57 / 104
おかしな言動3
しおりを挟む
「旦那様、料理人が魔牛の乳か魔鶏の卵を使った料理であれば、魔牛の乳で作ったチーズと魔鶏の卵でオムレツを作ってはどうかと言っています。お時間を頂けるのであればプリン等も作れます。こちらの甘みに魔蜜蜂の蜜を使ってはどうかと」
「おお、それはいいですね。魔蜜蜂の蜜も魔牛の乳のチーズもとても魔力が濃厚なものです。肉を食べたのと同等の魔力を摂取出来ます」
キム先生が嬉しそうな反応を見せたけれど、私はチーズがあまり好きでは無い。
どちらかいえば甘いプリンの方が嬉しいけれど、そんな我儘は多分言ってはいけないだろう。
「そうか、ではミルフィにそのオムレツを作り、お茶の時間にも何か作ってやって欲しい」
「畏まりました。オムレツはミルフィ様の分だけお作りすればいいでしょうか」
「はい、私も頂きたいです。セドリック様の分も是非」
喜々としてキム先生が答える。
「畏まりました。すぐにお作り致しますので少々お時間を頂きます。旦那様、魔物の食材ですと比較的魔鶏の胸肉の冷製は癖が無く食べやすいのではないかと料理人が申しております。こちらはすぐにご用意出来ますが如何でしょうか」
「魔鶏の胸肉、いいですねぇ。私は是非頂きたいですし、ミルフィ様は今後の為にも魔物肉を食べる習慣をつけた方がいいでしょう。魔牛や魔豚よりも魔鶏の方がくせがありませんから魔物肉に慣れるにはいいと思いますよ。更に迷宮産のバジルかレモンがあると尚いいですね」
「バジルはございませんが、迷宮産のレモンは魔蜜蜂の蜜で漬けたものがございます」
「では肉のソースをそのレモンを刻んでお願いします」
キム先生は料理も出来るのだろうか、かなり細かい指示を給仕にしている。
私は苦手な魔物肉を食べないといけないというだけで、少し調子が悪くなって来た気がする。
「ミルフィ様、パンはもう一つお召し上がりになりますか?」
「うううん。オムレツがあるなら、パンはもういいの」
「畏まりました。……旦那様、オムレツの前にこちらはお召し上がり頂いた方がいいでしょうか」
パティはミルフィの前に置いてある朝食について、お父様に確認している。
日頃のミルフィなら、これだけでお腹いっぱいになるからだろう。
「そうだな、ミルフィ食べられるだけ食べておきなさい。先生の予想通り魔力暴走の後遺症ならすべて食べられるのだろう。いい確認材料になる」
「畏まりました。ではミルフィ様サラダからどうぞ」
「うん」
嫌いな野菜が入っていないのは、ミルフィの体調を加味してなのだろう。
「ミルフィ、果汁飲みたい」
少し離れた場所に置いてある果汁が注がれたコップをパティに取ってもらい、ごくごくと喉を鳴らし飲み干してしまう。なんだか喉の渇きが酷かった。
「まあ、ミルフィ様飲み干してしまわれたのですか?」
「もっと飲みたいの」
「ミルフィ様喉も渇いていらっしゃるのですね。侯爵後遺症はかなり酷い様です。喉の渇きを訴えるというのは、酷い後遺症に良く見られる症状です」
酷い後遺症かどうか分からないけれど、喉が渇いて仕方がないのは本当だ。
パティが果汁を新たにカップに注いでくれて、それを三度繰り返して喉の渇きはだいぶ良くなってきた。
やっと食事に集中出来る。
サラダを食べ、スープを飲み干した頃、給仕が魔鶏の胸肉の冷製を運んできてそれも全部食べてしまった。
それから焼いた燻製肉と卵を食べてしまったが、それでも足りない。
もっともっと食べたくて、パティにパンを頼もうかと考えていた時にやっと給仕がオムレツを運んで来た。
「お待たせ致しました。魔鶏の卵と魔牛チーズのオムレツでございます。迷宮産トマトのソースをオムレツにかけてお召し上がりください」
「おおこれは美味しそうですね」
キム先生が喜びの声を上げるけれど、その反応を見ている余裕は無かった。
すんとオムレツの匂いを吸い込んだ途端、どうしようもない飢えを感じてしまった。
「オムレツ食べる」
品が無いと眉を顰めたくなる程たっぷりとトマトのソースをオムレツにかけて、ソースに溺れそうになっているオムレツをそっとフォークで掬う。
一口食べたらもう駄目だった、日頃気になる臭みが全く気にならない。
美味しくて、美味し過ぎて夢中でフォークを動かした。
行儀なんて考える暇なんて無かった。
「ミルフィ?」
「これはいけない。オムレツを五つ急いで作って来てくれ。ソースも忘れずに。それから冷製肉もあるだけ持って来てくれ」
キム先生が給仕に出している指示も気にならない。
お皿に残ってソースを舐めたくてたまらなくなりながら、それだけは必死に我慢した。
「お待たせしました。追加のオムレツと魔鶏の冷製肉でございます」
異常な食欲を抑えきれず、私は限界を遥かに超えて食べ続けた。
キム先生も私の目の前で次々と皿を空にしている。
だから私は安心して、自分も食べ続けられた。
良く考えたら、私の年齢でこんなに食べるのは異常でしかないと思ったけれど、そう思った時にはすべてが遅かったのだった。
「おお、それはいいですね。魔蜜蜂の蜜も魔牛の乳のチーズもとても魔力が濃厚なものです。肉を食べたのと同等の魔力を摂取出来ます」
キム先生が嬉しそうな反応を見せたけれど、私はチーズがあまり好きでは無い。
どちらかいえば甘いプリンの方が嬉しいけれど、そんな我儘は多分言ってはいけないだろう。
「そうか、ではミルフィにそのオムレツを作り、お茶の時間にも何か作ってやって欲しい」
「畏まりました。オムレツはミルフィ様の分だけお作りすればいいでしょうか」
「はい、私も頂きたいです。セドリック様の分も是非」
喜々としてキム先生が答える。
「畏まりました。すぐにお作り致しますので少々お時間を頂きます。旦那様、魔物の食材ですと比較的魔鶏の胸肉の冷製は癖が無く食べやすいのではないかと料理人が申しております。こちらはすぐにご用意出来ますが如何でしょうか」
「魔鶏の胸肉、いいですねぇ。私は是非頂きたいですし、ミルフィ様は今後の為にも魔物肉を食べる習慣をつけた方がいいでしょう。魔牛や魔豚よりも魔鶏の方がくせがありませんから魔物肉に慣れるにはいいと思いますよ。更に迷宮産のバジルかレモンがあると尚いいですね」
「バジルはございませんが、迷宮産のレモンは魔蜜蜂の蜜で漬けたものがございます」
「では肉のソースをそのレモンを刻んでお願いします」
キム先生は料理も出来るのだろうか、かなり細かい指示を給仕にしている。
私は苦手な魔物肉を食べないといけないというだけで、少し調子が悪くなって来た気がする。
「ミルフィ様、パンはもう一つお召し上がりになりますか?」
「うううん。オムレツがあるなら、パンはもういいの」
「畏まりました。……旦那様、オムレツの前にこちらはお召し上がり頂いた方がいいでしょうか」
パティはミルフィの前に置いてある朝食について、お父様に確認している。
日頃のミルフィなら、これだけでお腹いっぱいになるからだろう。
「そうだな、ミルフィ食べられるだけ食べておきなさい。先生の予想通り魔力暴走の後遺症ならすべて食べられるのだろう。いい確認材料になる」
「畏まりました。ではミルフィ様サラダからどうぞ」
「うん」
嫌いな野菜が入っていないのは、ミルフィの体調を加味してなのだろう。
「ミルフィ、果汁飲みたい」
少し離れた場所に置いてある果汁が注がれたコップをパティに取ってもらい、ごくごくと喉を鳴らし飲み干してしまう。なんだか喉の渇きが酷かった。
「まあ、ミルフィ様飲み干してしまわれたのですか?」
「もっと飲みたいの」
「ミルフィ様喉も渇いていらっしゃるのですね。侯爵後遺症はかなり酷い様です。喉の渇きを訴えるというのは、酷い後遺症に良く見られる症状です」
酷い後遺症かどうか分からないけれど、喉が渇いて仕方がないのは本当だ。
パティが果汁を新たにカップに注いでくれて、それを三度繰り返して喉の渇きはだいぶ良くなってきた。
やっと食事に集中出来る。
サラダを食べ、スープを飲み干した頃、給仕が魔鶏の胸肉の冷製を運んできてそれも全部食べてしまった。
それから焼いた燻製肉と卵を食べてしまったが、それでも足りない。
もっともっと食べたくて、パティにパンを頼もうかと考えていた時にやっと給仕がオムレツを運んで来た。
「お待たせ致しました。魔鶏の卵と魔牛チーズのオムレツでございます。迷宮産トマトのソースをオムレツにかけてお召し上がりください」
「おおこれは美味しそうですね」
キム先生が喜びの声を上げるけれど、その反応を見ている余裕は無かった。
すんとオムレツの匂いを吸い込んだ途端、どうしようもない飢えを感じてしまった。
「オムレツ食べる」
品が無いと眉を顰めたくなる程たっぷりとトマトのソースをオムレツにかけて、ソースに溺れそうになっているオムレツをそっとフォークで掬う。
一口食べたらもう駄目だった、日頃気になる臭みが全く気にならない。
美味しくて、美味し過ぎて夢中でフォークを動かした。
行儀なんて考える暇なんて無かった。
「ミルフィ?」
「これはいけない。オムレツを五つ急いで作って来てくれ。ソースも忘れずに。それから冷製肉もあるだけ持って来てくれ」
キム先生が給仕に出している指示も気にならない。
お皿に残ってソースを舐めたくてたまらなくなりながら、それだけは必死に我慢した。
「お待たせしました。追加のオムレツと魔鶏の冷製肉でございます」
異常な食欲を抑えきれず、私は限界を遥かに超えて食べ続けた。
キム先生も私の目の前で次々と皿を空にしている。
だから私は安心して、自分も食べ続けられた。
良く考えたら、私の年齢でこんなに食べるのは異常でしかないと思ったけれど、そう思った時にはすべてが遅かったのだった。
138
お気に入りに追加
1,719
あなたにおすすめの小説
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私と結婚したくないと言った貴方のために頑張りました! ~帝国一の頭脳を誇る姫君でも男心はわからない~
すだもみぢ
恋愛
リャルド王国の王女であるステラは、絶世の美女の姉妹に挟まれた中では残念な容姿の王女様と有名だった。
幼い頃に婚約した公爵家の息子であるスピネルにも「自分と婚約になったのは、その容姿だと貰い手がいないからだ」と初対面で言われてしまう。
「私なんかと結婚したくないのに、しなくちゃいけないなんて、この人は可哀想すぎる……!」
そう自分の婚約者を哀れんで、彼のためになんとかして婚約解消してあげようと決意をする。
苦労の末にその要件を整え、満を持して彼に婚約解消を申し込んだというのに、……なぜか婚約者は不満そうで……?
勘違いとすれ違いの恋模様のお話です。
ざまぁものではありません。
婚約破棄タグ入れてましたが、間違いです!!
申し訳ありません<(_ _)>
【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜
たろ
恋愛
この話は
『内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』
の続編です。
アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。
そして、アイシャを産んだ。
父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。
ただアイシャには昔の記憶がない。
だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。
アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。
親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。
アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに……
明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。
アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰?
◆ ◆ ◆
今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。
無理!またなんで!
と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。
もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。
多分かなりイライラします。
すみません、よろしくお願いします
★内緒で死ぬことにした の最終話
キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。
申し訳ありません。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる