153 / 248
美味しいは嬉しい、だけど3
しおりを挟む
「食事までおじゃまして申し訳ねぇな」
居心地悪そうにワルドさんが言うのを、俺はぼんやり聞いていた。
台所でゲルトさんにしがみつき、ボロボロ泣いてた俺は様子を見に来たマリアさんに慰められてまた泣いた。
一度泣き出すと止まらない俺の涙腺を何とかしたい。
最後はマリアさんの膝で、しゃっくりが出るまで泣くとか、本当にもうなんとかしたい。
「ウヅキ君の料理は美味しいんじゃよ。遠慮せずに食べてくれるとい嬉しいのぉ。ウヅキ君、醤油の実も使ったんじゃったかの」
「え、あ、はい。皆さん初めて食べるので試しに、付け合せに少しだけ使いました」
俺は日本人だった記憶があるし、醤油の味を覚えているから美味しいと思うけれど皆はどうだろうと不安になる。
ロッタさんは美味しいと言ってくれたから、大丈夫かなぁ。
「そうさの、醤油の実は舐めてみた程度じゃからのぉ。塩辛くて独特の匂いがして不思議な味だと思ったが、本当に料理に使えるんじゃなぁ」
「あの黒いものが食べられるなんて不思議ね」
俺にしてみたら、調味料だと分かっているならなんで使ってみようとしなかったのかが不思議なんだけれど、大神様が言う通りそういう工夫が苦手だからなんだろうな。
「旦那様、こちらは玉菜と玉ねぎを酢タレで和えてございます。こちらはシチューというものでスープの一種とのことでございます。ワルドさんから頂いたオーク肉を使わせて頂きました。魚は岩角魚でございます。鱗と骨を取ってございますので食べやすいかと存じます。付け合わせのこちらの青菜に醤油の実を使用しております」
ロッタさんが一つ一つ説明しながらテーブルに置いてくれるのは、俺が作った料理が珍しいかららしい。
玉菜と玉ねぎのサラダは、ドレッシングを付くて和えた。生で玉菜とか食べていても、今までは塩一択だったらしい。泡だて器が無いから二又フォークで混ぜるしかなかったけれど、多分上手く出来たと思う。
迷宮産のコショの実も使ったんだ。
「見たことがねえ料理ばかりだな。さすがニルス会頭の家というか」
困惑しているワルドさんは、ニルスさんの顔を見ている。
「私も見たことが無いものばかりじゃの。ウヅキ君疲れているところこんなに頑張ってくれたのかの」
「えっと、疲れてないですよ。俺料理してると元気になるみたいです」
泣き過ぎて疲れてるけれど、料理では疲れてない。
むしろ元気だから胸を張ってそう言うと、ニルスさんがにっこりと笑ってくれる。
「そうさのそうさの。でも無理をしてはいかんよ。ウヅキ君の料理は美味しいから食べられるのは嬉しいがの」
食べるのが嬉しいって言われたら、俺は物凄く嬉しい。
ヘロンヘロンに疲れてても、そう言って貰えたら俺頑張って作るよ。
「では冷めないうちに頂こうかの」
「酢タレというのはどういうものなのかしら」
「あの、お酢と油を混ぜて塩とコショの実で味をつけたものです」
「まあ、コショの実を使っているのね。まあ美味しいわ」
玉菜と玉ねぎの酢タレ和えは簡単に言えばサラダだ。酢タレは所謂フレンチドレッシングだけどロッタさんにそう言ったら覚えて貰えなかった。
覚えて貰えなかったというより、野菜を和えるものに名前がついているっていうのが理解出来なかったみたいでフレンチドレッシングという料理だと勘違いされそうになったから、酢タレ和えと説明したんだ。
「岩角魚の鱗はとっても硬いのよね」
「じゃがこれは鱗が無い様だの」
「鱗は取っています。こうすれば食べやすいと思うんです。骨は有っても無くても大丈夫だと思いますが、今回は取って焼いています」
小麦粉を付けて焼いただけだけど、食べてみると物凄く美味しい。
これって俺の腕というよりも、岩角魚が元々美味しいんだと思う。
俺が屋台で食べた時は、串焼きだと鱗を取るのに意識が集中しちゃって味わうまでいかなかったのかもしれない。
「岩角が食べやすい上に旨いな。このシチュー? ってのも旨い。ウヅキ、旨いよ」
「ワルドさんの口にあって良かったです」
皆の感想が好意的で俺は嬉しくなって、頬が熱くなる。
良かったというよりも、ホッとするって感覚だ。
「この青菜に醤油の実を使っておるんじゃな。うん、旨いのぉ。醤油の実だけを舐めた時は調味料としても使えないと思っておったのじゃが、これは美味しいのぉ」
青菜炒めを食べたニルスさんの感想が不安でついじっと見てしまったけれど、ニルスさんの感想は好意的で俺はまた安心した。
「ゲルトさん、あの、お口に合いましたか」
今まで無言だったゲルトさんに、俺は勇気を出して尋ねた。
無言だったのは口に合わなかったせいなのかもしれない。もしもそうなら俺ちゃんと受け入れるから、正直な感想が知りたい。
気持ちを決めてゲルトさんに尋ねると、ゲルトさんはシチューを盛った皿を空にしていて魚の皿も食べ終わりそうだった。
「旨い。ウヅの料理はいくらでも食べられそうなのが困るな」
きゅうぅん。
そ、そんなこと言われたら俺、一生台所に籠って料理するよ。
ゲルトさんの返事に俺の胸はときめきまくったのだった。
居心地悪そうにワルドさんが言うのを、俺はぼんやり聞いていた。
台所でゲルトさんにしがみつき、ボロボロ泣いてた俺は様子を見に来たマリアさんに慰められてまた泣いた。
一度泣き出すと止まらない俺の涙腺を何とかしたい。
最後はマリアさんの膝で、しゃっくりが出るまで泣くとか、本当にもうなんとかしたい。
「ウヅキ君の料理は美味しいんじゃよ。遠慮せずに食べてくれるとい嬉しいのぉ。ウヅキ君、醤油の実も使ったんじゃったかの」
「え、あ、はい。皆さん初めて食べるので試しに、付け合せに少しだけ使いました」
俺は日本人だった記憶があるし、醤油の味を覚えているから美味しいと思うけれど皆はどうだろうと不安になる。
ロッタさんは美味しいと言ってくれたから、大丈夫かなぁ。
「そうさの、醤油の実は舐めてみた程度じゃからのぉ。塩辛くて独特の匂いがして不思議な味だと思ったが、本当に料理に使えるんじゃなぁ」
「あの黒いものが食べられるなんて不思議ね」
俺にしてみたら、調味料だと分かっているならなんで使ってみようとしなかったのかが不思議なんだけれど、大神様が言う通りそういう工夫が苦手だからなんだろうな。
「旦那様、こちらは玉菜と玉ねぎを酢タレで和えてございます。こちらはシチューというものでスープの一種とのことでございます。ワルドさんから頂いたオーク肉を使わせて頂きました。魚は岩角魚でございます。鱗と骨を取ってございますので食べやすいかと存じます。付け合わせのこちらの青菜に醤油の実を使用しております」
ロッタさんが一つ一つ説明しながらテーブルに置いてくれるのは、俺が作った料理が珍しいかららしい。
玉菜と玉ねぎのサラダは、ドレッシングを付くて和えた。生で玉菜とか食べていても、今までは塩一択だったらしい。泡だて器が無いから二又フォークで混ぜるしかなかったけれど、多分上手く出来たと思う。
迷宮産のコショの実も使ったんだ。
「見たことがねえ料理ばかりだな。さすがニルス会頭の家というか」
困惑しているワルドさんは、ニルスさんの顔を見ている。
「私も見たことが無いものばかりじゃの。ウヅキ君疲れているところこんなに頑張ってくれたのかの」
「えっと、疲れてないですよ。俺料理してると元気になるみたいです」
泣き過ぎて疲れてるけれど、料理では疲れてない。
むしろ元気だから胸を張ってそう言うと、ニルスさんがにっこりと笑ってくれる。
「そうさのそうさの。でも無理をしてはいかんよ。ウヅキ君の料理は美味しいから食べられるのは嬉しいがの」
食べるのが嬉しいって言われたら、俺は物凄く嬉しい。
ヘロンヘロンに疲れてても、そう言って貰えたら俺頑張って作るよ。
「では冷めないうちに頂こうかの」
「酢タレというのはどういうものなのかしら」
「あの、お酢と油を混ぜて塩とコショの実で味をつけたものです」
「まあ、コショの実を使っているのね。まあ美味しいわ」
玉菜と玉ねぎの酢タレ和えは簡単に言えばサラダだ。酢タレは所謂フレンチドレッシングだけどロッタさんにそう言ったら覚えて貰えなかった。
覚えて貰えなかったというより、野菜を和えるものに名前がついているっていうのが理解出来なかったみたいでフレンチドレッシングという料理だと勘違いされそうになったから、酢タレ和えと説明したんだ。
「岩角魚の鱗はとっても硬いのよね」
「じゃがこれは鱗が無い様だの」
「鱗は取っています。こうすれば食べやすいと思うんです。骨は有っても無くても大丈夫だと思いますが、今回は取って焼いています」
小麦粉を付けて焼いただけだけど、食べてみると物凄く美味しい。
これって俺の腕というよりも、岩角魚が元々美味しいんだと思う。
俺が屋台で食べた時は、串焼きだと鱗を取るのに意識が集中しちゃって味わうまでいかなかったのかもしれない。
「岩角が食べやすい上に旨いな。このシチュー? ってのも旨い。ウヅキ、旨いよ」
「ワルドさんの口にあって良かったです」
皆の感想が好意的で俺は嬉しくなって、頬が熱くなる。
良かったというよりも、ホッとするって感覚だ。
「この青菜に醤油の実を使っておるんじゃな。うん、旨いのぉ。醤油の実だけを舐めた時は調味料としても使えないと思っておったのじゃが、これは美味しいのぉ」
青菜炒めを食べたニルスさんの感想が不安でついじっと見てしまったけれど、ニルスさんの感想は好意的で俺はまた安心した。
「ゲルトさん、あの、お口に合いましたか」
今まで無言だったゲルトさんに、俺は勇気を出して尋ねた。
無言だったのは口に合わなかったせいなのかもしれない。もしもそうなら俺ちゃんと受け入れるから、正直な感想が知りたい。
気持ちを決めてゲルトさんに尋ねると、ゲルトさんはシチューを盛った皿を空にしていて魚の皿も食べ終わりそうだった。
「旨い。ウヅの料理はいくらでも食べられそうなのが困るな」
きゅうぅん。
そ、そんなこと言われたら俺、一生台所に籠って料理するよ。
ゲルトさんの返事に俺の胸はときめきまくったのだった。
11
お気に入りに追加
3,665
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる