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子狐達とゲルトさん5

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「お前、一口に詰め込み過ぎだ」

 呆れたようなゲルトさんの膝の上には小狐達。
 皆でゲルトさんの膝の上に座り、小さな両手でサンドイッチを掴んで口に詰め込んで、時々スープを俺がスプーンで飲ませている。

「笑っちゃいけねえのかもしれねえが、ゲルト面白いぞ」
「何がだ、ほら、一口はもう少し小さくしろ。誰も取らないから」
「スープは口の中の物飲み込んでからだよ」

 サンドイッチをハグハグハグとどんどん口の中に詰め込もうとするから、喉につまらせるんじゃないかと焦りながら俺に向かって、パカッと口を開いた子にスプーンを差し出す。
 小狐達、体は小さいのに俺と同じ位食べてる気がするけとこんなに食べて大丈夫なのかな。
 鶏を焼いたのが気に入ったらしく、パンを残してそれだけ食べようとしてゲルトさんに注意されていたんだけど、今度はパンの半分位を一度にくちにいれようとして止められている。
 
「よく噛んでね、モグモグするんだよ」

 俺一人じゃスープを飲ませるのが間に合わなくて、見かねたグレオ君も手伝ってくれてるけど、何ていうかグレオ君のほうが手際がいい気がする。

「そうそう上手だね、じゃあもう一口、はい」

 やっぱりグレオ君上手だ。

「あ、ごめん。こぼしちゃったね。うわあ、舐めたら駄目だよ。浄化!」
「キュイキュイッ!」

 浄化したら抗議の様な声が上がった。
 えええ、なんで怒ったの?

「ふふふ。ウヅキ、なんで舐めさせないんだって怒ってるよ」
「えええ、だって口の周りベタベタになってるのに」

 こぼして顎の辺りにべったりついちゃったスープを、手で拭って舐めようとしてたんだよ。
 浄化するよね? 駄目なの?

「家の弟達も凄く小さい頃はよく口の周り汚して、母さんが舐めてくれてたからなあ。それでこの位になると自分で舐めて綺麗にするんだよ」
「そうなの?」
「うん、獣してる時は毛づくろいするからね。なんでも舐めて綺麗にしたくなるんだよ」

 じ、獣、獣化?
 え、それって皆するの?

「え、グレオ君も?」
「さすがに今は成人前だし獣化はしないよ」

 え、獣化って小さい子だけじゃないの。
 成人前だからしないってことは、大人になるとするの?

「ウヅ。スープくれって皆口開いてるぞ」
「え、わっ。ごめんね。ええと、うわっ一人ずつしかあげられないから待って、順番ーっ!」

 早く早くと言わんばかりに鳴いてるから慌ててた。ゲルトさんが俺の手からスープの器とスプーンを受け取って、皆に飲ませ始めたんだ。

「ほら、一人ずつだ」

 グレオ君みたいな手際の良さで、ゲルトさんはスープを飲ませていく。
 皆、ゲルトさんの言うことは聞いてるし、大人しいのはなんで?
 
「ふふふ、ウヅキにも苦手なことあるんだね」
「グレオ君上手過ぎるよ。言葉通じないのになんで分かるの?」
「弟達の面倒見てたから慣れてるだけだよ」

 グレオ君は照れてる、それを横で見てるワルドさんの視線が優しい。
 俺はこういうの苦手、小さい子はホルン君で慣れたと思ってたんだけどなあ。

「もう終わりだ。これ以上は腹を壊す」
「キュイキュイッ!」
「キューキュー!」

 抗議の声が上がる。
 これは甘いものは見せないほうがいいな。

「鳴いても駄目だ」
「キュイイイッ」

 ポカポカと小さな手でゲルトさんを叩く姿は、何ていうか可愛いです。
 ワルドさんじゃないけど、笑っちゃ駄目なのに笑っちゃうよ。

「そんなことをしても駄目だ。こら、上るな」

 ポカポカ攻撃が駄目だと分かると、今度はゲルトさんの頭目掛けて上っていく。
 
「こらこらっ」
「ふふふ、ゲルトさん懐かれてるなあ」

 何ていうか可愛いです。
 眼福って感じだよね。

 昨日の騒ぎが嘘みたいな穏やかな時間に、俺の頬は緩みっぱなしだったんだ。
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