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なぜそんな事を?6 (キム先生視点)
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「パティは日頃から妹にこんな事をしてあげたい、あんなことをしてあげたいと話します。そして自分はもっと頑張らないといけないと。成人前から働いている者は下働きの子供等には二人程おりましたが、パティは父親を亡くしジョゼットと共に働くようになったという事情がありますから、周囲もパティに甘く……」
そういえば以前パティが侯爵の執務室の前で怠けていた時、この家の家令(あの時は執事長ではなく家令の方だったと思う。裕福な家だけあってこの家には家令と執事両方いるのだ)がパティに甘い対応をしていたのを思い出す。
「その様ですね、そういった光景は私も見たことがあります」
私が苦笑しつつそう言うと、侍女頭が恥じた様な表情を一瞬だけ見せた。
侍女頭にしてみれば、外部の人間に使用人の恥を見られた様なものだから恥じるのは当然だろう。
「それで、パティは周囲の甘やかしもあって増長していると」
「そうなのかもしれません」
「ジョゼットの振る舞いにそういう甘えや図々しさは感じませんが、ジョゼットは兎も角パティはどの様な経緯でメイド見習いになったのでしょうか」
乳母になった経緯はルーシーから大体は聞いているが、侯爵夫妻からも念のため確認したくて尋ねると侯爵夫人が口を開いた。
「本来ミルフィーヌの乳母は別の者がなる予定でしたが、馬車の事故がありその予定の者が亡くなったのです」
その話はセドリック様が話してくれた。
「私はすでに産み月近くになっており、至急乳母を探さねばなりませんでした。その頃丁度というのは不謹慎ですがジョゼットの夫が亡くなり、ジョゼットは婚家からで無ければならなくなりました」
そこで侯爵夫人は、ほぅっと小さく息を吐く。
まだ子爵夫人の事で動揺しているし、ミルフィーヌ様の出産時期の頃は子爵夫人との思い出も多いのだろうから心労もあるのだろうが、どうにもこの方は心が弱い様に見える。
「ジョゼットの嫁ぎ先は、私の従姉妹が嫁いでいるラケニオン子爵家の大奥様の妹が嫁がれた家でした。もうその妹は亡くなっていましたが、実家と折り合いが悪く帰ることが出来なかったジョゼットは他に頼れる者がなかったそうで仕方なくラケニオン子爵家を頼ったそうです。そこで私の従姉妹が、私が出産間近だから乳母を探しているかもしれないと話をしたそうです」
「侯爵夫人と従姉妹の方は仲が良いのですか? 」
「ええ、従姉妹は私の五歳上だけど従姉妹の中では仲が良かったわ。それにラケニオン子爵家は、スフィール侯爵家の領地の代官を担っている家の一つでもあるから、お義父様が信頼出来る家の紹介だと言われたのよ」
なるほど、この侯爵家と元々繋がりのある家に侯爵夫人の従姉妹が嫁いでいたのか、私は貴族家の繋がりに疎いからルーシーから聞いた時は気が付かなかった。
「そうでしたか、それでは従姉妹の方は侯爵夫人の家の紹介で結婚されたのですね」
「ええ、私と夫の婚約は幼い頃からだったのよ、従姉妹はお義父様がラケニオン子爵家の嫡男の相手に良い人を探していると私の父に相談して決まった縁だったわ。私の実家とスフィール侯爵家の派閥は元々は違っていたけれど、私と夫が婚約したことで繋がりが出来たの」
「そういう縁は素晴らしいですね」
私はあまり派閥等にも詳しくない。
家と関りを持ちたくなくて、殆ど没交渉だから当然だが家の政略の為の結婚なんてぞっとする。
「パティの妹セザンヌはスフィール侯爵家に来る少し前、ラケニオン子爵家で生まれたの。男爵家は人の情が無いのかもしれないわね」
「それで生まれたばかりのセザンヌとその頃十歳になるかならないかのパティを連れて、ジョゼットは侯爵家にやってきたというわけですね」
「ええ、パティは幼くても自分の事情をよく理解していた様だったわ。だから生まれたばかりの妹のために、自分も働きたいと自分から言い出したの」
それがメイド見習いを始めた切っ掛けなのか、父親を亡くし家から母子でおいだされた少女が、自分から妹のために働こうとしたら皆が甘やかしたくなるのは当然だろう。
「そうですか……」
使用人達が男女関係なくパティを健気な少女だと思い込んでいる中、疑った目で見ているのは侍女頭位だとすると、パティの言い訳次第では人のいい侯爵夫妻は情に絆される可能性も出てくる。
パティが今回侍女頭に嘘を見抜かれたことで反省し改心するならいいが、そうでないならこの先またミルフィ様を傷つけるかもしれない。
それは絶対に阻止しなければ。
でもどうしたらいいのだろう、パティの本心を知るには……。
「そうだ……侯爵、一度試したいことがあります。私にその試しの許可を頂けませんか?」
「試し? 分かった君に任せるよ」
安易というかなんというか、侯爵はすぐに私にそう告げたのだ。
そういえば以前パティが侯爵の執務室の前で怠けていた時、この家の家令(あの時は執事長ではなく家令の方だったと思う。裕福な家だけあってこの家には家令と執事両方いるのだ)がパティに甘い対応をしていたのを思い出す。
「その様ですね、そういった光景は私も見たことがあります」
私が苦笑しつつそう言うと、侍女頭が恥じた様な表情を一瞬だけ見せた。
侍女頭にしてみれば、外部の人間に使用人の恥を見られた様なものだから恥じるのは当然だろう。
「それで、パティは周囲の甘やかしもあって増長していると」
「そうなのかもしれません」
「ジョゼットの振る舞いにそういう甘えや図々しさは感じませんが、ジョゼットは兎も角パティはどの様な経緯でメイド見習いになったのでしょうか」
乳母になった経緯はルーシーから大体は聞いているが、侯爵夫妻からも念のため確認したくて尋ねると侯爵夫人が口を開いた。
「本来ミルフィーヌの乳母は別の者がなる予定でしたが、馬車の事故がありその予定の者が亡くなったのです」
その話はセドリック様が話してくれた。
「私はすでに産み月近くになっており、至急乳母を探さねばなりませんでした。その頃丁度というのは不謹慎ですがジョゼットの夫が亡くなり、ジョゼットは婚家からで無ければならなくなりました」
そこで侯爵夫人は、ほぅっと小さく息を吐く。
まだ子爵夫人の事で動揺しているし、ミルフィーヌ様の出産時期の頃は子爵夫人との思い出も多いのだろうから心労もあるのだろうが、どうにもこの方は心が弱い様に見える。
「ジョゼットの嫁ぎ先は、私の従姉妹が嫁いでいるラケニオン子爵家の大奥様の妹が嫁がれた家でした。もうその妹は亡くなっていましたが、実家と折り合いが悪く帰ることが出来なかったジョゼットは他に頼れる者がなかったそうで仕方なくラケニオン子爵家を頼ったそうです。そこで私の従姉妹が、私が出産間近だから乳母を探しているかもしれないと話をしたそうです」
「侯爵夫人と従姉妹の方は仲が良いのですか? 」
「ええ、従姉妹は私の五歳上だけど従姉妹の中では仲が良かったわ。それにラケニオン子爵家は、スフィール侯爵家の領地の代官を担っている家の一つでもあるから、お義父様が信頼出来る家の紹介だと言われたのよ」
なるほど、この侯爵家と元々繋がりのある家に侯爵夫人の従姉妹が嫁いでいたのか、私は貴族家の繋がりに疎いからルーシーから聞いた時は気が付かなかった。
「そうでしたか、それでは従姉妹の方は侯爵夫人の家の紹介で結婚されたのですね」
「ええ、私と夫の婚約は幼い頃からだったのよ、従姉妹はお義父様がラケニオン子爵家の嫡男の相手に良い人を探していると私の父に相談して決まった縁だったわ。私の実家とスフィール侯爵家の派閥は元々は違っていたけれど、私と夫が婚約したことで繋がりが出来たの」
「そういう縁は素晴らしいですね」
私はあまり派閥等にも詳しくない。
家と関りを持ちたくなくて、殆ど没交渉だから当然だが家の政略の為の結婚なんてぞっとする。
「パティの妹セザンヌはスフィール侯爵家に来る少し前、ラケニオン子爵家で生まれたの。男爵家は人の情が無いのかもしれないわね」
「それで生まれたばかりのセザンヌとその頃十歳になるかならないかのパティを連れて、ジョゼットは侯爵家にやってきたというわけですね」
「ええ、パティは幼くても自分の事情をよく理解していた様だったわ。だから生まれたばかりの妹のために、自分も働きたいと自分から言い出したの」
それがメイド見習いを始めた切っ掛けなのか、父親を亡くし家から母子でおいだされた少女が、自分から妹のために働こうとしたら皆が甘やかしたくなるのは当然だろう。
「そうですか……」
使用人達が男女関係なくパティを健気な少女だと思い込んでいる中、疑った目で見ているのは侍女頭位だとすると、パティの言い訳次第では人のいい侯爵夫妻は情に絆される可能性も出てくる。
パティが今回侍女頭に嘘を見抜かれたことで反省し改心するならいいが、そうでないならこの先またミルフィ様を傷つけるかもしれない。
それは絶対に阻止しなければ。
でもどうしたらいいのだろう、パティの本心を知るには……。
「そうだ……侯爵、一度試したいことがあります。私にその試しの許可を頂けませんか?」
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