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機嫌の悪いゲルトさん?5

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「おうっ、頑張れ頑張れ」
「あ、でも。俺がワルドさんと依頼に行ったらウヅキが」

 オーク肉をフォークにつきさしたまま、グレオ君が慌てたように言う。
 そういえば、俺どうしよう。

「んー。練習場借りて魔法の練習したいかな」
「それもいいだろうが、多分ゲルトと依頼を受ける事になるな」
「えっ」

 なにそのご褒美。
 俺が呆然としていると、ワルドさんが説明してくれた。

「お前は初級だが、ゲルトが一緒なら下級の依頼は受けていいことになったんだよ。ゴブリン七匹を狩った実績があるからな。だが初級は初級だから、初級用の薬草採取依頼を規定分受けて下級昇給試験は受けなきゃなんねえ」
「そうなんですか?」

 ゲルトさん何も言ってなかったけれど、俺がルル先生に魔法講習受けている間に決まったんだろうか。

「まあゲルトしか受けらんねえ依頼もあるから、毎日一緒にというわけにはいかないだろうが。その時は俺が二人を見る感じだな」
「俺とグレオ君二人で受けるのは?」
「それは無しだ。二人は俺かゲルトがいない時は依頼は受けない。他の冒険者達とも無しだ。いいな」

 俺は無言になる。グレオ君もだ。
 それってつまり、俺に実力があるからゲルトさんと依頼を受けられるんじゃないよね。
 昨日の今日でその話が出たのなら、昨日の冒険者の件の解決が長引きそうで俺達を放置出来ないとかそういう理由なんだろうか。

「ただしグレオは、下級に上がったら正式にうちのパーティーに入る、そうしたらパーティーの奴らと依頼を受けるのは有りだ。だから自信がねえとか言ってねえで早く昇給試験受けろよグレオ」
「え、あの。俺がワルドさんのパーティーに?」
「おう。俺は木工の仕事が忙しくなりそうでな。今までの様な依頼の受け方が出来なさそうなんだ。だから将来的には俺の代わりになれる様に頑張れ。グレオの魔法使いとしての能力はまだまだだが、そんなもんはこれから努力すればいい」

 凄い。グレオ君がワルドさんのパーティーに入るなんて、凄い。

「あの、ワルドさん以外の皆さんは俺がパーティーに入るのは、いいんですか?」
「ああ、それは確認してる。むしろ早く連れていって言ってるぞ」
「でも俺、まだ初級魔法も満足に出来なくて、生活魔法だって」
「それは言い訳か」
「え」
「経験が足りねえのは、冒険者になったばかりなんだから当然の事だ。魔法が上手く出来ねえのも当然だ。最初からなんでも出来る奴なんかいねえよ」
「はい。でも」
「出来ねえなら努力すればいいんだ。俺はそうしてやってきたし仲間達もそうだ。だがやらない理由を探すのはやめろ。そんなの時間の無駄だ。俺のパーティーの奴らはな、昨日お前が何をして何が出来なかったか知っている。それを知った上でお前が入るのを了承した。お前は魔法の腕はまだまだだが、根性があるから鍛えがいがあるってさ」

 ああ、ワルドさんのグレオ君を見る目が優しい。
 昨日、あの後でワルドさんがグレオ君の為に動いてくれたんだ。

「俺、いいんですか。本当にいいんですか?」
「ああ、だが入ったからには頑張って貰うぞ。冒険者になったばかりなんて言い訳は通用しねえからな」
「はい、俺頑張ります。早く昇給試験を受けてワルドさん達と一緒に依頼を受けられる様になります」

 グレオ君、良かったね。
 興奮してオーク肉をフォークに刺したままだけど、グレオ君が喜んでいるのは誰の目から見ても明らかだ。

「とにかく暫くは、俺と一緒に依頼を受けて攻撃魔法が実戦で使える様にする。自信がついたら昇給試験を受けて下級になる。それがおめえの目標だ。いいな」
「はい」

 同じパーティーになるなら、これからいくらでも仲良くなるチャンスはある。
 
「よし、じゃあ冷めねえうちに食え」
「はい」

 二人はなんだかいい感じになりながら、オーク肉をもぐもぐと頬張っている。
 オーク肉、結構大きいけれどグレオ君も全部食べられそうな勢いだ。

「ウヅ、待たせたか」

 二人が食べるのをぼんやりと見ていたら、ひょいって体が持ち上がった。

「ゲルト、遅えから先に食ってたぞ」
「ああ、かまわない。ウヅはまだか?」
「はい。俺のはゆで卵なので」

 俺が何かいう前にゲルトさんは当然の様に俺を膝に乗せ、椅子に座った。

「ゲルト、おめえ」
「なんだ。ウヅ卵の殻は自分で剥けるか」
「勿論です」

 俺にゆで卵を渡し、ゲルトさんはコケッコ焼きに齧り付く。
 俺はゲルトさんの膝に座り、ゆで卵の殻を剥きながら子供用椅子に座る二人をさりげなく見てみると。
 二人は不愉快そうな顔で、俺を睨んでいた。

「ゲルトさん、コケッコ焼き美味しいですか?」
「なんだ食べたいのか。ほら」

 俺がゲルトさんに聞くと、ゲルトさんはコケッコ焼きを一切れフォークに刺して俺の口元まで持ってきてくれた。

「頂きます。……うん、美味しいっ」

 ゲルトさんが差し出したフォークの肉に、大口開けて齧り付く。
 コケッコは見た目以上に美味しかった。

「そうか。他もいるか」
「これだけで十分です」

 ゲルトさんにお礼を言いながら、彼女達の方を見ると表情が鬼の様に険しくなっていた。
 そして、グレオ君は楽しそうに俺達を見ている。

「俺は何を見せられてんだ?」
「どうした」
「いや。なんでもねえよ。お前の機嫌はウヅキがいりゃ良くなんだなって思っただけだ」

 ゲルトさん、やっぱり機嫌が悪かったのかな?
 ワルドさんの軽口に首を傾げていると、ゲルトさんは何も言わずにスープを飲み始めたんだ。 
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