神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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秘密なんです

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「……う……ん。」

「アヤナ起きた?」

目が覚めると、私は自分のベッドの上だった。
目を擦りながら体を起こすと、ベッドの脇でリスターが座ってこっちを見ていた。

「わたし、ねちゃった……。いまなんじ?」

「お昼過ぎかな。お腹空いたでしょ?僕もまだ食べてないから一緒に食べよう?」

「待ってな。ここに運んであげるから。」

カールさんはソファーに座って待っていてくれたみたいで、立ち上がると素早く部屋から出て行った。

「せっかくきてくれたのに、ねちゃってごめんなさい。」

ペコリと頭を下げると、リスターが真剣な顔をして私を見つめる。

「昨日の夜はどうして眠れなかったの?」

「ちょっと、いろいろかんがえちゃって……。」

「何を?」

「う……、いや、あの、それは……。」

ヤバイ!!
なんて答えていいか分からないから、しどろもどろになってしまう!

「もしかして、盗賊のこと、知っているの?」

「……え!?」

なんでリスターこそ知ってるの!?

「昨日、カールさんを問い詰めて聞いたんだよ。なんだか様子が変だったからね。ほら、帰りに馬車までついて来てもらったでしょ?その時に少しだけ。」

「そ、そうなんだ。わたしは、たまたまきいちゃったの……。そしたらなんだかねれなくなって……。」

「アヤナ」

リスターが私の手を握って顔を覗き込んだ。

「ここには今、僕しかいない。アヤナが盗賊のことを知ってるのも、僕だけだよね?だから、僕にはなんでも言っていいんだよ。」

私が手を握り返すと、リスターは優しく微笑んでくれるから、私はポロポロと溢れる涙を止められなかった。

「……はなしをきいちゃってね、ほんとはこわかったの。なんでわたしのことしらべてるんだろうって。」

「うん。」

「とうぞくさんに、つかまっちゃったらどうしよう。そうかんがえてたら、こわくてねれなくなっちゃって……。」

「うん。」

「でもね、わたしがこわがってたら、みんなしんぱいするから……だから、だからね、こわくてもいえなかったの。」

「アヤナ」

泣き続ける私を、リスターがそっと抱き締めてくれる。

「大丈夫だよ。みんな、アヤナを守るから。僕も、ずっと側にいるから。」

「……ずっと?」

ずっとって、どういうこと?

「今日から、僕もアヤナの家に泊まるんだ。カールさんにお願いして、騎士団に行けなくなった代わりにカールさんとダナンさんにここで稽古をつけてもら事になったんだよ。」

私がキョトンとしていると、リスターは涙で濡れた私の頬を拭ってくれた。

「泊まるのは叔父上に頼み込んだら、割とあっさり了承してくれた。まあ、そこら辺の盗賊よりも剣の腕は立つからね。1人でも多くアヤナの側に護衛を付けておきたいんじゃないかな。」

「……うれしい。リスターがそばにいてくれるだけで、あんしんするから。……ずっとそばにいてくれるの?」

嬉しくて、またちょっと涙目になりながらリスターを見ると、リスターは顔を真っ赤にしてコクコクと頷いてくれた。

「か、可愛い!!……じゃなくて、勿論だよ!!寝る時以外は、ずっと側にいる。僕も全力でアヤナを守るからね。」

「はい!よろしくおねがいします!!」

私はベッドの上に正座してペコリと頭を下げる。
リスターが、私の頭をヨシヨシと優しく撫でてくれた。

「アヤナが盗賊のことを知っているのは、僕達だけの秘密ってことにしておく?」

「うん!ふたりだけのひみつね!」

私とリスターはクスクスと笑い合う。

丁度そこへ、カールさんがお昼を持って部屋へ戻って来た。

「あれ?なんだかとっても楽しそうだね。」

「わーい、おひるだー!カールさん、ありがとう!」

安心したら、とってもお腹が空いちゃったよ!!



この後、リスターと2人で少し遅めのお昼ご飯を、ペロリと美味しく頂いちゃいました。
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