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「そう言えば、リナリア様学校の方は慣れました?」
「ええ、お陰様で」
この人は私に好意を向けていないしそれを隠そうともしていないのは、社交に慣れていない私にもすぐに察する事が出来た。
夫人の気持ちは兎も角、仮とはいえ私はライアン様と結婚したばかり、それなのに祝いの言葉が無いのは茶会を招待した側としては褒められた態度では無いと思う。
「ふふ、ライアンと同じ組だもの毎日楽しいわよね。席も隣りだとライアンから聞いたわ」
お義母様はにこやかにライアン様の名前を出し、夫人の反応を見ている。
腹違いの姉をわざわざ同じ茶会の席に招待したのは、夫人が姉側の人間ということなのかそれともただの興味本位なのか、それはまだ分からない。
だから私はお義母様に、困った様な顔をして見せる。
「ライアン様、そこまでお話されているのですか」
「ふふ、恥ずかしがることはないのよ。ライアンはリナリアが好き過ぎるのよね。手紙もリナリアの事ばかり書いてくるの、ライアン自身の話は殆どないわ」
「ライアン様がリナリア様を好きすぎる?」
急に夫人は首を傾げた後、一瞬姉の方に視線を動かしました。
今のお義母様の話のどこかに、姉に関係するものがあったのか分かりませんがこの方はあまり隠し事が出来ない方なのかもしれない。
「ええ、二人は幼い頃に婚約したのですけれど、その顔合わせの時にライアンがリナリアに一目惚れをね。元々は私の夫とリナリアの父が友人だった関係で婚約の話が出たものの、相性というものはありますから心配していたのですけれどね。ライアンは少し気難しいところがありますから」
「ライアン様の一目惚れ、それで婚約が決まったのですか」
「ええ、今回仮婚姻をしたのもライアンの希望なんですのよ。リナリアは可愛いでしょう? だから婚約しているだけでは心配だと言ってね。ライアンに不自由な生活を体験させようと一年は寮生活をさせると決めていたせいもあったのかしら」
寮生活は、私が家から通いたくなくて決めたことをライアン様が心配してだったし、仮婚姻も私の事情だったというのにお義母様は私の家の事を表に出さず話している。
ライアン様は私を大切にしてくれているけれど、一目惚れなんてあり得はしないだろう。
だって、私は長い前髪で目元を隠した怪しい幼女だったのだから。
「仮婚姻はライアン様の希望だったのですか」
「ええ、ライアンは婚約しているというのに、釣書を持ってくる家もあって『自分の妻になるのはリナリアだけだと言うのにこういう申し出が学校内でも続きそうなのは鬱陶しい』と言い始めましてね。でも、可愛いいリナリアに近付こうとする男子生徒を追い払いたいというのが本音だったみたいですけれど」
私に近付く男子生徒等皆無だろう事は、私を含めすべての貴族が考えているだろうにお義母様は当然の様に言い放つから、私は羞恥で顔が赤くなるのを止められない。
「お、お義母様そんな話、恥ずかしいです」
「あら、あなたはそろそろライアンの溺愛具合に慣れたのではないのかしら」
「で、溺あ……い。それはあの、ライアン様は面倒見が良いというか私が社交に不慣れなのを心配されていると言いますか」
本当に私は社交に慣れていないから、お義母様の軽口に簡単に乗せられてしまう。
「あら、ライアンは面倒見が良いなんて無いわ。それはリナリア限定よ。朝は寮の前に迎えに行って帰りも送っていくし、移動教室はいつも一緒、食事も昼と夜は一緒なのでしょう?」
「は、はい。それはライアン様が夫婦なのだから当然だと」
「リナリア様がそう願っているのでは無いのですか」
じろりと何故か私を睨む様に、夫人は問いかけてくるのは何か理由があるのだろうか。
内心首を傾げながら、口を開こうとするのをお義母様が遮ってしまった。
「ふふふ、それは無いわね。あの子朝食が別なのが気に入らないから何とかして寮の規則を変えられないかと夫に言い出して叱られていた程ですもの」
「規則を変える? 朝食の為にですか?」
あまりの事に驚いて、つい大きな声を出してしまうとお義母様は可笑しそうに笑いながら頷いた。
「そうなのよ。あの子面白いでしょう? どれだけリナリアが好きなのかしらね」
「す、好き……あの、それはあの」
「まあ、それではライアン様の方がリナリア様を束縛されている様に感じますわね」
「束縛、リナリアが常にライアンが側にいるのを窮屈に感じていないか心配になる程ね。我が息子ながら溺愛と執着が凄すぎて心配になっているのよ」
ちらりと私を見るお義母様の目は楽しそうに見えるけれど、夫人の方は笑顔の欠片も無かった。
「ええ、お陰様で」
この人は私に好意を向けていないしそれを隠そうともしていないのは、社交に慣れていない私にもすぐに察する事が出来た。
夫人の気持ちは兎も角、仮とはいえ私はライアン様と結婚したばかり、それなのに祝いの言葉が無いのは茶会を招待した側としては褒められた態度では無いと思う。
「ふふ、ライアンと同じ組だもの毎日楽しいわよね。席も隣りだとライアンから聞いたわ」
お義母様はにこやかにライアン様の名前を出し、夫人の反応を見ている。
腹違いの姉をわざわざ同じ茶会の席に招待したのは、夫人が姉側の人間ということなのかそれともただの興味本位なのか、それはまだ分からない。
だから私はお義母様に、困った様な顔をして見せる。
「ライアン様、そこまでお話されているのですか」
「ふふ、恥ずかしがることはないのよ。ライアンはリナリアが好き過ぎるのよね。手紙もリナリアの事ばかり書いてくるの、ライアン自身の話は殆どないわ」
「ライアン様がリナリア様を好きすぎる?」
急に夫人は首を傾げた後、一瞬姉の方に視線を動かしました。
今のお義母様の話のどこかに、姉に関係するものがあったのか分かりませんがこの方はあまり隠し事が出来ない方なのかもしれない。
「ええ、二人は幼い頃に婚約したのですけれど、その顔合わせの時にライアンがリナリアに一目惚れをね。元々は私の夫とリナリアの父が友人だった関係で婚約の話が出たものの、相性というものはありますから心配していたのですけれどね。ライアンは少し気難しいところがありますから」
「ライアン様の一目惚れ、それで婚約が決まったのですか」
「ええ、今回仮婚姻をしたのもライアンの希望なんですのよ。リナリアは可愛いでしょう? だから婚約しているだけでは心配だと言ってね。ライアンに不自由な生活を体験させようと一年は寮生活をさせると決めていたせいもあったのかしら」
寮生活は、私が家から通いたくなくて決めたことをライアン様が心配してだったし、仮婚姻も私の事情だったというのにお義母様は私の家の事を表に出さず話している。
ライアン様は私を大切にしてくれているけれど、一目惚れなんてあり得はしないだろう。
だって、私は長い前髪で目元を隠した怪しい幼女だったのだから。
「仮婚姻はライアン様の希望だったのですか」
「ええ、ライアンは婚約しているというのに、釣書を持ってくる家もあって『自分の妻になるのはリナリアだけだと言うのにこういう申し出が学校内でも続きそうなのは鬱陶しい』と言い始めましてね。でも、可愛いいリナリアに近付こうとする男子生徒を追い払いたいというのが本音だったみたいですけれど」
私に近付く男子生徒等皆無だろう事は、私を含めすべての貴族が考えているだろうにお義母様は当然の様に言い放つから、私は羞恥で顔が赤くなるのを止められない。
「お、お義母様そんな話、恥ずかしいです」
「あら、あなたはそろそろライアンの溺愛具合に慣れたのではないのかしら」
「で、溺あ……い。それはあの、ライアン様は面倒見が良いというか私が社交に不慣れなのを心配されていると言いますか」
本当に私は社交に慣れていないから、お義母様の軽口に簡単に乗せられてしまう。
「あら、ライアンは面倒見が良いなんて無いわ。それはリナリア限定よ。朝は寮の前に迎えに行って帰りも送っていくし、移動教室はいつも一緒、食事も昼と夜は一緒なのでしょう?」
「は、はい。それはライアン様が夫婦なのだから当然だと」
「リナリア様がそう願っているのでは無いのですか」
じろりと何故か私を睨む様に、夫人は問いかけてくるのは何か理由があるのだろうか。
内心首を傾げながら、口を開こうとするのをお義母様が遮ってしまった。
「ふふふ、それは無いわね。あの子朝食が別なのが気に入らないから何とかして寮の規則を変えられないかと夫に言い出して叱られていた程ですもの」
「規則を変える? 朝食の為にですか?」
あまりの事に驚いて、つい大きな声を出してしまうとお義母様は可笑しそうに笑いながら頷いた。
「そうなのよ。あの子面白いでしょう? どれだけリナリアが好きなのかしらね」
「す、好き……あの、それはあの」
「まあ、それではライアン様の方がリナリア様を束縛されている様に感じますわね」
「束縛、リナリアが常にライアンが側にいるのを窮屈に感じていないか心配になる程ね。我が息子ながら溺愛と執着が凄すぎて心配になっているのよ」
ちらりと私を見るお義母様の目は楽しそうに見えるけれど、夫人の方は笑顔の欠片も無かった。
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