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機嫌の悪いゲルトさん?2

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「おーい、ゲルトいないか?」

 誰だろ、ゲルトさんを呼んでる。 

「なんだ」
「あー、いた良かったー。ゲルト、今日の講習分の支払い終わってなかっただろ。会計まで来てもらえないか」
「ああ、集計終わったのか。明日でも良かったんだが」
「いやいや、過去一稼がせて、いやあの。うん、なんだ。ゲルトの講習はギルドとしては定期的に行ってもらいたい程の人気だからな。即日支払いは当然だろう」
「支払いを急かした覚えは無いんだが、飯食った後じゃ駄目なんだよな?」
「えーっと、会計の昼休憩がずれ込むので、出来たら今だと助かるんだが」

 それは、ゲルトさんのお昼の時間を譲れって聞こえるんだけど。
 結構ギルドの職員さん強引? なんて俺は考えてたんだけどゲルトさんは違っていた。

「そうか、それは避けたいな。彼女達は昼休憩が押してもその分遅く戻れるわけじゃないだろうからな。分かった行こうか」

 ゲルトさんは簡単に了承した。
 そうか、担当人数が決まってるから遅くお昼に行っても時間になったら戻らないといけないのか、知らなかった。
 というより、お昼は会計の窓口は閉まっちゃうのか。受付はやってたよね? 働いてる人数の都合かな。

「ありがとう、助かるよゲルト。短い休憩削らせるの可哀想でさ」
「人数が少ないからな、この位の手間は何でもない」
「ありがとう。じゃあすぐに来てくれるか」
「ああ。ウヅ、悪いが俺の分出来たらテーブルに運んでくれるか?」
「勿論です。いってらっしゃいゲルトさん」
「ふっ。いってくる」

 頭を一撫でしてから俺を下ろすと、ゲルトさんはギルドの職員さんと一緒に、食堂を出ていった。

「なだかんだ言って、ゲルトは優しいんだよな」
「え?」
「あいつの講習、後から後から希望者が続出でさ、会計が集計追い付かなかったみたいなんだよ」
「やっぱりゲルトさんは凄く人気あるんですね」

 それは誇らしいけれど、何となく不安な気持ちになる現実だった。

「まあなあ。このギルド五本の指に入る強さだからな」
「そうなんですね」

 空いているテーブルを見つけ、一般の椅子しかないと気がついて子供用椅子を探す。
 子供用と言いながら、小柄な獣人も使うから五脚あるうちの三脚は使われていて残りの二脚は壁際にあった。

「あ、俺椅子を持ってきます。ワルドさん達はここにいてください」

 昼時間が近いせいか食堂はそれなりに混んでいるから、席の確保は大切だ。

「あ、俺一緒に行くよ。ワルドさん席いいですか?」

 グレオ君が気を利かせてくれて、ワルドさんはにこやかに頷く。
 なんかいい感じなんじゃないって、俺は勝手にワクワクしちゃう。

「グレオ君、ワルドさんと仲良くなれた?」
「え、あの。なんか、昨日俺落ち込んでただろ。ワルドさん、俺のこと気に掛けてくれてるみたいで、俺がまだ魔法上手く使えないって言ったら、簡単な討伐依頼を一緒に受けて攻撃魔法の指導してやるよって言ってくれたんだ」

 うわぁっ。それって、凄いんじゃないのかな。

「それで。それで?」
「俺なんかお願いするの申し訳ないんだけど、昨日関わったのは縁だからって言われて、俺図々しいと分かってたんだけどお願いしちゃったんだよ」

 そう話すグレオ君の顔は幸せそうで。
 俺も物凄く幸せな気持ちになったんだ。

「グレオ君、攻めるなら今だよ!」
「え、せ、攻める?」
「そうだよ。依頼を一緒に受けてくれたお礼に、グレオ君食事を作ってワルドさんの家に差し入れに行こうよ」
「えっ。俺料理なんかしたことないよ」
「大丈夫、俺が教えるから。ワルドさんはお酒飲む人だし、そういう料理考えるから、ねっ!」

 俺がゲルトさんと上手くいくなんて、そんなの難しいって分かるけれどグレオ君たちはもしかしたらの可能性はあるんだ。
 これは今攻めなきゃいけないよね。

「明日、依頼が終わったら家に来て!」
「え! わ、分かったよ」

 お酒を飲んで、和やかなお家デート。
 それで、二人の仲が発展したら良い。

 呑気に気持ちを盛り上げていた俺は、子供用椅子に駆け寄る二人の姿に一気にテンションが急降下したのだった。
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