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鱗って食べるんだ。
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「ゲルトさんはコケッコのお肉が好きなんですか?」
「そうだな。コケッコの肉は皮が焼くと旨いから、好きなんだ」
グレオ君がワルドさんの好みをリサーチしやすいように、ゲルトさんに話題を向ける。
「へえ、俺はコケッコはあっさりしすぎてる気がするが、皮か」
「お前はなんでも酒の肴基準で選ぶからだろう」
ゲルトさんは嫌そうに言いながら、スープの続きを食べる。
お芋ゴロゴロだけど、本当にお芋しか入ってない。オーク肉のステーキにもコケッコ焼きにも付け合わせは無いし、卵入りスープはスープの中に卵が一つ沈んでるだけだ。
ロッタさんが作るご飯は結構手が込んでるし、食材も色々使っている印象だけど食堂のメニューは違う印象だ。
芋のスープならお芋と牛乳だけ、安く売ろうと思うと沢山の食材は使えないんだろうなあ。
そう言えば卵は高いんだっけ?
「ワ、ワルドさんはどんな食べ物が好きなんですか?」
「俺か、俺は酒に合うなら何でも好きだな。まあ、野菜よりは肉かな。魚も好きだぞ」
「魚ですか」
あれ、魚って聞いた途端グレオ君がしょんぼりしちゃったぞ。
どうしたんだろう。
「グレオ君は魚嫌い?」
「魚、好きなんだけど。俺まだ牙がちゃんとしてないから鱗が噛めなくて、親に怒られるんだ」
う、鱗を噛む? え、鱗って噛んで飲み込むものなの?
「え、鱗食べるの? 食べられるもの?」
ゲルトさんは食べて無かったよね? あれ、俺が今朝したことって余計だった?
「ああ、山猫獣人族は魚は全部食べるんだ」
「種族によって違うってことですか?」
つまり食べる人と食べない人がいる、エビフライのしっぽみたいなものかな。
「ああ、そうだな」
「ゲルトさんはどっちですか? 昨日の岩角魚の串焼きは鱗食べてなかったですよね」
「ああ、あの鱗は固いからなあ。俺は食べても食べなくてもいいかな」
「そうなんですね」
よ、良かった。鱗が実はすっごく美味しいから出来れば食べたいんだ。なんて言われたら泣くところだった。
ロッタさんは鱗は食べにくいって言ったのは、狐獣人は全般的に鱗を食べないからなのかな。
獣人の食生活が分からない。
「ウヅキは鱗は食べない?」
「硬くて食べられないと思う。昨日は食べなかった。グレオ君鱗って美味しいの?」
美味しいなら、捨てずに取って置いて何か考えたい。
「鱗、俺は好きじゃない。堅くてじゃりじゃりしてるし、飲み込みにくいんだ」
「グレオ君のご両親は?」
「ご、両親?」
あれ、そういう言い方しないのかな。日本語で言っちゃったのかな、俺。
「父親と母親両方を纏めて聞いてんだよ。ウヅキは時々難しい言葉使うな。本当に十歳か?」
「言葉遣いは注意されて育ったので、癖になってるんだと」
母さんは俺と殆ど話さなかったけど、たまの会話で俺が幼い子供みたいな話し方をすると話し方が駄目だと俺を蹴るから、俺は自衛の為に本当に小さい頃から言葉遣いを気を付けていたんだよね。
「へえ。躾に厳しい親だったんだな。うちは親も職人だったから話し方なんざ注意を受けたこともねえからよぉ。育った町が職人の町みてえなもんだったから、周りもこんなんばっかだったぜ」
「そうなんですか」
母さんのは躾じゃなく、ただの八つ当たりだったんだと思うけれど。
ああ、思い出すとやっぱり気持ちがまだ落ち込むな。
もう吹っ切れたと思ってたのに、俺どれだけ引きずってんだろう。
「ウヅ。手が止まってる」
「え、あの。お腹いっぱいになったかも」
ゆで卵の殻を剥いただけで、コケッコ焼き一切れでお腹がいっぱいになっちゃった。
「ゲルトさん」
これ以上食べると夕飯が食べられなくなるから、ゲルトさんに卵を渡そうとすると手じゃなくて口で受け取ってくれた。
「お前らいい加減にしろよ」
「なんだ」
うんざりした様な顔のワルドさんに、何となく顔が赤いグレオ君そして遠くに見える般若みたいに怖い顔のあの二人。
い、いやいつもじゃないからね。
さっきは確かに食べさせてもらったけれど、俺がゲルトさんに食べさせるなんていつもやってないからね。
そういうつもりで卵出したわけじゃないし。
「残りは食えるか」
そ、それって別な意味で無理だ。
だってゲルトさんが口を付けた奴だよ。そんなの恥ずかしすぎて無理だよ!
「あの、食べると夕食が入らなくなるから」
「そうか。じゃあ俺が食べるな」
そう言うと、ゲルトさんは俺の手に手を添えて残った卵を食べたんだ。
し、心臓に悪い。
俺、もう二度とこんな風にするの止めよう。心臓が持たないよ。
「おい、俺達は何を見せられてるんだ」
「わ、分かりません」
ひそひそと話すワルドさんとグレオ君。
俺だって分かんないよっ! いや、分かるゲルトさんは俺の事全然意識してないんだってことだけは分かっちゃたよ。
「そうだな。コケッコの肉は皮が焼くと旨いから、好きなんだ」
グレオ君がワルドさんの好みをリサーチしやすいように、ゲルトさんに話題を向ける。
「へえ、俺はコケッコはあっさりしすぎてる気がするが、皮か」
「お前はなんでも酒の肴基準で選ぶからだろう」
ゲルトさんは嫌そうに言いながら、スープの続きを食べる。
お芋ゴロゴロだけど、本当にお芋しか入ってない。オーク肉のステーキにもコケッコ焼きにも付け合わせは無いし、卵入りスープはスープの中に卵が一つ沈んでるだけだ。
ロッタさんが作るご飯は結構手が込んでるし、食材も色々使っている印象だけど食堂のメニューは違う印象だ。
芋のスープならお芋と牛乳だけ、安く売ろうと思うと沢山の食材は使えないんだろうなあ。
そう言えば卵は高いんだっけ?
「ワ、ワルドさんはどんな食べ物が好きなんですか?」
「俺か、俺は酒に合うなら何でも好きだな。まあ、野菜よりは肉かな。魚も好きだぞ」
「魚ですか」
あれ、魚って聞いた途端グレオ君がしょんぼりしちゃったぞ。
どうしたんだろう。
「グレオ君は魚嫌い?」
「魚、好きなんだけど。俺まだ牙がちゃんとしてないから鱗が噛めなくて、親に怒られるんだ」
う、鱗を噛む? え、鱗って噛んで飲み込むものなの?
「え、鱗食べるの? 食べられるもの?」
ゲルトさんは食べて無かったよね? あれ、俺が今朝したことって余計だった?
「ああ、山猫獣人族は魚は全部食べるんだ」
「種族によって違うってことですか?」
つまり食べる人と食べない人がいる、エビフライのしっぽみたいなものかな。
「ああ、そうだな」
「ゲルトさんはどっちですか? 昨日の岩角魚の串焼きは鱗食べてなかったですよね」
「ああ、あの鱗は固いからなあ。俺は食べても食べなくてもいいかな」
「そうなんですね」
よ、良かった。鱗が実はすっごく美味しいから出来れば食べたいんだ。なんて言われたら泣くところだった。
ロッタさんは鱗は食べにくいって言ったのは、狐獣人は全般的に鱗を食べないからなのかな。
獣人の食生活が分からない。
「ウヅキは鱗は食べない?」
「硬くて食べられないと思う。昨日は食べなかった。グレオ君鱗って美味しいの?」
美味しいなら、捨てずに取って置いて何か考えたい。
「鱗、俺は好きじゃない。堅くてじゃりじゃりしてるし、飲み込みにくいんだ」
「グレオ君のご両親は?」
「ご、両親?」
あれ、そういう言い方しないのかな。日本語で言っちゃったのかな、俺。
「父親と母親両方を纏めて聞いてんだよ。ウヅキは時々難しい言葉使うな。本当に十歳か?」
「言葉遣いは注意されて育ったので、癖になってるんだと」
母さんは俺と殆ど話さなかったけど、たまの会話で俺が幼い子供みたいな話し方をすると話し方が駄目だと俺を蹴るから、俺は自衛の為に本当に小さい頃から言葉遣いを気を付けていたんだよね。
「へえ。躾に厳しい親だったんだな。うちは親も職人だったから話し方なんざ注意を受けたこともねえからよぉ。育った町が職人の町みてえなもんだったから、周りもこんなんばっかだったぜ」
「そうなんですか」
母さんのは躾じゃなく、ただの八つ当たりだったんだと思うけれど。
ああ、思い出すとやっぱり気持ちがまだ落ち込むな。
もう吹っ切れたと思ってたのに、俺どれだけ引きずってんだろう。
「ウヅ。手が止まってる」
「え、あの。お腹いっぱいになったかも」
ゆで卵の殻を剥いただけで、コケッコ焼き一切れでお腹がいっぱいになっちゃった。
「ゲルトさん」
これ以上食べると夕飯が食べられなくなるから、ゲルトさんに卵を渡そうとすると手じゃなくて口で受け取ってくれた。
「お前らいい加減にしろよ」
「なんだ」
うんざりした様な顔のワルドさんに、何となく顔が赤いグレオ君そして遠くに見える般若みたいに怖い顔のあの二人。
い、いやいつもじゃないからね。
さっきは確かに食べさせてもらったけれど、俺がゲルトさんに食べさせるなんていつもやってないからね。
そういうつもりで卵出したわけじゃないし。
「残りは食えるか」
そ、それって別な意味で無理だ。
だってゲルトさんが口を付けた奴だよ。そんなの恥ずかしすぎて無理だよ!
「あの、食べると夕食が入らなくなるから」
「そうか。じゃあ俺が食べるな」
そう言うと、ゲルトさんは俺の手に手を添えて残った卵を食べたんだ。
し、心臓に悪い。
俺、もう二度とこんな風にするの止めよう。心臓が持たないよ。
「おい、俺達は何を見せられてるんだ」
「わ、分かりません」
ひそひそと話すワルドさんとグレオ君。
俺だって分かんないよっ! いや、分かるゲルトさんは俺の事全然意識してないんだってことだけは分かっちゃたよ。
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