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不安? それとも
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「あの、いつまで……」
「分からん。引き取りには三、四日中には来るらしいから遅くとも明後日の朝には出た方が良い」
不安そうに聞くグレオ君の声を聞いていたら、俺は何故か首筋の辺りが寒くなってきたんだ。
熱が出る前の悪寒そんな感覚だけど、体調不良なんかじゃない。
帰ってこられない? 誰が。
俺じゃない気がする。
ゲルトさんの体にもたれて、腕に触れて、ゲルトさんの体温を感じる。
ゲルトさんでも無い。
ワルドさん? 違う。
じゃあ、残るのは?
「俺とグレオ君は別れて行動するべきですか、それとも纏まって?」
理由は本当にもしもの心配?
それとも何か確信があるの?
部屋に入った時のゲルトさんとワルドさんの様子がおかしかったのは、そのせい?
もしも。その程度ならあんな顔しないんじゃないのかな。
「どちらかが狙われてる? それとも両方なんですか」
俺が口を開くと、ギルドマスターは苦いものでも食べたみたいに顔をしかめた。
「なんでそう思う」
「ニルスさんもゲルトさんも、ビリーさんは狐獣人の里に連れて行かれたとしか言いませんでした。狐獣人の里の掟では子を害するのは大罪だと言いながら、ビリーさんがどうなったのか教えてくれませんでした」
それはもしかしたら罪の償いなど何もしていないから、なのかと思っていた。
そうじゃなければ、怖がりの俺が怯えないように話さないかのどちらか。
だけど今は違う。
子供が聞いたら怯えそうな犯罪奴隷というところまで教えて、俺とグレオ君をわざと怯えさせようとでもするみたいに人族の奴隷についてまで教えてくれた。
「俺が怖がるような話を、ゲルトさんが止めない筈ありません。ギルドマスターはわざと俺とグレオ君が怖がるような話をしたんじゃありませんか」
だとしたら理由は一つだ。
俺とグレオが一刻でも早くこの町を出て、慎重に身を隠す様に仕向けたかった。
一切理由を話さずに依頼を装って町から出すことも出来ただろうけれど、それだと油断が出るかもしれない。
魔物や盗賊への警戒はしなくちゃいけないけれど、誰かが自分を狙っているなんて、自覚がなければ対処が遅れるかもしれない。
それを心配して、今の話になったんじゃないのかな。
「お前は子供のくせに感が良すぎるな」
「それじゃあ」
ゾクゾクと首筋から背中まで、悪寒が走る。
なんだろうこれ、何かの能力?
鑑定すると、第六感という能力が増えていた。
なんだろうこれ、第六感ってなんだっけ? 虫の知らせとかそういう物だったかな?
「公にはされてねぇが、人族は猫系の獣人を愛玩奴隷にしたがるんだよ。狼獣人も子供の頃はそれなりに人気があるらしいが大人になると人族よりデカくなるのが殆どだが、猫系はそうでもねえ、体が細く力も弱いのが多いからな」
ヒュッとグレオ君が息を呑む気配がした。
「お、俺。でも猫獣人も山猫獣人もこの町には沢山いますよね。俺だけじゃなく家族だって」
「言わねえつもりだったが、お前が町を出たらグレオの家族も念の為避難させる予定だった。その他の奴らは人族が身柄を拘束する理由がねえから、攫われねえ様にだけ気をつけれていばどうにでもなる筈だ」
身柄を拘束、避難と、ギルドマスターははっきりと口にした。
愛玩奴隷って、どの程度を言うんだろう。
ペット扱い? それとも逆らわない愛人みたいなもの?
「そんな」
「ウヅ、怯えなくていい。お前とグレオは俺達が守るから」
無意識にゲルトさんの片腕に縋っていたんだろう。
俺の腕をゲルトさんが空いている方の手で、優しく撫でてくれる。
「あの二人の刑罰を決めるために、お前達の証言が必要だと言われたら、領主様が付き添いを付けてくれたとしても防げねえ可能性もある。下手をしたらそのまま奴隷にされて首輪を付けられちまうかもしれねぇんだ」
「そんな」
「ウヅキは一応防御の魔法も体術も出来るが、グレオはそうじゃねえだろ」
グレオ君は攻撃魔法以外は生活魔法を覚えてるだけ、足は早いけど力は確かに俺より弱いと思う。
それに町で見かける猫系の獣人は確かに皆痩せ型で、小柄だし、綺麗な顔してる人が多い印象だ。
「もし、人族に捕まったら」
「例え死んでも獣王国には戻れねえと覚悟した方がいい」
ギルドマスターの声に、俺達は無言になるしかなかったんだ。
「分からん。引き取りには三、四日中には来るらしいから遅くとも明後日の朝には出た方が良い」
不安そうに聞くグレオ君の声を聞いていたら、俺は何故か首筋の辺りが寒くなってきたんだ。
熱が出る前の悪寒そんな感覚だけど、体調不良なんかじゃない。
帰ってこられない? 誰が。
俺じゃない気がする。
ゲルトさんの体にもたれて、腕に触れて、ゲルトさんの体温を感じる。
ゲルトさんでも無い。
ワルドさん? 違う。
じゃあ、残るのは?
「俺とグレオ君は別れて行動するべきですか、それとも纏まって?」
理由は本当にもしもの心配?
それとも何か確信があるの?
部屋に入った時のゲルトさんとワルドさんの様子がおかしかったのは、そのせい?
もしも。その程度ならあんな顔しないんじゃないのかな。
「どちらかが狙われてる? それとも両方なんですか」
俺が口を開くと、ギルドマスターは苦いものでも食べたみたいに顔をしかめた。
「なんでそう思う」
「ニルスさんもゲルトさんも、ビリーさんは狐獣人の里に連れて行かれたとしか言いませんでした。狐獣人の里の掟では子を害するのは大罪だと言いながら、ビリーさんがどうなったのか教えてくれませんでした」
それはもしかしたら罪の償いなど何もしていないから、なのかと思っていた。
そうじゃなければ、怖がりの俺が怯えないように話さないかのどちらか。
だけど今は違う。
子供が聞いたら怯えそうな犯罪奴隷というところまで教えて、俺とグレオ君をわざと怯えさせようとでもするみたいに人族の奴隷についてまで教えてくれた。
「俺が怖がるような話を、ゲルトさんが止めない筈ありません。ギルドマスターはわざと俺とグレオ君が怖がるような話をしたんじゃありませんか」
だとしたら理由は一つだ。
俺とグレオが一刻でも早くこの町を出て、慎重に身を隠す様に仕向けたかった。
一切理由を話さずに依頼を装って町から出すことも出来ただろうけれど、それだと油断が出るかもしれない。
魔物や盗賊への警戒はしなくちゃいけないけれど、誰かが自分を狙っているなんて、自覚がなければ対処が遅れるかもしれない。
それを心配して、今の話になったんじゃないのかな。
「お前は子供のくせに感が良すぎるな」
「それじゃあ」
ゾクゾクと首筋から背中まで、悪寒が走る。
なんだろうこれ、何かの能力?
鑑定すると、第六感という能力が増えていた。
なんだろうこれ、第六感ってなんだっけ? 虫の知らせとかそういう物だったかな?
「公にはされてねぇが、人族は猫系の獣人を愛玩奴隷にしたがるんだよ。狼獣人も子供の頃はそれなりに人気があるらしいが大人になると人族よりデカくなるのが殆どだが、猫系はそうでもねえ、体が細く力も弱いのが多いからな」
ヒュッとグレオ君が息を呑む気配がした。
「お、俺。でも猫獣人も山猫獣人もこの町には沢山いますよね。俺だけじゃなく家族だって」
「言わねえつもりだったが、お前が町を出たらグレオの家族も念の為避難させる予定だった。その他の奴らは人族が身柄を拘束する理由がねえから、攫われねえ様にだけ気をつけれていばどうにでもなる筈だ」
身柄を拘束、避難と、ギルドマスターははっきりと口にした。
愛玩奴隷って、どの程度を言うんだろう。
ペット扱い? それとも逆らわない愛人みたいなもの?
「そんな」
「ウヅ、怯えなくていい。お前とグレオは俺達が守るから」
無意識にゲルトさんの片腕に縋っていたんだろう。
俺の腕をゲルトさんが空いている方の手で、優しく撫でてくれる。
「あの二人の刑罰を決めるために、お前達の証言が必要だと言われたら、領主様が付き添いを付けてくれたとしても防げねえ可能性もある。下手をしたらそのまま奴隷にされて首輪を付けられちまうかもしれねぇんだ」
「そんな」
「ウヅキは一応防御の魔法も体術も出来るが、グレオはそうじゃねえだろ」
グレオ君は攻撃魔法以外は生活魔法を覚えてるだけ、足は早いけど力は確かに俺より弱いと思う。
それに町で見かける猫系の獣人は確かに皆痩せ型で、小柄だし、綺麗な顔してる人が多い印象だ。
「もし、人族に捕まったら」
「例え死んでも獣王国には戻れねえと覚悟した方がいい」
ギルドマスターの声に、俺達は無言になるしかなかったんだ。
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