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ジョゼットの怪我
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「ここが母の部屋で私の部屋でもあります。お嬢様驚かないで下さいませ」
「うん?」
何を驚くんだろう。内心首を傾げながら部屋の中へと入った。
「ジョゼット。え」
ジョゼットの部屋は私の部屋と同じ階にあった。
幼児付きの使用人、しかもジョゼットは乳母だから通常の使用人とは違う場所に部屋があってもおかしくない。
子供、特に幼児は夜間に熱を出すこともあるし夜中に目を覚し泣く事もある。
そんな時に対応出来なければ問題になるのだから、他の使用人とは違い側に部屋を持つのは当然だった。
予想を遙かに超えてジョゼットの部屋は狭かった。
ジョゼットとパティ、そしてパティの妹が一緒に暮らす部屋だと考えたら狭いというより息苦しい部屋だと言っても良さそうなその場所で、ジョゼットは眠っていた。
「狭くて驚かれたでしょう」
「暗いの怖いよ」
以前の記憶がある私よりも、今の三歳の体の脅えが勝ったみたいだ。
薄暗い部屋、模様も何もない壁紙に安っぽい家具。数部屋隣は私の部屋だというのに、この部屋は装飾の類いが一切なく、質素の一言だった。
「ここは使用人の部屋です。お嬢様の部屋とは何もかも異なるものだと、ご承知置き下さいませ」
三歳児の子供が初めて見る質素すぎるほど質素な部屋に、パティは当然と言わんばかりに説明すると私の背中をぐいと押し部屋へと押し込んだ。
「パティ、ジョゼットは」
脅えてもパティは慰めてくれないと悟り、涙が出そうになるのを必死に堪えながらパティに尋ねた。
私がこの部屋にきたのはジョゼットの怪我を治す為、ぐずぐずしていたら誰かに気がつかれるかもしれない。急ぐに越したことはない。
「母はそこです。苦しんで痛みに耐えている。それが母の、お嬢様を守れなかった母の贖罪だというのでしょうか」
ああ、泣いている。
パティは、私を責めずただ心の中で泣いている。
そう理解した私は、パティが指差すベッドに恐る恐る近付いた。
「ジョゼット」
苦しそうに浅い呼吸を繰り返すジョゼットの顔色は悪かった。
痛みが激しいのだろう、ジョゼットは眠っているのに眉をしかめ浅い呼吸を繰り返し痛みに耐えていた。
「ジョゼット。ごめんなさい」
咄嗟に謝ったのは、衝動的な行動で心は伴っていない。
額に浮かぶ汗を、パティは泣きそうな顔でハンカチで拭っている。
「ジョゼット熱あるの? 顔が赤いよ」
「熱はあるのかもしれませんが、どうしようもありません」
「ミルフィの部屋に、氷あったよね。あれでジョゼットを冷やしてあげて」
今の季節、暑すぎるわけではないが氷は簡単には手に入らない。
氷は、氷販売を生業としている魔法使いから買うものだから、使用人の熱を下げるためになんか使えないのだ。
「お嬢様? ですが」
「お願い。氷で冷やして上げて、ジョゼット可哀相」
私がそう言うと、パティは弾かれた様に部屋を飛び出した。
驚いたけれど、これは私には都合が良かった。
「ジョゼットごめんね。以前の私も今の私も、ジョゼットにこんな辛い時間を強要している」
魔力循環、中級魔法を練る。
ジョゼットと私しかいない空間だけれど、ジョゼットが万が一今を理解しているかもしれないから無詠唱で中級回復魔法を練る。
まずは体力を回復。怪我を治すのはその後だ。
私は細心の注意を払って魔法を発動した。
「うん?」
何を驚くんだろう。内心首を傾げながら部屋の中へと入った。
「ジョゼット。え」
ジョゼットの部屋は私の部屋と同じ階にあった。
幼児付きの使用人、しかもジョゼットは乳母だから通常の使用人とは違う場所に部屋があってもおかしくない。
子供、特に幼児は夜間に熱を出すこともあるし夜中に目を覚し泣く事もある。
そんな時に対応出来なければ問題になるのだから、他の使用人とは違い側に部屋を持つのは当然だった。
予想を遙かに超えてジョゼットの部屋は狭かった。
ジョゼットとパティ、そしてパティの妹が一緒に暮らす部屋だと考えたら狭いというより息苦しい部屋だと言っても良さそうなその場所で、ジョゼットは眠っていた。
「狭くて驚かれたでしょう」
「暗いの怖いよ」
以前の記憶がある私よりも、今の三歳の体の脅えが勝ったみたいだ。
薄暗い部屋、模様も何もない壁紙に安っぽい家具。数部屋隣は私の部屋だというのに、この部屋は装飾の類いが一切なく、質素の一言だった。
「ここは使用人の部屋です。お嬢様の部屋とは何もかも異なるものだと、ご承知置き下さいませ」
三歳児の子供が初めて見る質素すぎるほど質素な部屋に、パティは当然と言わんばかりに説明すると私の背中をぐいと押し部屋へと押し込んだ。
「パティ、ジョゼットは」
脅えてもパティは慰めてくれないと悟り、涙が出そうになるのを必死に堪えながらパティに尋ねた。
私がこの部屋にきたのはジョゼットの怪我を治す為、ぐずぐずしていたら誰かに気がつかれるかもしれない。急ぐに越したことはない。
「母はそこです。苦しんで痛みに耐えている。それが母の、お嬢様を守れなかった母の贖罪だというのでしょうか」
ああ、泣いている。
パティは、私を責めずただ心の中で泣いている。
そう理解した私は、パティが指差すベッドに恐る恐る近付いた。
「ジョゼット」
苦しそうに浅い呼吸を繰り返すジョゼットの顔色は悪かった。
痛みが激しいのだろう、ジョゼットは眠っているのに眉をしかめ浅い呼吸を繰り返し痛みに耐えていた。
「ジョゼット。ごめんなさい」
咄嗟に謝ったのは、衝動的な行動で心は伴っていない。
額に浮かぶ汗を、パティは泣きそうな顔でハンカチで拭っている。
「ジョゼット熱あるの? 顔が赤いよ」
「熱はあるのかもしれませんが、どうしようもありません」
「ミルフィの部屋に、氷あったよね。あれでジョゼットを冷やしてあげて」
今の季節、暑すぎるわけではないが氷は簡単には手に入らない。
氷は、氷販売を生業としている魔法使いから買うものだから、使用人の熱を下げるためになんか使えないのだ。
「お嬢様? ですが」
「お願い。氷で冷やして上げて、ジョゼット可哀相」
私がそう言うと、パティは弾かれた様に部屋を飛び出した。
驚いたけれど、これは私には都合が良かった。
「ジョゼットごめんね。以前の私も今の私も、ジョゼットにこんな辛い時間を強要している」
魔力循環、中級魔法を練る。
ジョゼットと私しかいない空間だけれど、ジョゼットが万が一今を理解しているかもしれないから無詠唱で中級回復魔法を練る。
まずは体力を回復。怪我を治すのはその後だ。
私は細心の注意を払って魔法を発動した。
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