221 / 248
その後の俺達は4
しおりを挟む
「寝てるね」
「うん、起きてたら暗くて怖いかなって思って、魔法で眠らせちゃったんだ」
「そうなんだ。そんな魔法あるんだね知らなかった」
グレオ君はツンツンと眠ってる狐獣人の子供の頬を突いているけれど、魔法で眠っているから起きる気配はない。
「起きたりしないの?」
「時間が経てば起きるのかな、でも解除した方が早いけどどうしよう」
「うーん、もう少し寝かせておこう。ずっと鳴いてて可哀そうだったし、まだ里にいつ戻れるか分からないし」
「そうだね。じゃあ一応回復薬だけちょっと飲ませておこうか」
マジックバッグから回復薬を取り出して、一口ずつ飲ませていく。
言葉も話せないくらいに小さい子達だから、あんまり薬は飲ませない方がいいのかもしれないけれど、小さい子供が何を食べられるのかも分からないから、気休め程度の回復だ。
「この子達はまだ眠ってるからいいとして、見に行くしかないよね」
「この子達を誘拐してきた人?」
「うん。馬は多分駄目だと思う。オークが見逃す筈ないから、人も……無理かな」
それを考えると気が重いけれど、生きてるしろ亡くなっているにしろ狐獣人の問題になるからニルスさんが関わって来る話だから、そのままってわけにはいかないよね。
「グレオ君休んでる?」
「い、行くよ。大丈夫、俺だって冒険者なんだから」
オークに襲われたらどんな状態になるのか、そんなの想像したら怖くなる。
グレオ君の顔色が悪くなってるから、ちょっと心配。
「じゃあ、一緒に行こう。怖いけど」
「そ、そうだよね。怖いよね、怖くてもいい?」
「怖くて良いと思う。だって怖いもん!」
「よ、良かった。俺だけ怖いのかと思って、なんか情けないかなって……」
「怖いに決まってるよ。だって、俺達まだ子供だし。ゲルトさんもワルドさんもいないし、ニルスさんもマリアさんもいないんだもん」
名前を出したら余計に不安になるかな、って心配になる。
だけど、グレオ君は怖いとか不安だとか俺も感じてるって素直に言った方がいい気がして、思い切って口にしてしまったんだ。
「そうだよね。俺達子供だもん。まだ成人してない子供で、だから怖くても、不安でもいいんだよね」
グレオ君の手が震えている。
俺は寝てた(あの悪夢は辛かったけれど)だけだけど、グレオ君は俺が死んじゃうかもとか、誰も助けにこない状況で馬車の中でオークの声を聞いたんだ。
それって凄いストレスだと思う。
こういう時は、声に出した方がいいんだよ。きっと。
「いいんだよ。不安だよ。ゲルトさんに会いたい、ニルスさんとマリアさんが元気でいるか心配」
「俺も心配だよ」
話をしながら馬車の外に出て、手を繋いで馬車から少し離れた場所に何かが倒れている風の場所に歩いていく。
「ワルドさん、俺達の気配辿って来てくれるかな。父ちゃんと母ちゃんはちゃんと避難出来たかな」
「魔力を魔道具に補充したからきっと気配を辿ってくれると思う。だってゲルトさんと繋がってるって分かるもん」
俺の今の希望って、このゲルトさんとの繋がりだけだ。
第六感が働いてないから、皆無事だと思う。そう信じたい。
ゲルトさんとの繋がり、これが無ければ俺不安でおかしくなりそうだ。
「そうだよね。ワルドさんと繋がってるのは分かるから、きっと同じようにワルドさんも俺と繋がってるって分かってるよね」
「うん、きっと」
ノロノロと、本当はもっと早く歩けるのに少しでも遅くしたくて俺達はゆっくりゆっくり歩いていく。
馬の鳴き声はしない、人の声もしない。
それが何を意味してるのか、俺達はもう気がついてる。
「ウヅキ」
俺よりも多分目がいいグレオ君は、もう見ちゃったんだろう。
俺の名前を呼んだ後、歩けなくなった。
「あれ、ビリーさんだ、狐獣人の子を拐ったのはビリーさんなんだよ!」
グレオ君の声が何もない平原に響き渡る。
グレオ君が指差す方向、そこに横たわっていたのは片足が無くなったビリーさんの姿だった。
「うん、起きてたら暗くて怖いかなって思って、魔法で眠らせちゃったんだ」
「そうなんだ。そんな魔法あるんだね知らなかった」
グレオ君はツンツンと眠ってる狐獣人の子供の頬を突いているけれど、魔法で眠っているから起きる気配はない。
「起きたりしないの?」
「時間が経てば起きるのかな、でも解除した方が早いけどどうしよう」
「うーん、もう少し寝かせておこう。ずっと鳴いてて可哀そうだったし、まだ里にいつ戻れるか分からないし」
「そうだね。じゃあ一応回復薬だけちょっと飲ませておこうか」
マジックバッグから回復薬を取り出して、一口ずつ飲ませていく。
言葉も話せないくらいに小さい子達だから、あんまり薬は飲ませない方がいいのかもしれないけれど、小さい子供が何を食べられるのかも分からないから、気休め程度の回復だ。
「この子達はまだ眠ってるからいいとして、見に行くしかないよね」
「この子達を誘拐してきた人?」
「うん。馬は多分駄目だと思う。オークが見逃す筈ないから、人も……無理かな」
それを考えると気が重いけれど、生きてるしろ亡くなっているにしろ狐獣人の問題になるからニルスさんが関わって来る話だから、そのままってわけにはいかないよね。
「グレオ君休んでる?」
「い、行くよ。大丈夫、俺だって冒険者なんだから」
オークに襲われたらどんな状態になるのか、そんなの想像したら怖くなる。
グレオ君の顔色が悪くなってるから、ちょっと心配。
「じゃあ、一緒に行こう。怖いけど」
「そ、そうだよね。怖いよね、怖くてもいい?」
「怖くて良いと思う。だって怖いもん!」
「よ、良かった。俺だけ怖いのかと思って、なんか情けないかなって……」
「怖いに決まってるよ。だって、俺達まだ子供だし。ゲルトさんもワルドさんもいないし、ニルスさんもマリアさんもいないんだもん」
名前を出したら余計に不安になるかな、って心配になる。
だけど、グレオ君は怖いとか不安だとか俺も感じてるって素直に言った方がいい気がして、思い切って口にしてしまったんだ。
「そうだよね。俺達子供だもん。まだ成人してない子供で、だから怖くても、不安でもいいんだよね」
グレオ君の手が震えている。
俺は寝てた(あの悪夢は辛かったけれど)だけだけど、グレオ君は俺が死んじゃうかもとか、誰も助けにこない状況で馬車の中でオークの声を聞いたんだ。
それって凄いストレスだと思う。
こういう時は、声に出した方がいいんだよ。きっと。
「いいんだよ。不安だよ。ゲルトさんに会いたい、ニルスさんとマリアさんが元気でいるか心配」
「俺も心配だよ」
話をしながら馬車の外に出て、手を繋いで馬車から少し離れた場所に何かが倒れている風の場所に歩いていく。
「ワルドさん、俺達の気配辿って来てくれるかな。父ちゃんと母ちゃんはちゃんと避難出来たかな」
「魔力を魔道具に補充したからきっと気配を辿ってくれると思う。だってゲルトさんと繋がってるって分かるもん」
俺の今の希望って、このゲルトさんとの繋がりだけだ。
第六感が働いてないから、皆無事だと思う。そう信じたい。
ゲルトさんとの繋がり、これが無ければ俺不安でおかしくなりそうだ。
「そうだよね。ワルドさんと繋がってるのは分かるから、きっと同じようにワルドさんも俺と繋がってるって分かってるよね」
「うん、きっと」
ノロノロと、本当はもっと早く歩けるのに少しでも遅くしたくて俺達はゆっくりゆっくり歩いていく。
馬の鳴き声はしない、人の声もしない。
それが何を意味してるのか、俺達はもう気がついてる。
「ウヅキ」
俺よりも多分目がいいグレオ君は、もう見ちゃったんだろう。
俺の名前を呼んだ後、歩けなくなった。
「あれ、ビリーさんだ、狐獣人の子を拐ったのはビリーさんなんだよ!」
グレオ君の声が何もない平原に響き渡る。
グレオ君が指差す方向、そこに横たわっていたのは片足が無くなったビリーさんの姿だった。
12
お気に入りに追加
3,665
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる