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ニルスさんも過保護3(ニルス視点)
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「父さん、どうしてですか金銭的に問題ないなら養い子にする必要等ないではありませんか」
ばろんの不満はもっともじゃが、ここは絶対に譲れないんじゃ。
「お前達が認める必要等ありゃせんよ。じゃがな、お前達が今日の事を反省せずに今後ウヅキ君を蔑ろにし、悲しませたり不快にさせる様な真似をするのなら、私は容赦はせんから。そのつもりで行動するんじゃな」
そこまでの度胸はこの息子にはないだろうと、分かっておる。
バロンは真面目ではあるがここぞと言う時の思い切りがなく、商機を逃すことも多い。
それを本人も分かっていて、焦っていることも知っているがそれはバロン以外がどうこう出来るものではありゃせん問題じゃった。
バロンにしてみれば突然現れたウヅキ君は、自分の立場を揺るがす何かに見えているのかもしれない。
孫のホルンに商会を継がせるつもりが、そうならない未来を想像して焦っているのじゃろうことはバロンの性格を熟知している私にはよく分かるんじゃ。
「ウヅキ君は商売させるつもりは無い。養い子だからと言ってウヅキ君が望まない未来を押し付ける気はないから、安心しておればいい」
「本当ですか」
「ウヅキ君が望んでいるのは、ゲルト君と共に冒険者として生きる未来だけじゃよ」
冒険者になるんだと、初めて会った時から決めていたウヅキ君は昨日自分のギルドカードを受け取り泣いた。
皆に冒険者として、ゲルト君のパーティーの相手として認められ喜ぶ姿はただただ幸せそうじゃった。
「冒険者等命を張る仕事ですよ。商人の方を選ぶんじゃありませんか」
「向き不向きがあるんじゃよ。それにウヅキ君は素直過ぎるからの、商売人にはなれんよ」
「まあ、十歳の子に向き不向きを言っても始まらないでしょうが」
「お前には見る目がないからの。分からんのも当然じゃろうて」
この息子に商会の長を任せたのは間違いだったかもしれん。そう考えると私にも見る目は無いのかもしれんな。
「父さん」
怒り出すバロンにため息を付きながら、今朝描いたウヅキ君の椅子の絵を目の前に突き出した。
「なんですか、これ」
「幼い子供や大人に抱っこされたり、体が小さい鼠や栗鼠獣人達が専用テーブルを遣わずとも店で食事が出来る椅子じゃよ」
「は? これは椅子の脚が長い?」
驚いた様な顔で絵を見ているバロンは、この椅子の凄さに気が付いた様じゃった。
「そうじゃ、ウヅキ君が大人に抱っこされたり、椅子にクッションを重ねたりせずに食卓に着けたらいいと言っての」
「こんな発想」
「私の家にだけ椅子を置くのは簡単じゃが、商会で経営している食堂にもいくつか置けば使いたいというお客もおるじゃろう」
「そうですね。個人で欲しいと思う方もいるかもしれません」
「じゃろうの。私はこれの試作をワルドに依頼しようと思っておるんじゃ」
「なぜお抱えの家具職人にしないんですか。ワルドというのはあの子供に負けたという冒険者ですよね、蛇獣人の確か家具職人でもありましたが所詮は余所者ですよ」
この町は余所者をあまり受け入れたがらない傾向にある。
冒険者という職業の者達は流浪の民の扱いだから、それなりに認知されるんじゃが職人というものは頑固な者が多く余所者を認めようとしない者が多いんじゃ。
「だから何じゃ。良い物を作れるのならこの辺りの生まれだろうとそうでなかろうと私は差別せずに取引をするからの。お前が気に入らんのなら、商会としての取り引きはせんし商業ギルドの会頭としての取引もせん、私個人としてやるまでじゃ」
本当にこれは頭が固いし融通はきかんし、商人としてはあまり才が無いのかもしれない。
「気にいらないとは言っていませんよ。ワルドの腕を知りませんし、新しい商品を良く知りもしない者に依頼するのが心配なだけです」
「心配いらんよ。あれは真面目な男じゃよ。自分が作るもので悪どいことを考える様な男ではないわ。じゃあ試作品が出来上がってきたらお前にも見せるからそのつもりでいるんじゃぞ」
「わかりました」
「それじゃあ、私は行く」
不満そうな顔で床に座ったままのバロンに軽く失望しながら、私は執務室を出たんじゃ。
ばろんの不満はもっともじゃが、ここは絶対に譲れないんじゃ。
「お前達が認める必要等ありゃせんよ。じゃがな、お前達が今日の事を反省せずに今後ウヅキ君を蔑ろにし、悲しませたり不快にさせる様な真似をするのなら、私は容赦はせんから。そのつもりで行動するんじゃな」
そこまでの度胸はこの息子にはないだろうと、分かっておる。
バロンは真面目ではあるがここぞと言う時の思い切りがなく、商機を逃すことも多い。
それを本人も分かっていて、焦っていることも知っているがそれはバロン以外がどうこう出来るものではありゃせん問題じゃった。
バロンにしてみれば突然現れたウヅキ君は、自分の立場を揺るがす何かに見えているのかもしれない。
孫のホルンに商会を継がせるつもりが、そうならない未来を想像して焦っているのじゃろうことはバロンの性格を熟知している私にはよく分かるんじゃ。
「ウヅキ君は商売させるつもりは無い。養い子だからと言ってウヅキ君が望まない未来を押し付ける気はないから、安心しておればいい」
「本当ですか」
「ウヅキ君が望んでいるのは、ゲルト君と共に冒険者として生きる未来だけじゃよ」
冒険者になるんだと、初めて会った時から決めていたウヅキ君は昨日自分のギルドカードを受け取り泣いた。
皆に冒険者として、ゲルト君のパーティーの相手として認められ喜ぶ姿はただただ幸せそうじゃった。
「冒険者等命を張る仕事ですよ。商人の方を選ぶんじゃありませんか」
「向き不向きがあるんじゃよ。それにウヅキ君は素直過ぎるからの、商売人にはなれんよ」
「まあ、十歳の子に向き不向きを言っても始まらないでしょうが」
「お前には見る目がないからの。分からんのも当然じゃろうて」
この息子に商会の長を任せたのは間違いだったかもしれん。そう考えると私にも見る目は無いのかもしれんな。
「父さん」
怒り出すバロンにため息を付きながら、今朝描いたウヅキ君の椅子の絵を目の前に突き出した。
「なんですか、これ」
「幼い子供や大人に抱っこされたり、体が小さい鼠や栗鼠獣人達が専用テーブルを遣わずとも店で食事が出来る椅子じゃよ」
「は? これは椅子の脚が長い?」
驚いた様な顔で絵を見ているバロンは、この椅子の凄さに気が付いた様じゃった。
「そうじゃ、ウヅキ君が大人に抱っこされたり、椅子にクッションを重ねたりせずに食卓に着けたらいいと言っての」
「こんな発想」
「私の家にだけ椅子を置くのは簡単じゃが、商会で経営している食堂にもいくつか置けば使いたいというお客もおるじゃろう」
「そうですね。個人で欲しいと思う方もいるかもしれません」
「じゃろうの。私はこれの試作をワルドに依頼しようと思っておるんじゃ」
「なぜお抱えの家具職人にしないんですか。ワルドというのはあの子供に負けたという冒険者ですよね、蛇獣人の確か家具職人でもありましたが所詮は余所者ですよ」
この町は余所者をあまり受け入れたがらない傾向にある。
冒険者という職業の者達は流浪の民の扱いだから、それなりに認知されるんじゃが職人というものは頑固な者が多く余所者を認めようとしない者が多いんじゃ。
「だから何じゃ。良い物を作れるのならこの辺りの生まれだろうとそうでなかろうと私は差別せずに取引をするからの。お前が気に入らんのなら、商会としての取り引きはせんし商業ギルドの会頭としての取引もせん、私個人としてやるまでじゃ」
本当にこれは頭が固いし融通はきかんし、商人としてはあまり才が無いのかもしれない。
「気にいらないとは言っていませんよ。ワルドの腕を知りませんし、新しい商品を良く知りもしない者に依頼するのが心配なだけです」
「心配いらんよ。あれは真面目な男じゃよ。自分が作るもので悪どいことを考える様な男ではないわ。じゃあ試作品が出来上がってきたらお前にも見せるからそのつもりでいるんじゃぞ」
「わかりました」
「それじゃあ、私は行く」
不満そうな顔で床に座ったままのバロンに軽く失望しながら、私は執務室を出たんじゃ。
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