神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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みんなに愛されてました

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馬車に戻ると、ダナンさんとカールさんが待っていた。
とーさまに頼まれてずっと護衛をしていてくれたんだって。

「ダナンさん、カールさん、ごめんなさい。」

私が近づいて謝ると、2人は笑って頭をガシガシと撫でてくれた。

「ごめんなさいより、ありがとうがいいな。」

ダナンさんが、よいしょと私を抱き上げる。
 
「……ありがとう。」

私がダナンさんの首にしがみついて言うと、2人は私の背中をトントンとしてくれた。その手がとても温かくて、私はまた少し泣いてしまった。


馬車の中ではリスターが私と繋いだ手を家に着くまで離してくれなかった。
チラッと見ると眩しいくらいの微笑みを返してくれるから、ドキドキが止まらない。私の心臓がさっきからおかしくて困る。

家に着くと、門の前でとーさまとかーさまが待ってくれたいた。
馬車を降りた途端、2人に痛いくらい強く抱き締められる。
とーさまとかーさまは私を抱き締めながら号泣していた。その姿に、2人がどれだけ私の事を心配していたのかが伝わってきて私も涙が溢れる。

その夜は、3人でギュウギュウとくっつきながら寝た。狭くてちょっぴり苦しいけど、とっても嬉しい。

かーさまが寝ながら私に話しを聞かせてくれた。
かーさまは小さい頃体が弱かったらしく、その影響か子供が出来にくい事。
そして、子供を産むのを泣く泣く諦めた時に私が現れた事。

「アヤナは私に母になる喜びを与えてくれた。かーさまと可愛い声で呼ばれる幸せを与えてくれたのよ。」

かーさまの手が私の頬を慈しむように優しく撫でる。

「アヤナ、愛してるわ。私の大切な可愛い娘。」

「私も愛してるよ。アヤナは私達の大切な娘だ。私の生涯をかけてフローラとアヤナを守るから。」

とーさまの手が私の髪を慈しむように梳いてくれる。

私はとーさまとかーさまの温もりを全身で感じながら眠りについた。



次の日、ラントおじさま一家が朝早くからやって来た。
エリーゼおばさまは会うなり私を抱き締め涙を流し、ラントおじさまとフレイにーさまは私の頭を代わる代わる撫でてくれた。その後ろではリスターがニコニコ笑っている。

私は嬉しくてエリーゼおばさまにしがみついて泣いてしまった。
昨日からいっぱい泣いている私の顔は今、とってもブサイクだと思う。

それでもみんなは口々に「大好きだよ。」って言ってくれて、涙が止まらない。

わたしは、みんなに愛されてました。


少し落ち着いた私に、リスターが手を差し出す。いつもなら手を繋ぐ為にすぐリスターの手を取るのに、私は心臓がドキドキしてなかなか動けなかった。

リスターがキョトンとして私を見ているけど、その顔もまた私の心臓をうるさくさせる。

「どうしたの?」

私が赤くなってモジモジしていると、リスターがコテンと首を傾げて聞いてきた。
リスターの首コテンとか可愛過ぎる。どうしよう。私、昨日から心臓がおかしい。ドキドキが止まらないよ。

「あ、あのね、わたし、きのうから、しんぞうがおかしいの。リスターみると、どきどきがとまらないの。どうしよう?」

私は涙目になってリスターを見る。私の心臓どうしちゃったの?病気!?

リスターは固まっていたけど、すぐに顔を真っ赤にさせると、蕩けるような笑顔で私を見つめてきた。

「大丈夫だよ。僕も同じだから。僕もね、アヤナといるとドキドキが止まらないんだよ。一緒だね?」

リスターはそう言いながら私の手を取り、ギュッと握る。

「うん!いっしょ!!」

良かった!私だけじゃないんだね!
私もドキドキしながらリスターの手を握り返した。

「うん、嬉しい。アヤナ大好き。アヤナも僕のこと好き?」

リスターがまた首をコテンと傾げて聞いてくる。
それはヤバい!リスター、それはヤバいですよ!!ドキドキし過ぎて倒れちゃうから!!

「……すき。」

「うん?ごめんね、よく聞こえなかったからもう一回言って?」

リスターが私に顔を近づけて耳を傾けてくる。ううっ……なんかリスター、楽しんでない?

「……すき。だいすき。リスター、だいすき!」

顔を赤くして叫ぶ私の頬に、リスターがチュッとキスをした。



「大好きだよ、アヤナ。僕の可愛いお姫様。」

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