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試しと後悔 2
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私の魔力を魔法発動の力として使う。細く細く魔力を放出して、弱い魔法を連続で使う。
兄様の体はとても弱いから、強い魔法は使えないから、少しずつ少しずつ体に力を与えていく。
「弱く魔法をつかうの、それがだいじなの、くりかえしくりかえししゅるの」
じれったくなるほど弱い力で魔法をかけ続けるのは、幼い体にはかなりキツイけれど、私は前回この魔法を数え切れない回数掛け続けた。
魔法を使うのも魔法を掛けられるのも私自身だったから魔石を使っていたけれど、使ってみると自分の魔力を使う方が簡単に思える。
「お上手です、しっかり魔法が発動し維持できておりますぞ」
驚くガスパール先生の声を面映ゆく感じながら、私は魔法を維持し続ける。
前回のガスパール先生がこの方法を取らなかったのは、先生の治療方法が間違っていたわけではなくこの頃はまだ滋養魔法と強壮魔法は、大人の病後の患者に使うものとされていて、兄様の様な体の弱い子供に使うことは無かったためだ。
私がなぜ兄様の体に良いのではと思いついたのかといえば、偶然ではなく前回の私にこの魔法を教えてくれた時に、ガスパール先生が話してくれたからだった。
確か王族だか公爵家だったかの子供が虚弱で、でも跡取りになれる子供が一人だけだったから、ありとあらゆる治癒魔法や薬を使ったのだそうだ。
それでも良くならず万策尽きかけた時、専属の治癒師が子供の心の支えになればと二つの魔法を日に何度も掛けたのだという。
長い月日が掛かりはしたが、子供は食事を沢山取れる様になり長く歩けるようになった。
熱を出さなくなり、寝込むことも無くなったのだと聞いた時、ガスパール先生は兄様にも同じ魔法を使っていたらと考え、子供を授かれる体力すらなかった当時の私の体も健康に出来るのではと考えたのだそうだ。
多分ガスパール先生は、私を見捨てられなかったのではなく、私に親身になることで兄様を救えなかった罪滅ぼしをしようとしていたのだろう。
そうでなければ、両親に見限られ夫と関係も良くなかった私に気遣う理由がない。
「……どう? もうひとつも?」
「いいえ、ミルフィ様十分でございます。立派に魔法を発動されておりました。魔力の操作も完璧にされておいででしたし、その量も一定、素晴らしい」
「りっぱ? じょうずにできた?」
ガスパール先生の言う難しい言葉が分からないと首を傾げつつ、本当に出来ていたのか不安でキム先生に尋ねる。
「ええ、とても上手でしたよ。ミルフィ様お腹は空いていませんか」
「おなか? お菓子食べたい!」
私の魔力は、まだそれ程多くないのだろう。
少し魔法を使っただけなのに、食事して少し時間が過ぎた程度には空腹になっている。
「では焼き菓子を召し上がって下さい。何か飲み物も飲まれますか」
「果汁がいい」
キム先生の問いに答える私の様子を、ガスパール先生は微笑ましそうに見つめている。
その視線はとても優しくて、前回の視線とは違うと比較出来る。
前回の先生の目は、憐れんでいた。
暗い部屋で一人で過ごす日々、子供が欲しくて、子供が生まれたら何もかもが変わるのだと信じていた私を、先生の目はただ憐れんでいた。
「お兄ちゃまに魔法かけていい?」
二人の返事を待っていると、キム先生が私の前に焼き菓子を盛った皿を置き、果汁を注いだカップを持たせてくれる。
まずカップに口をつけ一息ついた後、「だめ?」と再度尋ねる。
「ミルフィ様が上手に魔法を使われた事、侯爵にお伝えしますが、判断されるのは私達ではなく」
「おとうしゃまがだめって言ったら」
カップを持つ手が震えて、果汁が揺れる。
一口飲んだだけで、空腹が少し満たされた感じがするから迷宮産の果物の汁なのかもしれない。
私の知らない味だけれど、甘くねっとりとしていて美味しい。
沢山のお菓子も果汁も、私のために用意されたものだ。見限られた子でも、両親はこんな贅沢なものを私にも用意してくれる。
私は少しでも応えたい。
どうしようもないと見限られた前回の私より、今の私の方が家の為になる。
私の魔力全て使ってでも、兄様を守る。
だからその為にも、お父様を説得しなければ。
「ミルフィお願いしゅる。魔法使わせてって」
兄様を救えるのなら、私なんてどうなってもいいのだから、すでに今回の私も両親に見限られているのだから、私のすべてを兄様の為に使う。
俯き決断する私は、心配そうに私を見つめる二人の視線には気がついていなかった。
兄様の体はとても弱いから、強い魔法は使えないから、少しずつ少しずつ体に力を与えていく。
「弱く魔法をつかうの、それがだいじなの、くりかえしくりかえししゅるの」
じれったくなるほど弱い力で魔法をかけ続けるのは、幼い体にはかなりキツイけれど、私は前回この魔法を数え切れない回数掛け続けた。
魔法を使うのも魔法を掛けられるのも私自身だったから魔石を使っていたけれど、使ってみると自分の魔力を使う方が簡単に思える。
「お上手です、しっかり魔法が発動し維持できておりますぞ」
驚くガスパール先生の声を面映ゆく感じながら、私は魔法を維持し続ける。
前回のガスパール先生がこの方法を取らなかったのは、先生の治療方法が間違っていたわけではなくこの頃はまだ滋養魔法と強壮魔法は、大人の病後の患者に使うものとされていて、兄様の様な体の弱い子供に使うことは無かったためだ。
私がなぜ兄様の体に良いのではと思いついたのかといえば、偶然ではなく前回の私にこの魔法を教えてくれた時に、ガスパール先生が話してくれたからだった。
確か王族だか公爵家だったかの子供が虚弱で、でも跡取りになれる子供が一人だけだったから、ありとあらゆる治癒魔法や薬を使ったのだそうだ。
それでも良くならず万策尽きかけた時、専属の治癒師が子供の心の支えになればと二つの魔法を日に何度も掛けたのだという。
長い月日が掛かりはしたが、子供は食事を沢山取れる様になり長く歩けるようになった。
熱を出さなくなり、寝込むことも無くなったのだと聞いた時、ガスパール先生は兄様にも同じ魔法を使っていたらと考え、子供を授かれる体力すらなかった当時の私の体も健康に出来るのではと考えたのだそうだ。
多分ガスパール先生は、私を見捨てられなかったのではなく、私に親身になることで兄様を救えなかった罪滅ぼしをしようとしていたのだろう。
そうでなければ、両親に見限られ夫と関係も良くなかった私に気遣う理由がない。
「……どう? もうひとつも?」
「いいえ、ミルフィ様十分でございます。立派に魔法を発動されておりました。魔力の操作も完璧にされておいででしたし、その量も一定、素晴らしい」
「りっぱ? じょうずにできた?」
ガスパール先生の言う難しい言葉が分からないと首を傾げつつ、本当に出来ていたのか不安でキム先生に尋ねる。
「ええ、とても上手でしたよ。ミルフィ様お腹は空いていませんか」
「おなか? お菓子食べたい!」
私の魔力は、まだそれ程多くないのだろう。
少し魔法を使っただけなのに、食事して少し時間が過ぎた程度には空腹になっている。
「では焼き菓子を召し上がって下さい。何か飲み物も飲まれますか」
「果汁がいい」
キム先生の問いに答える私の様子を、ガスパール先生は微笑ましそうに見つめている。
その視線はとても優しくて、前回の視線とは違うと比較出来る。
前回の先生の目は、憐れんでいた。
暗い部屋で一人で過ごす日々、子供が欲しくて、子供が生まれたら何もかもが変わるのだと信じていた私を、先生の目はただ憐れんでいた。
「お兄ちゃまに魔法かけていい?」
二人の返事を待っていると、キム先生が私の前に焼き菓子を盛った皿を置き、果汁を注いだカップを持たせてくれる。
まずカップに口をつけ一息ついた後、「だめ?」と再度尋ねる。
「ミルフィ様が上手に魔法を使われた事、侯爵にお伝えしますが、判断されるのは私達ではなく」
「おとうしゃまがだめって言ったら」
カップを持つ手が震えて、果汁が揺れる。
一口飲んだだけで、空腹が少し満たされた感じがするから迷宮産の果物の汁なのかもしれない。
私の知らない味だけれど、甘くねっとりとしていて美味しい。
沢山のお菓子も果汁も、私のために用意されたものだ。見限られた子でも、両親はこんな贅沢なものを私にも用意してくれる。
私は少しでも応えたい。
どうしようもないと見限られた前回の私より、今の私の方が家の為になる。
私の魔力全て使ってでも、兄様を守る。
だからその為にも、お父様を説得しなければ。
「ミルフィお願いしゅる。魔法使わせてって」
兄様を救えるのなら、私なんてどうなってもいいのだから、すでに今回の私も両親に見限られているのだから、私のすべてを兄様の為に使う。
俯き決断する私は、心配そうに私を見つめる二人の視線には気がついていなかった。
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