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3 町の中でもトラブルは起きる
トラブル体質は誰なんだ?3
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「ジュ、ジュン。お前落ち着け、そのままいくと殺しちまうぞっ」
「あい、あいつらだよ。あの二人」
俺に締め上げられながら、男は受付の二人を指差した。
「だってアルキナ。こいつ脅すって、おい。あんたらなんでそんな事をさせようとした。嘘はつくなよ、今言い逃れして後で嘘だと分ったら、俺はあんたらをどうするか分らないよ」
男を引きずったまま受付に向かい、怯えた顔の二人を脅す。
美人の類いに入るんだろう。それなりにスタイルもよく派手な顔立ちの二人は、俺を見ながら震えている。
「ち、違うの。私達はただアルキナさんに優しくされていい気になってるみたいだから」
「そうなの。ジェシーも図々しいけど、その子はすっごいいい気になってて」
「いい気になる? それはあんたらだろ」
何が言いたいんだ? キョーナを脅そうとしてたくせに。いい気になってる? なんだそれ。
俺の理解が悪いのか、こいつらの説明が下手なのか。
「だってそんなガリガリで、碌な装備もつけてない低ランクの貧乏魔法使いのくせにアルキナさんが将来有望だなんて頭撫でてるんだもの。私達が悪いんじゃないわ、身の程知らずのその子が、きゃぁぁ」
受付の一人の話に、俺は男を床に突き飛ばしカウンターの上に飛び乗った。
「ジュン落ち着いて、アルキナ、ジュンを止めて。早く」
「ジュン落ち着け、それじゃお前が悪人だろ。おい」
「いい気になるってあんたらじゃないの。いい気になるってどの口が言えるんだ。ん?」
カウンターの中に飛び降り、二人を睨み付けるとガタガタと震え出す。
ギルドの受付なんて、冒険者の情報を管理する立場の人間が個人の感情で脅そうとするなんて。
「だって、貧乏低ランク」
震えながらも一人がなおも頭の悪い事を言い続ける。
受付ってランク分らないんだっけ? キョーナが低ランクと言われるなら俺達以外の冒険者は皆超低ランクになるんじゃないのか?
「低ランク? この子Cランクだよ。それで低ランクって、ここのギルドはそういう認識なんだねえ、知らなかったぁ」
ジェシーが面白そうに口を挟んだ途端、ギルドの中がざわついた。Cランクは冒険者の中では中ランクだけど、王都なら兎も角この町のギルドなら上位扱いだろう。
「し、Cランク? この子供が?」
「魔法の能力に大人も子供もねえだろ。ジュン、いいからこっち戻って来い。それ以上やったらお前も処罰対象になるぞ。いいのか」
「ちっ」
トンッと飛び上がり、カウンターの上を飛び越してキョーナの元に戻る。
「ジュンッ」
「ん?」
「怒っちゃ駄目だってば、ジュンが処罰されたら。あたし」
ぎゅうぎゅうとしがみつきながら、キョーナは抗議の声を上げる。
「お前、普段の温厚さはどうしたってぐれえのイカレ具合だな」
「普段も何も、今日が初対面だと思いますが」
部屋に入ってきたグスマンさんのニヤニヤ顔に、俺は不機嫌を隠さず噛みついた。
「おいおい、機嫌悪いな」
「自分の部下の悪事を前にそうやって笑っていられるのは、これがギルドの当り前だという事ですか。嘆かわしい話だな、アルキナ」
ニヤニヤ笑いを止めないグスマンさんに苛つきながら、カウンターの中の二人を睨むと小さな悲鳴を上げながら二人がしゃがみ込んだ。
「そう怒るなよ。行き違いは誰にでもあるだろ」
「誰にでもある行き違いだから寛容の精神をというなら、俺はもうこのギルドを信用しませんよ」
キョーナがCランクの魔法使いだと知っていたら脅そうなんて考えなかったというなら、このギルドの程度も知れるというものだ。
キョーナに興味を持ったから声を掛けたというなら、まあ情状酌量の余地もあるかと思っていたけど脅すように指示されてって事なら話は別だ。
「少なくともその二人はこの子を低ランクの冒険者だと思っていて、脅せと依頼したわけですよね。見るからに抵抗出来なそうな小さな女の子を。こんな年上で体格の良い男に。借金を帳消しにする程の脅しをさせようとした相手を、ギルドマスターであるあんたは、良くある行き違いだと言うんですね」
「そうは言ってねえだろ」
「そうとしか聞こえませんでしたよ」
スキル、上級威嚇と上級威圧をグスマンさんとカウンターの中の二人に向け同時発動しながら、ずいっとグスマンさんに近づいて行く。上級威嚇も上級威圧も低ランクの魔物の動きを封じ込められるし、力の無い人間なら失神する可能性もある。
「おい、ジュン。お、お前」
「このギルドの長であるあなたの考えでは、二人は別に悪事を働いていないという事ですよね。誰にでもある行き違いなんて言うんですから」
ギルド内で攻撃魔法の発動は御法度だけど、上位威嚇も上位威圧も攻撃魔法じゃないからギリギリセーフだろう。
「そ、そんな事は」
「じゃあ、どういう判断をするんですか」
「二人は彼の借金につけ込み彼女を脅す様に仕向けたという事であれば、立派な犯罪行為ですね。二人は解雇の上、領地の犯罪奴隷審議に掛ける事になります。そうですよね、ギルドマスター」
ハイドさんと共に部屋に入ってきたマイケルさんがはそう言うと、後ろ手に持っていた魔道具をカウンターの上に置いた。
「取りあえず状況をまとめましょう。彼らの状況を見ていた人は誰と誰ですか。前に出て下さい」
「ぜ、全員処罰の対象になるんですか」
「それはこれから状況を確認した上で判断します。別室にて個別に話を伺います」
俺と話しをしていた時のマイケルさんは営業スマイルだったのだろう、今のマイケルさんは雰囲気が全く違う。盗賊討伐受付担当というのは伊達じゃないんだなと分る。
「でも俺達は見ていただけで」
「それが罪なのかそうでないのかは、これから私達が判断致します。すみやかに前に出て。アルキナあの二人をさっきの部屋に連れて行って下さい。部屋にキムがいますから、彼に引き渡したら戻ってきて下さい」
「分った」
「あ、あたし達は悪くないっ」
「そうよ、悪いのはその子よっ」
自分の罪を認めようとしない二人に、俺はさらに威圧を発動する。
「ひっ」
威圧を向けられ、立ち上がり掛けていた二人はへなへなとしゃがみ込む。
「おい? どうした。そんなとこにしゃがみ込んで抵抗しても無駄だぞ」
「ち、違うのぉ。こ、腰が抜けて」
「力が入らない」
「往生際が悪すぎるぞ。ジェシー、一人頼む」
震えた声でアルキナに訴える二人に呆れたのか、アルキナはジェシーに一人を無理矢理押しつけもう一人を肩に担いで部屋を出て行った。
「え、あたし担いだりするのは流石に無理だよ。ええと、歩いてよ。あーん駄目だ。フーコちゃん呼んて゛来るしかないかな」
「彼女は向こうの部屋で取り調べの準備をしていますよ」
「そうなんですか。ええい、仕方ない。よいっしょ」
片腕を自分の肩に掛けると、よろよろしている体を無理矢理抱き起こしジェシーは部屋を出て行った。
俺が手伝えば良かったのか? いや、俺が近づいたら失神するだろうな。
「ふむ、ホウショウさん以外は見ていたということですね。ではあなた達は私と一緒に向こうに行きましょう。ギルマスはここに残ってジュンさんとお話を続けて下さい。ホウショウさん、お忙しいところ大変申し訳ありませんが、残りの大毒蛾の引き渡しについては」
「ああ、それ買取り止めますから」
こういうのは良くないのかもしれないけど、グスマンさんの態度に腹が立っていた俺は思わずそう言ってしまった。
「え、ジュンさん」
「先程のグスマンさんにも言いましたが、俺はこのギルドが信用出来ません。先程お話した買取りについてはまだ査定もして頂いていませんから、取りやめても問題ないですよね」
「確かに明細には載せていませんから、残りの大毒蛾もその他のものも取りやめでも差し支えありません。ただしあれに載っていた物で未精算の物のみご相談となりますが」
それは紫毒蜂の巣の中身の事だろう。それはまあ、仕方ないか。中身だけ返されても面倒なだけだ。
「でも、それではジュンさんの利益が減る事になりませんか。カプセル化していても劣化はしますし、そうなると他の町のギルドでは買い取り額が下がるでしょうし、状態によっては買い取れない可能性も出てきますが」
「信用出来ない相手に売るよりマシです。なんなら今焼却処分してもいいです」
「お前馬鹿か、あれだけの物を焼却処分だと」
「兄さん、いえ。ギルマスは黙っていて下さい。ジュンさんのお気持ちはわかりました。未精算品については今日受付した討伐金と共に後日精算致します。ホウショウさん、大変申し訳ありません。こういう事ですので、後でご相談としてもいいでしょうか」
「ええ、いいですよ。どうぞそちらを優先して下さい」
ホウショウさんと呼ばれたのは、さっき鑑定で出てきた中級薬師だった。
焦げ茶色の髪を後ろで一つにくくり、生成りの薬師のローブを纏っている。
「大変申し訳ありません。では、ちょっと失礼します」
マイケルさんは、ホウショウさんに軽く頭を下げ冒険者達を引き連れて部屋を出て行った。
「さあて、こっちはこっちで話を聞くか。ホウショウさんすまねえな」
「いいんですよ。でも、彼らが魔石を弁償するとして、その価値をこちらで査定は出来そうですか」
「それは、うーん。ジュンそれ見せてくれるか」
「え、ああ。はい」
真っ二つに割れた魔石。綺麗なブルーのそれをグスマンさんに手渡すと、彼は強面を歪めて唸り始めた。
これはちょっとまずい展開になってきたかなあ。
冷や汗をかきながら、ハイドさんに視線を移すと困った顔でグスマンさんの手元を見ていたのだった。
「あい、あいつらだよ。あの二人」
俺に締め上げられながら、男は受付の二人を指差した。
「だってアルキナ。こいつ脅すって、おい。あんたらなんでそんな事をさせようとした。嘘はつくなよ、今言い逃れして後で嘘だと分ったら、俺はあんたらをどうするか分らないよ」
男を引きずったまま受付に向かい、怯えた顔の二人を脅す。
美人の類いに入るんだろう。それなりにスタイルもよく派手な顔立ちの二人は、俺を見ながら震えている。
「ち、違うの。私達はただアルキナさんに優しくされていい気になってるみたいだから」
「そうなの。ジェシーも図々しいけど、その子はすっごいいい気になってて」
「いい気になる? それはあんたらだろ」
何が言いたいんだ? キョーナを脅そうとしてたくせに。いい気になってる? なんだそれ。
俺の理解が悪いのか、こいつらの説明が下手なのか。
「だってそんなガリガリで、碌な装備もつけてない低ランクの貧乏魔法使いのくせにアルキナさんが将来有望だなんて頭撫でてるんだもの。私達が悪いんじゃないわ、身の程知らずのその子が、きゃぁぁ」
受付の一人の話に、俺は男を床に突き飛ばしカウンターの上に飛び乗った。
「ジュン落ち着いて、アルキナ、ジュンを止めて。早く」
「ジュン落ち着け、それじゃお前が悪人だろ。おい」
「いい気になるってあんたらじゃないの。いい気になるってどの口が言えるんだ。ん?」
カウンターの中に飛び降り、二人を睨み付けるとガタガタと震え出す。
ギルドの受付なんて、冒険者の情報を管理する立場の人間が個人の感情で脅そうとするなんて。
「だって、貧乏低ランク」
震えながらも一人がなおも頭の悪い事を言い続ける。
受付ってランク分らないんだっけ? キョーナが低ランクと言われるなら俺達以外の冒険者は皆超低ランクになるんじゃないのか?
「低ランク? この子Cランクだよ。それで低ランクって、ここのギルドはそういう認識なんだねえ、知らなかったぁ」
ジェシーが面白そうに口を挟んだ途端、ギルドの中がざわついた。Cランクは冒険者の中では中ランクだけど、王都なら兎も角この町のギルドなら上位扱いだろう。
「し、Cランク? この子供が?」
「魔法の能力に大人も子供もねえだろ。ジュン、いいからこっち戻って来い。それ以上やったらお前も処罰対象になるぞ。いいのか」
「ちっ」
トンッと飛び上がり、カウンターの上を飛び越してキョーナの元に戻る。
「ジュンッ」
「ん?」
「怒っちゃ駄目だってば、ジュンが処罰されたら。あたし」
ぎゅうぎゅうとしがみつきながら、キョーナは抗議の声を上げる。
「お前、普段の温厚さはどうしたってぐれえのイカレ具合だな」
「普段も何も、今日が初対面だと思いますが」
部屋に入ってきたグスマンさんのニヤニヤ顔に、俺は不機嫌を隠さず噛みついた。
「おいおい、機嫌悪いな」
「自分の部下の悪事を前にそうやって笑っていられるのは、これがギルドの当り前だという事ですか。嘆かわしい話だな、アルキナ」
ニヤニヤ笑いを止めないグスマンさんに苛つきながら、カウンターの中の二人を睨むと小さな悲鳴を上げながら二人がしゃがみ込んだ。
「そう怒るなよ。行き違いは誰にでもあるだろ」
「誰にでもある行き違いだから寛容の精神をというなら、俺はもうこのギルドを信用しませんよ」
キョーナがCランクの魔法使いだと知っていたら脅そうなんて考えなかったというなら、このギルドの程度も知れるというものだ。
キョーナに興味を持ったから声を掛けたというなら、まあ情状酌量の余地もあるかと思っていたけど脅すように指示されてって事なら話は別だ。
「少なくともその二人はこの子を低ランクの冒険者だと思っていて、脅せと依頼したわけですよね。見るからに抵抗出来なそうな小さな女の子を。こんな年上で体格の良い男に。借金を帳消しにする程の脅しをさせようとした相手を、ギルドマスターであるあんたは、良くある行き違いだと言うんですね」
「そうは言ってねえだろ」
「そうとしか聞こえませんでしたよ」
スキル、上級威嚇と上級威圧をグスマンさんとカウンターの中の二人に向け同時発動しながら、ずいっとグスマンさんに近づいて行く。上級威嚇も上級威圧も低ランクの魔物の動きを封じ込められるし、力の無い人間なら失神する可能性もある。
「おい、ジュン。お、お前」
「このギルドの長であるあなたの考えでは、二人は別に悪事を働いていないという事ですよね。誰にでもある行き違いなんて言うんですから」
ギルド内で攻撃魔法の発動は御法度だけど、上位威嚇も上位威圧も攻撃魔法じゃないからギリギリセーフだろう。
「そ、そんな事は」
「じゃあ、どういう判断をするんですか」
「二人は彼の借金につけ込み彼女を脅す様に仕向けたという事であれば、立派な犯罪行為ですね。二人は解雇の上、領地の犯罪奴隷審議に掛ける事になります。そうですよね、ギルドマスター」
ハイドさんと共に部屋に入ってきたマイケルさんがはそう言うと、後ろ手に持っていた魔道具をカウンターの上に置いた。
「取りあえず状況をまとめましょう。彼らの状況を見ていた人は誰と誰ですか。前に出て下さい」
「ぜ、全員処罰の対象になるんですか」
「それはこれから状況を確認した上で判断します。別室にて個別に話を伺います」
俺と話しをしていた時のマイケルさんは営業スマイルだったのだろう、今のマイケルさんは雰囲気が全く違う。盗賊討伐受付担当というのは伊達じゃないんだなと分る。
「でも俺達は見ていただけで」
「それが罪なのかそうでないのかは、これから私達が判断致します。すみやかに前に出て。アルキナあの二人をさっきの部屋に連れて行って下さい。部屋にキムがいますから、彼に引き渡したら戻ってきて下さい」
「分った」
「あ、あたし達は悪くないっ」
「そうよ、悪いのはその子よっ」
自分の罪を認めようとしない二人に、俺はさらに威圧を発動する。
「ひっ」
威圧を向けられ、立ち上がり掛けていた二人はへなへなとしゃがみ込む。
「おい? どうした。そんなとこにしゃがみ込んで抵抗しても無駄だぞ」
「ち、違うのぉ。こ、腰が抜けて」
「力が入らない」
「往生際が悪すぎるぞ。ジェシー、一人頼む」
震えた声でアルキナに訴える二人に呆れたのか、アルキナはジェシーに一人を無理矢理押しつけもう一人を肩に担いで部屋を出て行った。
「え、あたし担いだりするのは流石に無理だよ。ええと、歩いてよ。あーん駄目だ。フーコちゃん呼んて゛来るしかないかな」
「彼女は向こうの部屋で取り調べの準備をしていますよ」
「そうなんですか。ええい、仕方ない。よいっしょ」
片腕を自分の肩に掛けると、よろよろしている体を無理矢理抱き起こしジェシーは部屋を出て行った。
俺が手伝えば良かったのか? いや、俺が近づいたら失神するだろうな。
「ふむ、ホウショウさん以外は見ていたということですね。ではあなた達は私と一緒に向こうに行きましょう。ギルマスはここに残ってジュンさんとお話を続けて下さい。ホウショウさん、お忙しいところ大変申し訳ありませんが、残りの大毒蛾の引き渡しについては」
「ああ、それ買取り止めますから」
こういうのは良くないのかもしれないけど、グスマンさんの態度に腹が立っていた俺は思わずそう言ってしまった。
「え、ジュンさん」
「先程のグスマンさんにも言いましたが、俺はこのギルドが信用出来ません。先程お話した買取りについてはまだ査定もして頂いていませんから、取りやめても問題ないですよね」
「確かに明細には載せていませんから、残りの大毒蛾もその他のものも取りやめでも差し支えありません。ただしあれに載っていた物で未精算の物のみご相談となりますが」
それは紫毒蜂の巣の中身の事だろう。それはまあ、仕方ないか。中身だけ返されても面倒なだけだ。
「でも、それではジュンさんの利益が減る事になりませんか。カプセル化していても劣化はしますし、そうなると他の町のギルドでは買い取り額が下がるでしょうし、状態によっては買い取れない可能性も出てきますが」
「信用出来ない相手に売るよりマシです。なんなら今焼却処分してもいいです」
「お前馬鹿か、あれだけの物を焼却処分だと」
「兄さん、いえ。ギルマスは黙っていて下さい。ジュンさんのお気持ちはわかりました。未精算品については今日受付した討伐金と共に後日精算致します。ホウショウさん、大変申し訳ありません。こういう事ですので、後でご相談としてもいいでしょうか」
「ええ、いいですよ。どうぞそちらを優先して下さい」
ホウショウさんと呼ばれたのは、さっき鑑定で出てきた中級薬師だった。
焦げ茶色の髪を後ろで一つにくくり、生成りの薬師のローブを纏っている。
「大変申し訳ありません。では、ちょっと失礼します」
マイケルさんは、ホウショウさんに軽く頭を下げ冒険者達を引き連れて部屋を出て行った。
「さあて、こっちはこっちで話を聞くか。ホウショウさんすまねえな」
「いいんですよ。でも、彼らが魔石を弁償するとして、その価値をこちらで査定は出来そうですか」
「それは、うーん。ジュンそれ見せてくれるか」
「え、ああ。はい」
真っ二つに割れた魔石。綺麗なブルーのそれをグスマンさんに手渡すと、彼は強面を歪めて唸り始めた。
これはちょっとまずい展開になってきたかなあ。
冷や汗をかきながら、ハイドさんに視線を移すと困った顔でグスマンさんの手元を見ていたのだった。
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