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それは恋ではなく執着と言う1 (キム先生視点)
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一度目を開けたミルフィ様が再び意識を失い、下がりかけていた熱がまた上がり始めてしまった。
目を覚まさないミルフィ様を見つめながら、侯爵やセドリック様と共に付き添っていたら、突然ルーシーが呼びに来た。
理由を言わず、ただ「奥様が……」と言うルーシーのただならぬ様子に侯爵と顔を見合わせ、ミルフィ様の付き添いをセドリック様とガスパール先生に任せて侯爵と共に侯爵夫人の部屋に向かう。
侯爵夫人の私室の隣にある応接間は、裕福な侯爵家の女主人の部屋に相応しい華やかさの中にも上品さがうかがえる部屋だった。
手入れが行き届き美しい艶のある木目を見せている家具だけでなく、飾られている物の趣味も良いものばかり、妖精が水辺に遊ぶ様子を描いた絵画は流行りの画家の作品だし、薔薇を生けた花瓶も有名な工房の物だ。
確かどちらも侯爵が支援し一流に育てたと聞いたことがある。
だが今は、素晴らしい絵画を鑑賞する余裕は無かった。
何せ部屋に着くと、美しい調度品に囲まれて侯爵夫人が泣いていたのだから。
「あなた……」
泣き続ける侯爵夫人に寄り添っている侍女頭に「何があった」と侯爵が問うと、侍女頭はパティが執事見習いの男に「ミルフィーヌ様に意地悪をされて耐えられなくなって部屋を出てきた」という嘘を、泣きながら話していたところを見つけたのだそうだ。事が事だけにパティから詳しく話を聞きメイド長に事実確認を行わせている間、パティには(理由があったにせよ)仕事を放り出した事について指導していた所、メイド長はパティがミルフィーヌ様に意地悪をされたと言っている時間彼女はセドリック様の部屋にいた旨を調べてきたのだ。
つまり、ミルフィーヌ様はパティに意地悪等していない。それならパティはなぜそんな嘘を吐いたのか?
パティの言動のおかしさに、今日ミルフィーヌ様に付いていたルーシーとグレタから話を聞こうと侍女頭自ら足を運んだのだと話した。
「それで侍女頭殿がルーシー達のところに向かう途中、侯爵夫人と出会ったので夫人にパティの話をしたら一緒に確認したいと?」
使用人に話を聞く場合、普通は自分の部屋にその人を呼び出すものだが、この家の人達は自分から足を運ぶこともあるようだ。
狭い屋敷ならともかく、日頃運動らしい運動をしない上級階級のご婦人が使用人棟に行こうとするのは珍しい気がする。
余計なことを考えながら尋ねると、侍女頭は頷きながら続きを話し始めた。
「なるほど、それで奥様はパティの嘘と子爵夫人の歪んだ思いを知り衝撃を受けたと」
パティの件はともかく、もう一つの方は今更なのでは無いかと首を傾げる。
ミルフィ様の家庭教師だったオーレンス子爵夫人が侯爵に思うあまり奥様を逆恨みし、その結果ミルフィ様に八つ当たりの虐待していたのは既に明らかになっている。
現に私が魔法の師としてこの屋敷に来た時、侯爵からその件について説明を受けている。
「あなたは知って……? どうして私には?」
ハンカチを握りしめ、涙を流しながら侯爵を見つめる侯爵夫人の顔をこうして眺めているとミルフィ様を思い出す。
こうして見ると、侯爵夫人とミルフィ様はとてもよく似ていると思う。
これだけ似ているなら、子爵夫人が侯爵夫人への恨みをミルフィ様に向けたくなった理由も分かるというものだ。
「すまない。あの者がミルフィーヌにした暴力だけでも衝撃を与えると分かっていたから、その理由を君に知らせるのは酷だと……」
なるほど、侯爵は子爵夫人がミルフィーヌ様にしたことは話してもその理由の一つである侯爵夫人への恨みは言っていなかったのか。
「そんな……私はミルフィーヌの母親です。あの子が辛い目にあっていた時何も知らずにいたというのに、私への恨みが理由だったと知らずにいたなんて……私がどれだけ辛い思いをしようと知るべきことです」
「すまない、私は君が悲しむのを見たくなかったんだ。君は優しいから、ミルフィーヌの顔を見るたびに自分を責めるかもしれないだろう?」
責める? それはきっと侯爵自身だろう。
侯爵自身が自分を責めているから、こんな言葉が出るのだ。でも侯爵も悪くない。
子爵夫人からの一方的な思い、それがミルフィーヌ様への虐待理由だったなんて誰も思わないだろう。
侯爵でも侯爵夫人でもなく、理不尽な暴力をした子爵夫人がすべて悪いというのに。
目を覚まさないミルフィ様を見つめながら、侯爵やセドリック様と共に付き添っていたら、突然ルーシーが呼びに来た。
理由を言わず、ただ「奥様が……」と言うルーシーのただならぬ様子に侯爵と顔を見合わせ、ミルフィ様の付き添いをセドリック様とガスパール先生に任せて侯爵と共に侯爵夫人の部屋に向かう。
侯爵夫人の私室の隣にある応接間は、裕福な侯爵家の女主人の部屋に相応しい華やかさの中にも上品さがうかがえる部屋だった。
手入れが行き届き美しい艶のある木目を見せている家具だけでなく、飾られている物の趣味も良いものばかり、妖精が水辺に遊ぶ様子を描いた絵画は流行りの画家の作品だし、薔薇を生けた花瓶も有名な工房の物だ。
確かどちらも侯爵が支援し一流に育てたと聞いたことがある。
だが今は、素晴らしい絵画を鑑賞する余裕は無かった。
何せ部屋に着くと、美しい調度品に囲まれて侯爵夫人が泣いていたのだから。
「あなた……」
泣き続ける侯爵夫人に寄り添っている侍女頭に「何があった」と侯爵が問うと、侍女頭はパティが執事見習いの男に「ミルフィーヌ様に意地悪をされて耐えられなくなって部屋を出てきた」という嘘を、泣きながら話していたところを見つけたのだそうだ。事が事だけにパティから詳しく話を聞きメイド長に事実確認を行わせている間、パティには(理由があったにせよ)仕事を放り出した事について指導していた所、メイド長はパティがミルフィーヌ様に意地悪をされたと言っている時間彼女はセドリック様の部屋にいた旨を調べてきたのだ。
つまり、ミルフィーヌ様はパティに意地悪等していない。それならパティはなぜそんな嘘を吐いたのか?
パティの言動のおかしさに、今日ミルフィーヌ様に付いていたルーシーとグレタから話を聞こうと侍女頭自ら足を運んだのだと話した。
「それで侍女頭殿がルーシー達のところに向かう途中、侯爵夫人と出会ったので夫人にパティの話をしたら一緒に確認したいと?」
使用人に話を聞く場合、普通は自分の部屋にその人を呼び出すものだが、この家の人達は自分から足を運ぶこともあるようだ。
狭い屋敷ならともかく、日頃運動らしい運動をしない上級階級のご婦人が使用人棟に行こうとするのは珍しい気がする。
余計なことを考えながら尋ねると、侍女頭は頷きながら続きを話し始めた。
「なるほど、それで奥様はパティの嘘と子爵夫人の歪んだ思いを知り衝撃を受けたと」
パティの件はともかく、もう一つの方は今更なのでは無いかと首を傾げる。
ミルフィ様の家庭教師だったオーレンス子爵夫人が侯爵に思うあまり奥様を逆恨みし、その結果ミルフィ様に八つ当たりの虐待していたのは既に明らかになっている。
現に私が魔法の師としてこの屋敷に来た時、侯爵からその件について説明を受けている。
「あなたは知って……? どうして私には?」
ハンカチを握りしめ、涙を流しながら侯爵を見つめる侯爵夫人の顔をこうして眺めているとミルフィ様を思い出す。
こうして見ると、侯爵夫人とミルフィ様はとてもよく似ていると思う。
これだけ似ているなら、子爵夫人が侯爵夫人への恨みをミルフィ様に向けたくなった理由も分かるというものだ。
「すまない。あの者がミルフィーヌにした暴力だけでも衝撃を与えると分かっていたから、その理由を君に知らせるのは酷だと……」
なるほど、侯爵は子爵夫人がミルフィーヌ様にしたことは話してもその理由の一つである侯爵夫人への恨みは言っていなかったのか。
「そんな……私はミルフィーヌの母親です。あの子が辛い目にあっていた時何も知らずにいたというのに、私への恨みが理由だったと知らずにいたなんて……私がどれだけ辛い思いをしようと知るべきことです」
「すまない、私は君が悲しむのを見たくなかったんだ。君は優しいから、ミルフィーヌの顔を見るたびに自分を責めるかもしれないだろう?」
責める? それはきっと侯爵自身だろう。
侯爵自身が自分を責めているから、こんな言葉が出るのだ。でも侯爵も悪くない。
子爵夫人からの一方的な思い、それがミルフィーヌ様への虐待理由だったなんて誰も思わないだろう。
侯爵でも侯爵夫人でもなく、理不尽な暴力をした子爵夫人がすべて悪いというのに。
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