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機嫌の悪いゲルトさん?3
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「ウヅキ」
「うん」
俺達が子供用椅子の近くまで行く前に、その椅子に座ってこちらを見てニヤニヤとしていたのは、さっきゲルトさんと話をしていた女の人達だった。
「俺言ってこようか」
「いいよ。ここは食堂だし椅子を使う権利はここを利用する皆にあるもん」
子供用椅子は、背が低い俺みたいな子供か体が小さい系の獣人が使う為に作られた椅子だけれど、勿論それ以外の人が使ってもいい椅子ではあるんだ。
使わなくていい人が使って、本来使いたい人が使えない。
それを周囲がどう思っているかは別にして、そういうものだ。
「いいのか?」
「うん。別に、彼女達が何をしたいのか知らないけれどね」
さっきはスタイルが良くて綺麗な女の人がゲルトさんと話をしているのを見てお似合いだって思ったけれど、今の彼女達を見てお似合いなんかじゃないって、俺は思ったよ。
俺がゲルトさんとどうこうなる未来は無いって分かってるし、ゲルトさんは女の人と恋愛して結婚して可愛い子供なんか生まれて(想像だけで泣けてくるけど)幸せに暮らす。そういう未来が似合う人だって思ってる。
でも、彼女達は俺的には駄目だ。
だって、ゲルトさんとパーティーを組んでいる俺に嫌がらせする為だけに子供用椅子を使って、あんな意地悪な笑いを向けている。そんな人、ゲルトさんの恋人には相応しくないと思う。
俺に意地悪するのは、俺みたいな子供がゲルトさんと一緒にいるのが面白くないんだろうけど、大人気ない。
相応しくないってなんだろう。
俺が決めることじゃないのは、嫌になるくらいに分かっている。
でもさ、一般的に考えても他人に嫌がらせする様な人を人生のパートナーには選んじゃいけない気がするんだ。
「ゲルト―、ワルド―、注文出来たよ」
「あ、定食出来たみたいだよ。受け取りに行こう」
「いいのか」
「うん。別に椅子が無くてもゲルトさんの膝に乗せてもらえばいいだけだもん」
俺が当たり前の様にそう言えば、グレオ君は俺の顔をしげしげと見た後笑った。
「ウヅキ。うん、お前いいよ。それ。お前以外が出来ない解決方法だよ」
「でしょう? 俺、性格悪いんだ」
「あいつらの方が悪いって、誰ともパーティーを組まないって言われていたゲルトさんがウヅとパーティーを組んだから、夢見てる奴らがいるんだよ。ウヅキがゲルトさんに認められたんじゃなくて、ゲルトさんはパーティーを組む気になったんだってさ」
「そうなのかな」
「だからあいつらは、その夢見てる奴らなんだよ。剣士でもないのにゲルトさんの剣術講習受けてさあ、馬鹿じゃねえのって感じ」
「グレオ君。ああいうのは関わらないのが一番だよ。それよりさ、食べてる間にグレオ君はワルドさんの好みをしっかり確認しないとね」
「え、わ、ワルドさん」
途端に狼狽えるグレオ君は可愛い。
前世で言えばグレオ君は中学一年生だ。
俺、その頃喧嘩に明け暮れてたから。可愛げなんて皆無だったなあ。
「そうだよ。スープとか好きならそういうもの作るし。お酒に合うのが好きならそういうのを考えるし、それより食事がいいならまた別の話になるでしょ」
「え、ウヅキそこまで考えてくれてんのか」
「ワルドさんは独り暮らしだって言ってたよ。グレオ君が料理覚えたら、差し入れとか家に持っていけるじゃない。ワルドさん最近はニルスさんの依頼をこなすために、冒険者の依頼を達成したら飲み歩かずに家で木工をしてるって言ってたし。これは絶好の機会だと思うよ」
疲れて外食は面倒だってなった時に来てくれるご飯は、きっと有難いと思うんだ。
「そうかな。料理って俺にも出来る?」
「簡単だよ。グレオ君、今がワルドさんと仲良くなる絶好の機会だよ」
「そうだな。俺頑張る。ウヅキ、俺に料理教えて。勿論材料は買っていくし、お礼も」
「お礼なんてそんなのいいよ。グレオ君が幸せになってくれるのが一番だもん」
だってグレオ君は俺の友達だからね。
俺がにっこにこの笑顔でそう言うと、グレオ君は俺の手を握ってありがとうって言ってくれたんだ。
「さて、おばさんから定食受け取ってこなきゃ」
「うん。グレオ君はちゃんとワルドさんの好みを確認するんだよ」
「分かった」
真剣な顔して頷くグレオ君は可愛かったけれど、その背後に見えるあの二人のニヤニヤ笑いは俺の気持ちを急降下させたんだ。
「うん」
俺達が子供用椅子の近くまで行く前に、その椅子に座ってこちらを見てニヤニヤとしていたのは、さっきゲルトさんと話をしていた女の人達だった。
「俺言ってこようか」
「いいよ。ここは食堂だし椅子を使う権利はここを利用する皆にあるもん」
子供用椅子は、背が低い俺みたいな子供か体が小さい系の獣人が使う為に作られた椅子だけれど、勿論それ以外の人が使ってもいい椅子ではあるんだ。
使わなくていい人が使って、本来使いたい人が使えない。
それを周囲がどう思っているかは別にして、そういうものだ。
「いいのか?」
「うん。別に、彼女達が何をしたいのか知らないけれどね」
さっきはスタイルが良くて綺麗な女の人がゲルトさんと話をしているのを見てお似合いだって思ったけれど、今の彼女達を見てお似合いなんかじゃないって、俺は思ったよ。
俺がゲルトさんとどうこうなる未来は無いって分かってるし、ゲルトさんは女の人と恋愛して結婚して可愛い子供なんか生まれて(想像だけで泣けてくるけど)幸せに暮らす。そういう未来が似合う人だって思ってる。
でも、彼女達は俺的には駄目だ。
だって、ゲルトさんとパーティーを組んでいる俺に嫌がらせする為だけに子供用椅子を使って、あんな意地悪な笑いを向けている。そんな人、ゲルトさんの恋人には相応しくないと思う。
俺に意地悪するのは、俺みたいな子供がゲルトさんと一緒にいるのが面白くないんだろうけど、大人気ない。
相応しくないってなんだろう。
俺が決めることじゃないのは、嫌になるくらいに分かっている。
でもさ、一般的に考えても他人に嫌がらせする様な人を人生のパートナーには選んじゃいけない気がするんだ。
「ゲルト―、ワルド―、注文出来たよ」
「あ、定食出来たみたいだよ。受け取りに行こう」
「いいのか」
「うん。別に椅子が無くてもゲルトさんの膝に乗せてもらえばいいだけだもん」
俺が当たり前の様にそう言えば、グレオ君は俺の顔をしげしげと見た後笑った。
「ウヅキ。うん、お前いいよ。それ。お前以外が出来ない解決方法だよ」
「でしょう? 俺、性格悪いんだ」
「あいつらの方が悪いって、誰ともパーティーを組まないって言われていたゲルトさんがウヅとパーティーを組んだから、夢見てる奴らがいるんだよ。ウヅキがゲルトさんに認められたんじゃなくて、ゲルトさんはパーティーを組む気になったんだってさ」
「そうなのかな」
「だからあいつらは、その夢見てる奴らなんだよ。剣士でもないのにゲルトさんの剣術講習受けてさあ、馬鹿じゃねえのって感じ」
「グレオ君。ああいうのは関わらないのが一番だよ。それよりさ、食べてる間にグレオ君はワルドさんの好みをしっかり確認しないとね」
「え、わ、ワルドさん」
途端に狼狽えるグレオ君は可愛い。
前世で言えばグレオ君は中学一年生だ。
俺、その頃喧嘩に明け暮れてたから。可愛げなんて皆無だったなあ。
「そうだよ。スープとか好きならそういうもの作るし。お酒に合うのが好きならそういうのを考えるし、それより食事がいいならまた別の話になるでしょ」
「え、ウヅキそこまで考えてくれてんのか」
「ワルドさんは独り暮らしだって言ってたよ。グレオ君が料理覚えたら、差し入れとか家に持っていけるじゃない。ワルドさん最近はニルスさんの依頼をこなすために、冒険者の依頼を達成したら飲み歩かずに家で木工をしてるって言ってたし。これは絶好の機会だと思うよ」
疲れて外食は面倒だってなった時に来てくれるご飯は、きっと有難いと思うんだ。
「そうかな。料理って俺にも出来る?」
「簡単だよ。グレオ君、今がワルドさんと仲良くなる絶好の機会だよ」
「そうだな。俺頑張る。ウヅキ、俺に料理教えて。勿論材料は買っていくし、お礼も」
「お礼なんてそんなのいいよ。グレオ君が幸せになってくれるのが一番だもん」
だってグレオ君は俺の友達だからね。
俺がにっこにこの笑顔でそう言うと、グレオ君は俺の手を握ってありがとうって言ってくれたんだ。
「さて、おばさんから定食受け取ってこなきゃ」
「うん。グレオ君はちゃんとワルドさんの好みを確認するんだよ」
「分かった」
真剣な顔して頷くグレオ君は可愛かったけれど、その背後に見えるあの二人のニヤニヤ笑いは俺の気持ちを急降下させたんだ。
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