145 / 248
迷宮の物と、ワルドさんの能力取得6
しおりを挟む
「そうは言ってもワルドが魔力切れ起こすのは、今の段階だと難しいのよねぇ」
「まあなあ、俺が覚えてんのは攻撃魔法ばっかりだしな。まさか外で魔力使い切ってから家に帰るなんざ出来ねぇしな」
ワルドさんとルル先生が、魔力切れについて話し始めた。
俺はその話をぼんやり聞きながら、これからどうしようと考えていた。
大神様が言ってたように、俺が悲観的になって皆を信用出来無いのは問題だと思う。
直したいとは思うけど、やっぱり自信が無くて難しいんだと悟った。
大神様の前では、大丈夫って思えたんだけどなあ。
「ウヅキ君、疲れておらんかの。もっと食べなさい」
「ニルスさん、もうお腹いっぱいです」
さっきの鑑定で、体力が少なかったから心配してくれてるんだろう。だけど、クラッカー三枚も食べたらお腹いっぱいだ。
「ニルスさん、ゲルトさん食べて下さい」
「私は十分頂いたよ。ゲルト君食べなさい」
「ゲルトさん、はい」
さっきから無言のゲルトさんに、クラッカーを差し出すと口を開いて受け取ってくれた。
「ゲルトさんはジャム好きですか」
「あぁ」
「そうだ、フライ返しが出来上がったらクレープ作りますね。あれにジャム塗って食べたら美味しいと思うんです」
ベーキングパウダーが無いし、型もないからケーキ焼くのは無理かなあ。
俺パンとか作れないけど、パン種までならロッタさんが作れるからそれに手を加えたらお惣菜パン作れるかも。
調理の能力が増えたせいか、食べたいものを思い浮かべるとレシピが浮かんでくるんだよね。
「醤油で料理するの楽しみです。慣れない味だと思いますけれど食べてもらえますか」
「楽しみにしてる。ウヅは迷宮の物が使えるんだな、ニルスさん聞いたことがありますか」
「ううむ、醤油の実や味噌の実が調味料だとは分かってたんじゃが使い方が分からなくての、ウヅキ君は本当に使えるのかの?」
「はい、そうだ。今晩の夕食は岩角魚の予定なので、それに醤油を使ってみようかな」
鱗を取って三枚下ろしにした岩角魚に粉を付けてバター焼きにしようと思ってたんだ、そこにお醤油をたらっと落としたらきっと美味しいよね。
脂が乗ってるからいい感じになると思うんだよなあ。
「岩角? あれは食卓で食べられるものでは無かったと思うんじゃが、味はいいがのう」
「ニルスさんとマリアさんは岩角魚は苦手ですか?」
「鱗がちょっとのぉ」
やっぱり鱗がネックなんだ。
大神様が説明してくれたけれど、どうしてそこで工夫しようとしないのか不思議だなぁ。
醤油の実だって調味料だって分かってるなら、使ってみようかなってどうして思わないんだろう?
「鱗は大丈夫です。鱗さえ無ければ、夕食に出しても問題ありませんか?」
「それは勿論じゃが、鱗は焼いても硬いんじゃよ。岩角は特にの」
「そうですね」
あんなに硬いの焼いても食べられるとは思えない。
鱗を食べる山猫獣人だったら食べるのかな。
「口に合うか分かりませんが、食べてもらえますか」
口に合わなかった時様に、塩味と醤油味両方作ったほうがいいかな。それとも食べるときに好みで醤油を掛けてもらったほうがいいな。
「ウヅは料理が好きなんだな」
「はい、皆に美味しいって言ってもらえるのが嬉しいんです」
ゲルトさんに美味しいって言って欲しいんだ。
俺が作ったもの食べたいって、そう思って欲しいんだ。
「俺迷宮行ってみたいです。俺じゃまだ無理ですか」
「駄目だな、最低でも下級にならないと入れないからな」
「そっかあ。じゃあ沢山依頼を受けて早く下級試験受けられるようにならないといけないですね」
魔法の練習もあるし、やらなきゃいけない事沢山ありすぎる。
「ウヅキ君は魔力制御が上手くならない限り、下級になっても迷宮入りは勧められないわよ」
「え、駄目ですか?」
「駄目よ。迷宮は場所によっては冒険者がそれなりに居るところもあるのよ。制御失敗して誰かに攻撃魔法ぶつけてしまいましたなんて、冗談でも言えない話だもの」
ワルドさんと話しながら俺達の方も聞いていたらしいルル先生から、駄目と言われると反論出来ない。
「ウヅはなんで魔力制御苦手なんだろうなあ」
「ウヅキ君は自分が思っている以上に魔力を放出しすぎているのだと思うわ、普通の人がスプーンで一匙ずつ水を椀に入れているなら、ウヅキ君はバケツでお椀に入れている様なものなのよ」
それを言われて絶句した。
スプーンとバケツじゃ、比べるまでもなく量が違いすぎる。
そんなに違うのか、俺。
「だからゴブリン相手に風神の刃使って、周囲の木まで切り倒しちゃったんですか?」
「あなた、そんなことしてたの? それは魔力を込めすぎよ。風神の刃は風の刃より範囲が広くなっただけの魔法よ、威力はそんなに強くないわ。それじゃ、蠟燭一本で足りるところに焚き火の炎を使うようなものよ」
え、そうなの? 俺強さも違うんだって思ってたから魔力沢山使ってたよ。
「そんな使い方してたら、魔力がいくらあっても足りないわ。適切な魔力量を覚えなくちゃね」
「……はい」
やらなきゃいけない事より、覚えなくちゃいけないことがありすぎる。
俺はしょんぼりしながら、ルル先生に頷いたんだ。
「まあなあ、俺が覚えてんのは攻撃魔法ばっかりだしな。まさか外で魔力使い切ってから家に帰るなんざ出来ねぇしな」
ワルドさんとルル先生が、魔力切れについて話し始めた。
俺はその話をぼんやり聞きながら、これからどうしようと考えていた。
大神様が言ってたように、俺が悲観的になって皆を信用出来無いのは問題だと思う。
直したいとは思うけど、やっぱり自信が無くて難しいんだと悟った。
大神様の前では、大丈夫って思えたんだけどなあ。
「ウヅキ君、疲れておらんかの。もっと食べなさい」
「ニルスさん、もうお腹いっぱいです」
さっきの鑑定で、体力が少なかったから心配してくれてるんだろう。だけど、クラッカー三枚も食べたらお腹いっぱいだ。
「ニルスさん、ゲルトさん食べて下さい」
「私は十分頂いたよ。ゲルト君食べなさい」
「ゲルトさん、はい」
さっきから無言のゲルトさんに、クラッカーを差し出すと口を開いて受け取ってくれた。
「ゲルトさんはジャム好きですか」
「あぁ」
「そうだ、フライ返しが出来上がったらクレープ作りますね。あれにジャム塗って食べたら美味しいと思うんです」
ベーキングパウダーが無いし、型もないからケーキ焼くのは無理かなあ。
俺パンとか作れないけど、パン種までならロッタさんが作れるからそれに手を加えたらお惣菜パン作れるかも。
調理の能力が増えたせいか、食べたいものを思い浮かべるとレシピが浮かんでくるんだよね。
「醤油で料理するの楽しみです。慣れない味だと思いますけれど食べてもらえますか」
「楽しみにしてる。ウヅは迷宮の物が使えるんだな、ニルスさん聞いたことがありますか」
「ううむ、醤油の実や味噌の実が調味料だとは分かってたんじゃが使い方が分からなくての、ウヅキ君は本当に使えるのかの?」
「はい、そうだ。今晩の夕食は岩角魚の予定なので、それに醤油を使ってみようかな」
鱗を取って三枚下ろしにした岩角魚に粉を付けてバター焼きにしようと思ってたんだ、そこにお醤油をたらっと落としたらきっと美味しいよね。
脂が乗ってるからいい感じになると思うんだよなあ。
「岩角? あれは食卓で食べられるものでは無かったと思うんじゃが、味はいいがのう」
「ニルスさんとマリアさんは岩角魚は苦手ですか?」
「鱗がちょっとのぉ」
やっぱり鱗がネックなんだ。
大神様が説明してくれたけれど、どうしてそこで工夫しようとしないのか不思議だなぁ。
醤油の実だって調味料だって分かってるなら、使ってみようかなってどうして思わないんだろう?
「鱗は大丈夫です。鱗さえ無ければ、夕食に出しても問題ありませんか?」
「それは勿論じゃが、鱗は焼いても硬いんじゃよ。岩角は特にの」
「そうですね」
あんなに硬いの焼いても食べられるとは思えない。
鱗を食べる山猫獣人だったら食べるのかな。
「口に合うか分かりませんが、食べてもらえますか」
口に合わなかった時様に、塩味と醤油味両方作ったほうがいいかな。それとも食べるときに好みで醤油を掛けてもらったほうがいいな。
「ウヅは料理が好きなんだな」
「はい、皆に美味しいって言ってもらえるのが嬉しいんです」
ゲルトさんに美味しいって言って欲しいんだ。
俺が作ったもの食べたいって、そう思って欲しいんだ。
「俺迷宮行ってみたいです。俺じゃまだ無理ですか」
「駄目だな、最低でも下級にならないと入れないからな」
「そっかあ。じゃあ沢山依頼を受けて早く下級試験受けられるようにならないといけないですね」
魔法の練習もあるし、やらなきゃいけない事沢山ありすぎる。
「ウヅキ君は魔力制御が上手くならない限り、下級になっても迷宮入りは勧められないわよ」
「え、駄目ですか?」
「駄目よ。迷宮は場所によっては冒険者がそれなりに居るところもあるのよ。制御失敗して誰かに攻撃魔法ぶつけてしまいましたなんて、冗談でも言えない話だもの」
ワルドさんと話しながら俺達の方も聞いていたらしいルル先生から、駄目と言われると反論出来ない。
「ウヅはなんで魔力制御苦手なんだろうなあ」
「ウヅキ君は自分が思っている以上に魔力を放出しすぎているのだと思うわ、普通の人がスプーンで一匙ずつ水を椀に入れているなら、ウヅキ君はバケツでお椀に入れている様なものなのよ」
それを言われて絶句した。
スプーンとバケツじゃ、比べるまでもなく量が違いすぎる。
そんなに違うのか、俺。
「だからゴブリン相手に風神の刃使って、周囲の木まで切り倒しちゃったんですか?」
「あなた、そんなことしてたの? それは魔力を込めすぎよ。風神の刃は風の刃より範囲が広くなっただけの魔法よ、威力はそんなに強くないわ。それじゃ、蠟燭一本で足りるところに焚き火の炎を使うようなものよ」
え、そうなの? 俺強さも違うんだって思ってたから魔力沢山使ってたよ。
「そんな使い方してたら、魔力がいくらあっても足りないわ。適切な魔力量を覚えなくちゃね」
「……はい」
やらなきゃいけない事より、覚えなくちゃいけないことがありすぎる。
俺はしょんぼりしながら、ルル先生に頷いたんだ。
11
お気に入りに追加
3,665
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?
雪 いつき
BL
仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。
「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」
通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。
異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。
どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?
更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!
異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる―――
※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる