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おかしな言動5
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「夢のおつげがあるとしても、まだこの子が魔法を使うのは……」
以前の夢の経緯を知るお父様ですら躊躇している様子に、私はもう一押し必要なのだと気が付いた。
いくら兄様だけが大切だとはいえ、キム先生の前ですぐに私に魔法を使えとは言えないのだろう。
だからもう一押しが必要、でもどうしたらいいのだろう。
何が必要? 頭の悪い私でも必死に考えれば何か思いつく筈だと、私は食事の手を止めずに考える。
必要なのは、今お兄様に回復魔法を掛ける事が必要だとお父様が考える事、魔法を掛けるのは私でもガスパール先生でもどちらでも良い。
必要なのはお兄様に体力をつけ、風邪をひいても重症化しない様になる事なのだから。
「まにあわなくなるの?」
「ミルフィ、それはどういう」
「ミルフィ、おばあ様は他に何か言っていた?」
間に合わなくなると、突然言い始めた私をお父様は不審なものでも見る様に見ている。
兄様は、私がおばあ様から他にも何か言われているのだと考えたのか、続きを話せとばかりに聞いて来た。
「せいめい……りょく? よわいから、ええと……」
スラスラと話してはいけない。
私は前回の記憶を取り戻してから兄様を死なせない為に必要な魔法を考えていた。
必要な魔法、兄様の生命力が弱いならそれを補える様にしなければならない。
「ええと」
ゆっくりと考えて、夢の内容を思い出している振りをしながら、知らない言葉をお祖母様から聞いた振りをしなければいけない。
困った様に眉をしかめて、私は周囲を見渡しながら考える振りを続ける。
「焦らなくていいよ。覚えていることだけ教えて」
兄様は私の考えを気が付いているわけではないだろうけれど、夢の内容を思い出そうとしている私に声を掛ける。
「じゅよう? きょう……きょうしょう?」
「じゅよう? きょうしょう? 先生分かりますか」
お父様は私の言葉を正しく聞いて、でも意味が分からなかったのだろう。
わざと言葉を拙くしているのだから、当たり前だ。
滋養と強壮、本当はこれが正しい。
滋養魔法と強壮魔法、これは中級の魔法だけれどあまり使われない魔法だ。
この二つの魔法は、以前の私にガスパール先生が魔法を教えてくれたものだ。
結婚して暫く過ぎてから、子供がなかなか出来ない私はガスパール先生にどうしたら子供が授かれるか相談していた。
私は神経質な上、常に苛々している人間だった。
偏食で小食で体力も無かった。
ガスパール先生は、子供を授かっても無事に赤ん坊を産むには母親の体力が必要だと私を諭し、食事の量を増やす様に促した。
それと同時に私に滋養魔法と強壮魔法を教えてくれたのだ。
私が習ったのは魔石の力を使い魔法を発動するもので、毎日その魔法を使うとなれば費用がかなり掛かるけれどどうしても子供が欲しかった私に躊躇いは無かった。
でもあれは魔法を掛ける者と受ける者が同じだったから魔石が必要だったのだ。
私が兄様に魔法を使うなら、私の魔力を使えばいいだけだ。
子供が授かるまで二つの魔法を掛け続け、子供を授かってからも駄目押しとばかりに使い続けた私はこの二つの魔法は中級魔法とはいえ今でも簡単に使う事が出来る。
魔法の練習から逃げ続け、治癒魔法を使う慈善活動も全く熱心では無かった私が子供欲しさに必死になって習得した魔法だ、子供が授かってからも自分と子供に掛け続け、皮肉なことにそれで他の治癒魔法も上手く使えるようになった。
子供が生まれて、でも私は子供と疎遠だった。
あんなに欲しかった子供、愛したかったのに、私は……なぜ?
「はじめはませき? を使うの。慣れたら自分のまりょく? で出来るようにしたからすぐに使いなさいって」
子供のことを思い出そうとすると、頭の中に靄がかかったようになる。
気にはなるけれど、今は兄様のことだと思い直して拙い言葉を意識して話す。
「すぐに使う? でもミルフィはまだ何も魔法は使えないだろう」
お父様は私が魔法を使う事は反対なのだろうか?
兄様が助かるなら、私なんてどうでもいいと思っているくせに。
大切なのは兄様だけなのに。
「使えるって言ったものっ! ミルフィが魔法使える様にしたから、お兄ちゃまに絶対に毎日使うんだよって言ってたのっ! そうしないと駄目って、間に合わなくなるって言ったんだものっ!」
どうしてお父様は困った様な顔で私を見ているのか分からなくて、私は癇癪を起し大声を上げた。
「ミルフィ出来るもんっ。お兄ちゃまに魔法使えるのっ!!」
私の事なんて心配なんかしていないくせに『ミルフィの能力がセドリックにあれば良かったと思ってしまった』とお父様は言っていたくせに。
「出来るのっ。ミルフィ出来る!」
ぐるぐるとお父様の言葉が頭の中で繰り返す『何故ミルフィなんだ、セドリックならもしもそうなら』と困惑している声、兄様なら私が持っている能力を使えただろう、でも私では駄目だと私を見限ったと言わんばかりの言葉。
それが何度も何度も繰り返されて、私は息が苦しくなってしまう。
見捨てないで、私出来るから、努力するから兄様を死なせたりしないから。
私が兄様を生かすから、私の魔法で兄様の命を救うから。
だから、私を見捨てないで、見限らないで。
「お嬢様落ち着いて下さいませ。ジョゼットは分かっておりますよ。お嬢様はセドリック様に元気になって欲しいのですよね。私を救って下さった様に、セドリック様に魔法を使いたいと考えていらっしゃるのですよね」
ジョゼットが私を抱きしめて、背中を優しく撫でてくれた。
「ジョゼット」
「お嬢様のお気持ちが天に届いたのです。きっと大奥様はお嬢様のお気持ちを知って夢に出て来て下さったのでしょう」
ジョゼットは私に優しく笑い掛けて、私が落ち着くまで背中を撫で続けてくれたのだ。
以前の夢の経緯を知るお父様ですら躊躇している様子に、私はもう一押し必要なのだと気が付いた。
いくら兄様だけが大切だとはいえ、キム先生の前ですぐに私に魔法を使えとは言えないのだろう。
だからもう一押しが必要、でもどうしたらいいのだろう。
何が必要? 頭の悪い私でも必死に考えれば何か思いつく筈だと、私は食事の手を止めずに考える。
必要なのは、今お兄様に回復魔法を掛ける事が必要だとお父様が考える事、魔法を掛けるのは私でもガスパール先生でもどちらでも良い。
必要なのはお兄様に体力をつけ、風邪をひいても重症化しない様になる事なのだから。
「まにあわなくなるの?」
「ミルフィ、それはどういう」
「ミルフィ、おばあ様は他に何か言っていた?」
間に合わなくなると、突然言い始めた私をお父様は不審なものでも見る様に見ている。
兄様は、私がおばあ様から他にも何か言われているのだと考えたのか、続きを話せとばかりに聞いて来た。
「せいめい……りょく? よわいから、ええと……」
スラスラと話してはいけない。
私は前回の記憶を取り戻してから兄様を死なせない為に必要な魔法を考えていた。
必要な魔法、兄様の生命力が弱いならそれを補える様にしなければならない。
「ええと」
ゆっくりと考えて、夢の内容を思い出している振りをしながら、知らない言葉をお祖母様から聞いた振りをしなければいけない。
困った様に眉をしかめて、私は周囲を見渡しながら考える振りを続ける。
「焦らなくていいよ。覚えていることだけ教えて」
兄様は私の考えを気が付いているわけではないだろうけれど、夢の内容を思い出そうとしている私に声を掛ける。
「じゅよう? きょう……きょうしょう?」
「じゅよう? きょうしょう? 先生分かりますか」
お父様は私の言葉を正しく聞いて、でも意味が分からなかったのだろう。
わざと言葉を拙くしているのだから、当たり前だ。
滋養と強壮、本当はこれが正しい。
滋養魔法と強壮魔法、これは中級の魔法だけれどあまり使われない魔法だ。
この二つの魔法は、以前の私にガスパール先生が魔法を教えてくれたものだ。
結婚して暫く過ぎてから、子供がなかなか出来ない私はガスパール先生にどうしたら子供が授かれるか相談していた。
私は神経質な上、常に苛々している人間だった。
偏食で小食で体力も無かった。
ガスパール先生は、子供を授かっても無事に赤ん坊を産むには母親の体力が必要だと私を諭し、食事の量を増やす様に促した。
それと同時に私に滋養魔法と強壮魔法を教えてくれたのだ。
私が習ったのは魔石の力を使い魔法を発動するもので、毎日その魔法を使うとなれば費用がかなり掛かるけれどどうしても子供が欲しかった私に躊躇いは無かった。
でもあれは魔法を掛ける者と受ける者が同じだったから魔石が必要だったのだ。
私が兄様に魔法を使うなら、私の魔力を使えばいいだけだ。
子供が授かるまで二つの魔法を掛け続け、子供を授かってからも駄目押しとばかりに使い続けた私はこの二つの魔法は中級魔法とはいえ今でも簡単に使う事が出来る。
魔法の練習から逃げ続け、治癒魔法を使う慈善活動も全く熱心では無かった私が子供欲しさに必死になって習得した魔法だ、子供が授かってからも自分と子供に掛け続け、皮肉なことにそれで他の治癒魔法も上手く使えるようになった。
子供が生まれて、でも私は子供と疎遠だった。
あんなに欲しかった子供、愛したかったのに、私は……なぜ?
「はじめはませき? を使うの。慣れたら自分のまりょく? で出来るようにしたからすぐに使いなさいって」
子供のことを思い出そうとすると、頭の中に靄がかかったようになる。
気にはなるけれど、今は兄様のことだと思い直して拙い言葉を意識して話す。
「すぐに使う? でもミルフィはまだ何も魔法は使えないだろう」
お父様は私が魔法を使う事は反対なのだろうか?
兄様が助かるなら、私なんてどうでもいいと思っているくせに。
大切なのは兄様だけなのに。
「使えるって言ったものっ! ミルフィが魔法使える様にしたから、お兄ちゃまに絶対に毎日使うんだよって言ってたのっ! そうしないと駄目って、間に合わなくなるって言ったんだものっ!」
どうしてお父様は困った様な顔で私を見ているのか分からなくて、私は癇癪を起し大声を上げた。
「ミルフィ出来るもんっ。お兄ちゃまに魔法使えるのっ!!」
私の事なんて心配なんかしていないくせに『ミルフィの能力がセドリックにあれば良かったと思ってしまった』とお父様は言っていたくせに。
「出来るのっ。ミルフィ出来る!」
ぐるぐるとお父様の言葉が頭の中で繰り返す『何故ミルフィなんだ、セドリックならもしもそうなら』と困惑している声、兄様なら私が持っている能力を使えただろう、でも私では駄目だと私を見限ったと言わんばかりの言葉。
それが何度も何度も繰り返されて、私は息が苦しくなってしまう。
見捨てないで、私出来るから、努力するから兄様を死なせたりしないから。
私が兄様を生かすから、私の魔法で兄様の命を救うから。
だから、私を見捨てないで、見限らないで。
「お嬢様落ち着いて下さいませ。ジョゼットは分かっておりますよ。お嬢様はセドリック様に元気になって欲しいのですよね。私を救って下さった様に、セドリック様に魔法を使いたいと考えていらっしゃるのですよね」
ジョゼットが私を抱きしめて、背中を優しく撫でてくれた。
「ジョゼット」
「お嬢様のお気持ちが天に届いたのです。きっと大奥様はお嬢様のお気持ちを知って夢に出て来て下さったのでしょう」
ジョゼットは私に優しく笑い掛けて、私が落ち着くまで背中を撫で続けてくれたのだ。
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