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「ねえ、このドレス派手かしら」
いつもの様にライアン様と夕食を頂いた後、寮に戻った私は週末に侯爵家に伺う際に着るドレスをジゼルと選んでいた。
外出用のドレスは屋敷に居た時は修道女の様な地味な灰色や焦げ茶色のドレスばかりだったけれど、今の私のドレスは年齢にあった可愛らしい色使いのものだ。
入学の際にお父様が贈って下さったものの他、ライアン様が贈って下さったものと義両親が贈ってくれたものだ。
どれが好みかと言えば、お父様が贈って下さったもの以外だ。
お父様が贈って下さったドレスは、体形には合っていても意匠が私向きでは無い様に感じて借り着を着ている気持ちになってしまう。
なんていうか、私には似合っていないと感じてしまう。
私の事を良く知らないお父様が選んだのか、仕立て屋がお父様の指示で私の年頃の女性が着るドレスとして作ったのか分からないけれど、とにかく他の方から借りた様な気持ちになってしまう。
ドレスが揃っていない時はそれでもありがたく着ていたけれど、私のドレス姿を見たライアン様がすぐにドレスを用意してくれて、そのムーディ侯爵家からも沢山のドレスが届いた。
ライアン様が贈って下さったドレスはどれも私の好みで、とても似あっていると思う。
外出用はまだ数枚だけれど、日常着としてのドレスは沢山贈って下さって申し訳ないという気持ちも大きいけれどライアン様から贈って下さったドレスを着ると、とても嬉しそうに褒めて下さるから嬉しくてつい沢山着てしまう。
「こちらはお義母様が選んで下さったものだし、こちらはお義父様よね」
「はい、ライアン様からの物はこちらです」
「お義母様と一緒にドレスを選ぶのだし、やっぱりお義母様からのドレスを着た方がいいかしら」
お義母様が最近贈って下さったのは、お出かけ用の黄色のドレスだった。
胸元に大きなフリルが付いていて、腰は幅広のリボンを結ぶ。肩から肘の辺りまではふんわり膨らんで、肘から手首まではぴったりとしている今年流行の意匠だ。
「凄く素敵、でも黄色なんて私に似合うかしら」
「良くお似合いになると思いますわ。このドレスでしたら髪飾りはライアン様が選んで下さったリボンが良いかと思います」
「そうね、耳の辺りから細い三つ編みをして後ろで纏めてリボンを結ぶのは良いかもしれないわ」
最近私は前髪を眉の辺りで短く切りそろえた。
ライアン様が短く切るのも可愛いかもしれないと言って下さったから、ジゼルに切って貰ったのだ。
髪を切った翌日、ドキドキしながら寮を出たらライアン様がすぐに気が付いて褒めて下さったのは恥ずかしかったけれど、とても嬉しかった。
「前髪を切ったお陰で髪型を色々出来る様になったのは嬉しいわ」
「きっと奥様も褒めて下さるでしょう」
「お義母様褒めて下さるといいけれど、どうかしら。不安だわ」
お義母様はとてもおしゃれな方だから、お義母様が褒めて下さったら自信になるけれど不安だ。
私はやっぱり自分に自信が無さ過ぎる。
何か新しい事をしてみようと思う度に、お母様から叱責される気がして怖いのだ。
「ライアン様は可愛いと褒めて下さいましたし、奥様もきっと同じく褒めて下さいます」
「ジゼルにそう言って貰えたら、自信になるわ。じゃあ週末はこのドレスにするわ」
そう言うとジゼルは笑顔で頷いて、準備をしておくと言ってくれた。
入学してから私は笑顔で毎日を過ごせている。
ライアン様と一緒に授業を受けるのは幸せで、シシリー達と過ごすのは楽しい。
授業は少し難しいけれど、勉強も楽しい。
お母様と弟のパービスが居ないというだけで、私は毎日がとても楽しいと感じるのだから家にいるのがどれだけ苦痛だったのか分かる。
お母様もパービスも私を蔑むことしかしなかったし、私はそうされて当たり前だと考えていた。
お母様は私にとって絶対的な存在だったから、お母様が私は駄目だと言うならそうなのだと盲目的に信じ込んでいたのだ。
「私、寮に入って良かったわ」
「お嬢様が毎日楽しそうで、私は嬉しいです」
「ふふ、ライアン様のお陰よ。そしてジゼルのお陰、いつもありがとう」
「とんでもないことでございます。私など微力すぎます、お嬢様が努力されているからこそです」
「努力はし続けるわ、だってライアン様に好きだと思って欲しいの」
私をお母様の娘だという理由で嫌う人は多いと思う、だけどいつか私はお母様とは違うのだと分かってくれると信じて私は出来る限り努力をし続けるつもりだ。
私を妻にと望んで、側にいさせてくれるライアン様の期待に応える為に努力する。
努力し続けたら、いつかライアン様に相応しい者になれるだろうか。
だけど、私のこの考えは甘かったと知る様になるとはこの時の私は考えてもいなかった。
いつもの様にライアン様と夕食を頂いた後、寮に戻った私は週末に侯爵家に伺う際に着るドレスをジゼルと選んでいた。
外出用のドレスは屋敷に居た時は修道女の様な地味な灰色や焦げ茶色のドレスばかりだったけれど、今の私のドレスは年齢にあった可愛らしい色使いのものだ。
入学の際にお父様が贈って下さったものの他、ライアン様が贈って下さったものと義両親が贈ってくれたものだ。
どれが好みかと言えば、お父様が贈って下さったもの以外だ。
お父様が贈って下さったドレスは、体形には合っていても意匠が私向きでは無い様に感じて借り着を着ている気持ちになってしまう。
なんていうか、私には似合っていないと感じてしまう。
私の事を良く知らないお父様が選んだのか、仕立て屋がお父様の指示で私の年頃の女性が着るドレスとして作ったのか分からないけれど、とにかく他の方から借りた様な気持ちになってしまう。
ドレスが揃っていない時はそれでもありがたく着ていたけれど、私のドレス姿を見たライアン様がすぐにドレスを用意してくれて、そのムーディ侯爵家からも沢山のドレスが届いた。
ライアン様が贈って下さったドレスはどれも私の好みで、とても似あっていると思う。
外出用はまだ数枚だけれど、日常着としてのドレスは沢山贈って下さって申し訳ないという気持ちも大きいけれどライアン様から贈って下さったドレスを着ると、とても嬉しそうに褒めて下さるから嬉しくてつい沢山着てしまう。
「こちらはお義母様が選んで下さったものだし、こちらはお義父様よね」
「はい、ライアン様からの物はこちらです」
「お義母様と一緒にドレスを選ぶのだし、やっぱりお義母様からのドレスを着た方がいいかしら」
お義母様が最近贈って下さったのは、お出かけ用の黄色のドレスだった。
胸元に大きなフリルが付いていて、腰は幅広のリボンを結ぶ。肩から肘の辺りまではふんわり膨らんで、肘から手首まではぴったりとしている今年流行の意匠だ。
「凄く素敵、でも黄色なんて私に似合うかしら」
「良くお似合いになると思いますわ。このドレスでしたら髪飾りはライアン様が選んで下さったリボンが良いかと思います」
「そうね、耳の辺りから細い三つ編みをして後ろで纏めてリボンを結ぶのは良いかもしれないわ」
最近私は前髪を眉の辺りで短く切りそろえた。
ライアン様が短く切るのも可愛いかもしれないと言って下さったから、ジゼルに切って貰ったのだ。
髪を切った翌日、ドキドキしながら寮を出たらライアン様がすぐに気が付いて褒めて下さったのは恥ずかしかったけれど、とても嬉しかった。
「前髪を切ったお陰で髪型を色々出来る様になったのは嬉しいわ」
「きっと奥様も褒めて下さるでしょう」
「お義母様褒めて下さるといいけれど、どうかしら。不安だわ」
お義母様はとてもおしゃれな方だから、お義母様が褒めて下さったら自信になるけれど不安だ。
私はやっぱり自分に自信が無さ過ぎる。
何か新しい事をしてみようと思う度に、お母様から叱責される気がして怖いのだ。
「ライアン様は可愛いと褒めて下さいましたし、奥様もきっと同じく褒めて下さいます」
「ジゼルにそう言って貰えたら、自信になるわ。じゃあ週末はこのドレスにするわ」
そう言うとジゼルは笑顔で頷いて、準備をしておくと言ってくれた。
入学してから私は笑顔で毎日を過ごせている。
ライアン様と一緒に授業を受けるのは幸せで、シシリー達と過ごすのは楽しい。
授業は少し難しいけれど、勉強も楽しい。
お母様と弟のパービスが居ないというだけで、私は毎日がとても楽しいと感じるのだから家にいるのがどれだけ苦痛だったのか分かる。
お母様もパービスも私を蔑むことしかしなかったし、私はそうされて当たり前だと考えていた。
お母様は私にとって絶対的な存在だったから、お母様が私は駄目だと言うならそうなのだと盲目的に信じ込んでいたのだ。
「私、寮に入って良かったわ」
「お嬢様が毎日楽しそうで、私は嬉しいです」
「ふふ、ライアン様のお陰よ。そしてジゼルのお陰、いつもありがとう」
「とんでもないことでございます。私など微力すぎます、お嬢様が努力されているからこそです」
「努力はし続けるわ、だってライアン様に好きだと思って欲しいの」
私をお母様の娘だという理由で嫌う人は多いと思う、だけどいつか私はお母様とは違うのだと分かってくれると信じて私は出来る限り努力をし続けるつもりだ。
私を妻にと望んで、側にいさせてくれるライアン様の期待に応える為に努力する。
努力し続けたら、いつかライアン様に相応しい者になれるだろうか。
だけど、私のこの考えは甘かったと知る様になるとはこの時の私は考えてもいなかった。
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