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ミルフィーヌの異変1
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「ミルフィ、お水飲める?」
私が目を覚ました時、ベッドの側にいたのは兄様とガスパール先生だった。
両親は部屋にいなかった、ジョゼットと兄様付きの使用人は部屋の隅に控えていたけれど、ルーシーはその中におらずキム先生もいなかった。
そして、パティも。
パティの姿が見えないことにホッとしながら、兄様がもう一度「お水いらない?」と聞いて来たから欲しいと言おうと口を開いて気が付いた。
『おみじゅ欲しい』
そう言ったつもりだったのに、私の耳に自分の声は届かなかった。
そして、兄様は私の返事が聞こえなかったのか「ミルフィ? 今なんて?」と呟いた後で横に立つガスパール先生を見た。
「お嬢様お声が出せないのですか」
ガスパール先生が問う声に「うん」と返事をしても、声が出ていないと自分でも分かる。
「お口を開いていただけますか。喉が腫れているのか?」
「……」
大きく口を開いてみるけれど、ガスパール先生の診断を待たずとも分かる。
喉は腫れていないし痛みもない。
まだ熱が下がり切ってはいないらしく、体がとても怠いけれどそれだけだ。
「腫れてはいないが、声が出ない。お嬢様手を握りますよ。深呼吸を繰り返して下さい」
ガスパール先生の両手が私の手を握り、ガスパール先生の魔力が私に流れて来るのが分かる。
詠唱していないから初級程度の体調確認の魔法を掛けたのだろう、初級といえど発動が早いのが凄い。私はまだまだ兄様に魔法を掛ける時に時間が掛かるのに先生はあっという間に魔法を使ってしまう。
「喉に異常はない。それなのに声が出ないのか。熱はもう下がってはいるが、それでもこの状態は……」
ガスパール先生のその声は、私の耳に重く響いた。
熱が下がっているということは、私は熱を出して倒れたのだろうか。
その辺りの記憶が無い、いや、兄様に禁忌魔法を掛けた。あの後私は兄様の体調を診ていない。
『おにいちゃま! 手をかして!』
「ミルフィどうしたの? 起き上がったら駄目だよ、なぜ僕の手を?」
声はやはり出ないまま、私は兄様の手を取り体調確認の魔法を掛ける。
兄様の手はほんのりと温かい。
その温度に安堵しながら、魔法で兄様の体を確認しそのまま滋養魔法と強壮魔法を掛けようとして、ガスパール先生に止められた。
「お嬢様! いけません!」
「ガスパール先生? ……メイド長、キム先生達を呼んできて、ミルフィーヌが目を覚ましたと、他の者は皆下がって、そうだ何かお腹に優しいものをミルフィーヌに用意して」
兄様が指示を出すと一斉に動き出す。そして部屋にガスパール先生と兄様だけになってから「ガスパール先生、ミルフィーヌは何をしようとしたのですか」と聞いた。
「お嬢様は今セドリック様に体調確認の魔法を掛けたのだと思われます。そしてその後に多分滋養魔法と強壮魔法を掛けようとしたのかと」
「な、なぜ? ミルフィ君は高熱を出して倒れたんだよ。僕に魔法を掛けるなんてそんなの危ないよ!」
兄様は困惑したように私を見る。
その顔色は、禁忌魔法を使った時と比べたら天と地ほども違う。
もしかしたら私は、長い時間意識を失っていたのだろうか?
まさか、禁忌魔法を使ったせいで熱を出した?
顔色が良いとしても、体調確認の魔法の結果はあまり良くはない。
だからいつもの様に魔法を掛けなくちゃ、私の体なんてどうでもいい。
大事なのは兄様なのだから。
「ミルフィ、言うことを聞いて、ミルフィーヌ!」
兄様を無視して、兄様の体にしがみつき魔法を掛け始める。
一旦魔法が発動してしまえば、ガスパール先生にも止められることはない。
私の様な経験の少ない魔法使いの魔法を無理矢理止めるのは、魔法を掛ける方も掛けられる方も危険だからだ。
「ミ、ミルフィーヌ!」
「セドリック様、この状態のお嬢様を無理に止めるほうが危険です。そのまま魔法を受け止めて下さい」
「そんな、先生、でも、ミルフィーヌ」
兄様の体に私の魔力が満ちていく。
いつものその感覚に、安心しながら魔力を操作する。
私の声なんてどうでもいい、声なんてあっても意味がないのだから、無くていい。
そう考えて戸惑う。
どうして私は、こんな悲しいことを考えてしまうのだろう。
まるで、私が不要だと、私自身が言っているみたいだ。
「声が出なくても魔法は問題なく使えているのか、元々詠唱されず使われているがそれにしても……」
ガスパール先生は心配そうに私を見ているけれど、私は大丈夫。
私なんてどうでもいいのだから、兄様だけが大切なのだから。
この時の私は、自分のおかしさにまだ気が付いていなかったのだ。
私が目を覚ました時、ベッドの側にいたのは兄様とガスパール先生だった。
両親は部屋にいなかった、ジョゼットと兄様付きの使用人は部屋の隅に控えていたけれど、ルーシーはその中におらずキム先生もいなかった。
そして、パティも。
パティの姿が見えないことにホッとしながら、兄様がもう一度「お水いらない?」と聞いて来たから欲しいと言おうと口を開いて気が付いた。
『おみじゅ欲しい』
そう言ったつもりだったのに、私の耳に自分の声は届かなかった。
そして、兄様は私の返事が聞こえなかったのか「ミルフィ? 今なんて?」と呟いた後で横に立つガスパール先生を見た。
「お嬢様お声が出せないのですか」
ガスパール先生が問う声に「うん」と返事をしても、声が出ていないと自分でも分かる。
「お口を開いていただけますか。喉が腫れているのか?」
「……」
大きく口を開いてみるけれど、ガスパール先生の診断を待たずとも分かる。
喉は腫れていないし痛みもない。
まだ熱が下がり切ってはいないらしく、体がとても怠いけれどそれだけだ。
「腫れてはいないが、声が出ない。お嬢様手を握りますよ。深呼吸を繰り返して下さい」
ガスパール先生の両手が私の手を握り、ガスパール先生の魔力が私に流れて来るのが分かる。
詠唱していないから初級程度の体調確認の魔法を掛けたのだろう、初級といえど発動が早いのが凄い。私はまだまだ兄様に魔法を掛ける時に時間が掛かるのに先生はあっという間に魔法を使ってしまう。
「喉に異常はない。それなのに声が出ないのか。熱はもう下がってはいるが、それでもこの状態は……」
ガスパール先生のその声は、私の耳に重く響いた。
熱が下がっているということは、私は熱を出して倒れたのだろうか。
その辺りの記憶が無い、いや、兄様に禁忌魔法を掛けた。あの後私は兄様の体調を診ていない。
『おにいちゃま! 手をかして!』
「ミルフィどうしたの? 起き上がったら駄目だよ、なぜ僕の手を?」
声はやはり出ないまま、私は兄様の手を取り体調確認の魔法を掛ける。
兄様の手はほんのりと温かい。
その温度に安堵しながら、魔法で兄様の体を確認しそのまま滋養魔法と強壮魔法を掛けようとして、ガスパール先生に止められた。
「お嬢様! いけません!」
「ガスパール先生? ……メイド長、キム先生達を呼んできて、ミルフィーヌが目を覚ましたと、他の者は皆下がって、そうだ何かお腹に優しいものをミルフィーヌに用意して」
兄様が指示を出すと一斉に動き出す。そして部屋にガスパール先生と兄様だけになってから「ガスパール先生、ミルフィーヌは何をしようとしたのですか」と聞いた。
「お嬢様は今セドリック様に体調確認の魔法を掛けたのだと思われます。そしてその後に多分滋養魔法と強壮魔法を掛けようとしたのかと」
「な、なぜ? ミルフィ君は高熱を出して倒れたんだよ。僕に魔法を掛けるなんてそんなの危ないよ!」
兄様は困惑したように私を見る。
その顔色は、禁忌魔法を使った時と比べたら天と地ほども違う。
もしかしたら私は、長い時間意識を失っていたのだろうか?
まさか、禁忌魔法を使ったせいで熱を出した?
顔色が良いとしても、体調確認の魔法の結果はあまり良くはない。
だからいつもの様に魔法を掛けなくちゃ、私の体なんてどうでもいい。
大事なのは兄様なのだから。
「ミルフィ、言うことを聞いて、ミルフィーヌ!」
兄様を無視して、兄様の体にしがみつき魔法を掛け始める。
一旦魔法が発動してしまえば、ガスパール先生にも止められることはない。
私の様な経験の少ない魔法使いの魔法を無理矢理止めるのは、魔法を掛ける方も掛けられる方も危険だからだ。
「ミ、ミルフィーヌ!」
「セドリック様、この状態のお嬢様を無理に止めるほうが危険です。そのまま魔法を受け止めて下さい」
「そんな、先生、でも、ミルフィーヌ」
兄様の体に私の魔力が満ちていく。
いつものその感覚に、安心しながら魔力を操作する。
私の声なんてどうでもいい、声なんてあっても意味がないのだから、無くていい。
そう考えて戸惑う。
どうして私は、こんな悲しいことを考えてしまうのだろう。
まるで、私が不要だと、私自身が言っているみたいだ。
「声が出なくても魔法は問題なく使えているのか、元々詠唱されず使われているがそれにしても……」
ガスパール先生は心配そうに私を見ているけれど、私は大丈夫。
私なんてどうでもいいのだから、兄様だけが大切なのだから。
この時の私は、自分のおかしさにまだ気が付いていなかったのだ。
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