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1 始まり

村へと進む2

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「キョーナは自分のステータスを見たことあるのか?」

 キョーナのステータス画面を見ながら聞くと、小さく首を横に振った。

「じゃあ見方から教えるよ。名前は読めるか? 名前のその下のレベルが今のキョーナの強さ、職業はまだ空欄だからレベルは一だな。これを魔法使いにする。あ、今からやるのは」
「文字は読めるよ。そしてこれは秘密なんでしょ。わかってるもん。ジュンの行動は内緒が多すぎだよ」

 呆れたように、キョーナが突っ込みを入れてくる。

「魔法使いを選択っと。お、キョーナ水属性スキル持ってるんだ。生活魔法も使えそうだな」
「持ってるって、なんで?」

 キョーナが不思議そうに聞いてくる。そりゃ疑問に思って当然だ。スキルは自分で取得しないといけない、というのはこの世界の常識だ。運がよければ先天的に持っている人もいるけれど、そんなの稀だ。

「なんで?  先天的に持ってる奴がいるんだよ。俺は火属性もってたぞ。スキルを取るにはポイントが必要になるんだよ。最初から持ってるって、運がいいな」

 俺が昨日取ったというのはバレていないと思うけど、ちょっと不自然過ぎるかな。まあ、珍しいけどゼロじゃないからいいことにしよう。

「じゃあ、魔法使えるってこと?」
「んー。昨日やった魔力循環を思い出しながら、俺が言う通り詠唱してみて、《我は望む、我の身体、身に付けているものの不浄を取り除け、クリーン》」
「我は望む、我の身体身に付けているものの不浄を取り除け、クリーン」

 キョーナの詠唱の後、仄かな光がキョーナの全身を覆い一瞬で消えた。やっぱりキョーナは筋が良い。自分でスキルを取得しても上手く出来ない奴は出来ないのだ。

「出来た?」
「上出来。今のは汚れを落とす魔法。対象物を変えれば他人を浄化することも出来る。水を出す魔法は後で教えるよ」
「うん。凄い魔法が使えた」

 嬉しそうな小さな声が聞こえた。顔を見たら今朝、芋餅もどきを食べた時みたいな幸せそうな顔をしてるんだろう。

「生活魔法は使える人も居ただろ?」

 攻撃魔法は使えなくても、生活魔法だけは使えるという人は居る。ただし、使える回数は本人が持ってるって魔力の量に左右されるけど。

「居たのかな。見たことないけど」
「そっか、あ。忘れてた。ここの体力がキョーナの生命力、魔力は魔法が使える量。強い魔法は消費する魔力の量が増える。昨日の珠の中の羽を回すとか、さっきの浄化とかの生活魔法はだいたい1から3位の魔力を使う。キョーナの今の魔力は150だな、これはレベルが上がれば増えるし、ポイントを使って増やすことも出来る」
「ポイントって」
「ポイントや経験値は魔物を狩ったり能力を使ったりすると取得出来る。これを使ってスキルを取ったり能力を上げたりするんだ。スキルは使えば使うほどレベルが上がるけど、ポイントで意図的に上げることも出来るんだ」

 説明下手な俺の話をキョーナは、うんうんと頷きながら聞いている。昨日に比べて馬のスピードはゆっくりだから、会話をすることは支障がないから助かった。これなら村についてギルドに登録する前準備として、色々教える事が出来そうだ。

「スキルは魔法使いだと属性の取得、魔法の取得なんかに使える。キョーナの年ならウォーターボール位持ってたら上等かな」
「ウォーターボールは、ご飯作る時にお水出してた奴?」
「あれは生活魔法。後で休憩の時に教えるよ」
「うん」
「とりあえずウォーターボールを取得するよ。いいかな」
「お願いします」

 キョーナが頷いたのを確認し、スキル付与でウォーターボールをキョーナに付与する。

「これで何十回か使うと、スキルのポイントが貯まってウォーターボールのレベルが上がる。今はウォーターボールはレベル1だろ。使えば使うほどこれのレベルが上がるんだ」

 今のキョーナのスキルはこんな感じだ。昨日こっそり底上げしておいたから、今から追加で能力値を上げても無理矢理上げまくったという感じにはならない筈だ。
 ちなみに、俺のスキルは能力値全部∞になっているし、スキルも持ってるスキルが多過ぎて表示エラーになってるから見てもしょうがない。

 名前:キョーナ
 職業:魔法使いレベル1
 体力:110/110
 魔力:150/151
 所持金:銀貨3、小銀貨15、銅貨34

 取得スキル/生活魔法(浄化、水、火、灯り)水属性(ウォーターボール レベル1)

 STR:50
 VIT:34
 DEX:88
 AGI:70
 INT:125
 SPI:97
 LUC:180
 CHA:95

「これから能力値とレベルを上げるから。いいかな」
「お願いします」

 とりあえず、参考にテリーのステータスを見ることにする。

 名前:テリー
 職業:冒険者C級 魔法使いレベル15
 体力:300/300
 魔力:200/205

 取得スキル/生活魔法(浄化、水、火、灯り)水属性(ウォーターボール レベル8)風属性(エアカッター レベル9)火属性(ファイヤーボールレベル10)補助魔法(スリプル レベル1、ディフェンス レベル5、解体、カプセル、料理補助)

 STR:110
 VIT:100
 DEX:205
 AGI:170
 INT:150
 SPI:97
 LUC:90
 CHA:34

 キョーナの年だと魔法使いレベルは8前後あれば優秀だけど、そこまで高いのも問題かな。ポイント付与にスキル付与を使いまくり、キョーナのスキルと能力値を上げていく。属性はポイントじゃないと取得できないけど、それに準ずる魔法はスキル付与で取得させられる。
 なんか、テリーの能力低い様な気がする。これを参考にするのは微妙な気もするけど、まあいいか。
 ギルドに登録する時に怪しまれない程度にするだけで、登録後はどんどんレベル上げする予定だし。


 名前:キョーナ
 職業:魔法使いレベル5
 体力:110/121
 魔力:150/151

 取得スキル/生活魔法(浄化、水、火、灯り)水属性(ウォーターボール レベル5)雷属性(ライトニング レベル3)補助魔法(解体、カプセル)

 STR:80
 VIT:76
 DEX:143
 AGI:74
 INT:189
 SPI:97
 LUC:180
 CHA:95

 こんなもんかな。これで残りのポイントは8。
 レベル5ならポイントありすぎも良くないし。

「これで完成。キョーナ珠出して羽を回してみな」
「うん」

 器用値を上げたから魔力循環もスムーズに出来る様になってる筈だ。

「あ、凄い昨日より上手く回せるよ」
「よしよし。じゃあ、キョーナが持ってる魔法スキルを教えるから声に出さずに暗記するんだ」
「はい」
「最初はカプセル化だ」
「カプセル化、はい」

 間違って魔法を発動しないように、キョーナの魔力を封じ込めながら一つ一つ魔法を教えていく。
 自分で取得したスキルの場合は、取得した時点で魔法の詠唱とかも一緒に覚えるのだけど、スキル付与で取得した場合は自力で詠唱を暗記しないといけないのが面倒だ。
 自転車を買って与えただけじゃ乗れる様にはならない。練習が必要ってことだ。

「覚えた」
「よし、じゃあ忘れないように頭のなかで繰り返し唱えてるんだ。使うときボロを出さないようにな」
「はい」
「キョーナの杖は鞄に入れておくよ。俺のお古だけど」
「ジュンが使ってる杖?」
「俺が魔法使い成り立ての頃に使ってた奴。キョーナが魔法を使いこなせる様になったらもっと良いの買ってやるから」
「十分だよ、ありがとう。大事に使うね」

 無限収納から、キョーナの鞄に杖を一本移す。
 昔の俺が、魔法使い成り立ての頃に使ってた杖だ。
 桧で出来た細身の杖だ。俺が今持ってる樫の杖と同レベル。初心者よりちょい上位のランクの杖だ。
 あの当時はこれでも高かったんだよな。
 レベルが上がれば杖が無くてもいいけど、初心者は杖があった方が、上手く魔法が発動するから無理しても良いものを使った方がいい。

「そうだな、馬を繋いでおく杭の代わりにするのは止めたほうがいいと思うよ」
「そんなことしないもん」

 キョーナをちょっとからかいながら、のんびりと馬を進めた。
 まだ昼時を少し過ぎたばかり、村に着くのはまだまだ先になりそうだった。
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