ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

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ギルドで魔法習得7

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「え、ウヅキは昨日冒険者登録したばかりって、言ってなかったっけ」
「うん、あの、これ」

 説明するより早いだろうと、二人にギルドカードを見せる。

「ゲルトさんっ、お前これってなんで!」
「え?」

 グレオ君の反応に驚いてルル先生を反射的に見ると、困った様な顔で笑っている。
 ルル先生は反応が予想できていたって感じだ。
 俺何かがゲルトさんと組んでるのが、おかしいってことなのかな。昨日それてワルドさんと戦うはめになったんだし、俺ゲルトさんに迷惑かけてるのかな。

「ご、ごめん。お前が実力ないとか、ちびだからじゃなくて、ゲルトさんは誰ともパーティー組まないって噂だったから驚いたんだよ。驚かせてごめん。悪気は全然ないから、本当ごめんな。俺考えなしに叫んじゃった」
「誰ともパーティーを組まない?」

 今度は俺が驚く番だった。

「ゲルトさんはこのギルドの中じゃ、一番上級冒険者に近い人って言われててさ。中級になったのだって、最速だって話しだしさ、兎に角凄い人なんだよっ、人気あるんだよ」

 ゲルトさんは今冒険者レベルは中の上だ。
 俺は初級で、依頼をなんでもいいから十個受けて達成すると下の下になる。下の中、下の上は依頼の達成数で上がっていき、中になるには試験を受けないといけない。
 昨日説明を受ける暇がなくて、さっきこ説明をされたばかりだ。

「そうなんだ」
「そうなんだって、呑気だなあ」
「呑気なわけじゃないけど、ゲルトさんが凄いのは魔物を狩ってる姿見て分かってたし」

 格好良いんだよ。
 見とれちゃうんだよね、凄すぎて。

「そっかあ、俺も見てみたいなあ。凄いって話は聞いてても俺なんか話したことすらないしなあ」

 グレオ君がキラキラした目でそう言っているのを見ると、何だか気持ちがもやもやしてくる。
 俺、昨日ワルドさんに勝ってゲルトさんと組むのを皆に認められたって思って嬉しかったのに、何だか自信なくなってきちゃったよ。

「でも、そんな凄い人と組んでるなら俺じゃ駄目だな。分かった他を探すよ」

 残念そうに言われて申し訳なくなった俺の耳は、へにょりと伏せてしまう。
 空気を読まない俺の耳、これじゃグレオ君を責めてるみたいだ。

「ごめんなさい」
「いいって、謝ることじゃないだよ。真面目ちゃんだなあウヅキは、でもパーティー組んだって最初は一人で薬草採取とかの依頼受けるんだろ? 時間があったら一緒にやろうぜ」
「薬草採取? うん、やりたいっ!」
「よしっ。約束なっ! ルルさん、俺先に終わります。ありがとうございました!」
「魔法の練習はするんですよ」
「はーいっ。あれ、開かない」

 手を振って練習場を出ていこうとしたグレオ君は、開かない扉に戸惑いこちらを見た。

「あぁ、忘れていました。余計な者が入ってこないように扉の鍵を締めていたんです」

 ぎょっとした俺とグレオ君を気にすることなく、ルル先生は扉に近づくと魔法を解除した。

「ほらもう出られますよ」
「ははは。はい」
「やっと開いたぜーっ、なんで締め出すんだよクソエルフ」
「本当だよ、これだからクソババアエルフは最悪なんだよ」

 引きつり笑いで出ようとしたグレオ君は、暴言を吐きながら入って来る二人に邪魔されて立ち止まってしまった。

「あなた達何故許可なく入ってきたんですか? 今は魔法講習の受講者以外立ち入り禁止ですよ」
「俺達がその受講者だっつーの」
「そうそう。なんで締め出したのか知らねえけどよ、職務怠慢ってやつなんじゃねえの?」

 この二人すっごく偉そうに言ってるけど、何なんだろう?
 年はグレオ君よりも上みたいだけど、この講習を受けるなら初級冒険者なのかな?

「あなた達は今日の講習を遅刻してきましたよね。ですから扉が開かなかったのです。今日はあなた達への指導はしませんから、受付で受講申込みをしなおしてください。遅刻による補講扱いですから、料金は発生しますから」

 遅刻で講習受けられないと有料になるんだ、気をつけよう。
 何となく不安な気持ちで三人のやり取りを見ていたら、隣にグレオ君がやって来た。

「こりゃ暫くは帰れないな。あいつら人族の貴族の出らしくてさ文句言いまくりなんだよ。お前災難だな、まだ講習時間残ってるのにさ。俺も無駄話で時間使っちゃったし、悪かったな」
「いいよ。俺この町に来たばかりで知り合いもゲルトさんとニルスさん夫妻しかいないから、これから仲良く出来たら、その、嬉しいし」

 コソコソと話しているのは、三人の会話がヒートアップしてきたせいだ。
 クソエルフとかババアエルフとか酷いことを言っているけど、失礼な人達だな。

「ニルスさん夫婦って、九尾の狐の?」
「うん」
「へええ、あれ? もしかして昨日ワルドさんに勝った子供ってウヅキ? ワルドさんって、高速詠唱で滅茶苦茶凄い魔法を使うって聞いたよ。ワルドさんとどうやって戦ったのさ」
「ええと、凄い魔法使う人でも詠唱じゃましたら使えないよね?」

 これ以上は言えない。
 容赦なく蹴りまくったとか、言い難い。

「まさか石投げたとかじゃないよな?」
「そんなことしないよ」
「じゃあ何したんだよ」
「……蹴った」
「は?」
「詠唱出来ないように邪魔したんだ。どんなに魔法が凄くても詠唱終わらないと魔法は発動しないよねって思ってさ。あと、ワルドさんは俺が体格差がありすぎて攻撃し難かったんだと思う、ほら、ワルドさんが俺に物理攻撃しようとすると腰かがめないと無理でしょ? 俺小さいから」

 最初は不意打ちが聞いて、後は俺の技の取得とかが有利に働いたんだろうけれど。
 俺がちっちゃ過ぎて、色んな意味で攻撃し難くかったんだろうなって、今冷静になった頭で考えると思うんだよね。

「なんで?」
「だって俺、ワルドさんから見たら角兎と戦ってる様なものだったろうし、見た目もこれだから声は大きかったけど本当は子供相手に本気では戦えなかったんじゃないのかなって後から思ったりしてた」

 そうじゃなきゃ踏み台なんて作ってくれないよね。
 基本は優しい人なんじゃないかな。

「ワルドさん優しいからなあ。そっか本気じゃなかったのか。でも皆凄かったって褒めてたぞ、ワルドさんが手抜いてたとしても、皆が褒めてたんだから、十分なんじゃねえの?」
「そうだったら、いいけど」

 大声上げている二人とそれに冷静に対応しているルル先生を見ながら、俺はため息をついていたんだ。
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