神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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王妃様に招かれました

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「どう?アヤナ、美味しいかしら?」

「はい。おうひさま。とっても、おいしいです。」

お城に招待されてから2週間後、私は再びお城に招かれております。

今日は王妃様にお茶へ招待され、かーさまと、リスターのかーさま……エリーゼおばさまと一緒に来ている。

エリーゼおばさまは、ラントおじさまが私に会いに家へ2回目に来た時に一緒に来てくれた。

「ずっと娘が欲しかったのよ。」

そう言って、出会ったその日からとても私を可愛がってくれる。

ラントおじさまが来ない日でも、リスターと一緒に来たり、ひとりで来たり。
3日に1回は会いに来てくれている。

私の言葉の先生が増えたおかげで、私はかなり言葉を覚えた。沢山話しをするからお喋りも上達したはず!


王妃様とエリーゼおばさまは学生時代のお友達で、エリーゼおばさまとかーさまは幼なじみなんだって。かーさまの方がエリーゼおばさまより3才くらい年下なんだけど、家がご近所でよくエリーゼおばさまに遊んでもらっていたらしい。

そんな訳で、3人はとっても仲良しだ。

「今日のアヤナのドレスは私が選んだものなのよ。女の子のドレスは可愛くて選ぶのが楽しいわ。」

「ふふっ。お義姉様はアヤナにドレスを買い過ぎです。もうクローゼットがいっぱいになってしまったくらいですもの。」

「あら、いいわね。私もアヤナのドレスを選びたいわ。お城に仕立て屋を呼んでドレスを皆で作るのも楽しそうね。」

3人の会話を聞きながら、私は紅茶と一緒に出されたクッキーを黙々と食べていた。もぐもぐ。このクッキー美味しいな。さすがお城のクッキーだ。

「アヤナ、先日はありがとう。陛下のあんなに楽しそうな姿を見たのは久しぶりだったわ。」

王妃様がクッキーを食べ続ける私を見て微笑む。

いやいや、私は何もしてませんけど。ちょこっと話しただけですよ?

「陛下は私といても笑ってくださらないから……。」

眉尻を下げて話す王妃様は寂しそうだった。
私は口の中に入れたクッキーを食べ終わると、ひとりで座っていた椅子から降りて王妃様に近付く。

「どうしたの?」

「だっこしてください!」

両手を広げて抱っこアピールする私に王妃様は少し驚いていたけれど、すぐに目を細めて優しく抱き上げてくれた。

私は王妃様の膝の上に抱っこされると、王妃様にしがみ付き背中をトントンと叩いた。

「アヤナ?」

「おうひさま、かなしい。わたしかなしいとき、とーさまとかーさま、ギュッてして、せなか、トントンしてくれます。わたし、うれしい。」

「……そうね。私もアヤナにしてもらって嬉しいわ。どうもありがとう。」

王妃様はお返しというように、私の背中をトントンとしてくれる。

「おうひさま、おうさまと、いっぱいいっぱい、おはなしする。いつも、おうさまとおはなしする、してますか?」

「……そうね、最近はお話ししてないわ。陛下はいつも難しい顔をしていらっしゃるから……私はもう、陛下と話すことを諦めてしまったの。」

「おはなしする、むずかしい?だったらギュッとするでもいいよ……ですよ?」

「……アヤナ、話すより、ギュッとする方が難しいと思うわよ。」

エリーゼおばさまのツッコミに私は首を傾げる。なんで?

「ふふっ。アヤナはいつも私とロイスに抱き付きながらお話ししてくれるものね?」

「とーさまとかーさま、いつもギュッてしてチュッてしてるよね?ふつう、ちがう?」

「……フローラ、子供の前では少し控えなさい。」

「あら、お義姉様。子供の前でこそ仲良くですわ。夫婦円満が家庭円満に繋がるのですから。」

ニコニコと笑顔のかーさまに、苦笑する王妃様とエリーゼおばさま。

とーさまとかーさまがラブラブなのは、良い事だと思います!……って、今は王様と王妃様のことですよね?そうでした!全然お話ししないってのはよろしくないですよ!

「おうひさま、おうさまと、おはなし、むずかしい?わたしもいっしょ、する……します?」

私は王妃様の膝の上から、心配になって王妃様を覗き込むように見上げた。

王妃様は眉尻を下げて微笑むと、私の頬を両手で優しく包んで、額にチュッとキスを落とす。

「ありがとう、アヤナ。私、もう一度頑張ってみるわ。」

そう言った王妃様の目がまだ少し不安そうだったから、私はまた王妃様にしがみ付いて背中をトントンしてあげた。



王妃様、頑張って!!
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