が面白いのか声を出して笑った。

ーー龍斗さん、出来れば空気読んで下さい。
みんなが怖いですから。メッチャ睨んでますから。
あなた、みんなに睨まれてますよー!!

『俺は大丈夫だ。手を縛られただけで、暴力なんて振るわれてねぇから安心しろ。俺なんかの心配するなんて、やっぱり彩菜は面白い奴だな。ますます気に入ったぜ。』

龍斗さんは目を細めて私を見ると、とーさまに視線を移して不敵な笑みを浮かべた。

「団長さんよ。俺に聴きたい事が色々あるんだろ?いいぜ、答えてやるよ。全部答えてやる。」

あ、龍斗さんてばこの国の言葉も流暢に話せるんだ。出会ってからずっと日本語で話してたから分からなかったよ。

私がそんな事を考えながらジッと見ていたら、視線を感じたのか龍斗さんがニッと笑って私にウィンクをした。

その途端、周りの空気がピシッと凍る。
うわ~ん!みんなが怖いよ~!




ーーお願い。龍斗さん、空気読んで下さい……。
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