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第二部
3章-4
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カテリアーナはブランシュと向かい合って座る。下を向いてなかなか顔をあげないブランシュに声をかけることにした。おそらく、先ほどパールに言われたことを気にしているのだろう。
現にパールは少し離れた場所で睨みを利かせている。
「ブランシュ様の年齢をお聞きしてもよろしいでしょうか? わたくしと同じくらいだと思うのですけれど……」
「……妖精は見た目どおりの年齢とは限りません」
「あら? ではいくつなの?」
もしも、ブランシュが年上であればカテリアーナは謝罪しようと思っていた。ところが次にブランシュの口から出たのは意外な言葉だった。
「十六歳……ですわ。昨年社交界にデビューしましたの」
「まあ! やはり同じ年なのね。エルファーレンの成人年齢は十五歳なのかしら?」
「そうですわ。人間の国では違いますの?」
「ラストリアの成人年齢は十六歳なの。わたくしは今年成人したのよ」
カテリアーナは侍女がブランシュの噂をしていたことを思い出す。彼女はフィンラスの婚約者候補最有力だったと……。
「エインズワース公爵家は魔石の取れ高が最も高い領地を保有しているのですってね」
「回りくどい仰り方はなさならくても結構ですわ。わたくしがフィンラス陛下の婚約者候補であったことは気になさらなくてもよろしいのよ」
ブランシュは公爵令嬢だけあって鋭い。可愛らしいだけの令嬢ではなく、頭の回転が速いのだ。カテリアーナの意図するところは察していた。
「気を悪くしたのであればごめんなさい」
「カテリアーナ様は王女であらせられるのに社交慣れしておりませんのね。普通王族は臣下に謝罪はしませんわ」
「あら。自分が悪いことをした時は謝罪するものよ。王族でも貴族でも平民でもそれは変わらないと思うわ」
ブランシュは呆気にとられる。先ほど父であるエインズワース公爵とともに謁見した時にはカテリアーナは貼り付けたような笑みしか浮かべていなかった。まるで人形のようだとブランシュは思ったのだ。
ところが今のカテリアーナは先ほどとはまるで別人だ。ころころとよく変わる表情。王女の矜持など関係なくブランシュに接してくれる。
「カテリアーナ様は変わった方ですわね」
「よく言われるわ」
カテリアーナとブランシュは顔を合わせると自然と微笑み合う。
「ねえ、ブランシュ様。わたくしとお友達になってくれない?」
「カテリアーナ様がそこまで仰るのであれば、お友達になってさしあげてもよろしくてよ」
ブランシュは素直な物言いができない。ツンデレなのだ。カテリアーナはそんなところも可愛いと思った。
ふいにブランシュは口を尖らせると、ボソッと呟く。
「わたくしは……フィンラス様のことは何とも思っていませんわ。別に……その……好きな方がいますの」
「え! 誰なの?」
カテリアーナはテーブルに身を乗り出す。ブランシュが好きな相手に興味があったからだ。ブランシュは顔を真っ赤にして下を向き、消え入りそうな声で白状した。
「……カルス様……です」
カルスは独身だ。決まった婚約者もまだいない。後でそれとなく好きな人がいるのか聞いてみようとカテリアーナは決心する。友達になったブランシュとカルスの間を取り持つことができたら嬉しい。
それはカテリアーナはブランシュと歓談している時に起こった。
風を切る音がしたかと思うと、カテリアーナたちが座っているテーブルに何かが突き刺さったのだ。
現にパールは少し離れた場所で睨みを利かせている。
「ブランシュ様の年齢をお聞きしてもよろしいでしょうか? わたくしと同じくらいだと思うのですけれど……」
「……妖精は見た目どおりの年齢とは限りません」
「あら? ではいくつなの?」
もしも、ブランシュが年上であればカテリアーナは謝罪しようと思っていた。ところが次にブランシュの口から出たのは意外な言葉だった。
「十六歳……ですわ。昨年社交界にデビューしましたの」
「まあ! やはり同じ年なのね。エルファーレンの成人年齢は十五歳なのかしら?」
「そうですわ。人間の国では違いますの?」
「ラストリアの成人年齢は十六歳なの。わたくしは今年成人したのよ」
カテリアーナは侍女がブランシュの噂をしていたことを思い出す。彼女はフィンラスの婚約者候補最有力だったと……。
「エインズワース公爵家は魔石の取れ高が最も高い領地を保有しているのですってね」
「回りくどい仰り方はなさならくても結構ですわ。わたくしがフィンラス陛下の婚約者候補であったことは気になさらなくてもよろしいのよ」
ブランシュは公爵令嬢だけあって鋭い。可愛らしいだけの令嬢ではなく、頭の回転が速いのだ。カテリアーナの意図するところは察していた。
「気を悪くしたのであればごめんなさい」
「カテリアーナ様は王女であらせられるのに社交慣れしておりませんのね。普通王族は臣下に謝罪はしませんわ」
「あら。自分が悪いことをした時は謝罪するものよ。王族でも貴族でも平民でもそれは変わらないと思うわ」
ブランシュは呆気にとられる。先ほど父であるエインズワース公爵とともに謁見した時にはカテリアーナは貼り付けたような笑みしか浮かべていなかった。まるで人形のようだとブランシュは思ったのだ。
ところが今のカテリアーナは先ほどとはまるで別人だ。ころころとよく変わる表情。王女の矜持など関係なくブランシュに接してくれる。
「カテリアーナ様は変わった方ですわね」
「よく言われるわ」
カテリアーナとブランシュは顔を合わせると自然と微笑み合う。
「ねえ、ブランシュ様。わたくしとお友達になってくれない?」
「カテリアーナ様がそこまで仰るのであれば、お友達になってさしあげてもよろしくてよ」
ブランシュは素直な物言いができない。ツンデレなのだ。カテリアーナはそんなところも可愛いと思った。
ふいにブランシュは口を尖らせると、ボソッと呟く。
「わたくしは……フィンラス様のことは何とも思っていませんわ。別に……その……好きな方がいますの」
「え! 誰なの?」
カテリアーナはテーブルに身を乗り出す。ブランシュが好きな相手に興味があったからだ。ブランシュは顔を真っ赤にして下を向き、消え入りそうな声で白状した。
「……カルス様……です」
カルスは独身だ。決まった婚約者もまだいない。後でそれとなく好きな人がいるのか聞いてみようとカテリアーナは決心する。友達になったブランシュとカルスの間を取り持つことができたら嬉しい。
それはカテリアーナはブランシュと歓談している時に起こった。
風を切る音がしたかと思うと、カテリアーナたちが座っているテーブルに何かが突き刺さったのだ。
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