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1 始まり
歩き始める 8
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キョーナの言葉に納得した。
なんだ、これが小さいから疑問に思っただけか、確かに見た目も実際の価値もキョーナに渡した鞄の方が高いだろう。でも、俺にとってはこっちの方が絶対大切だし価値がある。
「空間収納の容量は鞄の大きさに関係ないから大丈夫なんだよ」
「そ、そうなんだ。だからそんな小さくても使えるんだね」
キョーナは食い入る様に、デジカメポーチを見つめている。
なんだろ、小さい方がいいとか思ってるのかな。でもこっちは駄目だぞ。
「キョーナ」
「あ、ごめんなさい。あの、ええと、それ可愛いなあって。刺繍?」
「ああ、そうだな。男が持つには可愛すぎるだろ」
「え、あ、うん」
「でも、こっちは俺が使うから、キョーナはそっちで我慢な」
キョーナが持っている武骨なデザインの鞄は、ポールテワニの革で出来ている。
ポールテという国のみに生息する二足歩行のワニで、上級の冒険者じゃないと退治出来ないから空間収納がついていない普通の鞄でも高級品だ。まあ、値段が高い分火にも水にも強いし丈夫な革でもある。
そこに俺が色々付与しているから、空間収納鞄としては最高級なランクになっているだろう。
「でも、こっちの鞄の方が高そうだよ。いいの?」
「いいの。これを使って良いのは俺だけなの。キョーナでも駄目」
意地悪で言ってるんじゃなく、杏にそう約束させられたんだ。
俺のあの頃の趣味がデジカメで、スマホのカメラ機能と一緒にデジカメでも写真を撮りまくっていた。だからキョーナは一生懸命手作りして収納ケースを作ってくれたんだ。
プレゼントしてくれた時俺に、純のお母さんにあげたりしないで、純が使わなきゃ駄目だからね。約束してよねって言ったんだ。
キョーナに貸しても杏にばれるわけじゃないけど、でもやっぱり何となく駄目だ。これは貸せない。
約束してるからだけじゃない。これは杏がくれたものだから俺しか使っちゃダメなんだ。
「大事にしてるんだね。分かったもう言わない」
そうか、高そうな鞄を使うことに抵抗があったのか。
じゃあ、何の革なのか黙ってた方がいいな。田舎の子供がポールテワニを知ってるかは微妙だけど。
まあ、女の子が持つにはあれだからキョーナが冒険者になってまともに稼げる様になったら、もう少し可愛いデザインの鞄を作ってあげるとするか。
「よし、じゃあ出発するか。あ、ちょっと細工は必要だな」
キョーナが宥めたのか、馬はすっかり大人しくなって、水場周辺に僅かに生えている草を食べている。
馬車を引いていたのだから当然なんだけど、こいつには鞍がついてない。
鞍が無くても乗れる事は乗れるけど、それでスピード出すのはなあ。
「キョーナは馬に乗れるのか?」
「うーん。上手じゃないよ」
「乗れることは乗れるんだ」
ちょっと意外な気がして再度確認する。
「うん。牧場のお手伝いに行ってた時に教わったから」
「じゃあ、大丈夫だな」
さすがに鞍は持っていなかったけれど、元から持っていた振りをして、最近狩ったばかりの鹿の皮を使い馬具をこっそり作成する。これは木工のスキルなのかな? どんな道具でも一瞬で作れるのはキョーナには内緒だ。
鞍の素材として鹿の皮が適しているかどうか分からないけど、他に持っているのは上位の魔物ばかりだから仕方ない。まあ、鹿の皮は素材としては安い方だからそれで鞍を作る人間がいないこともない。のかな?
鞍を作る条件として、二人乗りだから大きめの物。乘っている人間に衝撃が伝わらない物。ついでに見た目は安っぽくて傷もあり古そうな感じがする。
なんて感じに色々つけていったらなんだか貧相な感じの鞍が出来上がった。むき出しの木製部分に、座るところだけ革が張ってあるのがいかにも素人作っぽい。
やるな、木工スキル。なめしていない鹿皮でも一瞬で加工出来るなんてインチキもいいとこだ。
鞍の下には毛布を敷いてと思ったけど、これだと木の部分が馬の背中にあたるなあ。これじゃ毛布じゃ駄目そうだな。こっちも鹿皮で作るか。
ええと、厚みはこのままで馬の背中に振動が響かない、ついでに馬の体温が上昇したりしない上吸湿速乾の常に馬に最適な温度になるように出来ると。これでいいか。勿論俺の作る物は、鑑定でついてる機能が殆ど表示されない様に条件付けている。
鑑定では鹿革製の古びた馬具としか表示されない筈だ。
「よし、これを敷いて鞍を固定して、後は」
空間収納鞄の事はばれるまでは秘密にしたいから。目立つ大物は馬の背につけておくか。
「あとは、テントと食料をいれた袋と毛布に鉄鍋一個。これで完了っと。キョーナ一人で乗れるか?」
「台が無いと届かない」
「そりゃそうだ。じゃあ上からひっぱってやるから」
納得し俺が先に馬に乗ると、キョーナに手を伸ばし引っ張り上げる。
やっぱりこの子は痩せすぎだ。軽すぎる。
「じゃあ最初はゆっくりいくけど、大丈夫そうだったら飛ばすから」
「最初から飛ばしても大丈夫だけど」
「こいつの調子もみたいし、最初は慣らし」
こっそりと馬に回復魔法を掛け、体力の底上げをしてから歩かせ始める。
なんかこの馬年取ってる感じだなあ。こいつまで死んだらキョーナが落ち込みそうだから細胞の若返りもさせておくか。全体的に細胞を活性化。お、毛艶が良くなった。よしよし、乗り心地も悪くない。
「あれ、揺れない」
「分かるか?」
「前に乗った時は凄く揺れたよ」
素人のキョーナでも良く分かる乗り心地の良さ。鞍の性能を教えていないのに分かるとはよっぽど違うんだな。
「俺の乗り方が上手いんだよ」
「違うと思うけど、まあいいや。これも内緒なんでしょ?」
「そういうこと。じゃあ、これから飛ばすから俺が良いって言うまで絶対にしゃべらない様に。いいな」
勘が良いキョーナは俺が言う前に聞いてくる。
頭の良い子は嫌いじゃない。俺はどっちか言えば鈍感なタイプだから、先回りして色々言ってくれるタイプの方が良い。
実際杏がそういう子だった。
親に甘やかされて育った俺はのんびり屋で鈍感、杏はそんな俺に色々姉さん女房的な感じに世話してくれていたんだ。
さっき会ったばかりなのに、キョーナは妙に付き合い易い気がする。呼吸が合うというかなんだか一緒にいて楽だ。そう、杏と一緒にいる時みたいに。
「よし、行くぞ」
キョーナのお腹に左腕を回す。
揺れないとは思うけど、一応キョーナの体を左腕で固定しておくか。
「な、なんで」
「ん?」
「う、腕。大丈夫だよ、ちゃんとここ掴まってるし」
歩いている馬の上だというのに急にキョーナが暴れだした。あれ、耳が真っ赤だ。なんで?
「ほら、ここに持つとこあるよ。これでいいじゃない」
キョーナが指差した場所に確かにハンドルが付いていた。作るときに二人乗り用と条件付けたせいかもしれないけど、無いよりマシなレベルだ走ったら間違いなく落ちる。
「物凄いスピード出すんだぞ、絶対落ちるから駄目だ」
身体強化は馬だけじゃなく俺たちにも掛ける、そうしないと馬に振り落とされる可能性がある。
身体強化した裸馬に乘って片手で手綱を握り戦った経験は過去の転生で何度もあるけど、二人乗りの経験がないからちょっと自信がないとも言う。
確か後ろより前に乗せた方が揺れないんだよな?
「馬から落ちて死にたくないなら我慢しろ。それに俺と旅するならこれからずっとこのスタイルだぞ。嫌なら」
「分かった。これでいい。大丈夫。だから捨てないで」
速攻でキョーナが返事をしてきた。だけど、なんでここで捨てないでなんだ?
「どうしてそこで捨てるなになるんだよ。俺は三年間はキョーナが泣いても喚いても手放す気ないから」
「本当?」
「本当だ。だから俺の言うことはちゃんと聞け。おまえが本当に嫌な事はしないから」
「じゃあ、さっき嫌ならの後なんて言おうとしたの?」
「馬から降りて歩き」
「やっぱり捨てるんじゃない。走る馬に歩いてついて行けるわけないでしょ」
キョーナもしかして、泣いてないか?
なんか、鼻声なんだけど。
「ばーか、そしたら俺も歩くに決まってんだろ。キョーナだけ歩かせたりするか」
「本当?」
「本当だ。で、大丈夫なんだな。文句は聞かないぞ。絶対にしゃべるなよ。いいな舌噛むぞ」
キョーナがなにか言い出す前に、身体強化を掛け馬を走らせる。
キョーナの体は緊張でこわばっているけど、乗り方は上手い気がする。これならもう少しスピードをあげてもいいかもしれない。
「ひっ」
更にスピードをあげ、キョーナが声にならない悲鳴をあげた後大人しくなる。偉いなこのスピードでも我慢出来るなんて。感心しながら探索に人の気配が引っ掛かったところで身体強化を解き普通の駆け足の速度にして方向を少しずらす。
「キョーナ。もうすぐ着くから」
あれ? 返事がない。まさか
「おい、起きてるか?」
やっぱり返事がない、というか反応がない。
馬を走らせるのをやめ、ゆっくりと歩かせながらキョーナの顔を覗きこむ。
「やっぱり」
身体強化は体には聞いても、精神までは効かないらしい。気を失っていた。
さっきの悲鳴の後だな、そうか我慢していたんじゃなく気を失っていたのか。
「さすがにこれはキツかったな、ごめんキョーナ」
謝ってもキョーナは反応が無いままだ、反省の気持ちを若干持ちながら俺は馬を再び走らせ始めた。
※※※※※※※※※※※※
話の展開が遅くてすみません。
しおり有難うございます。
皮と革ですが、下記の様な書き分けをしているつもりですが、書いてて若干混乱しているところがあったりします。
時間のある時に再度推敲します。
皮:なめし前、動物などからはいだままの状態
革:なめし後
なんだ、これが小さいから疑問に思っただけか、確かに見た目も実際の価値もキョーナに渡した鞄の方が高いだろう。でも、俺にとってはこっちの方が絶対大切だし価値がある。
「空間収納の容量は鞄の大きさに関係ないから大丈夫なんだよ」
「そ、そうなんだ。だからそんな小さくても使えるんだね」
キョーナは食い入る様に、デジカメポーチを見つめている。
なんだろ、小さい方がいいとか思ってるのかな。でもこっちは駄目だぞ。
「キョーナ」
「あ、ごめんなさい。あの、ええと、それ可愛いなあって。刺繍?」
「ああ、そうだな。男が持つには可愛すぎるだろ」
「え、あ、うん」
「でも、こっちは俺が使うから、キョーナはそっちで我慢な」
キョーナが持っている武骨なデザインの鞄は、ポールテワニの革で出来ている。
ポールテという国のみに生息する二足歩行のワニで、上級の冒険者じゃないと退治出来ないから空間収納がついていない普通の鞄でも高級品だ。まあ、値段が高い分火にも水にも強いし丈夫な革でもある。
そこに俺が色々付与しているから、空間収納鞄としては最高級なランクになっているだろう。
「でも、こっちの鞄の方が高そうだよ。いいの?」
「いいの。これを使って良いのは俺だけなの。キョーナでも駄目」
意地悪で言ってるんじゃなく、杏にそう約束させられたんだ。
俺のあの頃の趣味がデジカメで、スマホのカメラ機能と一緒にデジカメでも写真を撮りまくっていた。だからキョーナは一生懸命手作りして収納ケースを作ってくれたんだ。
プレゼントしてくれた時俺に、純のお母さんにあげたりしないで、純が使わなきゃ駄目だからね。約束してよねって言ったんだ。
キョーナに貸しても杏にばれるわけじゃないけど、でもやっぱり何となく駄目だ。これは貸せない。
約束してるからだけじゃない。これは杏がくれたものだから俺しか使っちゃダメなんだ。
「大事にしてるんだね。分かったもう言わない」
そうか、高そうな鞄を使うことに抵抗があったのか。
じゃあ、何の革なのか黙ってた方がいいな。田舎の子供がポールテワニを知ってるかは微妙だけど。
まあ、女の子が持つにはあれだからキョーナが冒険者になってまともに稼げる様になったら、もう少し可愛いデザインの鞄を作ってあげるとするか。
「よし、じゃあ出発するか。あ、ちょっと細工は必要だな」
キョーナが宥めたのか、馬はすっかり大人しくなって、水場周辺に僅かに生えている草を食べている。
馬車を引いていたのだから当然なんだけど、こいつには鞍がついてない。
鞍が無くても乗れる事は乗れるけど、それでスピード出すのはなあ。
「キョーナは馬に乗れるのか?」
「うーん。上手じゃないよ」
「乗れることは乗れるんだ」
ちょっと意外な気がして再度確認する。
「うん。牧場のお手伝いに行ってた時に教わったから」
「じゃあ、大丈夫だな」
さすがに鞍は持っていなかったけれど、元から持っていた振りをして、最近狩ったばかりの鹿の皮を使い馬具をこっそり作成する。これは木工のスキルなのかな? どんな道具でも一瞬で作れるのはキョーナには内緒だ。
鞍の素材として鹿の皮が適しているかどうか分からないけど、他に持っているのは上位の魔物ばかりだから仕方ない。まあ、鹿の皮は素材としては安い方だからそれで鞍を作る人間がいないこともない。のかな?
鞍を作る条件として、二人乗りだから大きめの物。乘っている人間に衝撃が伝わらない物。ついでに見た目は安っぽくて傷もあり古そうな感じがする。
なんて感じに色々つけていったらなんだか貧相な感じの鞍が出来上がった。むき出しの木製部分に、座るところだけ革が張ってあるのがいかにも素人作っぽい。
やるな、木工スキル。なめしていない鹿皮でも一瞬で加工出来るなんてインチキもいいとこだ。
鞍の下には毛布を敷いてと思ったけど、これだと木の部分が馬の背中にあたるなあ。これじゃ毛布じゃ駄目そうだな。こっちも鹿皮で作るか。
ええと、厚みはこのままで馬の背中に振動が響かない、ついでに馬の体温が上昇したりしない上吸湿速乾の常に馬に最適な温度になるように出来ると。これでいいか。勿論俺の作る物は、鑑定でついてる機能が殆ど表示されない様に条件付けている。
鑑定では鹿革製の古びた馬具としか表示されない筈だ。
「よし、これを敷いて鞍を固定して、後は」
空間収納鞄の事はばれるまでは秘密にしたいから。目立つ大物は馬の背につけておくか。
「あとは、テントと食料をいれた袋と毛布に鉄鍋一個。これで完了っと。キョーナ一人で乗れるか?」
「台が無いと届かない」
「そりゃそうだ。じゃあ上からひっぱってやるから」
納得し俺が先に馬に乗ると、キョーナに手を伸ばし引っ張り上げる。
やっぱりこの子は痩せすぎだ。軽すぎる。
「じゃあ最初はゆっくりいくけど、大丈夫そうだったら飛ばすから」
「最初から飛ばしても大丈夫だけど」
「こいつの調子もみたいし、最初は慣らし」
こっそりと馬に回復魔法を掛け、体力の底上げをしてから歩かせ始める。
なんかこの馬年取ってる感じだなあ。こいつまで死んだらキョーナが落ち込みそうだから細胞の若返りもさせておくか。全体的に細胞を活性化。お、毛艶が良くなった。よしよし、乗り心地も悪くない。
「あれ、揺れない」
「分かるか?」
「前に乗った時は凄く揺れたよ」
素人のキョーナでも良く分かる乗り心地の良さ。鞍の性能を教えていないのに分かるとはよっぽど違うんだな。
「俺の乗り方が上手いんだよ」
「違うと思うけど、まあいいや。これも内緒なんでしょ?」
「そういうこと。じゃあ、これから飛ばすから俺が良いって言うまで絶対にしゃべらない様に。いいな」
勘が良いキョーナは俺が言う前に聞いてくる。
頭の良い子は嫌いじゃない。俺はどっちか言えば鈍感なタイプだから、先回りして色々言ってくれるタイプの方が良い。
実際杏がそういう子だった。
親に甘やかされて育った俺はのんびり屋で鈍感、杏はそんな俺に色々姉さん女房的な感じに世話してくれていたんだ。
さっき会ったばかりなのに、キョーナは妙に付き合い易い気がする。呼吸が合うというかなんだか一緒にいて楽だ。そう、杏と一緒にいる時みたいに。
「よし、行くぞ」
キョーナのお腹に左腕を回す。
揺れないとは思うけど、一応キョーナの体を左腕で固定しておくか。
「な、なんで」
「ん?」
「う、腕。大丈夫だよ、ちゃんとここ掴まってるし」
歩いている馬の上だというのに急にキョーナが暴れだした。あれ、耳が真っ赤だ。なんで?
「ほら、ここに持つとこあるよ。これでいいじゃない」
キョーナが指差した場所に確かにハンドルが付いていた。作るときに二人乗り用と条件付けたせいかもしれないけど、無いよりマシなレベルだ走ったら間違いなく落ちる。
「物凄いスピード出すんだぞ、絶対落ちるから駄目だ」
身体強化は馬だけじゃなく俺たちにも掛ける、そうしないと馬に振り落とされる可能性がある。
身体強化した裸馬に乘って片手で手綱を握り戦った経験は過去の転生で何度もあるけど、二人乗りの経験がないからちょっと自信がないとも言う。
確か後ろより前に乗せた方が揺れないんだよな?
「馬から落ちて死にたくないなら我慢しろ。それに俺と旅するならこれからずっとこのスタイルだぞ。嫌なら」
「分かった。これでいい。大丈夫。だから捨てないで」
速攻でキョーナが返事をしてきた。だけど、なんでここで捨てないでなんだ?
「どうしてそこで捨てるなになるんだよ。俺は三年間はキョーナが泣いても喚いても手放す気ないから」
「本当?」
「本当だ。だから俺の言うことはちゃんと聞け。おまえが本当に嫌な事はしないから」
「じゃあ、さっき嫌ならの後なんて言おうとしたの?」
「馬から降りて歩き」
「やっぱり捨てるんじゃない。走る馬に歩いてついて行けるわけないでしょ」
キョーナもしかして、泣いてないか?
なんか、鼻声なんだけど。
「ばーか、そしたら俺も歩くに決まってんだろ。キョーナだけ歩かせたりするか」
「本当?」
「本当だ。で、大丈夫なんだな。文句は聞かないぞ。絶対にしゃべるなよ。いいな舌噛むぞ」
キョーナがなにか言い出す前に、身体強化を掛け馬を走らせる。
キョーナの体は緊張でこわばっているけど、乗り方は上手い気がする。これならもう少しスピードをあげてもいいかもしれない。
「ひっ」
更にスピードをあげ、キョーナが声にならない悲鳴をあげた後大人しくなる。偉いなこのスピードでも我慢出来るなんて。感心しながら探索に人の気配が引っ掛かったところで身体強化を解き普通の駆け足の速度にして方向を少しずらす。
「キョーナ。もうすぐ着くから」
あれ? 返事がない。まさか
「おい、起きてるか?」
やっぱり返事がない、というか反応がない。
馬を走らせるのをやめ、ゆっくりと歩かせながらキョーナの顔を覗きこむ。
「やっぱり」
身体強化は体には聞いても、精神までは効かないらしい。気を失っていた。
さっきの悲鳴の後だな、そうか我慢していたんじゃなく気を失っていたのか。
「さすがにこれはキツかったな、ごめんキョーナ」
謝ってもキョーナは反応が無いままだ、反省の気持ちを若干持ちながら俺は馬を再び走らせ始めた。
※※※※※※※※※※※※
話の展開が遅くてすみません。
しおり有難うございます。
皮と革ですが、下記の様な書き分けをしているつもりですが、書いてて若干混乱しているところがあったりします。
時間のある時に再度推敲します。
皮:なめし前、動物などからはいだままの状態
革:なめし後
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