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兄様と一緒に
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「ミルフィ、ごめんね」
ガスパール先生がお父様達と部屋を出て行ったのに、兄様は私のベッドの上で何故か座ったまま、ごめんねと謝罪し始めた。
「ミルフィ? ごめんねする?」
わけが分からずに兄様の言葉を繰り返し、じいっと兄様のお顔を見つめる。
幼い顔の兄様は、凛々しいけれど愛らしい。
前の私は兄様に好かれてはいなかったというのに、こうして近くにいてくれるのは嬉しくてたまらない。
「ミルフィが辛い思いをしていると気が付かなかった」
「つら、い?」
ミルフィはそんな言葉を知っていただろうか、分からないから首を傾げる。
「痛かったね」
ミルフィの頬を兄様の手が撫でる。
「ミルフィは、自分に無意識に魔法を使うほどずっと痛くて苦しかったんだよね。気が付かなくてごめんね」
恐る恐る、そんな顔をして兄様は私に近づいて子供の短い腕で私を抱きしめた。
「ミルフィはこんなに小さいのに、君が我儘を言うのには理由があったのに。あんな人の言葉を信じていた私達は大馬鹿者だ。君の人生を歪めて、ごめん」
抱きしめて髪を撫でる。
最近、お母様が良くして下さるから、私は嬉しくて甘えてしまうのだけれど、まさか兄様に同じ様にして頂けるとは思っていなかった。
私の癇癪を誤魔化すように、頭を撫でてくれた事はあるけれどこれは、それとは違う気がする。
「歪め?」
「いいんだ、分からないだろう。いいんだよ。許してくれなくてもいい。謝るのはただの自己満足だから」
兄様は悲しそうな顔で、そう言うと私に毛布を掛け自分も毛布の中に入ってきた。
「お兄ちゃま?」
「さっき、怖い思いをしただろう。側にいるよ」
こんな優しい言葉を掛けられたのは、前を含めて初めての事だと思う。
夫ですら私に優しくした事など無かった。
子を産んだ時すら、労りの言葉は無かった。
政略結婚の冷え切った関係、我儘な娘だった私は両親からの成長するにつれ呆れられてしまったから、愛情なんて知らなかった。
夫との関係もそれが不通なのだと思い込んでいたのだ。
「お兄ちゃま」
あぁ、涙が出そうだ。
せめて、大好きな兄様には好かれていると思っていたかったのに、やっぱり前の私は兄様に気遣われた事など一度も無かったと思い知らされてしまう。
私に向けられる笑顔は作り笑いだった、兄様は私を鬱陶しく思っていた。それでも私はお兄様が大好きだった。
「どうした?」
「もう一度頭を撫でて、あにょ、やっぱりいいでしゅ」
変なことを言ったと、焦って言葉が乱れる。
この幼い体は、油断するとすぐに自分の思うように動かなくなる。
「ふっ。これくらいいつでもしてあげる」
「お兄ちゃま」
ぎゅうと頭を抱きしめられて、少し乱暴に撫でられた。
「いくら悔やんでも足りないな」
小さく懺悔の様に呟く兄様の悔いとは、私に向けてなのだろうか。
私には悔いが残っている。
兄様を死なせてしまったことだ。
私が真剣に魔法を練習していたら、あんな風に兄様を死なせずにすんだ。
死ぬなら私でよかった。
あの時、きっと両親だけでなく兄様を知る、すべての人がそう思った筈だ。
「お兄ちゃま、ミルフィと魔法の勉強しゅるの、嬉しい」
「大変だけど頑張れるかな」
「お兄ちゃまと一緒、ミルフィ頑張るのよ」
絶対に魔法の腕を磨いて、お兄様を救う。
何故か私に優しくしてくれる様になって、笑ってくれる様になった兄様を絶対に死なせたりしない。
心に誓って私は目を閉じた。
暗い目をした兄様は悲しそうに私を見ているとは気が付きもしなかった。
ガスパール先生がお父様達と部屋を出て行ったのに、兄様は私のベッドの上で何故か座ったまま、ごめんねと謝罪し始めた。
「ミルフィ? ごめんねする?」
わけが分からずに兄様の言葉を繰り返し、じいっと兄様のお顔を見つめる。
幼い顔の兄様は、凛々しいけれど愛らしい。
前の私は兄様に好かれてはいなかったというのに、こうして近くにいてくれるのは嬉しくてたまらない。
「ミルフィが辛い思いをしていると気が付かなかった」
「つら、い?」
ミルフィはそんな言葉を知っていただろうか、分からないから首を傾げる。
「痛かったね」
ミルフィの頬を兄様の手が撫でる。
「ミルフィは、自分に無意識に魔法を使うほどずっと痛くて苦しかったんだよね。気が付かなくてごめんね」
恐る恐る、そんな顔をして兄様は私に近づいて子供の短い腕で私を抱きしめた。
「ミルフィはこんなに小さいのに、君が我儘を言うのには理由があったのに。あんな人の言葉を信じていた私達は大馬鹿者だ。君の人生を歪めて、ごめん」
抱きしめて髪を撫でる。
最近、お母様が良くして下さるから、私は嬉しくて甘えてしまうのだけれど、まさか兄様に同じ様にして頂けるとは思っていなかった。
私の癇癪を誤魔化すように、頭を撫でてくれた事はあるけれどこれは、それとは違う気がする。
「歪め?」
「いいんだ、分からないだろう。いいんだよ。許してくれなくてもいい。謝るのはただの自己満足だから」
兄様は悲しそうな顔で、そう言うと私に毛布を掛け自分も毛布の中に入ってきた。
「お兄ちゃま?」
「さっき、怖い思いをしただろう。側にいるよ」
こんな優しい言葉を掛けられたのは、前を含めて初めての事だと思う。
夫ですら私に優しくした事など無かった。
子を産んだ時すら、労りの言葉は無かった。
政略結婚の冷え切った関係、我儘な娘だった私は両親からの成長するにつれ呆れられてしまったから、愛情なんて知らなかった。
夫との関係もそれが不通なのだと思い込んでいたのだ。
「お兄ちゃま」
あぁ、涙が出そうだ。
せめて、大好きな兄様には好かれていると思っていたかったのに、やっぱり前の私は兄様に気遣われた事など一度も無かったと思い知らされてしまう。
私に向けられる笑顔は作り笑いだった、兄様は私を鬱陶しく思っていた。それでも私はお兄様が大好きだった。
「どうした?」
「もう一度頭を撫でて、あにょ、やっぱりいいでしゅ」
変なことを言ったと、焦って言葉が乱れる。
この幼い体は、油断するとすぐに自分の思うように動かなくなる。
「ふっ。これくらいいつでもしてあげる」
「お兄ちゃま」
ぎゅうと頭を抱きしめられて、少し乱暴に撫でられた。
「いくら悔やんでも足りないな」
小さく懺悔の様に呟く兄様の悔いとは、私に向けてなのだろうか。
私には悔いが残っている。
兄様を死なせてしまったことだ。
私が真剣に魔法を練習していたら、あんな風に兄様を死なせずにすんだ。
死ぬなら私でよかった。
あの時、きっと両親だけでなく兄様を知る、すべての人がそう思った筈だ。
「お兄ちゃま、ミルフィと魔法の勉強しゅるの、嬉しい」
「大変だけど頑張れるかな」
「お兄ちゃまと一緒、ミルフィ頑張るのよ」
絶対に魔法の腕を磨いて、お兄様を救う。
何故か私に優しくしてくれる様になって、笑ってくれる様になった兄様を絶対に死なせたりしない。
心に誓って私は目を閉じた。
暗い目をした兄様は悲しそうに私を見ているとは気が付きもしなかった。
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