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悪夢からの生還3

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「そういえばニルスさん怪我してたんだ。回復魔法効いてるといいけど」

 魔法を使おうとして使えなかった時と、ニルスさんに向けて回復魔法を使えた時の違いが分からないけれど、ちゃんとニルスさんの怪我は治ったかな。
 魔法がちゃんと使えるなら、火事を消したいしさっき人族っぽい人に捕まっていたいた子供のその後も気になる。

「いやああ、助けて!」
「お父さん! お母さん!」

 なんだ、今の声。

「どこから聞こえるの?」

 きょろきょろと声の主を探す。
 魔力消費してるみたいだけど、体が浮いてるお陰で里全体が見渡せるのは助かる。

「あそこだ」

 さっきとは違う人族、それも二人。
 それぞれが狐獣人の子供、さっきよりも少し大きい? 子を肩に担いでいる。

「お母さん~!」
「うるせえ、餓鬼。おい首輪つけようぜ」
「俺達が従属させられるわけないだろ。泣かれんのは面倒だが港まではこのまんまだ」

 港? じゃあ、こいつらギルドマスターが言っていた奴らの仲間なのか。
 でもどうやって里に?

「騒ぐな。泣いたらお前の親を殺すぞ」
「や、やだあ」
「ころさないで、いやだああ」
「うるせえ。おい、あの狐どこ行ったんだ」
「先に上に行ってる筈だ。俺達も急ごうぜ」
「あの馬鹿狐、自分が人族の国で本当に贅沢に暮らせるとでも思ってんのかねえ」
「所詮、獣だってことだ。坊ちゃん達に騙されて自分の仲間を裏切ったんた馬鹿だからな」

 仲間を裏切る? 誰のことだろう。

「狐獣人の子だけじゃつまらねえなあ。こいつら見た目良く育つのか」
「狐獣人は結界魔法が得意なんだよ。見た目は二の次三の次さ」

 崖方面に歩きながら話す。
 何か手がかり、誰が里を裏切ったんだろう。

「凄い魔法が使えても、あのビリーって奴みたいな馬鹿じゃなあ」
「ビリーと一緒に裏切った馬鹿も頭の作りは似たり寄ったりだったなあ」
「やっぱり獣だからな。考える力なんかないんだろ」
「同じ馬鹿なら俺は山猫獣人か兎獣人がいいなあ」
「いいねえ。山猫。あの勝気な顔を服従させるのはたまんねえよ」

 山猫ってグレオ君。
 本当に山猫獣人は人族に狙われやすいんだ。

「坊ちゃん達のいる町には山猫獣人が多いらしいな。まだ成人前の可愛いのが坊ちゃんのお気に入りらしいぜ」
「へえ。それじゃ坊ちゃんが飽きたら俺達にも貸してくれるかもな」
「いいねえ。わざと従属の弱い首輪をつけて、自分の意思がある奴隷を好き放題してえな」
「そうだな。狐獣人でもこの位の子供ならそれもありだな。国に帰る前に遊ぶか?」
「いいねえ」

 なに、何を言ってるんだ。こいつら。

『許せない、里に火を放っただけじゃなく。幼い子を摑まえるなんて』

 体の血が逆流しそうな程の怒り。
 許せない、人族と何の約束をしたのか知らないけれど、里の仲間を裏切ったビリー達。
 
「おい、お前達何してる。白い狐が出たぞ」
「なんだって」

 怒りに震えていると、新な人族がやってきた。

「しかも九尾だ。真っ白の九尾。殺してはく製にしたら高く売れるぜ」
「よし、捕まえよう! なあに子供の命を盾にすれば簡単に殺せるさ」

 白い狐、ニルスさん、マリアさん!

「どこだ、どこにいる」
「あっちだ。北の祠を燃やした辺りだ」

 怒りに震える。
 魔力が体の奥から溢れてくる。

『許さない。許さない。里を燃やし子供達を傷つけた。白い狐は狐獣人の力そのもの、それを殺そうとするなんて』

 何だろう、この声。
 どこから聞こえてくるんだろう。

「なんだ、この雨。折角の火が消える!」

 突然、魔力を含んだ雨が降り始めた。
 何この雨、思わず崖の方を見るとワルドさんみたいな人が杖を天に向けていた。

「雨、火を消そうとしてるんだ」
『力を、力を。火を消して。祠を守って』
「雨よ」

 魔力が抜ける、大量に抜けていく。
 ワルドさんの魔法に俺の魔力を加えると、雨はバケツをひっくり返した様な量で里に振り始め火柱を消すと跡形もなく消えたんだ。

「良かった、火柱消えた」

 あれ、また意識が遠くなる。
 どうして、俺また魔力を使い過ぎた?

 遠くなる意識の向こうに、俺は小さな狐獣人の子共を見た気がしたんだ。
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