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セドリックの提案とキム先生の提案4 (キム先生視点)
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「私も同じです。ミルフィ様が悲しむこと無いように、傷つけられることが無いように守りたい」
私はただの家庭教師、ガスパール先生からの頼みを断れ無かったからこの屋敷に来ただけ、私は宮廷魔法使い達の殆どがそうである様に自分の興味がある事以外自ら動く事をせず協調性もない自分勝手な人間だ。
幼い二人の師として私ほど向いていない者はいないと、分かっている。
それでも幼いミルフィ様を守りたいという気持ちに、嘘はない。
「キム先生」
「私はまだ信頼を得られてはいないでしょう、それでもミルフィ様を守りたいと思う気持ちだけは信じて欲しいのです」
ミルフィ様は兎も角、セドリック様はまだ私を警戒している様に見える。
その警戒を解かなければ、私は本当の意味でセドリック様の魔法の師にはなれないだろうし、ミルフィ様を守る一人にも認められないだろう。
「どうして?」
「どうしてでしょう、ミルフィ様がこの色が私に似合うと言って下さったから、なんて簡単な理由ではいけないでしょうか」
右手で自分のローブに触れながら、普段は殆ど活動しない表情筋を動かして微笑む。
今私が来ているのは、ミルフィ様とセドリック様が私に贈って下さった魔法使いのローブだ。
空色の美しいこのローブは、普段暗い色しか身に着けることがない明るく綺麗な空色だ。
私は髪も瞳も灰色で、子供の頃は兄弟達から薄汚い、部屋の隅にたまった埃の様な髪だと馬鹿にされて育った。
灰色は父方の家系には多く出る色だったが髪と瞳の両方が灰色というのは珍しく、実際父も兄弟も瞳だけ灰色で髪は金だった。母と父方の祖母は二人共金色の髪に薄い青の瞳だったからきっと父達は祖母や母の色を継いだのだと思う。
幼い頃から艶のない灰色の髪をからかわれてきた私は、綺麗な色など似合わないと自分自身で決めつけていて、いくら母が綺麗な色の服を選ぼうとしても頑なに拒否し暗い色ばかり身に着けていた。
薄汚い灰色の髪と兄弟と同じ筈なのに、一人だけ暗く見える灰色の瞳、それに合わせる様に暗い色の服を着る私は無表情過ぎて子供らしくないと周囲の大人達から言われていた。
「空の色、先生の笑った顔はお日様みたいに温かいって、お日様の色は服に出来ないけれど、晴れた空の色なら服に出来るねって、ミルフィが言ってその色を選んだんだ」
「はい」
ミルフィ様は、「キム先生は笑うとあったかいお日様みたい。これはお日様が出てるときの空の色なのよ。先生の色よ」と言いながら贈ってくれた。
私の兄弟は薄汚れた色だと馬鹿にした髪も、「空に浮かんでる雲みたいね」と言ってくれた。
青空に浮かぶ雲なら白ではないのか、そんな捻くれた考えも一瞬浮かんだが、空色のローブの上に落ちる私の長い髪は、ミルフィ様の言葉で薄汚い灰色の部屋の隅にあるような埃ではなく、晴れた空にぽかりと浮かぶ雲の一つになれた気がした。
私の劣等感の象徴ともいえる髪、魔法使いにとって魔力が宿るといわれる長い髪は必須だから仕方なくのばしていた髪、視界に入る度嫌な気持ちになっていたそれが、ミルフィ様の一言で変わったんだ。
「恥ずかしい話ですが、私はこの髪が嫌いでした」
「え、髪? 綺麗な色ですけれど」
驚いた様に言うルーシーに、驚いて視線を向けると彼女は恥ずかしそうに視線を伏せる。
いきなり何を言い出すのかとセドリック様は不審そうだが、理由を隠したままではセドリック様からの信頼は得られないだろう。
「兄弟も両親も金色の髪で、私だけ目も髪も灰色だったのです。曽祖父が私と同じだったと聞いていますが、私は自分だけ家族と違うと感じていましたし兄弟達からは薄汚い髪だと馬鹿にされていました」
「そんな」
「私自身そう思っていたのです。薄汚い色の髪の私は着る服も暗い色ばかり、ですが、ミルフィ様はこの色が似合うと言ってくれた。私の髪は晴れた空に浮かぶ雲の様だと。いい大人の私がその一言でどれだけ救われたか」
子供の頃、兄弟に馬鹿にされて悔しかった。
だが、父も母も、それを否定せず困ったように笑うだけで、私は悲しくて仕方がなかった。
「キム先生の髪、綺麗だと僕も思います。ミルフィの選んだ空の色は、先生によく似合っています」
「ありがとうございます」
「僕達と知り合ったばかりのキム先生が、ミルフィに良くしてくれる理由が分からなかったけれど、そういう理由があるなら僕はキム先生を信じます」
そう言うと、セドリック様は私に右手を差し出した。
「信じます。どうかミルフィを守る為に先生の力を貸してください」
「はい、どうぞ私の力をお使いください」
セドリック様の右手を握り、私はミルフィ様を守ると誓ったのだ。
私はただの家庭教師、ガスパール先生からの頼みを断れ無かったからこの屋敷に来ただけ、私は宮廷魔法使い達の殆どがそうである様に自分の興味がある事以外自ら動く事をせず協調性もない自分勝手な人間だ。
幼い二人の師として私ほど向いていない者はいないと、分かっている。
それでも幼いミルフィ様を守りたいという気持ちに、嘘はない。
「キム先生」
「私はまだ信頼を得られてはいないでしょう、それでもミルフィ様を守りたいと思う気持ちだけは信じて欲しいのです」
ミルフィ様は兎も角、セドリック様はまだ私を警戒している様に見える。
その警戒を解かなければ、私は本当の意味でセドリック様の魔法の師にはなれないだろうし、ミルフィ様を守る一人にも認められないだろう。
「どうして?」
「どうしてでしょう、ミルフィ様がこの色が私に似合うと言って下さったから、なんて簡単な理由ではいけないでしょうか」
右手で自分のローブに触れながら、普段は殆ど活動しない表情筋を動かして微笑む。
今私が来ているのは、ミルフィ様とセドリック様が私に贈って下さった魔法使いのローブだ。
空色の美しいこのローブは、普段暗い色しか身に着けることがない明るく綺麗な空色だ。
私は髪も瞳も灰色で、子供の頃は兄弟達から薄汚い、部屋の隅にたまった埃の様な髪だと馬鹿にされて育った。
灰色は父方の家系には多く出る色だったが髪と瞳の両方が灰色というのは珍しく、実際父も兄弟も瞳だけ灰色で髪は金だった。母と父方の祖母は二人共金色の髪に薄い青の瞳だったからきっと父達は祖母や母の色を継いだのだと思う。
幼い頃から艶のない灰色の髪をからかわれてきた私は、綺麗な色など似合わないと自分自身で決めつけていて、いくら母が綺麗な色の服を選ぼうとしても頑なに拒否し暗い色ばかり身に着けていた。
薄汚い灰色の髪と兄弟と同じ筈なのに、一人だけ暗く見える灰色の瞳、それに合わせる様に暗い色の服を着る私は無表情過ぎて子供らしくないと周囲の大人達から言われていた。
「空の色、先生の笑った顔はお日様みたいに温かいって、お日様の色は服に出来ないけれど、晴れた空の色なら服に出来るねって、ミルフィが言ってその色を選んだんだ」
「はい」
ミルフィ様は、「キム先生は笑うとあったかいお日様みたい。これはお日様が出てるときの空の色なのよ。先生の色よ」と言いながら贈ってくれた。
私の兄弟は薄汚れた色だと馬鹿にした髪も、「空に浮かんでる雲みたいね」と言ってくれた。
青空に浮かぶ雲なら白ではないのか、そんな捻くれた考えも一瞬浮かんだが、空色のローブの上に落ちる私の長い髪は、ミルフィ様の言葉で薄汚い灰色の部屋の隅にあるような埃ではなく、晴れた空にぽかりと浮かぶ雲の一つになれた気がした。
私の劣等感の象徴ともいえる髪、魔法使いにとって魔力が宿るといわれる長い髪は必須だから仕方なくのばしていた髪、視界に入る度嫌な気持ちになっていたそれが、ミルフィ様の一言で変わったんだ。
「恥ずかしい話ですが、私はこの髪が嫌いでした」
「え、髪? 綺麗な色ですけれど」
驚いた様に言うルーシーに、驚いて視線を向けると彼女は恥ずかしそうに視線を伏せる。
いきなり何を言い出すのかとセドリック様は不審そうだが、理由を隠したままではセドリック様からの信頼は得られないだろう。
「兄弟も両親も金色の髪で、私だけ目も髪も灰色だったのです。曽祖父が私と同じだったと聞いていますが、私は自分だけ家族と違うと感じていましたし兄弟達からは薄汚い髪だと馬鹿にされていました」
「そんな」
「私自身そう思っていたのです。薄汚い色の髪の私は着る服も暗い色ばかり、ですが、ミルフィ様はこの色が似合うと言ってくれた。私の髪は晴れた空に浮かぶ雲の様だと。いい大人の私がその一言でどれだけ救われたか」
子供の頃、兄弟に馬鹿にされて悔しかった。
だが、父も母も、それを否定せず困ったように笑うだけで、私は悲しくて仕方がなかった。
「キム先生の髪、綺麗だと僕も思います。ミルフィの選んだ空の色は、先生によく似合っています」
「ありがとうございます」
「僕達と知り合ったばかりのキム先生が、ミルフィに良くしてくれる理由が分からなかったけれど、そういう理由があるなら僕はキム先生を信じます」
そう言うと、セドリック様は私に右手を差し出した。
「信じます。どうかミルフィを守る為に先生の力を貸してください」
「はい、どうぞ私の力をお使いください」
セドリック様の右手を握り、私はミルフィ様を守ると誓ったのだ。
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