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子狐達とゲルトさん3
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「そうか」
あの馬との付き合いは俺よりも当然ゲルトさんの方が長いから、辛いだろう。
ゲルトさんは一瞬眉をひそめた後、俺に笑顔を見せた。
「馬のお陰で時間稼ぎが出来たと思えば、仕方ないことだ。気に病むな」
「ごめんなさい」
俺が初めてゲルトさんと会ってグリームの町までの旅の間、ゲルトさんは毎日馬にブラシを掛けていた。
長い距離を歩く日も坂道を上る時も優しく声を掛けて、馬を労わっていた。
ニルスさんだってマリアさんだって、馬を大切にしていた。
それを、俺がビリーさんに攫われちゃったせいで、俺の第六感が暴走して気を失っていたせいで。
「謝る必要はない。ただ覚えていてやってくれ。優しくて頭がいい子だったと」
ぽんぽんと宥める様に俺の頭を撫でて、ゲルトさんは周囲を見渡した後一点に視線を向けた。
「あれは」
「あの、ビリーさんです。片足は失っていますが命はなんとか。今は睡眠の魔法で眠らせています」
「助けたのか?」
助けたのかという声は、俺には殺さなかなったのかに聞こえてしまった。
厳しい目、硬い声。
俺はそれが見たくなくて、ぎゅっと目を瞑りゲルトさんにしがみ付く。
「ウヅ?」
「ゲルトさんが何を考えているか分かりませんが。ビリーさんを裁いていいのは俺達じゃなく狐獣人の里の人だと思うんです。ビリーさんが何を思って、何が不満でそうしたのか。何をしようとしていたのか全部聞いた上でニルスさん達が裁く。それが俺は正しいと思うんです」
感情のままビリーさんの命を刈り取るのは簡単だ。
拘束して眠らせているんだから、ビリーさんは抵抗が出来ないから。
俺がビリーさんの首にナイフを一突き、そして放置すればそれで終わる。
ニルスさんが迎えに来てくれた時は、ビリーさんオークにやられた。そう言えばいいだけだ。
「俺は自分の感情でビリーさんを、そんなの出来ない。しちゃいけないと思うんです。俺達は魔物じゃない。考えて話が出来る。理性がある。それが魔物と俺達の違いです」
ぎゅうぎゅうとゲルトさんにしがみ付いたまま、俺自身悩んでいるからそれを肯定しようと必死に口を開く。
許せない、許せない、許せない。
ビリーさんが何をしたのか、何をしようとしたのか。
それを思うだけで、心の奥底から怒りが湧いてくる。
許せない、狐獣人の子を攫った。
自分も同じ狐獣人のくせに。
許せない、里に火をつけ、祠の結界を消そうとした。
自分も里で生まれ育ったくせに。
許せない、許せない、許せない。
感情のまま行動したら、俺は今すぐにでもビリーさんを殺そうと動くだろう。
だけどそれじゃ駄目だと、俺の理性が怒りの心を宥める。
怒りの心と俺の理性は、まるで別々のものみたいに俺の中で喧嘩している。
お互いが譲らない。
どちらも引けない。
だって、その引けない理由はニルスさんとマリアさんが大好きだから守りたいというものだから。
「感情を理性で抑え込む。そうして判断する、そうだな俺達は獣でも魔物でもない」
「……はい」
「俺達は感情だけで、本能だけで動かない。ビリーの罪をすべて理解して、その上で裁く」
「はい。ニルスさん達は辛いと思いますけれど」
でも、仕方ない。
こうする他ないんだ。
あの馬との付き合いは俺よりも当然ゲルトさんの方が長いから、辛いだろう。
ゲルトさんは一瞬眉をひそめた後、俺に笑顔を見せた。
「馬のお陰で時間稼ぎが出来たと思えば、仕方ないことだ。気に病むな」
「ごめんなさい」
俺が初めてゲルトさんと会ってグリームの町までの旅の間、ゲルトさんは毎日馬にブラシを掛けていた。
長い距離を歩く日も坂道を上る時も優しく声を掛けて、馬を労わっていた。
ニルスさんだってマリアさんだって、馬を大切にしていた。
それを、俺がビリーさんに攫われちゃったせいで、俺の第六感が暴走して気を失っていたせいで。
「謝る必要はない。ただ覚えていてやってくれ。優しくて頭がいい子だったと」
ぽんぽんと宥める様に俺の頭を撫でて、ゲルトさんは周囲を見渡した後一点に視線を向けた。
「あれは」
「あの、ビリーさんです。片足は失っていますが命はなんとか。今は睡眠の魔法で眠らせています」
「助けたのか?」
助けたのかという声は、俺には殺さなかなったのかに聞こえてしまった。
厳しい目、硬い声。
俺はそれが見たくなくて、ぎゅっと目を瞑りゲルトさんにしがみ付く。
「ウヅ?」
「ゲルトさんが何を考えているか分かりませんが。ビリーさんを裁いていいのは俺達じゃなく狐獣人の里の人だと思うんです。ビリーさんが何を思って、何が不満でそうしたのか。何をしようとしていたのか全部聞いた上でニルスさん達が裁く。それが俺は正しいと思うんです」
感情のままビリーさんの命を刈り取るのは簡単だ。
拘束して眠らせているんだから、ビリーさんは抵抗が出来ないから。
俺がビリーさんの首にナイフを一突き、そして放置すればそれで終わる。
ニルスさんが迎えに来てくれた時は、ビリーさんオークにやられた。そう言えばいいだけだ。
「俺は自分の感情でビリーさんを、そんなの出来ない。しちゃいけないと思うんです。俺達は魔物じゃない。考えて話が出来る。理性がある。それが魔物と俺達の違いです」
ぎゅうぎゅうとゲルトさんにしがみ付いたまま、俺自身悩んでいるからそれを肯定しようと必死に口を開く。
許せない、許せない、許せない。
ビリーさんが何をしたのか、何をしようとしたのか。
それを思うだけで、心の奥底から怒りが湧いてくる。
許せない、狐獣人の子を攫った。
自分も同じ狐獣人のくせに。
許せない、里に火をつけ、祠の結界を消そうとした。
自分も里で生まれ育ったくせに。
許せない、許せない、許せない。
感情のまま行動したら、俺は今すぐにでもビリーさんを殺そうと動くだろう。
だけどそれじゃ駄目だと、俺の理性が怒りの心を宥める。
怒りの心と俺の理性は、まるで別々のものみたいに俺の中で喧嘩している。
お互いが譲らない。
どちらも引けない。
だって、その引けない理由はニルスさんとマリアさんが大好きだから守りたいというものだから。
「感情を理性で抑え込む。そうして判断する、そうだな俺達は獣でも魔物でもない」
「……はい」
「俺達は感情だけで、本能だけで動かない。ビリーの罪をすべて理解して、その上で裁く」
「はい。ニルスさん達は辛いと思いますけれど」
でも、仕方ない。
こうする他ないんだ。
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