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おかしな言動2
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「ミルフィ、無理はしていない?」
「お兄ちゃま、お兄ちゃまと一緒に、一緒に」
焦れば焦る程、私の言動は無様になる。
言葉が上手く出てこない、これ以上両親に呆れられるわけにはいかないのに。
昨日、私の能力が兄様のものだったら良かったと言っていた。
兄様は生命力が弱いから、私を跡継ぎにするしかないのが残念だと、私では駄目なのだと言わんばかりに悲しみ嘆いていた。
私の能力がどんなものだったのか分からないけれど、兄様がそれを持っていたら良かったと思われるものだったとは分かる。
だけど、それを私が持っているのは喜ばれてはいなかった。
私が持っていても、きっと私は愚かだから使いこなせないと思われたからだ。
それを兄様が持って入れば、生命力が弱い兄様でも十分に跡継ぎに出来るのに、きっとお父様はそう考えた。
私が持っていても、兄様の代わりにはなれないのに。
兄様がそれを持っていたら、きっと上手くそれを使い跡継ぎになれるのにと、きっとそう考えた。
「ミルフィ、頑張るの。勉強するの、絶対に魔法上手く使える様になるから。だから」
見限らないで、兄様の体が弱いから、仕方が無いからミルフィを跡継ぎにするとかではなくて、ミルフィに当主になれる力があるから兄様の代わりにすると言って貰えるまで頑張るから、だからミルフィを見限らないで。
「ミルフィ、無理をする必要は無いんだよ。昨日魔力を巡らせる練習だけでも疲労しているのだから、いきなり無理をする必要はないんだ。早めに覚えられるならそれに越したことはないが、無理はしなくていいんだよ。セドリックは体の調子が良さそうだから、今日はセドリックだけでもいいんだよ」
お父様は、ミルフィに期待していないから、ミルフィには無理をするなと言い兄様には魔法の練習をと言う。
ミルフィは、私はもうお父様に期待されていないの、きっとそうなの。
「ミルフィもするの。お兄ちゃまと一緒にするのっ」
やらなくて良いと言われてしまうのは、私の能力が期待できるものではないから。
そう考えるだけで、体の熱がどこかに行ってしまった様になる。
手足が冷えて、体が冷えて、温かいスープを飲んでいるのに熱を感じなくなってしまう。
「ミルフィ、興奮してはいけないよ。昨日体に負担を掛けたばかりなのだから」
「ミルフィ、出来るの。ミルフィ、駄目じゃないの」
涙が溢れて来る。
こんな無様な行いは、それだけで両親を呆れさせる理由になるというのに、自分で自分の感情を制御出来ずポタポタと涙が零れ落ちる。
「ミルフィ、いいんだよ。無理をしなくていいんだ」
お父様は痛ましいものでも見る様に、ミルフィを困惑した顔で見ている。
こんな時でも、お父様は私を抱きしめてくれはしない。
行儀よく席に着いたまま、落ち着いた声でミルフィを宥めるだけだ。
私はそれすらしなかった、前回の私は子供達を抱きしめる事なんてしなかった。
今の両親よりももっと私は冷淡だった。
お父様は、食事中に席を立つのを良しとしないだけ、普段であれば私を抱きしめてくれる。
でも私は違った、子供を抱きしめ頬にキスする。
そんな行いをしたことは無かったし、する必要を感じなかった。
でも、子供達を抱きしめ甘やかしていた人はいた。
それは、それは。
「パティ」
「はい、お嬢様」
「パティ、パンを取ってジャムをつけて」
私の子供達を抱きしめ頬にキスをしていたのは、パティだった。
そして、私の夫。
パティと夫は、子供達を愛していた。
私が近寄れない場に、二人は子供達と一緒に居て優しい時を過ごしていた。
「お嬢様、どうぞジャムを沢山付けました」
「ありがとう」
何故急に思い出したのだろう、子供達の事など以前の私は関心が無かった。
酷い母親だった、私は子供を産んだだけ。
夫にも子供達にも関心は無かった、だって、だって私は。
「ミルフィ」
「沢山食べたら大丈夫なの。ミルフィ、沢山食べられるよ」
食べれば食べる程にお腹が空いている気がする。
パンをよく噛んで飲み込むと、その途端もっと食べたい欲求を感じた。
「卵、もっと食べたいの。スープとパンも」
「そんなに食べてお腹が痛くなるよ」
「いいえ、セドリック様、これは魔力暴走を起こした為食欲が増しているのです。侯爵、魔物肉はございませんか」
「魔物肉、あったと思うがミルフィは匂いがきついから好んでは食べなかったはずだ」
私を心配する兄様を制して先生がお父様に魔物肉があるか尋ねている。
魔物肉は前回も今も好きでは無い。
貴族は好んで魔物肉を食べる人が多いけれど、私は独特の匂いが好きでは無った。
「そうですか、では魔牛の乳か魔鶏の卵は如何でしょうか」
「魔牛の乳か魔鶏の卵、それはすぐ用意出来るか」
お父様が給仕に尋ねると、足早に給仕が奥へと向かう。
「通常の肉や卵より、魔物のそれは魔力を多量に含んでいますので回復が早いのです」
「それは聞いたことがありますが、本当なのですか」
「ええ、魔物の等級が上の物はより魔力が高いです。比較的王都に出回っています魔猪より、キングオークですとか大角魔猪等の方が肉に含まれている魔力は上です」
晩餐会に招待されると魔物肉の料理が出されるのが常だったけれど、それは別に含まれる魔力が多いからという理由では無かったと思う。
お父様の認識は私に近い気がするけれど、貴族でも魔法を常に使っている人達は違っていたのだろうか。
戸惑いながら私は、気持ちを落ち着けようと必死だった。
「お兄ちゃま、お兄ちゃまと一緒に、一緒に」
焦れば焦る程、私の言動は無様になる。
言葉が上手く出てこない、これ以上両親に呆れられるわけにはいかないのに。
昨日、私の能力が兄様のものだったら良かったと言っていた。
兄様は生命力が弱いから、私を跡継ぎにするしかないのが残念だと、私では駄目なのだと言わんばかりに悲しみ嘆いていた。
私の能力がどんなものだったのか分からないけれど、兄様がそれを持っていたら良かったと思われるものだったとは分かる。
だけど、それを私が持っているのは喜ばれてはいなかった。
私が持っていても、きっと私は愚かだから使いこなせないと思われたからだ。
それを兄様が持って入れば、生命力が弱い兄様でも十分に跡継ぎに出来るのに、きっとお父様はそう考えた。
私が持っていても、兄様の代わりにはなれないのに。
兄様がそれを持っていたら、きっと上手くそれを使い跡継ぎになれるのにと、きっとそう考えた。
「ミルフィ、頑張るの。勉強するの、絶対に魔法上手く使える様になるから。だから」
見限らないで、兄様の体が弱いから、仕方が無いからミルフィを跡継ぎにするとかではなくて、ミルフィに当主になれる力があるから兄様の代わりにすると言って貰えるまで頑張るから、だからミルフィを見限らないで。
「ミルフィ、無理をする必要は無いんだよ。昨日魔力を巡らせる練習だけでも疲労しているのだから、いきなり無理をする必要はないんだ。早めに覚えられるならそれに越したことはないが、無理はしなくていいんだよ。セドリックは体の調子が良さそうだから、今日はセドリックだけでもいいんだよ」
お父様は、ミルフィに期待していないから、ミルフィには無理をするなと言い兄様には魔法の練習をと言う。
ミルフィは、私はもうお父様に期待されていないの、きっとそうなの。
「ミルフィもするの。お兄ちゃまと一緒にするのっ」
やらなくて良いと言われてしまうのは、私の能力が期待できるものではないから。
そう考えるだけで、体の熱がどこかに行ってしまった様になる。
手足が冷えて、体が冷えて、温かいスープを飲んでいるのに熱を感じなくなってしまう。
「ミルフィ、興奮してはいけないよ。昨日体に負担を掛けたばかりなのだから」
「ミルフィ、出来るの。ミルフィ、駄目じゃないの」
涙が溢れて来る。
こんな無様な行いは、それだけで両親を呆れさせる理由になるというのに、自分で自分の感情を制御出来ずポタポタと涙が零れ落ちる。
「ミルフィ、いいんだよ。無理をしなくていいんだ」
お父様は痛ましいものでも見る様に、ミルフィを困惑した顔で見ている。
こんな時でも、お父様は私を抱きしめてくれはしない。
行儀よく席に着いたまま、落ち着いた声でミルフィを宥めるだけだ。
私はそれすらしなかった、前回の私は子供達を抱きしめる事なんてしなかった。
今の両親よりももっと私は冷淡だった。
お父様は、食事中に席を立つのを良しとしないだけ、普段であれば私を抱きしめてくれる。
でも私は違った、子供を抱きしめ頬にキスする。
そんな行いをしたことは無かったし、する必要を感じなかった。
でも、子供達を抱きしめ甘やかしていた人はいた。
それは、それは。
「パティ」
「はい、お嬢様」
「パティ、パンを取ってジャムをつけて」
私の子供達を抱きしめ頬にキスをしていたのは、パティだった。
そして、私の夫。
パティと夫は、子供達を愛していた。
私が近寄れない場に、二人は子供達と一緒に居て優しい時を過ごしていた。
「お嬢様、どうぞジャムを沢山付けました」
「ありがとう」
何故急に思い出したのだろう、子供達の事など以前の私は関心が無かった。
酷い母親だった、私は子供を産んだだけ。
夫にも子供達にも関心は無かった、だって、だって私は。
「ミルフィ」
「沢山食べたら大丈夫なの。ミルフィ、沢山食べられるよ」
食べれば食べる程にお腹が空いている気がする。
パンをよく噛んで飲み込むと、その途端もっと食べたい欲求を感じた。
「卵、もっと食べたいの。スープとパンも」
「そんなに食べてお腹が痛くなるよ」
「いいえ、セドリック様、これは魔力暴走を起こした為食欲が増しているのです。侯爵、魔物肉はございませんか」
「魔物肉、あったと思うがミルフィは匂いがきついから好んでは食べなかったはずだ」
私を心配する兄様を制して先生がお父様に魔物肉があるか尋ねている。
魔物肉は前回も今も好きでは無い。
貴族は好んで魔物肉を食べる人が多いけれど、私は独特の匂いが好きでは無った。
「そうですか、では魔牛の乳か魔鶏の卵は如何でしょうか」
「魔牛の乳か魔鶏の卵、それはすぐ用意出来るか」
お父様が給仕に尋ねると、足早に給仕が奥へと向かう。
「通常の肉や卵より、魔物のそれは魔力を多量に含んでいますので回復が早いのです」
「それは聞いたことがありますが、本当なのですか」
「ええ、魔物の等級が上の物はより魔力が高いです。比較的王都に出回っています魔猪より、キングオークですとか大角魔猪等の方が肉に含まれている魔力は上です」
晩餐会に招待されると魔物肉の料理が出されるのが常だったけれど、それは別に含まれる魔力が多いからという理由では無かったと思う。
お父様の認識は私に近い気がするけれど、貴族でも魔法を常に使っている人達は違っていたのだろうか。
戸惑いながら私は、気持ちを落ち着けようと必死だった。
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