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第二部
2章-1
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月日が経つのは早いもので、カテリアーナがエルファーレン王国に来てから二ヶ月が経った。
「カテリアーナ、明日の予定を空けさせた。約束どおり遠乗りに行こう」
朝食の席でカテリアーナはフィンラスに遠乗りに誘われる。以前、遠乗りに行こうとフィンラスが言っていたことを思い出す。
「まあ、ぜひ! どこを案内していただけるのかしら? 楽しみです」
その夜、カテリアーナはうきうきとして落ち着かないので、エルシーをもふっていた。
エルシーは金茶色のきれいな毛並みの猫姿で、毎日カテリアーナを癒している。カテリアーナがもふもふ好きなので、城に勤める者は全て耳や尻尾などもふもふの一部の出すようにフィンラスから命令が下ったのだ。
二日目からはエルシーも耳と尻尾を出すようになったのだ。最初はもじもじとしていたエルシーも今では堂々と妖精猫の姿になり、カテリアーナの癒しとなっている。
「エルファーレンでの遠乗りは馬ではなく、ドラゴンなのですってね。上手く乗れるかしら?」
「ドラゴンは慣らしてありますので、大丈夫ですわ。それにカテリアーナ様を乗せるドラゴンには陛下が同乗なさいます。陛下はドラゴンを操るのがお上手なので、心配なさることはありません」
フィンラスと同乗と聞いて、カテリアーナの胸が高鳴る。
「どうしよう? エルシー、わたくし眠れないわ」
「抱きしめないでくださいまし。カテリアーナ様!」
強くぎゅうとカテリアーナに抱きしめられたエルシーは悲鳴をあげる。
翌日、エルシーに乗馬服のような動きやすい服を着せられたカテリアーナは、ドラゴンがいる竜舎に案内される。
厩舎よりもかなり大きい竜舎の前には、ドラゴンが二頭いた。緑の鱗に覆われた体躯に大きな翼。頭部には鹿のような角が二本生えていた。手足があるが、手は退化しているようで短い。尻尾が長く、体には馬のような手綱が着けられている。
「これがドラゴン? きれいね」
「ドラゴンがきれいだと褒めるのはカテリアーナくらいだろうな」
カテリアーナより少し遅れて竜舎に来たフィンラスに声をかけられる。カテリアーナとお揃いの服を着て、手には厚い皮の手袋は嵌めていた。
「フィンラス様、おはようございます」
「おはよう、カテリアーナ」
今日、フィンラスに会うのが初めてのカテリアーナは朝の挨拶をする。朝食は遠乗りの支度があったため、自室で軽くすませたのだ。
「ドラゴンの支度は整っているようだな。では行こうか? カテリアーナ」
「はい」
背の高いドラゴンに乗るには、階段がついた台を上る必要がある。フィンラスにエスコートをされながら、カテリアーナは台へと上がった。
「高いのですね」
「怖いか? ああ、カテリアーナは木登りが得意だから高いところは平気か」
「最近は木登りしておりません!」
フィンラスがからかうので、カテリアーナはむくれる。
「ははは。冗談だ。俺が先に騎乗するから、カテリアーナは少しここで待っていてくれ」
そう言うと、フィンラスは身軽にドラゴンへ飛び乗る。
「さあ、ゆっくりと俺に手を伸ばせ」
言われたとおり、カテリアーナはフィンラスへ手を伸ばす。フィンラスの手を取った瞬間、浮遊感に襲われたかと思うと、あっという間にドラゴンの背に乗せられていた。
「カテリアーナ、明日の予定を空けさせた。約束どおり遠乗りに行こう」
朝食の席でカテリアーナはフィンラスに遠乗りに誘われる。以前、遠乗りに行こうとフィンラスが言っていたことを思い出す。
「まあ、ぜひ! どこを案内していただけるのかしら? 楽しみです」
その夜、カテリアーナはうきうきとして落ち着かないので、エルシーをもふっていた。
エルシーは金茶色のきれいな毛並みの猫姿で、毎日カテリアーナを癒している。カテリアーナがもふもふ好きなので、城に勤める者は全て耳や尻尾などもふもふの一部の出すようにフィンラスから命令が下ったのだ。
二日目からはエルシーも耳と尻尾を出すようになったのだ。最初はもじもじとしていたエルシーも今では堂々と妖精猫の姿になり、カテリアーナの癒しとなっている。
「エルファーレンでの遠乗りは馬ではなく、ドラゴンなのですってね。上手く乗れるかしら?」
「ドラゴンは慣らしてありますので、大丈夫ですわ。それにカテリアーナ様を乗せるドラゴンには陛下が同乗なさいます。陛下はドラゴンを操るのがお上手なので、心配なさることはありません」
フィンラスと同乗と聞いて、カテリアーナの胸が高鳴る。
「どうしよう? エルシー、わたくし眠れないわ」
「抱きしめないでくださいまし。カテリアーナ様!」
強くぎゅうとカテリアーナに抱きしめられたエルシーは悲鳴をあげる。
翌日、エルシーに乗馬服のような動きやすい服を着せられたカテリアーナは、ドラゴンがいる竜舎に案内される。
厩舎よりもかなり大きい竜舎の前には、ドラゴンが二頭いた。緑の鱗に覆われた体躯に大きな翼。頭部には鹿のような角が二本生えていた。手足があるが、手は退化しているようで短い。尻尾が長く、体には馬のような手綱が着けられている。
「これがドラゴン? きれいね」
「ドラゴンがきれいだと褒めるのはカテリアーナくらいだろうな」
カテリアーナより少し遅れて竜舎に来たフィンラスに声をかけられる。カテリアーナとお揃いの服を着て、手には厚い皮の手袋は嵌めていた。
「フィンラス様、おはようございます」
「おはよう、カテリアーナ」
今日、フィンラスに会うのが初めてのカテリアーナは朝の挨拶をする。朝食は遠乗りの支度があったため、自室で軽くすませたのだ。
「ドラゴンの支度は整っているようだな。では行こうか? カテリアーナ」
「はい」
背の高いドラゴンに乗るには、階段がついた台を上る必要がある。フィンラスにエスコートをされながら、カテリアーナは台へと上がった。
「高いのですね」
「怖いか? ああ、カテリアーナは木登りが得意だから高いところは平気か」
「最近は木登りしておりません!」
フィンラスがからかうので、カテリアーナはむくれる。
「ははは。冗談だ。俺が先に騎乗するから、カテリアーナは少しここで待っていてくれ」
そう言うと、フィンラスは身軽にドラゴンへ飛び乗る。
「さあ、ゆっくりと俺に手を伸ばせ」
言われたとおり、カテリアーナはフィンラスへ手を伸ばす。フィンラスの手を取った瞬間、浮遊感に襲われたかと思うと、あっという間にドラゴンの背に乗せられていた。
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