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無事に帰ってこれたんだ5
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「はあ、戻ってきたぁ」
抱っこされての移動だったから体が休めたのか、魔力がだいぶ回復してきた気がした。
ゲルトさんが来てくれたあの時、魔力はほぼ無くなっていた。
魔力切れは辛いんだって、初めて体感した。
だって指一本動かすのも辛かったんだよ、ゲルトさんが来てくれなかったら本当に俺あそこで死んじゃってたと思う。
時間にしたら半日程度しか経っていないのに、東門が懐かしく感じる位凄く長い時間あの森で戦っていた様に感じちゃうのは、やっぱりそれだけ大変な戦いだったからなんだろう。
「やっぱり疲れてるんじゃないか、家に戻るか?」
「疲れてないから大丈夫です。それに今日納品しないと採取した薬草が元気なくなっちゃいます」
俺を心配してくれてるんだ、優しいなあとほっこりした気分でゲルトさんを見つめていたら、ワルドさんの呆れたような声がした。
「お前らさっさと中に入れよ、門番が仕事できねぇだろうが」
「す、すみません。門番さんギルドカードこれです」
「拝見します。はい、確認できましたウヅキ君おかえりなさい。魔物に襲われたと聞きましたが怪我はありませんか?」
「ありがとうございます。ゲルトさんが来てくれたから大丈夫です」
「ゲルトさんは頼りになる人ですからね」
にこにこ顔でゲルトさんを褒める門番さんに、俺は嬉しくって勢いよく頷いた。
「そうなんです、ゲルトさんはすっごく頼りになるんです!」
「ウヅ、恥ずかしいから大声でそんな話をしないでくれ」
「あ、ごめんなさい。でも、ゲルトさんが簡単にトロールを倒したの格好良かったし、頼りになるのも本当だし」
顔をしかめるゲルトさんに、俺はオロオロとしっぽを抱きしめながら言い訳する。
なんか素直に気持ちが口に出ちゃうんだ。
ゲルトさんが格好良くて頼りになるって、きっと皆が知ってるだろうけどそれを俺が声高く言いたくてたまらなかったんだ。
俺、日本で生きてた時こんな風に思ったこと全部口にする性格じゃなかったのに、なんで変わっちゃったんだろう。子供の体に考え方が引きずられてるのかと思ってたけど、それだけじゃない気がしてきた。
「ふふふ、ゲルトさん慕われてますね」
「ウヅは冒険者になったばかりだから、なんでも凄く見えるだけだ」
からかう門番さんにゲルトさんは素っ気無く答えると、ひらひらと手を振って門を抜けた。
「なんでもじゃありません」
「ウヅ?」
俺は本気で凄いって思ったのに、ゲルトさんはそれが不快だったみたいに見えた。
俺が考えなしに言うのは反省しなきゃいけないところだと思うけれど、嘘とかお世辞で言ったわけじゃないのは分かって欲しいんだ。
「俺、本当に凄いって思ったから」
「凄くなんかない」
「ゲルトさん」
「ウヅは俺以外の冒険者を知らないから、凄いんだって勘違いしてるだけだ。だからいつかこの程度かって幻滅する時が来るだろう」
なんでそんな悲しいこと言うんだろう。
謙遜してるわけじゃなく、ゲルトさんは本気でこの程度って思っている様に見える。
「俺がゲルトさんを凄いって思うの、そういう風に言うの迷惑ですか」
俺、図々しかったのかな。
もしかしてゲルトさん、俺が子供だから我慢してたのかな。
「そんなんじゃない。ただ俺はそんな凄いと言われる奴じゃないって言ってるだけだ」
「ゲルトさん」
「ほら、ギルドに着いたぞ。依頼達成報告するんだろ」
ゲルトさんと話しをするのに夢中で、ギルドに到着したのも気が付かなかった。
「はい。薬草、あ」
しょんぼりしながら俺はゲルトさんに抱っこされたまま、背負っていたカゴを下ろして蓋を開け中を覗き込んだ。
「どうした」
「えと」
カゴを背負ったままゴブリンとトロールと戦っていたからだろう。
カゴの中でシェイクされていた様な状態だった薬草は、見るも無残にボロボロだったんだ。
これじゃ納品出来ないよ。
薬草、状態:劣化、傷みが酷い
鑑定した結果が酷すぎる。
「ウヅ」
「回復魔法駄目かな。元気になって」
折角採取したのにと悲しい気持ちで、ダメ元で回復魔法を掛けたらなんとびっくり薬草にも回復魔法が効いたんだ。
薬草、状態:最良、新鮮
鑑定したら、状態が変わった。
あれ、ということは?
「ゲルトさん、下ろして下ろしてっ」
きょろきょろと辺りを見回すと、グレオ君がカゴを開こうとしているところだった。
「ウヅ?」
ぴょんとゲルトさんの腕から飛び降りて、グレオ君のところに走る。
「グレオ君!」
カゴの蓋を開けようとしているグレオ君を呼び止め、カゴに飛びつき心の中で薬草達元気になれと念じて回復魔法を掛ける。
「ウヅキ、どうした」
「ううん。一緒に受付行きたくて。依頼の達成報告一緒にしたいんだ」
俺の突然の行動にグレオ君は驚いた顔をしている。
誤魔化す様に笑いながらカゴの中身を鑑定したら、グレオ君のカゴの中の薬草も魔草も状態は最良になってた。
回復魔法って凄すぎる。
「一緒に、うん。一緒に報告に行こう」
手を繋いで二人でギルドの中に入った。
ざわざわと賑やかなギルドの中を、ドキドキしながら受付まで進む。
「リサさん、依頼の薬草取ってきました。確認お願いします」
胸を張って俺達はリサさんに声を掛けたんだ。
抱っこされての移動だったから体が休めたのか、魔力がだいぶ回復してきた気がした。
ゲルトさんが来てくれたあの時、魔力はほぼ無くなっていた。
魔力切れは辛いんだって、初めて体感した。
だって指一本動かすのも辛かったんだよ、ゲルトさんが来てくれなかったら本当に俺あそこで死んじゃってたと思う。
時間にしたら半日程度しか経っていないのに、東門が懐かしく感じる位凄く長い時間あの森で戦っていた様に感じちゃうのは、やっぱりそれだけ大変な戦いだったからなんだろう。
「やっぱり疲れてるんじゃないか、家に戻るか?」
「疲れてないから大丈夫です。それに今日納品しないと採取した薬草が元気なくなっちゃいます」
俺を心配してくれてるんだ、優しいなあとほっこりした気分でゲルトさんを見つめていたら、ワルドさんの呆れたような声がした。
「お前らさっさと中に入れよ、門番が仕事できねぇだろうが」
「す、すみません。門番さんギルドカードこれです」
「拝見します。はい、確認できましたウヅキ君おかえりなさい。魔物に襲われたと聞きましたが怪我はありませんか?」
「ありがとうございます。ゲルトさんが来てくれたから大丈夫です」
「ゲルトさんは頼りになる人ですからね」
にこにこ顔でゲルトさんを褒める門番さんに、俺は嬉しくって勢いよく頷いた。
「そうなんです、ゲルトさんはすっごく頼りになるんです!」
「ウヅ、恥ずかしいから大声でそんな話をしないでくれ」
「あ、ごめんなさい。でも、ゲルトさんが簡単にトロールを倒したの格好良かったし、頼りになるのも本当だし」
顔をしかめるゲルトさんに、俺はオロオロとしっぽを抱きしめながら言い訳する。
なんか素直に気持ちが口に出ちゃうんだ。
ゲルトさんが格好良くて頼りになるって、きっと皆が知ってるだろうけどそれを俺が声高く言いたくてたまらなかったんだ。
俺、日本で生きてた時こんな風に思ったこと全部口にする性格じゃなかったのに、なんで変わっちゃったんだろう。子供の体に考え方が引きずられてるのかと思ってたけど、それだけじゃない気がしてきた。
「ふふふ、ゲルトさん慕われてますね」
「ウヅは冒険者になったばかりだから、なんでも凄く見えるだけだ」
からかう門番さんにゲルトさんは素っ気無く答えると、ひらひらと手を振って門を抜けた。
「なんでもじゃありません」
「ウヅ?」
俺は本気で凄いって思ったのに、ゲルトさんはそれが不快だったみたいに見えた。
俺が考えなしに言うのは反省しなきゃいけないところだと思うけれど、嘘とかお世辞で言ったわけじゃないのは分かって欲しいんだ。
「俺、本当に凄いって思ったから」
「凄くなんかない」
「ゲルトさん」
「ウヅは俺以外の冒険者を知らないから、凄いんだって勘違いしてるだけだ。だからいつかこの程度かって幻滅する時が来るだろう」
なんでそんな悲しいこと言うんだろう。
謙遜してるわけじゃなく、ゲルトさんは本気でこの程度って思っている様に見える。
「俺がゲルトさんを凄いって思うの、そういう風に言うの迷惑ですか」
俺、図々しかったのかな。
もしかしてゲルトさん、俺が子供だから我慢してたのかな。
「そんなんじゃない。ただ俺はそんな凄いと言われる奴じゃないって言ってるだけだ」
「ゲルトさん」
「ほら、ギルドに着いたぞ。依頼達成報告するんだろ」
ゲルトさんと話しをするのに夢中で、ギルドに到着したのも気が付かなかった。
「はい。薬草、あ」
しょんぼりしながら俺はゲルトさんに抱っこされたまま、背負っていたカゴを下ろして蓋を開け中を覗き込んだ。
「どうした」
「えと」
カゴを背負ったままゴブリンとトロールと戦っていたからだろう。
カゴの中でシェイクされていた様な状態だった薬草は、見るも無残にボロボロだったんだ。
これじゃ納品出来ないよ。
薬草、状態:劣化、傷みが酷い
鑑定した結果が酷すぎる。
「ウヅ」
「回復魔法駄目かな。元気になって」
折角採取したのにと悲しい気持ちで、ダメ元で回復魔法を掛けたらなんとびっくり薬草にも回復魔法が効いたんだ。
薬草、状態:最良、新鮮
鑑定したら、状態が変わった。
あれ、ということは?
「ゲルトさん、下ろして下ろしてっ」
きょろきょろと辺りを見回すと、グレオ君がカゴを開こうとしているところだった。
「ウヅ?」
ぴょんとゲルトさんの腕から飛び降りて、グレオ君のところに走る。
「グレオ君!」
カゴの蓋を開けようとしているグレオ君を呼び止め、カゴに飛びつき心の中で薬草達元気になれと念じて回復魔法を掛ける。
「ウヅキ、どうした」
「ううん。一緒に受付行きたくて。依頼の達成報告一緒にしたいんだ」
俺の突然の行動にグレオ君は驚いた顔をしている。
誤魔化す様に笑いながらカゴの中身を鑑定したら、グレオ君のカゴの中の薬草も魔草も状態は最良になってた。
回復魔法って凄すぎる。
「一緒に、うん。一緒に報告に行こう」
手を繋いで二人でギルドの中に入った。
ざわざわと賑やかなギルドの中を、ドキドキしながら受付まで進む。
「リサさん、依頼の薬草取ってきました。確認お願いします」
胸を張って俺達はリサさんに声を掛けたんだ。
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