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駄目な私を慰める人5
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お腹が満たされた私は、ソファーに座り絵本を読みながら兄様が目覚めるのを待っていた。
兄様の部屋には、私向けの本が沢山置いてある。
ジョゼットとの勉強で、私はかなり文字が読める様になって来たと周囲に思われているが、以前の私の記憶がはっきりしてきたお陰でもある。
どうも魔法の勉強を始めてから、私は以前の記憶がはっきりしてきたようなのだ。
記憶が戻ったばかりの頃は、子爵夫人の件が露見した辺りは以前の記憶はあっても、細々したところは思い出せなかった。
子爵夫人にミルフィが勉強教えられていなかった文字の読み書きや礼儀作法等は、ジョゼットから習うまで殆ど思い出せてはいなかった。
だからお父様が確認した時、まともに文字が書けなかったのだ。
ただ、以前の私は真面目に勉強していなかったから、知識を思い出しても今のミルフィが特別優秀だと驚かれる程には勉強が出来るようになったわけではない。
苦労せずに本が読め、魔法の授業の内容を理解出来る程度だ。
だからジョゼットを教師として短期間で学び、自分で苦労せずに本が読める様になっても、それを誰も凄いということは無かった。
そもそもこの家は優秀な兄様で慣れているから、私程度では驚きはしないのだと思う。
むしろ、兄様は同じ年の頃もっと賢かったのにと嘆かれているかもしれないから、私は魔法の勉強だけでなく他の勉強ももっともっと頑張らなくてはならない。兄様程優秀では無くても、貴族令嬢として不足は無いと認められるようにならなければ、そうしなければ私は以前の私と同じ様に、お父様達に見限られてしまう。
もう遅いかもしれないけれど、少しでも挽回しなければ。
「ねえ、ルーシー。お嬢様は噂とは違うのね」
本を読むのを中断し考えに没頭していたら、私に小さな話し声が部屋の隅から聞こえて来たから、私は気が付かれないように聞き耳を立て始める。
二人が立っているのは、ソファーに座る私からは見えない位置だった。くつろぐ私の邪魔にならない位置に控えている。きっと二人からもソファーの背もたれが邪魔をして、私が見えないだろう。
この部屋は広いから、距離があれば囁き声程度であれば普通なら気にならない。
雇い主だろうがその娘だろうが、同じ部屋でああやって控えている間使用人の私語は厳禁だが、今この部屋にいるのは幼い私だけだから、小さな声なら気にしないだろうと考えているのか、メイドは気を抜いているのだろう。
だけど私は魔法の練習をしていく内に、耳がとても良くなってしまった。
今の声の大きさであれば、以前なら話をしている様だと気がついても、話の内容まで聞こえては来なかっただろうが、今は違う。
それにしてもこのメイドは、幼い私が一人いるだけだと気を抜きではないだろうか。
私の話を、本人がいる前でするなんて常識がないのかと呆れてしまう。
「違う?」
「ええ、お嬢様お菓子を作り直しさせたりするって聞いてたけれど、違ったじゃない?」
「……まさか、それでさっきあんな言い方を?」
ルーシーの声は呆れている様に聞こえる。
ルーシーは兄様が使用人の中でも信用している人なのだと思う、私が魔法を使う時ルーシーが側にいるのもその信用からだ。
そんなルーシーが仕事中に無駄話に付き合うとは思えないから、これは私の噂の内容を気にしてのことだろう。
「だって、迷宮産の食材を使った高級なお菓子を飽きたから嫌だとか言ってるというから気になるじゃない?」
つまりこのメイドは私が噂通りお菓子を作り直しさせるのか、試したということだ。
もしあの時私が「今はお菓子ではなく食事がしたい」と言っていたら、あのメイドは噂通り私が我儘だと決めつけたのかもしれない。
昼食を取っていなかったから食事がしたかったのだろうとは思わずに、我儘で作り直しさせるもいう噂は本当だったと、そう判断されてしまうところだったのだ。
「……お嬢様は、そんな事絶対に仰らないわ」
「そうなの?」
「ええ、魔法の練習をすると空腹が酷くなるから料理人が沢山お菓子を作ってくれるの嬉しいって仰っている方が、飽きたなんてとんでもない。自分のために色々な種類を作ってくれるけれど、他の仕事もあるのに大変じゃないかと心配されている方が、そんなこと言う筈ないわ」
「へえ、パティの話とだいぶ違うわね。もしかしてルーシーには良い顔してるとか無い?」
ルーシーがきっぱりと否定してくれたけれど、メイドはルーシーの言葉を疑っている。
「パティ、他にも何かあなたに言っているの?」
「私にというか、……ほら、あの子甘えるの上手いじゃない?」
甘えるのが上手いと聞いて、頭に浮かんだのは先日お父様の部屋の前で見せたパティの姿だった。
兄様の部屋には、私向けの本が沢山置いてある。
ジョゼットとの勉強で、私はかなり文字が読める様になって来たと周囲に思われているが、以前の私の記憶がはっきりしてきたお陰でもある。
どうも魔法の勉強を始めてから、私は以前の記憶がはっきりしてきたようなのだ。
記憶が戻ったばかりの頃は、子爵夫人の件が露見した辺りは以前の記憶はあっても、細々したところは思い出せなかった。
子爵夫人にミルフィが勉強教えられていなかった文字の読み書きや礼儀作法等は、ジョゼットから習うまで殆ど思い出せてはいなかった。
だからお父様が確認した時、まともに文字が書けなかったのだ。
ただ、以前の私は真面目に勉強していなかったから、知識を思い出しても今のミルフィが特別優秀だと驚かれる程には勉強が出来るようになったわけではない。
苦労せずに本が読め、魔法の授業の内容を理解出来る程度だ。
だからジョゼットを教師として短期間で学び、自分で苦労せずに本が読める様になっても、それを誰も凄いということは無かった。
そもそもこの家は優秀な兄様で慣れているから、私程度では驚きはしないのだと思う。
むしろ、兄様は同じ年の頃もっと賢かったのにと嘆かれているかもしれないから、私は魔法の勉強だけでなく他の勉強ももっともっと頑張らなくてはならない。兄様程優秀では無くても、貴族令嬢として不足は無いと認められるようにならなければ、そうしなければ私は以前の私と同じ様に、お父様達に見限られてしまう。
もう遅いかもしれないけれど、少しでも挽回しなければ。
「ねえ、ルーシー。お嬢様は噂とは違うのね」
本を読むのを中断し考えに没頭していたら、私に小さな話し声が部屋の隅から聞こえて来たから、私は気が付かれないように聞き耳を立て始める。
二人が立っているのは、ソファーに座る私からは見えない位置だった。くつろぐ私の邪魔にならない位置に控えている。きっと二人からもソファーの背もたれが邪魔をして、私が見えないだろう。
この部屋は広いから、距離があれば囁き声程度であれば普通なら気にならない。
雇い主だろうがその娘だろうが、同じ部屋でああやって控えている間使用人の私語は厳禁だが、今この部屋にいるのは幼い私だけだから、小さな声なら気にしないだろうと考えているのか、メイドは気を抜いているのだろう。
だけど私は魔法の練習をしていく内に、耳がとても良くなってしまった。
今の声の大きさであれば、以前なら話をしている様だと気がついても、話の内容まで聞こえては来なかっただろうが、今は違う。
それにしてもこのメイドは、幼い私が一人いるだけだと気を抜きではないだろうか。
私の話を、本人がいる前でするなんて常識がないのかと呆れてしまう。
「違う?」
「ええ、お嬢様お菓子を作り直しさせたりするって聞いてたけれど、違ったじゃない?」
「……まさか、それでさっきあんな言い方を?」
ルーシーの声は呆れている様に聞こえる。
ルーシーは兄様が使用人の中でも信用している人なのだと思う、私が魔法を使う時ルーシーが側にいるのもその信用からだ。
そんなルーシーが仕事中に無駄話に付き合うとは思えないから、これは私の噂の内容を気にしてのことだろう。
「だって、迷宮産の食材を使った高級なお菓子を飽きたから嫌だとか言ってるというから気になるじゃない?」
つまりこのメイドは私が噂通りお菓子を作り直しさせるのか、試したということだ。
もしあの時私が「今はお菓子ではなく食事がしたい」と言っていたら、あのメイドは噂通り私が我儘だと決めつけたのかもしれない。
昼食を取っていなかったから食事がしたかったのだろうとは思わずに、我儘で作り直しさせるもいう噂は本当だったと、そう判断されてしまうところだったのだ。
「……お嬢様は、そんな事絶対に仰らないわ」
「そうなの?」
「ええ、魔法の練習をすると空腹が酷くなるから料理人が沢山お菓子を作ってくれるの嬉しいって仰っている方が、飽きたなんてとんでもない。自分のために色々な種類を作ってくれるけれど、他の仕事もあるのに大変じゃないかと心配されている方が、そんなこと言う筈ないわ」
「へえ、パティの話とだいぶ違うわね。もしかしてルーシーには良い顔してるとか無い?」
ルーシーがきっぱりと否定してくれたけれど、メイドはルーシーの言葉を疑っている。
「パティ、他にも何かあなたに言っているの?」
「私にというか、……ほら、あの子甘えるの上手いじゃない?」
甘えるのが上手いと聞いて、頭に浮かんだのは先日お父様の部屋の前で見せたパティの姿だった。
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