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迷宮の物と、ワルドさんの能力取得6

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「そうは言ってもワルドが魔力切れ起こすのは、今の段階だと難しいのよねぇ」
「まあなあ、俺が覚えてんのは攻撃魔法ばっかりだしな。まさか外で魔力使い切ってから家に帰るなんざ出来ねぇしな」

 ワルドさんとルル先生が、魔力切れについて話し始めた。
 俺はその話をぼんやり聞きながら、これからどうしようと考えていた。

 大神様が言ってたように、俺が悲観的になって皆を信用出来無いのは問題だと思う。
 直したいとは思うけど、やっぱり自信が無くて難しいんだと悟った。
 大神様の前では、大丈夫って思えたんだけどなあ。

「ウヅキ君、疲れておらんかの。もっと食べなさい」
「ニルスさん、もうお腹いっぱいです」

 さっきの鑑定で、体力が少なかったから心配してくれてるんだろう。だけど、クラッカー三枚も食べたらお腹いっぱいだ。

「ニルスさん、ゲルトさん食べて下さい」
「私は十分頂いたよ。ゲルト君食べなさい」
「ゲルトさん、はい」

 さっきから無言のゲルトさんに、クラッカーを差し出すと口を開いて受け取ってくれた。

「ゲルトさんはジャム好きですか」
「あぁ」
「そうだ、フライ返しが出来上がったらクレープ作りますね。あれにジャム塗って食べたら美味しいと思うんです」

 ベーキングパウダーが無いし、型もないからケーキ焼くのは無理かなあ。
 俺パンとか作れないけど、パン種までならロッタさんが作れるからそれに手を加えたらお惣菜パン作れるかも。
 調理の能力が増えたせいか、食べたいものを思い浮かべるとレシピが浮かんでくるんだよね。

「醤油で料理するの楽しみです。慣れない味だと思いますけれど食べてもらえますか」
「楽しみにしてる。ウヅは迷宮の物が使えるんだな、ニルスさん聞いたことがありますか」
「ううむ、醤油の実や味噌の実が調味料だとは分かってたんじゃが使い方が分からなくての、ウヅキ君は本当に使えるのかの?」
「はい、そうだ。今晩の夕食は岩角魚の予定なので、それに醤油を使ってみようかな」

 鱗を取って三枚下ろしにした岩角魚に粉を付けてバター焼きにしようと思ってたんだ、そこにお醤油をたらっと落としたらきっと美味しいよね。
 脂が乗ってるからいい感じになると思うんだよなあ。

「岩角? あれは食卓で食べられるものでは無かったと思うんじゃが、味はいいがのう」
「ニルスさんとマリアさんは岩角魚は苦手ですか?」
「鱗がちょっとのぉ」

 やっぱり鱗がネックなんだ。
 大神様が説明してくれたけれど、どうしてそこで工夫しようとしないのか不思議だなぁ。
 醤油の実だって調味料だって分かってるなら、使ってみようかなってどうして思わないんだろう?

「鱗は大丈夫です。鱗さえ無ければ、夕食に出しても問題ありませんか?」
「それは勿論じゃが、鱗は焼いても硬いんじゃよ。岩角は特にの」
「そうですね」

 あんなに硬いの焼いても食べられるとは思えない。
 鱗を食べる山猫獣人だったら食べるのかな。

「口に合うか分かりませんが、食べてもらえますか」

 口に合わなかった時様に、塩味と醤油味両方作ったほうがいいかな。それとも食べるときに好みで醤油を掛けてもらったほうがいいな。

「ウヅは料理が好きなんだな」
「はい、皆に美味しいって言ってもらえるのが嬉しいんです」

 ゲルトさんに美味しいって言って欲しいんだ。
 俺が作ったもの食べたいって、そう思って欲しいんだ。

「俺迷宮行ってみたいです。俺じゃまだ無理ですか」
「駄目だな、最低でも下級にならないと入れないからな」
「そっかあ。じゃあ沢山依頼を受けて早く下級試験受けられるようにならないといけないですね」

 魔法の練習もあるし、やらなきゃいけない事沢山ありすぎる。

「ウヅキ君は魔力制御が上手くならない限り、下級になっても迷宮入りは勧められないわよ」
「え、駄目ですか?」
「駄目よ。迷宮は場所によっては冒険者がそれなりに居るところもあるのよ。制御失敗して誰かに攻撃魔法ぶつけてしまいましたなんて、冗談でも言えない話だもの」

 ワルドさんと話しながら俺達の方も聞いていたらしいルル先生から、駄目と言われると反論出来ない。

「ウヅはなんで魔力制御苦手なんだろうなあ」
「ウヅキ君は自分が思っている以上に魔力を放出しすぎているのだと思うわ、普通の人がスプーンで一匙ずつ水を椀に入れているなら、ウヅキ君はバケツでお椀に入れている様なものなのよ」

 それを言われて絶句した。
 スプーンとバケツじゃ、比べるまでもなく量が違いすぎる。
 そんなに違うのか、俺。

「だからゴブリン相手に風神の刃使って、周囲の木まで切り倒しちゃったんですか?」
「あなた、そんなことしてたの? それは魔力を込めすぎよ。風神の刃は風の刃より範囲が広くなっただけの魔法よ、威力はそんなに強くないわ。それじゃ、蠟燭一本で足りるところに焚き火の炎を使うようなものよ」

 え、そうなの? 俺強さも違うんだって思ってたから魔力沢山使ってたよ。

「そんな使い方してたら、魔力がいくらあっても足りないわ。適切な魔力量を覚えなくちゃね」
「……はい」

 やらなきゃいけない事より、覚えなくちゃいけないことがありすぎる。
 俺はしょんぼりしながら、ルル先生に頷いたんだ。
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