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ニルスさんを呼ぼう6
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「ウヅキ! ワル、ワルドさん、ゲルトさんどうして、ウヅキなんで?」
一瞬意識が遠くなりかけて、でもすぐに意識がはっきりしたから気を失ったとかじゃないと思う。
「わ、わからねえ。こんなの聞いたことがねえ。ウヅキは十歳なんだよな、ゲルト」
「ああ、十歳だ。ギルドの魔道具でも年齢は確認されている」
俺の年齢をワルドさんはゲルトさんに尋ねている。
俺が年齢の割にチビなのは今更だし、ワルドさんだって俺の事良く知っているのに何で今更確認なんてしてるんだろう。
「ウヅキ、大丈夫なんですか。ね、ウヅキ」
グレオ君が心配してる。
俺、グレオ君に心配かけてばかりだね、ごめんね。
「ウヅ、俺が分かるか。言葉が分かるなら俺の方を向いてくれ」
ゲルトさんの優しい声に、俺は不思議に思いながら声がする方へ顔を上げた。
上げた?
俺、ゲルトさんに抱っこされて膝の上に座ってたんだから、顔を上げなくても視線をほんの少し上げただけでゲルトさんの顔が見られる筈なのに、どうして俺こんなに顔を上げてるの。
「ウヅ、言葉は分かるんだな」
「キュウン」
はい。と言った筈なのに、俺の耳に自分の声が届かない。
え、俺どうしたの。
「ギャンッ!」
今の声何? 今、俺、嘘って言ったのに。なんで何か犬みたいな鳴き声聞こえたの?
「ウヅ、落ち着け、暴れるな落ちるぞ」
「キュンキューン。クウゥン」
何これ、何これ、何これっ。
俺が何か話そうとする度、俺の喉から出てくるのは何かの鳴き声。
どうして、え、俺の手。
白い。
白くて、ふさふさの毛。
「ゲルトさん、俺、ウヅキが一瞬ニルスさんみたいな狐に見えたんです。でも、今は狼? 狼ですよね、なんで白い狐の姿に見えたんだろ」
「俺も一瞬狐に見えたが、でもグレオよく見てみろ。これは狼だ」
「着ていた服は脱げて、でも皮の鎧だけ着けてるってどうして。これがウヅキなのは分かりましたけど」
白い? 白い何て言った? 狐?
「狼になったのは何でだ」
「どうして」
ワルドさんとグレオ君が戸惑った声を上げているけれど、俺だって戸惑っている。
だって、俺狼になったってこと?
「ウヅキ、俺の言葉も分かる?」
「クウゥン」
頷いて、分かると言ったつもりなのに、やっぱり鳴き声。
俺の声、なんか不安そうな感じがする。
「ウヅ、怯えなくていい」
「そうだよ。ウヅキ、もしかして昨日何度も魔力切れとかしたからじゃないですか? そういうの無いですか」
そうなのかな、でも違う気がする。
俺、もしかしてさっき願ったから?
いっそ消えてしまいたい、そう思ったけれどそれじゃ皆を悲しませるから、それなら話せなくなりたい。
何も話せなくなれば、俺は皆を悲しませなくて済む、そう思ったから?
だとしたら、きっとこれは大神様が俺の願いを叶えてくれた結果なんだろうか。
俺が、誰かを悲しませないように。
いっそ、俺このままの方が良いんじゃないのかな。
それなら、失言したり可哀相アピールして皆を悲しませなくてすむんだから。
「ウヅ」
ワルドさんの手が俺の頭に触れる。
狼獣人から狼に変わった俺は、白い体毛になったのかな。
俺の視界に見えるのは自分の両手だけだけどそこはふさふさした白い毛におおわれている。
両手は人の手から完全に動物の手で、ひっくり返すと肉球が見える。
肉球、ピンク? 見た感じむにむにした柔らかそうな感じで色は薄いピンク色だ。
前世、店長のお店のお客さんは犬の散歩のついでにお店に来てくれる人も多かったから、店の前に繋いだ犬が他の人の邪魔にならない様に相手するのも俺の仕事の一つだった。
俺がなかなか休憩取らずに働いてるから、ちょっとでも休ませ様として犬の相手をさせてくれてたって実は俺は知ってたんだ。
お客さんも俺に「うちの子の相手をしてくれたお礼」って牛乳くれたり、パンやお菓子をくれて店の前のベンチでお客さんと話をしながらそれを食べてたんだ。
最初は断ってたけど、店長が孫に相手にされない年寄りの相手をしてくれたお駄賃だからと言ってくれて、俺はありがたく頂くことにしてたんだ。
あの時、肉球をぷにぷにさせてくれる子が何故か多かったんだよね。
今思うと不思議、俺がしゃがみ込んで頭を撫でてると、手をちょんちょんって俺の膝に乗せて来て俺が手に触れて肉球をぷにぷにすると嬉しそうにしっぽ振ってくれるんだ。
可愛くって俺の癒しだった。
あの手に、これって似てる。
犬と狼って似てるんだっけ? というより、俺の髪の色と違うけど、何で白なんだろう。
一瞬意識が遠くなりかけて、でもすぐに意識がはっきりしたから気を失ったとかじゃないと思う。
「わ、わからねえ。こんなの聞いたことがねえ。ウヅキは十歳なんだよな、ゲルト」
「ああ、十歳だ。ギルドの魔道具でも年齢は確認されている」
俺の年齢をワルドさんはゲルトさんに尋ねている。
俺が年齢の割にチビなのは今更だし、ワルドさんだって俺の事良く知っているのに何で今更確認なんてしてるんだろう。
「ウヅキ、大丈夫なんですか。ね、ウヅキ」
グレオ君が心配してる。
俺、グレオ君に心配かけてばかりだね、ごめんね。
「ウヅ、俺が分かるか。言葉が分かるなら俺の方を向いてくれ」
ゲルトさんの優しい声に、俺は不思議に思いながら声がする方へ顔を上げた。
上げた?
俺、ゲルトさんに抱っこされて膝の上に座ってたんだから、顔を上げなくても視線をほんの少し上げただけでゲルトさんの顔が見られる筈なのに、どうして俺こんなに顔を上げてるの。
「ウヅ、言葉は分かるんだな」
「キュウン」
はい。と言った筈なのに、俺の耳に自分の声が届かない。
え、俺どうしたの。
「ギャンッ!」
今の声何? 今、俺、嘘って言ったのに。なんで何か犬みたいな鳴き声聞こえたの?
「ウヅ、落ち着け、暴れるな落ちるぞ」
「キュンキューン。クウゥン」
何これ、何これ、何これっ。
俺が何か話そうとする度、俺の喉から出てくるのは何かの鳴き声。
どうして、え、俺の手。
白い。
白くて、ふさふさの毛。
「ゲルトさん、俺、ウヅキが一瞬ニルスさんみたいな狐に見えたんです。でも、今は狼? 狼ですよね、なんで白い狐の姿に見えたんだろ」
「俺も一瞬狐に見えたが、でもグレオよく見てみろ。これは狼だ」
「着ていた服は脱げて、でも皮の鎧だけ着けてるってどうして。これがウヅキなのは分かりましたけど」
白い? 白い何て言った? 狐?
「狼になったのは何でだ」
「どうして」
ワルドさんとグレオ君が戸惑った声を上げているけれど、俺だって戸惑っている。
だって、俺狼になったってこと?
「ウヅキ、俺の言葉も分かる?」
「クウゥン」
頷いて、分かると言ったつもりなのに、やっぱり鳴き声。
俺の声、なんか不安そうな感じがする。
「ウヅ、怯えなくていい」
「そうだよ。ウヅキ、もしかして昨日何度も魔力切れとかしたからじゃないですか? そういうの無いですか」
そうなのかな、でも違う気がする。
俺、もしかしてさっき願ったから?
いっそ消えてしまいたい、そう思ったけれどそれじゃ皆を悲しませるから、それなら話せなくなりたい。
何も話せなくなれば、俺は皆を悲しませなくて済む、そう思ったから?
だとしたら、きっとこれは大神様が俺の願いを叶えてくれた結果なんだろうか。
俺が、誰かを悲しませないように。
いっそ、俺このままの方が良いんじゃないのかな。
それなら、失言したり可哀相アピールして皆を悲しませなくてすむんだから。
「ウヅ」
ワルドさんの手が俺の頭に触れる。
狼獣人から狼に変わった俺は、白い体毛になったのかな。
俺の視界に見えるのは自分の両手だけだけどそこはふさふさした白い毛におおわれている。
両手は人の手から完全に動物の手で、ひっくり返すと肉球が見える。
肉球、ピンク? 見た感じむにむにした柔らかそうな感じで色は薄いピンク色だ。
前世、店長のお店のお客さんは犬の散歩のついでにお店に来てくれる人も多かったから、店の前に繋いだ犬が他の人の邪魔にならない様に相手するのも俺の仕事の一つだった。
俺がなかなか休憩取らずに働いてるから、ちょっとでも休ませ様として犬の相手をさせてくれてたって実は俺は知ってたんだ。
お客さんも俺に「うちの子の相手をしてくれたお礼」って牛乳くれたり、パンやお菓子をくれて店の前のベンチでお客さんと話をしながらそれを食べてたんだ。
最初は断ってたけど、店長が孫に相手にされない年寄りの相手をしてくれたお駄賃だからと言ってくれて、俺はありがたく頂くことにしてたんだ。
あの時、肉球をぷにぷにさせてくれる子が何故か多かったんだよね。
今思うと不思議、俺がしゃがみ込んで頭を撫でてると、手をちょんちょんって俺の膝に乗せて来て俺が手に触れて肉球をぷにぷにすると嬉しそうにしっぽ振ってくれるんだ。
可愛くって俺の癒しだった。
あの手に、これって似てる。
犬と狼って似てるんだっけ? というより、俺の髪の色と違うけど、何で白なんだろう。
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