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セドリックの提案とキム先生の提案3 (キム先生視点)
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「噂集めの理由はともかく、セドリック様のお体はだいぶ良くなっているように見えますので、散歩の時間を少しずつ増やして、天気のいい日は外で昼食を召し上がってもいいかもしれませんね」
鬱々とした気持ちをごまかすため、話題を変えるとセドリック様は一瞬不思議そうな顔をした後で話にのってきた。
「外で昼食?」
「ええ、東屋に用意して爽やかな風を感じながら頂くのです」
「ミルフィが喜びそう!」
私の提案に、セドリック様の表情が明るくなる。
ミルフィ様が魔法を掛けるようになってからというもの、セドリック様のお体の調子はどんどんよくなっている。
今迄は熱を出せば数日寝込み、日々軽い頭痛と倦怠感があったセドリック様のお体は、熱を出しても翌日には下がり、倦怠感も減ってきたというのだから驚くばかりだ。
ミルフィ様は外で過ごされるのがお好きなようだし、侯爵家の庭は王都だというのにかなり広い。
二人で仲良く過ごす時間を増やすことは、きっと良い気晴らしになるだろう。
「ミルフィの魔法のおかげで熱を出す日も少なくなってきたから、ガスパール先生も良いと言ってくださると思う」
「ミルフィ様がお喜びになりますね」
「うん。以前は少し長く日に当たっていただけで熱を出していたけれど、今はそれも無いし」
賢いといっても幼い子供であることは、セドリック様もミルフィ様も同じだ。
素直に喜んでいるセドリック様を微笑ましく見ていた私は、セドリック様の言葉に胸をぎゅっと掴まれた様に苦しくなった。
「このまま元気になれたら、いつか領地に行ける日も来るかもしれない」
「セドリック様、その日は近いと思います」
セドリック様が嬉しそうに言うその姿に、ルーシーが両手を胸の辺りで組み、祈るようにしながら頷いている。
「そうだったら嬉しい。領地の丘の上から菜の花畑が一面に黄色の絨毯を広げた様に見えるとお父様から聞いたことがあるんだ。ミルフィにその景色を見せてあげたいな」
「ああ、侯爵領の菜の花油は有名ですね」
セドリック様の願いに言葉を失いかけながら、何でもないという顔で私は口を開く。
「そうだよ。とっても良い油が取れるから王宮に献上もしているんだ」
菜の花の種から食用油を取れるらしいが、侯爵領では土魔法を利用して一年中菜の花を栽培し種を採取しているらしい。
元々麦やその他の農作物もよく育つ土地ではあるようだが、土魔法の使い手を上手く使ってもいるのだろう。
「お祖父様の代で菜種油と大豆油を領地の要とするのを決めたと聞いた。主食となる麦を育てるのは当然として、他領で育てるのが難しいものを育て領地を豊かにするために考えられたんだ」
代替わりされた前侯爵夫婦は、今領地に暮らしておられると聞いている。
鉱山と迷宮もあり、そこからの収入も十分すぎる程に入ってくるらしいが、食料が不安なく育っているのは大事なことだ。
今の侯爵も優秀な方のようだが、前侯爵もそうなのだろう。
「侯爵領は豊かな土地なのですね」
「そうとても豊かな地なんだ。だからこそ領主の責任は重い。僕にはそれが……。先生、僕は絶対に元気にならなくてはいけない。ミルフィが頑張ってくれているからここまでになりました。でもここで満足してはいけない」
ぎゅっと拳を握りしめながら、セドリック様は私の顔を真剣な眼差しで見つめる。
「ミルフィを幸せにしたい。こんな小さな体で僕に魔法をかけてくれている。僕は頼りない、ミルフィが辛かった時何も知らず助けられなかった、情けない兄なのに。そんな僕にミルフィは一生懸命魔法を掛けて元気になってと……」
「セドリック様」
「僕はミルフィを幸せにしたい。今度こそミルフィが泣かずにいられるようにしたい」
ミルフィ様が家庭教師だった子爵夫人から虐待されていたのを、誰も気がつけずにいた。
それをセドリック様は悔いているのだろう。
「ミルフィを守りたいんだ」
セドリック様の決意は、静かな部屋と私の心に重く響いていった。
鬱々とした気持ちをごまかすため、話題を変えるとセドリック様は一瞬不思議そうな顔をした後で話にのってきた。
「外で昼食?」
「ええ、東屋に用意して爽やかな風を感じながら頂くのです」
「ミルフィが喜びそう!」
私の提案に、セドリック様の表情が明るくなる。
ミルフィ様が魔法を掛けるようになってからというもの、セドリック様のお体の調子はどんどんよくなっている。
今迄は熱を出せば数日寝込み、日々軽い頭痛と倦怠感があったセドリック様のお体は、熱を出しても翌日には下がり、倦怠感も減ってきたというのだから驚くばかりだ。
ミルフィ様は外で過ごされるのがお好きなようだし、侯爵家の庭は王都だというのにかなり広い。
二人で仲良く過ごす時間を増やすことは、きっと良い気晴らしになるだろう。
「ミルフィの魔法のおかげで熱を出す日も少なくなってきたから、ガスパール先生も良いと言ってくださると思う」
「ミルフィ様がお喜びになりますね」
「うん。以前は少し長く日に当たっていただけで熱を出していたけれど、今はそれも無いし」
賢いといっても幼い子供であることは、セドリック様もミルフィ様も同じだ。
素直に喜んでいるセドリック様を微笑ましく見ていた私は、セドリック様の言葉に胸をぎゅっと掴まれた様に苦しくなった。
「このまま元気になれたら、いつか領地に行ける日も来るかもしれない」
「セドリック様、その日は近いと思います」
セドリック様が嬉しそうに言うその姿に、ルーシーが両手を胸の辺りで組み、祈るようにしながら頷いている。
「そうだったら嬉しい。領地の丘の上から菜の花畑が一面に黄色の絨毯を広げた様に見えるとお父様から聞いたことがあるんだ。ミルフィにその景色を見せてあげたいな」
「ああ、侯爵領の菜の花油は有名ですね」
セドリック様の願いに言葉を失いかけながら、何でもないという顔で私は口を開く。
「そうだよ。とっても良い油が取れるから王宮に献上もしているんだ」
菜の花の種から食用油を取れるらしいが、侯爵領では土魔法を利用して一年中菜の花を栽培し種を採取しているらしい。
元々麦やその他の農作物もよく育つ土地ではあるようだが、土魔法の使い手を上手く使ってもいるのだろう。
「お祖父様の代で菜種油と大豆油を領地の要とするのを決めたと聞いた。主食となる麦を育てるのは当然として、他領で育てるのが難しいものを育て領地を豊かにするために考えられたんだ」
代替わりされた前侯爵夫婦は、今領地に暮らしておられると聞いている。
鉱山と迷宮もあり、そこからの収入も十分すぎる程に入ってくるらしいが、食料が不安なく育っているのは大事なことだ。
今の侯爵も優秀な方のようだが、前侯爵もそうなのだろう。
「侯爵領は豊かな土地なのですね」
「そうとても豊かな地なんだ。だからこそ領主の責任は重い。僕にはそれが……。先生、僕は絶対に元気にならなくてはいけない。ミルフィが頑張ってくれているからここまでになりました。でもここで満足してはいけない」
ぎゅっと拳を握りしめながら、セドリック様は私の顔を真剣な眼差しで見つめる。
「ミルフィを幸せにしたい。こんな小さな体で僕に魔法をかけてくれている。僕は頼りない、ミルフィが辛かった時何も知らず助けられなかった、情けない兄なのに。そんな僕にミルフィは一生懸命魔法を掛けて元気になってと……」
「セドリック様」
「僕はミルフィを幸せにしたい。今度こそミルフィが泣かずにいられるようにしたい」
ミルフィ様が家庭教師だった子爵夫人から虐待されていたのを、誰も気がつけずにいた。
それをセドリック様は悔いているのだろう。
「ミルフィを守りたいんだ」
セドリック様の決意は、静かな部屋と私の心に重く響いていった。
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