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おかしな言動4
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「ミルフィ、お腹が苦しくはないのか」
お父様の声にハッとして、私はフォークを置いた。
私は何をしていたのだろう、一体何を。
無我夢中で行儀作法を忘れ、周囲の目も気にせずに私は食べ続けてしまった。
「ミルフィ様、まだ召し上がれますか。喉の渇きは如何ですか」
「ミルフィ、ミルフィ……あの、食べられるの。果汁飲みたいの」
おかしい、私は今とても変だ。
食べても食べても食べたりない。
目の前の皿には魔物肉を焼いたものが半分程度残っている。
嫌いな野菜も添えられているけれど、そんなの気にならなかった。
足りない、まだまだ足りない。
「ミルフィ、怖い。まだ食べたいの」
自分で自分が恐ろしくなって、私はぽたぽたと涙を流し始める。
するとミルフィを誰かが抱きしめていた。
「お嬢様、泣かないで下さいませ。料理人が沢山魔鶏肉を焼きました。もうすぐ魔鶏の卵と魔牛の乳で作ったクリームを沢山入れて作ったパイも焼きあがりますよ。全部召し上がって下さいませ。料理人が喜びます」
「ジョゼット、ミルフィ食べていいの?」
「ええ勿論です。旦那様がミルフィ様の為に沢山用意させたのですから、ほらキム先生も召し上がっていらっしゃいますよ」
私を抱きしめてくれているのは、ジョゼットだった。
ジョゼットの顔を見ようと横を向くと、ジョゼットの肩越しに怖い顔をしたパティの姿が見えた。
「キム先生も? まだ食べられるの?」
「ええ、まだまだ食べられますよ。ミルフィ様よりも食べていますよ。昨日私は沢山魔法を使ったのでお腹が空いているんです」
ではこれは異常な事では無いのか。
以前の私は魔法を使った後こんなに空腹を覚えた事は皆無だったというのに、これはおかしなことでは無いのだろうか。
「お嬢様、さあ涙を拭きましょうね。お肉が冷めてしまいますよ」
「うん、ジョゼット」
ジョゼットがハンカチで涙と鼻を拭いてくれるから、私は目を閉じて考える。
パティは何故怒っているのだろう、私は何かしてしまったのだろうか。
「さあ、綺麗になりました」
「ありがとう、ジョゼット」
すんと鼻を鳴らし、姿勢を正す。
沢山食べるのはおかしなことでは無いと自分に言い聞かせ、フォークを持つ。
「ミルフィ様の空腹は昨日魔力を大量に消費した為です。魔力暴走の後遺症です」
「魔力ぼ……?」
さっき説明をされた様な気がするけれど、食事に夢中で覚えていなかった。
魔力暴走なんて、以前の私は経験していない。
大量に魔力を使った後魔力回復薬ではなく、睡眠と食事で魔力を回復すると魔力が増えると聞いた事はあったけれど、以前の私は魔力を増やそうと考えもしていなかったのだ。
優秀な治癒魔法の使い手になりたい等、考えたことも無かった。
ただ貴族の義務として、慈善活動をしていると周囲に見せる為だけに治癒院で魔法を気まぐれに使っていただけ。
それだけだった。
「魔法、ミルフィ使える?」
「ええ、使えますよ。練習は勿論必要ですが、ミルフィ様はとても魔力が多いですし能力もあると思います。勿論セドリック様もお二人とも将来有望です」
兄様は以前の時も魔法が得意だった。
魔力を上手く巡らせられない私の練習に、兄様は辛抱強く付き合ってくれたのだ。
以前の私は兄様に好かれていなかったというのに。
「ミルフィね、約束したの。早く覚えるって」
今の私の目標は兄様を死なせないこと。
優しい兄様、優秀お兄様、お父様とお母様が生きていて欲しいと願った兄様を私は絶対に死なせない。
二人に見限られた私に出来ることはそれだけなのだから。
「約束、ですか」
「おばあ、さま? 約束したの」
夢を見た事にしよう。
昨日私はお祖母様の夢をまた見たのだと言おう。
早く、一日でも早く治癒魔法を覚えて、兄様に使いなさいと言われたのだと。
そうすれば、きっとお父様とお母様は私に治癒魔法を早く覚える様に言うだろう。
だって、二人は兄様だけが大切なのだから、だから私に無理をさせても兄様の為になるなら躊躇いはしない筈だ。
「ミルフィ、約束とは、いつ」
「昨日ね、ミルフィは早く魔法を使えるようにって、お兄ちゃまに毎日使いなさいって」
この国では親しい人が夢に出て、何かを告げるというのを信じられている。
治癒魔法をジョゼットの治療の為にミルフィに使えるようにしてくれたお祖母様なら、私に告げてもおかしくない。
「セドリックに魔法を? それは回復魔法ということか」
「侯爵、お祖母様とは」
「妻の亡くなった母の事だと、以前もミルフィの夢に出て来てその時は一度だけ治癒魔法の力を使える様にすると言って、その夢を見た後実際にミルフィは魔法を使ったのです」
そう私はすでに魔法が使えるのだ、しかも中級の魔法を。
だけどまだ魔力量が足りない。
幼い子の体だけど、兄様の体に魔法を何度も掛けられる様にならなければ。一日でも早く。
その為には、魔力を増やさなければいけない。
魔力を増やすには魔法を使わなければいけないのだ。
「ミルフィ約束したの」
先程怒っている様に見えたパティが、私を鋭い目つきで見ていたなんて気が付きもせず、私はそう決心していた。
お父様の声にハッとして、私はフォークを置いた。
私は何をしていたのだろう、一体何を。
無我夢中で行儀作法を忘れ、周囲の目も気にせずに私は食べ続けてしまった。
「ミルフィ様、まだ召し上がれますか。喉の渇きは如何ですか」
「ミルフィ、ミルフィ……あの、食べられるの。果汁飲みたいの」
おかしい、私は今とても変だ。
食べても食べても食べたりない。
目の前の皿には魔物肉を焼いたものが半分程度残っている。
嫌いな野菜も添えられているけれど、そんなの気にならなかった。
足りない、まだまだ足りない。
「ミルフィ、怖い。まだ食べたいの」
自分で自分が恐ろしくなって、私はぽたぽたと涙を流し始める。
するとミルフィを誰かが抱きしめていた。
「お嬢様、泣かないで下さいませ。料理人が沢山魔鶏肉を焼きました。もうすぐ魔鶏の卵と魔牛の乳で作ったクリームを沢山入れて作ったパイも焼きあがりますよ。全部召し上がって下さいませ。料理人が喜びます」
「ジョゼット、ミルフィ食べていいの?」
「ええ勿論です。旦那様がミルフィ様の為に沢山用意させたのですから、ほらキム先生も召し上がっていらっしゃいますよ」
私を抱きしめてくれているのは、ジョゼットだった。
ジョゼットの顔を見ようと横を向くと、ジョゼットの肩越しに怖い顔をしたパティの姿が見えた。
「キム先生も? まだ食べられるの?」
「ええ、まだまだ食べられますよ。ミルフィ様よりも食べていますよ。昨日私は沢山魔法を使ったのでお腹が空いているんです」
ではこれは異常な事では無いのか。
以前の私は魔法を使った後こんなに空腹を覚えた事は皆無だったというのに、これはおかしなことでは無いのだろうか。
「お嬢様、さあ涙を拭きましょうね。お肉が冷めてしまいますよ」
「うん、ジョゼット」
ジョゼットがハンカチで涙と鼻を拭いてくれるから、私は目を閉じて考える。
パティは何故怒っているのだろう、私は何かしてしまったのだろうか。
「さあ、綺麗になりました」
「ありがとう、ジョゼット」
すんと鼻を鳴らし、姿勢を正す。
沢山食べるのはおかしなことでは無いと自分に言い聞かせ、フォークを持つ。
「ミルフィ様の空腹は昨日魔力を大量に消費した為です。魔力暴走の後遺症です」
「魔力ぼ……?」
さっき説明をされた様な気がするけれど、食事に夢中で覚えていなかった。
魔力暴走なんて、以前の私は経験していない。
大量に魔力を使った後魔力回復薬ではなく、睡眠と食事で魔力を回復すると魔力が増えると聞いた事はあったけれど、以前の私は魔力を増やそうと考えもしていなかったのだ。
優秀な治癒魔法の使い手になりたい等、考えたことも無かった。
ただ貴族の義務として、慈善活動をしていると周囲に見せる為だけに治癒院で魔法を気まぐれに使っていただけ。
それだけだった。
「魔法、ミルフィ使える?」
「ええ、使えますよ。練習は勿論必要ですが、ミルフィ様はとても魔力が多いですし能力もあると思います。勿論セドリック様もお二人とも将来有望です」
兄様は以前の時も魔法が得意だった。
魔力を上手く巡らせられない私の練習に、兄様は辛抱強く付き合ってくれたのだ。
以前の私は兄様に好かれていなかったというのに。
「ミルフィね、約束したの。早く覚えるって」
今の私の目標は兄様を死なせないこと。
優しい兄様、優秀お兄様、お父様とお母様が生きていて欲しいと願った兄様を私は絶対に死なせない。
二人に見限られた私に出来ることはそれだけなのだから。
「約束、ですか」
「おばあ、さま? 約束したの」
夢を見た事にしよう。
昨日私はお祖母様の夢をまた見たのだと言おう。
早く、一日でも早く治癒魔法を覚えて、兄様に使いなさいと言われたのだと。
そうすれば、きっとお父様とお母様は私に治癒魔法を早く覚える様に言うだろう。
だって、二人は兄様だけが大切なのだから、だから私に無理をさせても兄様の為になるなら躊躇いはしない筈だ。
「ミルフィ、約束とは、いつ」
「昨日ね、ミルフィは早く魔法を使えるようにって、お兄ちゃまに毎日使いなさいって」
この国では親しい人が夢に出て、何かを告げるというのを信じられている。
治癒魔法をジョゼットの治療の為にミルフィに使えるようにしてくれたお祖母様なら、私に告げてもおかしくない。
「セドリックに魔法を? それは回復魔法ということか」
「侯爵、お祖母様とは」
「妻の亡くなった母の事だと、以前もミルフィの夢に出て来てその時は一度だけ治癒魔法の力を使える様にすると言って、その夢を見た後実際にミルフィは魔法を使ったのです」
そう私はすでに魔法が使えるのだ、しかも中級の魔法を。
だけどまだ魔力量が足りない。
幼い子の体だけど、兄様の体に魔法を何度も掛けられる様にならなければ。一日でも早く。
その為には、魔力を増やさなければいけない。
魔力を増やすには魔法を使わなければいけないのだ。
「ミルフィ約束したの」
先程怒っている様に見えたパティが、私を鋭い目つきで見ていたなんて気が付きもせず、私はそう決心していた。
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