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ギルドで魔法習得1

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「ウヅキさんおはようございます。ゲルトさんから伝言聞いてくださったのですね」

 しょんぼりしながら冒険者ギルドにやってきた俺は、中に入るなり受付のリサさんに声を掛けられた。

「あ、ニルス会頭もご一緒でしたか。おはようございます」
「おはようリサさん。ゲルト君に伝言は聞いておらなんだが、急用じゃったかな」
「いいえ。ウヅキさんは魔法使い向けの講習が必要とゲルトさんが仰っていましたので、講習の申し込みを頂きたくゲルトさんへ伝言をお願いしました」
「魔法使いの講習。あの、それはいつから受けられますか?」

 ニルスさんの商会であの後買い物する気持ちになれず、実際そんな雰囲気でもなくて俺はニルスさんに冒険者ギルドに行きたいから買い物はまた今度にしたいとお願いしたんだ。
 俺を笑ったあの男性はニルスさんの甥で、商会に修行に来ている人だったそうだ。
 冷静になって考えると、店に入って来た商会の従業員以外の人間を笑ったあげく、本人の目の前でその理由まで馬鹿にした様に話すんだからそりゃニルスさんに怒られて当然だ。
 俺は客とは言えない立場だったけれど、これが本当にお客として来ていた子供だったとしたら買い物しようとしていた店の店員に笑われて馬鹿にされたなんて、親が怒るだろう。
 でも、あの時は落ち込みの方が酷くて、早くあの場から逃げ出したくて仕方なかったんだ。
 それに、俺を笑っただけで仕事場を変えられるのは流石に可哀そうだと思った。

「一番早い講習ですと、本日の講習があと半刻程で始まりますご都合如何ですか」
「半刻。講習の時間はどれくらいでしょうか」

 ニルスさんはうんうんと頷いているので、俺が今日講習を受けても大丈夫だと思う。

「講習の時間は一刻半程です。終了がお昼を過ぎてしまいますので、お待ちになっている間あちらにある食堂で何か召し上がった方がいいかもしれません」
「一刻半、あの講習料はおいくらでしょうか」
「これは初級魔法の講習ですので、料金は掛かりません」
「そうなんですね。ニルスさん、俺今日講習を受けてもいいですか?」
「構わないよ。講習が終わる頃に迎えに来るからの」
「はい。ありがとうございます」

 俺はまだ一人で町を歩いてはいけないと、ゲルトさんからもマリアさんからも言われている。
 道を良く知らないし、そもそも見た目が五歳児並みだと気づいたばかりだ。
 一人で歩けるくらい強くなったとしても、見た目で周囲に心配を掛けてしまうだろう。

「リサ、忘れてるわよ!」
「え、あぁっ。大変! ウヅキさん受付の机の間に踏み台がございますので、そちらお手数ですが引き出して受付の際にお使い下さいませ」

 リサさんは声を掛けた同僚に会釈しながら教えてくれた。
 踏み台? 俺が机に届くように用意してくれたのかな。

「あの、わざわざ踏み台用意してくれたんですか?」
「実はねーそれを用意したのワルドさんなのよ」

 ふふふと笑いながら、リサさんの同僚さんが教えてくれる。

「駄目よそれ! 内緒って言われてたじゃない。ウヅキさん今のは聞かなかったことに……出来ませんよね」

 俺の背後にいた冒険者の人達が側に寄ってきて、ワルドが用意したんだってよと話しているのが聞こえる。
 これで内緒は無理だ。
 俺だって聞いたら、お礼言いたいもん。

「ワルドさん、俺にどうして?」
「昨日のお詫びと、これから頑張れよの応援と聞いております。ただ驚くだろうから内緒にと」

 受付はカウンターとかじゃなく、大きな机が四つ並んでいる。リサさんと同僚さんの机の間にはミカン箱半分位離れていて、そこに踏み台が置いてあった。

「高さ丁度です!」
「これなら文字も書けますね」
「はい。ピッタリな高さです。凄い」

 興奮していると、リサさんの同僚さんが「ワルドさんはテーブルとか椅子を作る木工職人でもあるのよ」と教えてくれた。

「木工職人」

 踏み台から下りて、両手で掴み上げてよくよくと見る。そういえばワルドさんを鑑定した職業欄に木工職人てあった気がする。
 しっかりと作られていて、持った時に引っかかりもなく全体的につるりとした感触だ。

「ほお、丁寧な仕事じゃの。これだけヤスリを掛けているなら触ってトゲが刺さることもあるまいよ」
「トゲ」

 ニルスさんが踏み台を表面を撫でると、つるつるしているのがよく分かる。

「リサさん、書くものは売っていますか?」
「あちらの売店にございますよ」
「ありがとうござます。後で行ってきます」

 嬉しくて胸がポカポカする。
 さっき商会では悲しい気持ちになったのに、俺って結構単純だと思うけどワルドさんの気持ちが嬉しい。
 俺がゲルトさんに抱っこされて書いてたの見て考えてくれたんだもんね。

「はい。では魔法講習の申込み手続きを進めてよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」

 踏み台に乗って俺はリサさんが机の上にに広げた書類を見る。
 ちゃんと見えた。
 これならちゃんと自分で書類が読めるし、字も書けるんだ。
 捨てる神あれば拾う神あり、なんだかそんな気持ちで俺はリサさんから説明を受けたのだった。
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