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上手く行っている時程気をつけろっていわれてたけど2

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「ウヅキはゲルトに甘いなあ」
「本当だよな」

 呆れた様に言うギルドマスターとワルドさんだけど、その他の人達も頷いている。
 時間が昼を少し過ぎているせいなのか、部屋の中にいる人は少ない。
 まあ、普通なら今は依頼を受けてる最中な時間だよね。
 今いるのは俺達とギルドマスター除くと冒険者は五人だ。

「ゲルトさんには甘くていいんです。まあ、皆さんにはこれを」

 やっぱり意地悪は良くないかなって思い直して、俺用のおやつに作っておいたカレー味のクラッカーとリンゴジャムを挟んだクラッカーを一人一枚配り始める。
 獣人って基本甘い物が好きだけど、塩気のあるものも好きらしいのは把握してるんだ。

「あ、これは新作か?」
「はい、カーレの実を使ったものと、クッキーにも使ってるリンゴジャムを挟んだものです。リサさんたちも一枚ずつどうぞ」

 言いながらクラッカーを部屋にいた冒険者達に配る。
 クラッカーも商会で売り出して人気の商品だ。

 基本材料が小麦粉、塩、水、油なのに凄い売れ行きなのはレシピを公開していないせいなんだと思う。
 そのうちレシピは把握するだろうけれど、今は商品を売れば良いと言ったのはニルスさんだった。
 変わった商品を売れば見つけ売り始めると、獣人達はこぞって買い始める。
 それはいつもの売りのパターンみたいだ。

 ニルスさんの商会『九尾の狐』で売られている物を買うというのは、富裕層や義賊にとってのステータスになるみたいで、そういった意味で人族から買い付けているジャムは一定数の人達から人気があるらしい。
 つまり俺レシピのジャムは高いけれど、頑張れば手に入れられる物。
 人族のJジャムは、貴族や富裕層の人達が高いお金を払って手に入れる物と別れているみたいなんだ。

「これ、美味いなあ。なあウヅキこれ商会で」
「買えますよ」

 名前を知らない冒険者から聞かれて笑顔で答える。
 実は最近の商会の食堂とかで、一番お金を落としてくれるのが冒険者という立場にいる人達らしいんだよね。

「今は商会だけですが、ここの食堂が作り方を買ってくれたら、食堂でも売り始めるんじゃないかな」

 俺がギルドに、差入入れする理由はこれなんだよね。

「そっかあ。じゃあ商会に買いに行くよ。くそっー美味いなリンゴのジャム」

 言いながらクラッカーを食べているのは、見たことがない冒険者だった。
 装備はそれなりに良いから他の場所から流れてきた人なのかもしれない。

「ジャムは九尾の狐商会で売っていますよ」
「そうなのか! それなら作り方売ってるのかな」
「ジャムは無いけど迷宮で取れる調味料の実の料理なら売ってます」
「うわっ、じゃあ買いに行こうかな」
「お兄さんは料理するの?」
「あぁ、グリームの町で人族みたいな料理が食べられると聞いて、この町に来たんだ。料理は俺の趣味で、いつのまにか料理の能力も取れたくらいなんだよ。変わってるだろ?」
「良いと思います! 食事って毎日取るものだから、どうせなら自分が美味しいってものを食べたいじゃないですか、自分で作れるならそういう時に好きなもの作れちゃいますよね!」

 俺が意気込んで言うと、その冒険者は一瞬の間の後嬉しそうに笑ったんだ。

「そういう考え方もあるよな。よし、お金に余裕はあるから作り方買うか!」
「お兄さん、これお店の人に見せて」

 料理好きそうなお兄さんに、楽しく料理して欲しくなった俺は、さらさらとメモ書きに文字を刻む。

「ん? 料理の作り方に限り売値を割引にしてください。ウヅキ???」
「はい、九尾の狐商会のお店でこれを見せたら作り方値引きしてもらえると思いますので、かなり高いですが作り方は買えます。購入の際は店員さんに見せてくださいね。使えるのは一度だけですけど」

 ジャムやクラッカーは駄目だけど、一部の料理の作り方は、希望すれば商会で買えるんだけど、それって商売人向けの価格だから高いんだ。
 
「買えるのか凄いな。九尾の狐だね行ってみるよありがとう」
「料理とか食べてみたいだけなら、商会でやってる食堂があるからそっちで食べてみて」

 個人で買うなら高いけれど、商売するならそれなりの値段でも出すだろう。そんな価格帯で値段つけたとニルスさんは言っていた。

 これでいいのかなあ。
 レシピを売ったお金は俺にも入る様にしてくれてるけど、本当にいいのかな。
 なんとなくもやっとしたまま、俺の日常は過ぎているのだった。
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