19 / 27
キティは学びたい
しおりを挟む
「お義母様が張り切る? の、ですか?」
キティの戸惑う様な声に、カラムは珍しくこちらも困った様な顔で話し始めた。
「ああ、キティに申し訳ないのだが、私の母は貴族令嬢を教育するというのを自分の天職だと思っているところがある。その、教えられる方にとっては不幸なのではないかと思う程に、教育熱心なのだ」
「お義母様は昔家庭教師をされていたのでしょうか」
家庭教師というのは女性の場合、下級から中級の貴族女性が生活の糧を得るため貴族の子息子女の為の家庭教師になるのが普通だという認識をキティは持っていたけれど、カラムの家である伯爵家でしかも夫人が稼がなければいけない様な家だとは思えないから、女性が働く様な環境になるのは想像が出来なかった。
という事は、お義母様が結婚される前なのだろうか? キティのそういう疑問はカラムにも通じたらしく無表情で首を横に振られたのだった。
「母は結婚して姉と私を産んだ後、王女殿下の教育係となったのだ」
「王女殿下の、まあ素晴らしいですね」
まさかの王女殿下の教育者という言葉に、キティは目を丸くしながら手を打っていた。
結婚してからの王宮勤めというのは、色々困難なことも多かっただろうに、教育熱心になるというのは本当にすごいとキティは目をキラキラさせて感動していたのだ。
「お義母様に私も教えて頂けるのでしょうか」
キティは自分自身の貴族令嬢としての知識不足は、恥ずべきことではないと思っている。
あの環境でも学べることはそれなりに頑張って覚えてきた。
でも父親がキティに教えられる内容には限りがあり、教材等も手に入れることは出来なかった。
知らないと言う事は恥ではない、知らないことは覚えていけばいいと思えるのはキティの美点だった。
「母上は喜んで教えてくださるだろうし、すでにそのつもりだ。だが母上はかなり厳しいから、キティが気が進まぬなら別の者に……」
「厳しくても、美しい所作は貴族家の夫人には当たり前に望まれる能力です。私はそれを覚えたいのです」
先程は、母上が張り切っているから大丈夫と言いながら心配そうに告げるカラムに、キティはカラムの両手を握りこみながら答えた。
貧乏で笑われても、キティは平気だった。
父親は真摯に仕事をしているだけだと知っていたし、キティは父親が大好きだった。
毎日顔色が悪い母親の事は悲しいといもうけれど、キティは母親の世話も弟と妹の世話も苦痛だとは思わなかったから、貴族令嬢としての勉強が出来なくても構わないと考えていたから、働くことも苦では無かった。
でも今はカラムの妻になったのだから、恥ずかしくない教養を身に着けたかったのだ。
「どうか私が学ぶ機会を頂けないでしょうか」
「母は本当に厳しいぞ。頼んでから出来ないという泣き言は聞いてやれないぞ」
「……カラム様はやっぱり優しいのですね。ですが心配しないで下さい。お義母様のお手を煩わせてしまいますが、絶対に逃げたり泣いたりしません」
そう誓うとカラムはなぜかキティに、ありがとうと告げたのだった。
キティの戸惑う様な声に、カラムは珍しくこちらも困った様な顔で話し始めた。
「ああ、キティに申し訳ないのだが、私の母は貴族令嬢を教育するというのを自分の天職だと思っているところがある。その、教えられる方にとっては不幸なのではないかと思う程に、教育熱心なのだ」
「お義母様は昔家庭教師をされていたのでしょうか」
家庭教師というのは女性の場合、下級から中級の貴族女性が生活の糧を得るため貴族の子息子女の為の家庭教師になるのが普通だという認識をキティは持っていたけれど、カラムの家である伯爵家でしかも夫人が稼がなければいけない様な家だとは思えないから、女性が働く様な環境になるのは想像が出来なかった。
という事は、お義母様が結婚される前なのだろうか? キティのそういう疑問はカラムにも通じたらしく無表情で首を横に振られたのだった。
「母は結婚して姉と私を産んだ後、王女殿下の教育係となったのだ」
「王女殿下の、まあ素晴らしいですね」
まさかの王女殿下の教育者という言葉に、キティは目を丸くしながら手を打っていた。
結婚してからの王宮勤めというのは、色々困難なことも多かっただろうに、教育熱心になるというのは本当にすごいとキティは目をキラキラさせて感動していたのだ。
「お義母様に私も教えて頂けるのでしょうか」
キティは自分自身の貴族令嬢としての知識不足は、恥ずべきことではないと思っている。
あの環境でも学べることはそれなりに頑張って覚えてきた。
でも父親がキティに教えられる内容には限りがあり、教材等も手に入れることは出来なかった。
知らないと言う事は恥ではない、知らないことは覚えていけばいいと思えるのはキティの美点だった。
「母上は喜んで教えてくださるだろうし、すでにそのつもりだ。だが母上はかなり厳しいから、キティが気が進まぬなら別の者に……」
「厳しくても、美しい所作は貴族家の夫人には当たり前に望まれる能力です。私はそれを覚えたいのです」
先程は、母上が張り切っているから大丈夫と言いながら心配そうに告げるカラムに、キティはカラムの両手を握りこみながら答えた。
貧乏で笑われても、キティは平気だった。
父親は真摯に仕事をしているだけだと知っていたし、キティは父親が大好きだった。
毎日顔色が悪い母親の事は悲しいといもうけれど、キティは母親の世話も弟と妹の世話も苦痛だとは思わなかったから、貴族令嬢としての勉強が出来なくても構わないと考えていたから、働くことも苦では無かった。
でも今はカラムの妻になったのだから、恥ずかしくない教養を身に着けたかったのだ。
「どうか私が学ぶ機会を頂けないでしょうか」
「母は本当に厳しいぞ。頼んでから出来ないという泣き言は聞いてやれないぞ」
「……カラム様はやっぱり優しいのですね。ですが心配しないで下さい。お義母様のお手を煩わせてしまいますが、絶対に逃げたり泣いたりしません」
そう誓うとカラムはなぜかキティに、ありがとうと告げたのだった。
1
お気に入りに追加
1,779
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
命拾いした治癒魔法使いですが、腹黒王子に弄ばれてキュン死寸前です
河津田 眞紀
恋愛
「だいっきらい」から始まる物語は、優しい「好き」で終わりを告げる──
フェレンティーナは、治癒魔法の力を持つ少女。
彼女が暮らすイストラーダ王国は今、戦争の真っ只中だ。
敵国の襲撃に傷つき絶望しているところを、敵側の軍人であるはずのルイスに助けられ、運命が動き出す。
ルイスの斡旋により働き始めた酒場で、彼女は出逢ってしまう。
天使のように愛らしく、悪魔のように妖艶で気まぐれな、まっクロい王子様に──
無自覚ドM娘×腹黒ドS王子が織りなす、じれじれで甘々な恋愛ファンタジー。
ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。
砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。
ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。
その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、
この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。
顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。
前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる