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料理は落ち着く
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「まあ、真っ黒なのですね」
「これだけだと塩っぱいけど、ちゃんと料理に使えるんですよ」
あの後、心配するマリアさん達を応接間に押し込めて、俺は台所に逃げた。
何か話すと泣きそうだし、出ていくなんて強行手段とれる程に決心は固まってなかったんだ。
引き止められて内心喜んでるんだから、俺ってズルいと思う。
そもそも子供を追い出せる様な人達じゃないんだから、内心困っていても顔に出したりしないだろう。
「岩角魚、追加で買ってきたのでまず下処理してしまいますね」 「はい、お願いします。私はその間にスープの用意を」
「分かりました。スープ、今日は何を使うんですか」
「ワルドさんにオーク肉を頂いたので、オーク肉のスープにしようかと、後は人参と芋を入れます」
「牛の乳も使いますか?」
「はい、奥様が牛の乳のスープがお好きですから」
「それなら、具材が煮上がったら俺に味付けさせてもらえますか?」
その組み合せなら、シチューに出来る。
とろりとしたシチューはこの国では食べられていないみたいだけど、牛の乳のスープは皆好きなんだから、多分受け入れられる筈だ。
魚の方も味付けは塩だけ、醤油は付け合せに使う予定だ。
「鱗を取って、三枚下ろし」
一匹だけだから簡単だ。
終わったら、塩を振り小麦粉をまぶす。
「ロッタさん焼くのはお願い出来ますか?」
「はい、これは小麦粉ですか?」
「はい、鉄鍋に油を少し入れて熱くなってきたら魚を皮の方を下にして焼きます。ある程度火が通ったらひっくり返して、最後にバターを一欠片入れて香りを付けます」
これで説明大丈夫かな?
お肉料理は、この家では鉄製のナイフとフォークで食べるけど、食堂みたいなところは木のフォークだからなのから一口大に切ったものが皿に盛られてくる。
「焦げ付かない様に、油は少し多めがいいかもしれません」
「少し多めですね、この位ですか」
「はい、鉄鍋が熱くなるまで様子を見て、煙が出始めたら魚を入れてください。油がはねるので気を付けて」
「はい」
ロッタさんに魚を焼くのを任せて、俺は自分の鉄鍋でホワイトソースを作り始める。
バターで小麦粉を炒めて、牛の乳を加えてトロトロになるまで煮込む。
焦げないようにするのが大変だし、量が多いから鉄鍋が重い。
「よし、完成」
ホワイトソースは木べらも泡立て器もない状態で、木製の二又フォークで混ぜた割にはなめらかに出来たのは、調理の能力のお陰なんだろうか。
火が入りすぎないようにホワイトソースを木のボウルに移し、鉄鍋を浄化する。後は野菜とオーク肉が煮えるのを待ってこれを加えて煮込むだけだ。
「坊っちゃん、魚は全部焼きました。焦げ目がついてとても美味しそうですよ」
「わぁ、本当だ美味しそうですね! じゃあ一旦保存箱に入れてください。スープはどうですか?」
俺の背丈ではスープ用の鍋の中は覗けないから、ロッタさんに確認してもらう。
俺は付け合せ用の人参を切り、もう一つの付け合せ用の青菜も切る。
人参はバターと砂糖で甘く煮て、青菜はバターと醤油でさっと炒める予定だ。
「坊っちゃん、煮えましたよ」
「ええと、じゃあこの中にスープを少し入れて混ぜるんですが……」
「まあ、とろりとして美味しそうですね。これは?」
「これはホワイトソースって言います」
俺のお願い通りにロッタさんが動いてくれて、無事にシチューは完成した。
味付けに塩とワルドさんから貰ったコシヨの実を少し振りかける。
「まあ、胡椒ですか」
「ええと、コシヨの実というものらしいです」
胡椒とコシヨの実は別なんだろうか? 疑問に思いながら味見をすると懐かしい味がした。
「味、大丈夫ですか?」
「はい、とても美味しいですね。とろりとして濃厚です」
「良かった。これはシチューって言うんです」
「シチュー、スープとは違うものなのですね」
「スープの仲間ですね、で、こっちは人参のグラッセと青菜炒めです。それぞれ魚の付け合せに同じお皿に盛り付けます」
料理をしていたら、ちょっと冷静になってきた。
ゲルトさん美味しいって言ってくれるかな、醤油味はどうかな。
ドキドキするけど、楽しみでもある。
「まあ、人参が甘くて美味しいです」
「お砂糖少し入ってますけど、ゆっくり煮ると甘みが出るんです」
ゆっくり煮るのが大事なのよ、と奥さんが良く言ってたなあと懐かしく思い出しながら料理を盛り付ける。
店長と奥さんに会いたいなあ。
二人に今の俺の話をしたら、喜んでくれるかな。
「坊っちゃんは料理がお好きなんですね」
「え、はい。分からないけど昔から野菜を刻んだり、鍋を洗ったりしてるとスッキリするんです。あと、出来上がった物を見ると、嬉しくて」
「まあ、分かりますわ。私も気持ちがもやもやしてる時に鍋を磨くとなぜか落ち着くんですよ」
変なところでロッタさんと気が合った。
「同じですね」
こんなの俺くらいかなって思ってたけど、分かってくれる人がいて嬉しいな。
ロッタさんとほのぼのしている俺は、応接間にいる皆が心配してるなんて考えもしなかったんだ。
「これだけだと塩っぱいけど、ちゃんと料理に使えるんですよ」
あの後、心配するマリアさん達を応接間に押し込めて、俺は台所に逃げた。
何か話すと泣きそうだし、出ていくなんて強行手段とれる程に決心は固まってなかったんだ。
引き止められて内心喜んでるんだから、俺ってズルいと思う。
そもそも子供を追い出せる様な人達じゃないんだから、内心困っていても顔に出したりしないだろう。
「岩角魚、追加で買ってきたのでまず下処理してしまいますね」 「はい、お願いします。私はその間にスープの用意を」
「分かりました。スープ、今日は何を使うんですか」
「ワルドさんにオーク肉を頂いたので、オーク肉のスープにしようかと、後は人参と芋を入れます」
「牛の乳も使いますか?」
「はい、奥様が牛の乳のスープがお好きですから」
「それなら、具材が煮上がったら俺に味付けさせてもらえますか?」
その組み合せなら、シチューに出来る。
とろりとしたシチューはこの国では食べられていないみたいだけど、牛の乳のスープは皆好きなんだから、多分受け入れられる筈だ。
魚の方も味付けは塩だけ、醤油は付け合せに使う予定だ。
「鱗を取って、三枚下ろし」
一匹だけだから簡単だ。
終わったら、塩を振り小麦粉をまぶす。
「ロッタさん焼くのはお願い出来ますか?」
「はい、これは小麦粉ですか?」
「はい、鉄鍋に油を少し入れて熱くなってきたら魚を皮の方を下にして焼きます。ある程度火が通ったらひっくり返して、最後にバターを一欠片入れて香りを付けます」
これで説明大丈夫かな?
お肉料理は、この家では鉄製のナイフとフォークで食べるけど、食堂みたいなところは木のフォークだからなのから一口大に切ったものが皿に盛られてくる。
「焦げ付かない様に、油は少し多めがいいかもしれません」
「少し多めですね、この位ですか」
「はい、鉄鍋が熱くなるまで様子を見て、煙が出始めたら魚を入れてください。油がはねるので気を付けて」
「はい」
ロッタさんに魚を焼くのを任せて、俺は自分の鉄鍋でホワイトソースを作り始める。
バターで小麦粉を炒めて、牛の乳を加えてトロトロになるまで煮込む。
焦げないようにするのが大変だし、量が多いから鉄鍋が重い。
「よし、完成」
ホワイトソースは木べらも泡立て器もない状態で、木製の二又フォークで混ぜた割にはなめらかに出来たのは、調理の能力のお陰なんだろうか。
火が入りすぎないようにホワイトソースを木のボウルに移し、鉄鍋を浄化する。後は野菜とオーク肉が煮えるのを待ってこれを加えて煮込むだけだ。
「坊っちゃん、魚は全部焼きました。焦げ目がついてとても美味しそうですよ」
「わぁ、本当だ美味しそうですね! じゃあ一旦保存箱に入れてください。スープはどうですか?」
俺の背丈ではスープ用の鍋の中は覗けないから、ロッタさんに確認してもらう。
俺は付け合せ用の人参を切り、もう一つの付け合せ用の青菜も切る。
人参はバターと砂糖で甘く煮て、青菜はバターと醤油でさっと炒める予定だ。
「坊っちゃん、煮えましたよ」
「ええと、じゃあこの中にスープを少し入れて混ぜるんですが……」
「まあ、とろりとして美味しそうですね。これは?」
「これはホワイトソースって言います」
俺のお願い通りにロッタさんが動いてくれて、無事にシチューは完成した。
味付けに塩とワルドさんから貰ったコシヨの実を少し振りかける。
「まあ、胡椒ですか」
「ええと、コシヨの実というものらしいです」
胡椒とコシヨの実は別なんだろうか? 疑問に思いながら味見をすると懐かしい味がした。
「味、大丈夫ですか?」
「はい、とても美味しいですね。とろりとして濃厚です」
「良かった。これはシチューって言うんです」
「シチュー、スープとは違うものなのですね」
「スープの仲間ですね、で、こっちは人参のグラッセと青菜炒めです。それぞれ魚の付け合せに同じお皿に盛り付けます」
料理をしていたら、ちょっと冷静になってきた。
ゲルトさん美味しいって言ってくれるかな、醤油味はどうかな。
ドキドキするけど、楽しみでもある。
「まあ、人参が甘くて美味しいです」
「お砂糖少し入ってますけど、ゆっくり煮ると甘みが出るんです」
ゆっくり煮るのが大事なのよ、と奥さんが良く言ってたなあと懐かしく思い出しながら料理を盛り付ける。
店長と奥さんに会いたいなあ。
二人に今の俺の話をしたら、喜んでくれるかな。
「坊っちゃんは料理がお好きなんですね」
「え、はい。分からないけど昔から野菜を刻んだり、鍋を洗ったりしてるとスッキリするんです。あと、出来上がった物を見ると、嬉しくて」
「まあ、分かりますわ。私も気持ちがもやもやしてる時に鍋を磨くとなぜか落ち着くんですよ」
変なところでロッタさんと気が合った。
「同じですね」
こんなの俺くらいかなって思ってたけど、分かってくれる人がいて嬉しいな。
ロッタさんとほのぼのしている俺は、応接間にいる皆が心配してるなんて考えもしなかったんだ。
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