神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
上 下
4 / 73

優しい従兄弟ができました

しおりを挟む
「明日、兄上がこちらに来るそうだ。」

ある日の夕方、いつも通りにとーさまをお出迎えして抱っこをされていると、とーさまが顔を顰めて言った。

「あら、お義兄様が?また急ですわね。」

「何処からかアヤナの事がバレたんだろう。兄上には会わせたくなかったのに。」

「とーさまの、にーさま?おうち、くる?あやな、だめ?きらい?」

私を会わせたくないなんて、もしかしてとーさまの子どもになったことを反対されているのかな?怒ってるの?

「あぁ、違うんだよ!!アヤナはダメなんかじゃない!最高に可愛いよ!!ダメなのは兄上の方だから!」

「とーさまの、にーさま、だめ?」

はて?どういう意味だろう?
私が首をこてんと傾げると、とーさまは私の頬に自分の頬を押し付けてスリスリしてきた。

「アヤナ!それ可愛いから兄上の前で絶対にしちゃダメだよ!!」

「ふふっ。お義兄様は可愛いものがお好きですものね。私も少し心配だわ。」

「とーさま。いたい……。」

とーさまのスリスリが止まらない。
とーさまのにーさまってどんな人なんだろう。







「はじめまして。あやな、と、もうします。よろしく、おねがいします。」

私は今、昨日かーさまに教えてもらった挨拶の言葉とカーテシーを目の前にいるとーさまのにーさまに披露している。

うん。噛まずに言えたし間違えなかったはず。顔を上げてとーさまのにーさまを見ると、何故か固まっていた。

とーさまのにーさまは、とーさまより背が高いけど、ほっそりしているイケメンさんだ。
イケメンだけど顔が怖い。とーさまはいつもニコニコして優しい感じだけど、とーさまのにーさまは無表情で何を考えているのかサッパリ分からなくて怖い。

やばい、目が合っちゃった。とりあえず笑っとこ。

にこっ。私が笑うと、とーさまのにーさまの顔がますます怖くなってしまった。

「おいロイス。これはどういう事だ?なんでこんな可愛い生き物がここにいる。可愛過ぎるだろう。今、私に笑ったよな?抱っこか?私に抱っこして欲しいのか?そうなんだな。よし、ほーら、こちらにおいで。抱っこしてあげよう。」

とーさまのにーさまは無表情のまま両手を広げて私に近づいてくる。私は怖くなってかーさまの後ろに慌てて隠れた。

「兄上、アヤナを怖がらせないで下さい。」

とーさまがガシッと肩を掴んで私に近づくのを止めてくれた。

「叔父上ごめんなさい。……父上、あまり暴走し過ぎると母上に報告しますからね?」

とーさまのにーさまの後ろから声がする。緊張していて全然気づかなかった。誰だろう?
私がピョコッとかーさまの後ろから顔を出すと、目の前に金髪碧眼の美少年が立っていた。

とーさまの家系は美人さん揃いなのかな?みんなイケメンだし。でもかーさまも綺麗だしなぁ。あ、あれか?美人の周りには美形が集まるっていうやつなのかな?

私が美少年をじっと見ながらそんなことを考えていると、美少年は頬を赤くして私から目を逸らした。

「……本当に可愛い。」

ぼそっと呟かれた声は聞こえなかったけど、すぐにまた私を見て微笑んでくれた。

「はじめまして、僕はリスター。7歳だよ。よろしくね。」


こっちに来て初めて会った年の近い男の子だ!
差し出された手を、私は嬉しくて両手でギュッと握った。

「リスター!わたし、あやな。よろしく!」

私が笑顔で、握ったリスターの手をブンブンと振っていると、リスターの顔が見る見るうちに赤くなる。

「……リスターがアヤナに落ちたぞ。」

「落ちましたね。」

「兄上、リスターをアヤナの婿に下さい。そうしたらアヤナはずっとここに居られますから。」

「からかわないで下さい!!」

温かい目で見守りながら大人達が話しているのを、リスターが顔を真っ赤にしたまま止めている。

「リスター、おこってる?アヤナ、わるい?」

私、何か悪かったかな?心配でリスターを覗き込むと、リスターは「うっ」と呻いて後ずさり、更に顔を真っ赤にさせた。

「アヤナ、リスターにお庭を案内してあげて頂戴。綺麗に咲いているお花を見せてあげて?」

「はい、かーさま。リスター、いこ!」

「う、うん。」

私が握ったままだったリスターの手を引っ張って歩き出すと、リスターは素直について来てくれた。良かった。怒ってるんじゃないんだね!



「リスター、これ、アマリネ。きれい。」

「うん、綺麗だね。」

この前かーさまに教えてもらったお花を見ながらリスターと手を繋いで歩いていた。
柔らかく笑いかけてくれるリスターはどこから見てもイケメンで、ちょっとドキドキする。

「アヤナは花が好き?」

「すき!リスターも、すき!リスター、やさしい、かっこいい。あやな、どきどき、する。」

私がニコニコ笑って言うと、リスターがヘニャヘニャと座り込んでしまった。

「リスター、どしたの?いたい?あし?いたい?」

私はびっくりしてリスターの横にペタンと座ってリスターを見た。
リスターは顔を伏せていて私を見てくれないが耳まで真っ赤になっているのが分かる。

「どうしよう。アヤナが可愛過ぎる。」

「リスター?」

私が名前を呼ぶと、リスターは今度はちゃんと私を見てくれた。
そして少しハニカミながら私の手を再び握り、その手にチュッとキスをする。

「ありがとう。僕もアヤナが好きだよ。
これから沢山頑張って、アヤナを守れるような強い男になるからね。」

「リスター、つよい、がんばる?」

「うん。叔父上みたいに強くなってみせるよ。」

「リスター、がんばる。あやなも、がんばる!」

私も頑張って言葉をマスターするぞ!
私は意気込んでリスターの手を力強く握り返した。

リスターは優しく私の頭を撫でると、ウットリするくらい綺麗な顔で微笑みながら言った。

「うん。一緒に頑張ろう。これからよろしくね。僕の可愛いお姫様。」





今日、私に優しくてかっこいい従兄弟ができました。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。 そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。 イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。 これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。 ※1章完結※ 追記 2020.09.30 2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...