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その後の俺達は4

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「寝てるね」
「うん、起きてたら暗くて怖いかなって思って、魔法で眠らせちゃったんだ」
「そうなんだ。そんな魔法あるんだね知らなかった」

 グレオ君はツンツンと眠ってる狐獣人の子供の頬を突いているけれど、魔法で眠っているから起きる気配はない。
 
「起きたりしないの?」
「時間が経てば起きるのかな、でも解除した方が早いけどどうしよう」
「うーん、もう少し寝かせておこう。ずっと鳴いてて可哀そうだったし、まだ里にいつ戻れるか分からないし」
「そうだね。じゃあ一応回復薬だけちょっと飲ませておこうか」

 マジックバッグから回復薬を取り出して、一口ずつ飲ませていく。
 言葉も話せないくらいに小さい子達だから、あんまり薬は飲ませない方がいいのかもしれないけれど、小さい子供が何を食べられるのかも分からないから、気休め程度の回復だ。

「この子達はまだ眠ってるからいいとして、見に行くしかないよね」
「この子達を誘拐してきた人?」
「うん。馬は多分駄目だと思う。オークが見逃す筈ないから、人も……無理かな」

 それを考えると気が重いけれど、生きてるしろ亡くなっているにしろ狐獣人の問題になるからニルスさんが関わって来る話だから、そのままってわけにはいかないよね。

「グレオ君休んでる?」
「い、行くよ。大丈夫、俺だって冒険者なんだから」

 オークに襲われたらどんな状態になるのか、そんなの想像したら怖くなる。
 グレオ君の顔色が悪くなってるから、ちょっと心配。

「じゃあ、一緒に行こう。怖いけど」
「そ、そうだよね。怖いよね、怖くてもいい?」
「怖くて良いと思う。だって怖いもん!」
「よ、良かった。俺だけ怖いのかと思って、なんか情けないかなって……」
「怖いに決まってるよ。だって、俺達まだ子供だし。ゲルトさんもワルドさんもいないし、ニルスさんもマリアさんもいないんだもん」

 名前を出したら余計に不安になるかな、って心配になる。
 だけど、グレオ君は怖いとか不安だとか俺も感じてるって素直に言った方がいい気がして、思い切って口にしてしまったんだ。

「そうだよね。俺達子供だもん。まだ成人してない子供で、だから怖くても、不安でもいいんだよね」

 グレオ君の手が震えている。
 俺は寝てた(あの悪夢は辛かったけれど)だけだけど、グレオ君は俺が死んじゃうかもとか、誰も助けにこない状況で馬車の中でオークの声を聞いたんだ。
 それって凄いストレスだと思う。
 こういう時は、声に出した方がいいんだよ。きっと。

「いいんだよ。不安だよ。ゲルトさんに会いたい、ニルスさんとマリアさんが元気でいるか心配」
「俺も心配だよ」

 話をしながら馬車の外に出て、手を繋いで馬車から少し離れた場所に何かが倒れている風の場所に歩いていく。

「ワルドさん、俺達の気配辿って来てくれるかな。父ちゃんと母ちゃんはちゃんと避難出来たかな」
「魔力を魔道具に補充したからきっと気配を辿ってくれると思う。だってゲルトさんと繋がってるって分かるもん」

 俺の今の希望って、このゲルトさんとの繋がりだけだ。
 第六感が働いてないから、皆無事だと思う。そう信じたい。
 ゲルトさんとの繋がり、これが無ければ俺不安でおかしくなりそうだ。

「そうだよね。ワルドさんと繋がってるのは分かるから、きっと同じようにワルドさんも俺と繋がってるって分かってるよね」
「うん、きっと」

 ノロノロと、本当はもっと早く歩けるのに少しでも遅くしたくて俺達はゆっくりゆっくり歩いていく。
 馬の鳴き声はしない、人の声もしない。
 それが何を意味してるのか、俺達はもう気がついてる。

「ウヅキ」

 俺よりも多分目がいいグレオ君は、もう見ちゃったんだろう。
 俺の名前を呼んだ後、歩けなくなった。

「あれ、ビリーさんだ、狐獣人の子を拐ったのはビリーさんなんだよ!」

 グレオ君の声が何もない平原に響き渡る。
 グレオ君が指差す方向、そこに横たわっていたのは片足が無くなったビリーさんの姿だった。
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