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子狐とゲルトさん4
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「子供達を起こしてくるよ」
「あ、グレオ君ありがとう。じゃあ、俺スープとか出しておくね」
ひょいっとゲルトさんの腕の中から下に飛び降りようとしたのに、ゲルトさんに捉まってしまった。
「え、ゲルトさん」
「あ、あのいや」
なんでだろう、抱っこしなおされてるんだけど。
何か理由があるのかなと、ゲルトさんが口を開くのを待っているけれどゲルトさんは、何も言わない。
「ゲルトさん、お腹空いてますよね。あ、焚火にあたってください。寒かったですよね」
「大丈夫だ。それより」
なんだかゲルトさんが苦しそうに見えて、俺は右手でゲルトさんの頬に触れる。
「ゲルトさん」
「ウヅ、いるよな。幻じゃないな」
「え、あの。はい、俺はここにいます。大丈夫ですよ、俺ちゃんとここにいます。ゲルトさんが抱っこしてくれてるからゲルトさんの体温分かるくらい近くにいますよ」
どうしたんだろう、ゲルトさんが辛そうで不安そうに見えるんだけど。
何があったんだろう。ゲルトさん、何でそんなに辛そうなの。
「ほら、俺いるでしょ」
俺の短い両腕を精一杯伸ばしてゲルトさんの頭にしがみ付く。
俺が魔力切れ起こしたせいで、絆の魔道具は俺の気配をゲルトさんに送れなくなったし、逆もそうだ。
俺は殆ど気を失ってたからだけど、ゲルトさんは長い時間俺の気配が分からなくて焦っただろう。それはきっとグレオ君もワルドさんもそうだろう。きっと、もう会えないんじゃないかって、そう考えて怖かっただろうし不安だったと思う。
「分かりますか、ゲルトさん」
「ああ、分かる」
「俺、結構しぶといですから。簡単に負けたりしないし、どこかに飛んでもゲルトさんに会いたいから絶対に戻ってきますから」
ああ、ゲルトさんが好きだ。
大好きで、好きすぎる位好きで、なんだか胸が苦しい。
俺がいなくなって、気配が分からなくなって、それだけでこんな顔をしてくれるゲルトさんに、俺は性格悪いと思うけれど嬉しいって思ってしまうんだ。
「もし何かあって離れてしまっても、俺絶対にゲルトさんのところに帰ってきますから。だから、ゲルトさん俺を絶対に見つけて下さいね」
「……分かった」
見つめ合って、へへへって笑う。
ああ、幸せだ。
ああ、大好きだ。
「ウヅキー、子供達にご飯。あ」
「あ、ごめん、すぐ用意するから。朝から甘いのは駄目だよ、お肉食べようね」
今度こそひょいっとゲルトさんの腕から飛び降りて、俺は焚火のところまで走るとスープがたっぷり入った鍋を出し、大きな木のお皿にサンドイッチを大量に盛り付ける。後はカットした果物だ。
足りなかったらフレンチトーストかパンケーキを出そうかなって思うけど、これを先に出したら子供達はこっちだけ食べそうだもんね。
「あ、ワルドさん温石いりますか?」
「あぁ。あ、作ってたのか」
「朝方寒いかなって思って、みんなの分作ったんですけど、子供達とゲルトさんはいらないかな」
焚火の様子を見ているゲルトさんに、何故か子供達が群がっているんだ。
背中にのって、しゃがみ込んだゲルトさんの足にしがみ付いて、腕にもよじ登ろうとしている。
「おい、ゲルト。なんだそりゃ」
「なんだ」
「お前、子守りが得意なのか。なんでそんなに好かれてる。俺なんてさっき悲鳴あげられたんだぞ」
悲鳴? と首を傾げながら温石を取り出して大きな布でぐるぐると包む。
火傷は怖いから、この辺りは気を付けないとね。
「はい、どうぞ。こっちはグレオ君の分です。具材、鶏を焼いて甘辛く味付けたものと、野菜と卵を炒めたものと、後は腸詰を焼いて刻んだ玉菜と一緒に挟んだものがあります。好きに取って下さいね。あとスープです」
「おう、ありがとな。ああ、あったまる」
ワルドさんは温石を懐にいれると、嬉しそうに目を細めた。
やっぱり蛇獣人は寒いの苦手なんだなあ。
温石の事は知らなかったみたいだけど、今まで冬の間ってどうしてたんだろ。
まあ、こういうのって気軽に聞けないよね。
「ゲルトさん、スープ……」
ゲルトさんにスープを渡そうとして振り返って見えた光景に、膝から崩れ落ちる。
なに、これ。
「ゲルトさん、なんで子供達にそんなにすかれてるんですか」
子供達はなんでか知らないけれど、両肩とゲルトさんの頭の上に陣取ってキュイキュイ鳴いていたんだ。
な、なんで、こんな事になってるの。
誰か今すぐカメラを俺に、こんな可愛いゲルトさんの姿残しておけないなんて酷すぎるよ。
俺は萌える心を必死に堪えて、ゲルトさんにすりすりしてる子狐達を焚火の前に連れて行ったんだ。
「あ、グレオ君ありがとう。じゃあ、俺スープとか出しておくね」
ひょいっとゲルトさんの腕の中から下に飛び降りようとしたのに、ゲルトさんに捉まってしまった。
「え、ゲルトさん」
「あ、あのいや」
なんでだろう、抱っこしなおされてるんだけど。
何か理由があるのかなと、ゲルトさんが口を開くのを待っているけれどゲルトさんは、何も言わない。
「ゲルトさん、お腹空いてますよね。あ、焚火にあたってください。寒かったですよね」
「大丈夫だ。それより」
なんだかゲルトさんが苦しそうに見えて、俺は右手でゲルトさんの頬に触れる。
「ゲルトさん」
「ウヅ、いるよな。幻じゃないな」
「え、あの。はい、俺はここにいます。大丈夫ですよ、俺ちゃんとここにいます。ゲルトさんが抱っこしてくれてるからゲルトさんの体温分かるくらい近くにいますよ」
どうしたんだろう、ゲルトさんが辛そうで不安そうに見えるんだけど。
何があったんだろう。ゲルトさん、何でそんなに辛そうなの。
「ほら、俺いるでしょ」
俺の短い両腕を精一杯伸ばしてゲルトさんの頭にしがみ付く。
俺が魔力切れ起こしたせいで、絆の魔道具は俺の気配をゲルトさんに送れなくなったし、逆もそうだ。
俺は殆ど気を失ってたからだけど、ゲルトさんは長い時間俺の気配が分からなくて焦っただろう。それはきっとグレオ君もワルドさんもそうだろう。きっと、もう会えないんじゃないかって、そう考えて怖かっただろうし不安だったと思う。
「分かりますか、ゲルトさん」
「ああ、分かる」
「俺、結構しぶといですから。簡単に負けたりしないし、どこかに飛んでもゲルトさんに会いたいから絶対に戻ってきますから」
ああ、ゲルトさんが好きだ。
大好きで、好きすぎる位好きで、なんだか胸が苦しい。
俺がいなくなって、気配が分からなくなって、それだけでこんな顔をしてくれるゲルトさんに、俺は性格悪いと思うけれど嬉しいって思ってしまうんだ。
「もし何かあって離れてしまっても、俺絶対にゲルトさんのところに帰ってきますから。だから、ゲルトさん俺を絶対に見つけて下さいね」
「……分かった」
見つめ合って、へへへって笑う。
ああ、幸せだ。
ああ、大好きだ。
「ウヅキー、子供達にご飯。あ」
「あ、ごめん、すぐ用意するから。朝から甘いのは駄目だよ、お肉食べようね」
今度こそひょいっとゲルトさんの腕から飛び降りて、俺は焚火のところまで走るとスープがたっぷり入った鍋を出し、大きな木のお皿にサンドイッチを大量に盛り付ける。後はカットした果物だ。
足りなかったらフレンチトーストかパンケーキを出そうかなって思うけど、これを先に出したら子供達はこっちだけ食べそうだもんね。
「あ、ワルドさん温石いりますか?」
「あぁ。あ、作ってたのか」
「朝方寒いかなって思って、みんなの分作ったんですけど、子供達とゲルトさんはいらないかな」
焚火の様子を見ているゲルトさんに、何故か子供達が群がっているんだ。
背中にのって、しゃがみ込んだゲルトさんの足にしがみ付いて、腕にもよじ登ろうとしている。
「おい、ゲルト。なんだそりゃ」
「なんだ」
「お前、子守りが得意なのか。なんでそんなに好かれてる。俺なんてさっき悲鳴あげられたんだぞ」
悲鳴? と首を傾げながら温石を取り出して大きな布でぐるぐると包む。
火傷は怖いから、この辺りは気を付けないとね。
「はい、どうぞ。こっちはグレオ君の分です。具材、鶏を焼いて甘辛く味付けたものと、野菜と卵を炒めたものと、後は腸詰を焼いて刻んだ玉菜と一緒に挟んだものがあります。好きに取って下さいね。あとスープです」
「おう、ありがとな。ああ、あったまる」
ワルドさんは温石を懐にいれると、嬉しそうに目を細めた。
やっぱり蛇獣人は寒いの苦手なんだなあ。
温石の事は知らなかったみたいだけど、今まで冬の間ってどうしてたんだろ。
まあ、こういうのって気軽に聞けないよね。
「ゲルトさん、スープ……」
ゲルトさんにスープを渡そうとして振り返って見えた光景に、膝から崩れ落ちる。
なに、これ。
「ゲルトさん、なんで子供達にそんなにすかれてるんですか」
子供達はなんでか知らないけれど、両肩とゲルトさんの頭の上に陣取ってキュイキュイ鳴いていたんだ。
な、なんで、こんな事になってるの。
誰か今すぐカメラを俺に、こんな可愛いゲルトさんの姿残しておけないなんて酷すぎるよ。
俺は萌える心を必死に堪えて、ゲルトさんにすりすりしてる子狐達を焚火の前に連れて行ったんだ。
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